相対性理論の実証例 U
(「 」内はNewtonからの引用です)
「質量とエネルギーは同じものだった」(P82〜83)
1 問題
「相対性理論の驚くべき結論はこうです。『エネルギーは質量に変わった』」とあってその例が載っています。
「静止した二つの電子A,Bにエネルギーをあたえて,電子Aは光速の99%まで,電子Bは光速の99.9%まで加速させたとします。・・・・電子Bの衝撃のエネルギーは電子Aの約3.5倍になります。電子Bは速さではなく質量の形で,電子Aより多くのエネルギーをためこんでいたのです。」
そして、原子力発電所の「核分裂反応では,質量が熱エネルギーにかわっています」という例をあげています。
2 考察
(1)疑問1 ささやかな、しかし重大な疑問
このことは相対性理論からの推測なのか、実際の実験なのかが書いてありません。相対性理論からの推測(とくいの思考実験)ならば、相対性理論を裏付けるのは当たり前です。相対性理論を正しいとして、考えた実験なのですから。
本当の実験ならばそのことを明記すべきです。肝心なことがあやふやです。まあ、相対性理論の特徴ですが。
(2)疑問2 電子の速度、と壁の速度
電子の速度は、なんに対しての速度なのでしょう。相対性理論では絶対座標は存在しません。だから、絶対速度ではありません。したがって、電子の速度は、観測者に対する相対速度か、それとも、「電子をぶつける壁」に対する相対速度のどちらかだと考えるほかありません。
いろいろなところで、観測や、実験設備のことについて、細かく規定していながら、ここでは、かなりおざなりです。相対性理論では、絶対速度はいつの場合でも存在しないから、そうは思わないとしても、これでは絶対速度と勘違いしてしまいそうです。やはりちゃんと書くべきです。
ア 観測者に対する相対速度として考えてみます。
観測者は、無重力状態で、それを観測しているとします。
@ 壁が、観測者に対して光速の50パーセントで、電子に向かって移動しているとき
それぞれの電子は、観測者に対して光速の49パーセントと、光速の49.9パーセントで壁に向かって移動しなければなりません。
A 壁が観測者に対して光速の50パーセントで、電子と同じ方向に移動しているとき
それぞれの電子は、観測者に対して光速の149パーセントと、149.9パーセントで壁に向かって移動しなければなりません。
B 壁が観測者に対して光速の1パーセントで、電子と同じ方向に移動しているとき。(このときの壁は、観測者に対して秒速3000km弱の速度です)
観測者に対して、電子Aは、光速の100パーセント、電子Bは光速の100.9パーセントで壁に向かって移動していなければなりません。
C 考察
このとき、光速度普遍の原理から、光は観測者に対して、つねに光速度で移動しています。光速より速い物はないのが相対性理論ですから、AとBはありえないことになります。
壁が、電子と同じ方向に、光速の0・1パーセント以上の速度で移動していると、電子Bの速度は光速を超えてしまいます。この速度は、秒速300キロ弱です。地球が宇宙を移動している速度より遅くなります。
相対性原理で考えると、原始の速度はさまざまになります。一定しません。相対的な衝突の速度は同じなので不都合はないかもしれませんが、それぞれの持つ質量がまるで違ってきます。速さの持つエネルギーが質量になったとすると、電子が持つ質量が違ってきます。壁の持つ質量も違ってきます。
D 観測者の速度を考える
観測者は無重力状態にあると規定しました。しかし、絶対座標が存在しないので、観測者は静止しているとはいえません。
たとえば銀河系の中に浮かんでいるとします。
銀河系は「グレートアトラクターに向かって引っ張られています」とあるように移動しています。したがって観測者も銀河といっしょに移動しています。
すると、観測者が、光と同じ方向に秒速300キロメートル以上の速度で動いていると、電子Bの速度は光速を越えなければなりません。
このとき、光は光速度普遍の原理から、観測者にたいして光速で進みます。しかし、電子は光ではないのでこの原理は適用できません。この場合、実験は成立しません。
58ページに、宇宙には「『静止している』といい切れる場所など見つかりそうにありません」とあるとおり、宇宙には静止している物はありません。宇宙は、隅々まで、必ず万有引力があります。必ず自由落下(無重力状態)しています。無重力状態で静止している場所はこの宇宙には存在しません。
イ 壁と、電子二つの物として考えてみます。
やはり、相対性原理です。「たがいに等速直線運動をしている場所どうしでは,どちらが止まっているかを決めることはできないのです」(P59)とあります。
そこで、この電子と壁の動きを考えてみます。
この二つは互いに等速直線運動です。したがって、電子が動いているのか、壁が動いているのかを決めることはできません。
@ 壁が動いていると考える
電子Aが止まっていて、壁が、光速の99パーセントの速度で電子Aにぶつかります。やはり、電子Bが止まっていて、壁が光速の99.9パーセントで電子Bにぶつかります。このとき衝突のエネルギーはやはり、3.5倍の違いがあります。
この、壁を動かしたエネルギーはどこから来たのでしょう。壁が、「質量の形でエネルギーをためこんでいた」のでしょうか。壁はかなり重くなりそうです。
またどのような物質に変化して壁の中にあったのでしょうか。質量を持っているのだから、物質だとおもうのですが。
またどのような仕組みで、その物質が、エネルギーに変化したのでしょうか。
A 電子が動いていると考える
このとき初めて、本にあるような実験になります。エネルギーの違いが、3.5倍になったのを本当に実測したのかは別にして。(机上の空論では証明にはなりません)
これでは、絶対座標があるときの実験と変わりません。
B 考察
電子が動くとしたときと、壁が動くとしたときでは、それぞれの持つ運動エネルギーが違います。3.5倍どころではありません。
相対性原理ではこれを「決めることはできない」としていますが、動いている物によって、総エネルギーがまるで違ってくるのはどのように考えるのでしょうか。見てくれは同じでも中身(肉眼では見えない部分)がまるで違います。3.5倍なんて、はしたの数として切り捨ててもいいくらいの違いです。
同じページに「物理学の大事な法則に『エネルギー保存則(エネルギーの総量は増えたり減ったりしない)』(注1)というのがあって」とあります。この法則とは、まるで違うことになります。
(注1 ニュートン力学です。したがって、絶対座標が存在することが前提です)
(3)疑問3 やはりささやかな疑問
原子力発電所の「核分裂反応では,質量が熱エネルギーにかわっています」という例と、「電子Bは速さではなく質量の形で,電子Aより多くのエネルギーをためこんでいたのです」という現象は同じことなのでしょうか。
運動エネルギーが、質量に変わる仕組みは、核分裂反応の仕組みと同じなのでしょうか。とても信じられません。
核分裂反応の仕組みはほとんど究明されています。しかし、運動エネルギーが質量に変わる仕組みは、何一つ分かっていません。同一視できる根拠はありません。科学ではなく、感覚に頼っているだけです。
3 結論
この本の設定は、最初から、電子が動いていて、壁が動いていないということを前提にしています。絶対座標があるとして考えています。相対性理論ではありません。ニュートン力学です。運動エネルギーは速度の2乗に比例するということから説明できることかもしれません。3,5倍が本当に計測された数値かどうかも含めて。
4 終わりに
これで、「記事の中でも相対性理論の実証例として」紹介された4つの例に、すべて反論しました。
(参考)
「カー・ナビ」 時間が違ったら、地球と、衛星は同時刻にいることができない。カー・ナビゲーション・システムは相対性理論の実証例になるか U
「ミューオン」 平均値からのばらつきしか分からない。
「太陽の近くでの光の曲がり」 太陽コロナによる光の屈折
2005年8月25日 並刻記