カー・ナビゲーション・システムは相対性理論の実証例になるか U  (P36〜37)

  (以下、「 」内はNewtonからの引用です)

GPS衛星について2つの疑問の2

 

1 問題(時間の合わせ方

 36ページに、GPS衛星は、一般相対性理論によって、時間が進み、特殊相対性理論により、時間が遅れるということが解説されてあります。「衛星に積まれた時計は,これらの効果を考えた上で時刻の補正を行っています。この補正を行わないと,GPSは正しい位置を教えてくれません。」

 そこでどうやって時間を補正したのかを考えて見たいと思います。


2 考察

 合わせ方は簡単です。GPS衛星の時計を、地球標準時にコンピューター仕掛けで合わせればいいのです。なんら問題はありません。


(1) 時刻とはなんでしょう

 私の家の時計も遅れます。もう、30年も使っているからです。そこで、時々日本標準時に合わせます。日本標準時は、世界標準時に合わせてあるだろうと思われますので、我が家の時計も世界の時刻にときどき合わせることになります。私は指で合わせるので、あまりぴったりとはいきませんが。

 合わせ方の考え方は、GPS衛星と同じです。でも、狂い方はまるで違います。我が家の時計は、歯車や、ばねが古くなって、正確には動かなくなったからです。しかし、GPS衛星は、相対性理論による狂いです。

 このことをもう少し詳細に考えてみます。


ア 我が家の時計

 狂っているのは、時計の針だけです。我が家の時計の針の進み方が、日本標準時の時計の針の進み方より少し遅いのです。それだけです。私や私の家は、我が家の時計にあわせて動いているわけではなく、本当の時間(注1)というのがあれば、それに合わせて動いています。(地球の今)と同じ時間にあります。私も、私の家族も、我が家も、地球の今に遅れることは決してありませんもちろん遅れている時計も同じです。針の進み方が少し遅いだけで、本当の時間がずれているわけではないからです。

{注1 本当の時間とは何か私には分かりません。今われわれが使っている時間は地球の自転1回転を1日としています。それを、機械的に24に分割して、それぞれを1時間としています。たんに地球の回転という、物理的現象を、人間の生活の目安にしているだけです。人間の関与しない本当の時間とは何なのかは分かりません。ニュートンの絶対時間とか、アインシュタインの相対時間とかはその一端かと思います。私は、今の瞬間以外の時間は存在しないと思っているのが、時間に対する唯一の考えです}

イ GPS衛星の時計

 進むのか、遅れるのか書いてないので、(一般相対性理論では進み、特殊相対性理論では遅れるということが書いてあります。この二つの効果がどれくらいか書いてありません)どちらかわかりません。そこで、地球と違う時間とします。

 相対性理論で考えると、GPS衛星の時間が地球と違うのは、GPS衛星全体の時間の進み方が、地球と違っているからです。我が家の時計と違って、衛星の時計は、衛星の正しい時刻を指しています。だから、狂っているのではなく、地球の今の時刻とは異なるだけです。いわゆる相対時刻です。

 そこで、衛星の時計を地球時間に合わせます。すると、この時計は、衛星の本当の時間と狂ってしまいます。衛星の本当の時間をさしていないことになります。

 もちろん、カーナビに使うのですから、衛星の本当の時間を正しく計っても意味はありません。地球の時間を計らなくてはなりません。

 でも、それでいいのでしょうか。本当の時間とはそんなに簡単に変えられるものなのでしょうか。

 そこで、衛星が果てしなく回り続けることを想定してみます。衛星の本当の時刻はどんどん地球の時刻と違ってきます。

 10万年後、衛星の時刻が、地球より1日未来へいってしまったとします。このとき衛星はどちらの日にちの地球の上を回っていると思いますか。102005年8月20日の、地球の本当の時刻の上ですか。それとも、102005年8月21日の衛星の本当の時刻の地球の上ですか。衛星は、20日は1日前に通り過ぎています。だから、20日をもう1回やり直すことはできません。一方、地球は、まだ21日に来ていません。衛星にあわせて、1日とばすわけには行きません。困ったことです。

 それとも、8月20日の地球の上空を、8月21日の衛星が回っているのでしょうか。相対性論者はそうだというでしょう。しかしこのとき、21日に衛星の出した電波が20日の車に届き、正しい道案内をしていることになります。

 あるいは、衛星の時計は、地球の時刻にぴったりあわせてあるのだから、衛星は地球と同じ8月20日にあるから問題がないと考えるのでしょうか。

 もし、補正装置が狂って、時計の針を速く進めると、衛星はその針の回転といっしょにどんどん時間を進めて未来へいってしまうのでしょうか。時計が止まると、その時刻のままずっととどまっているのでしょうか。すると、時計の針を回すだけで、衛星は自由自在に、好きな時刻に行くことができます。タイムマシーンです。

 相対性理論者は衛星の時計を補正すれば、衛星はいつも地球と同じ時刻にあると考えるのでしょうか。時計さえ合わせれば、時刻はいつもぴったりだというのでしょうか。相対性理論では、それぞれに独自の時間を持っているといっています。地球は地球の、衛星は衛星の時間です。時計の針を合わせるだけで、どうして衛星の時間が地球の時間に合うのでしょう。時計の針を動かせば、本物の時間も動くというのも、相対性理論なのでしょうか。それはどのような原理に基づいているのでしょう。


ウ 暗黙の絶対時間

 相対性理論は、時間は相対的だといいます。それならば、紀元前5000年にあるはずの太陽も、おそらく数ヶ月未来にあるはずの月も、半日未来にあるはずの富士山頂も、なぜ、今われわれの頭上にあるのでしょう。それぞれ違った時間なのに、(地球の今の時刻)に集合しているのでしょう。

 時間が速くなるの遅くなるの、相対時間だのといっても、現実にはいったいどのような変化として現れているのでしょう。現実は(地球の今の時刻に)にすべてが存在しています。絶対時間は微動だにしていません。月が、2006年にあるなら、月は今、存在しないはずです。太陽が紀元前5600年にしかまだ到達していないのなら、今太陽は存在しないはずです。富士山頂が重力が少ないために半日未来の時刻を指しているなら、半日未来にいっています。富士山頂は、ぽっかりと何もない場所になっています。空間ごと消えているのだから、真空でさえありません。

 相対性理論の時間は口先だけです。時間が、どんなに遅れようが、進もうが、ちゃんと今の瞬間に物事は存在しているのです。すべてが今を離れることはないのです。

 かの有名な双子のパラドックスがその典型です。

 宇宙旅行をした兄は、5年しか時間が経っていません。地球の弟は30年経っています。その兄が、30年後の世界に帰ってくるのです。2000年に兄が出発したら、5年立っている兄は2005年に帰ってきます。弟は2030年にいます。兄と弟はどういう方法で会うのでしょう。

 ところが、相対性理論者は、へいきでこの二人を合わせます。どこで合わせるかというと、地球です。地球の時間です。絶対的な地球時の2030年で、です。兄は、まだ2005年にしか到達していないということは少しも念頭にないのです。時計は、20005年で、体も若いままで2030年の弟に会うのです。地球時は相対性理論者にも、絶対時なのです。

 あなたは今、2005年にいます。どのような方法で、20030年の人に会いますか。

 これは、1時間でも同じです。あなたは1時間未来の人にどうやって会いますか。1時間未来のできごとは、1時間待たないと起こりません。それができたら、競馬で大もうけができます。

 これは1分でも同じです。1秒でも同じです。0.1秒でも、0.0001秒でも同じです。すべての物事は今の瞬間にしかないのです。

 相対性理論者が、いくら相対時間を唱えても、相対性理論者自身が、暗黙のうちに、今という時間にすべてが集合するということを前提にしているのです。地球の今が、全宇宙の時間の基準なのです。絶対時間です。この本の中にも、絶対時間、絶対空間を暗黙のうちに前提とした記述がたくさんあります。

「アインシュタインによって,時間と空間が絶対的であるという考え方は否定されてしまいます。時間や空間は『相対的』であることが分かったのです。これが相対性理論の核心です。」といいながらです。 

 このことからいえることは「相対性理論の核心は」現実に反しているということです。そして、相対整理論者さえ、今という時間にすべてが存在するという、絶対時間を暗黙に受け入れているのです。

 

3 まとめ

 エピローグの、「記事の中でも相対性理論の実証例として,『カー・ナビゲーション・システム』『ミューオンの寿命ののび』『原子力発電所』『太陽の近くでの光の曲がり』などの例を紹介しました」とあります。

 これで、『カー・ナビゲーション・システム』と、先に書いた『太陽の近くでの光の曲がり』の二つが間違いであることを書きました。『ミューオンの寿命ののび』も相対性理論につごうのいい解釈にすぎません。ミューオンの発生地点の平均値と個々のミューオンの到達地点を比較しています。科学的な比較ではありません。これではたんに平均値からのばらつきしか出てきません。科学的に証明するなら,Aという、ミューオンが発生した高さと、消滅した高さから、その飛行距離と時間を測らなければなりません。そして、B、C、Dと、いくつかの、個々のミューオンについて、正確な計測を行ってからでないと証拠とはなりません。

 すべての証拠が、相対性理論のためのかってな解釈なのです。

 すなわち、相対性理論は間違っているということがいえます。

2005年8月18日  並刻記

 

雑誌「Newton」7月号「相対性理論」への疑問 目次

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