北斎展     


国立博物館は、春の弥勒菩薩展以来でした 北斎展は必ず混むからと9時半に待ち合わせ、入場券を買うのに並ぶのも時間のロスと、前もって揃えました さすがに平日の朝はまだ混んでいないと喜びました 

ところが、修学旅行生の一団と一緒になってしまいました 私たちは博物館というだけでやって来たので、建物は間違え、ロッカーに荷物入れたりトイレを済ませている間のことです 30分くらい他を周ろうかと言っていたら、子供たちは他の館に行ってホッとしたのですが、この間にもう混み出しています

私には浮世の知識がなく、北斎のことも赤富士の作者ということ位しか知りません そこで、これを観るには浮世絵を知っている友だちの峰さんに一緒に行って欲しいと思い、同行を頼んだことは正解でした 

北斎展は作品数が多いとは聞いてはいましたが、まさかアレほどとは思いませんでした また、一枚一枚手に取って見るように観たくなる絵ばかりなので、なおのこと時間がかかります

北斎を見ていて思うのは、「絵を描くことを楽しんでいる そして、この人はあリとあらゆることに興味があったのだろう」と・・ 絵もドンドン変わって行き、この時代に遠近法を取り入れたり、中国の風俗らしきもの出て来ます




















「岩井半四郎」の絵を観て、「コレは仁科明子のお父さんの系統かしら?」なんて見ていたら、浮世絵が「襖の下張り」に使われていたなんていうことが頷ける気がしました ブロマイド感覚、今の折り込み広告感覚だったのではないでしょうか・・

私は「多色刷り木版画」をやったことがあり、多少の知識があるのが嬉しかった 木版画は木の板に色を塗って刷る技法だから、その木目が出ます 大きな面積の場合はことに良く分かりますが、小さな部分でも木目は分かります 木目はだんだん絵の具が詰まり潰れていく 1枚目と10枚目、20枚目に明らかな違いが出ます 同じ赤でも青でも、後の作品は色がべったりしてしまいます 木版画において、地模様のような木目は大切にされています シルクスクリーンでは、1枚目も10枚目も刷った本人でさえも順番は分からなくなるので、1/30も25/30もあくまで刷った枚数が分かるというだけで、木版画とはおおいに違います 

また、線の細かさ「よくやったね~」と言いたくなりました 彫り師、刷り師、皆優れていたのでしょう 「良い彫刻刀作る人もいたのね」なんて他の事にも心が向きました 

当時の風俗が分かるのも楽しいことです 友だちが、当時のことを教えてくれました コレは待合いだとか、どういう時に使うとか・・ 「道行」の絵を見て、「忍び旅」の二人が江戸を離れて寛いでいるのが「女性の膝に乗せた男性の腕で分かる」など、私が気付かないことも教えてくれました

赤穂浪士など、基礎知識があればもっと楽しいだろうなという作品が多くありました 木曽路の地図は、春に木曽路を歩いていたので楽しく見られました デザイン専攻の私は、何気なくこの形で全部詰め込めることに驚きます 

のんびり楽しんでいたら、4時間いてもまだ「為一期-錦絵の時代-」赤富士などの前でした 



休憩しながら、友だちが「これからが良いんだよ」と言います 私は既に疲れきっていました あの時代の版画が一番観たかったもの 疲れているのは、身体だけではなくて心もでした 

それで、「大切に見たいからココから今度にまわしたい」と希望しました 「さっと、ひと目見ておこうか」というのを、私は「一度でも見てしまうと初めて見る感激がなくなるから」と、見たいなら待っていることを告げました そのことに賛成してくれて、私たちはミュージアムグッズを眺めカタログを買って会場を後にしました (後から、これを後悔することになりました)

次回は、今までのところは飛ばして一番にココに来よう きっとそれなら空いているだろう

 
                                             北斎展Ⅱに続く  

       北斎展



北斎展が終わりホッとしています もうこれで、この展覧会は観ることが出来ない 私は2度観たのですが、3度目が観たくて「まだやっている、まだ観られる」と毎日落ち着きませんでした 

22日に2度目の北斎展を観て、その記事をupしようとカタログを見直していました カタログ見ていると、この人は本当に凄い人なんだな~と改めて驚きます また、このカタログがいいんです カタログからでも、刷りの良さが分かリ嬉しくなります 3000円でこれからずいぶん楽しめそうです

まずは、前回見逃した「冨嶽三十六景」に部屋に急いぎました

「あれ?これってこんな小さな絵だったの?」
と、驚き・・ 

私は、無意識にこの4倍位の大きさと思っていました 考えてみれば版画だからそう大きなはずがありません

「凱風快晴」は、私が知ってるものとはまるで違う印象で不思議な気持ちで眺めてました これが北斎の意図した物だったのかと淡く染まる富士山をみました 淡いピンク色の山肌には、木版独特の木目が見えて、それががまたなんともやさしかった

これを観ていたら、雪の天狗岳が夜明けの光でピンク色に染まって行くところを思い出しました 富士山の朝焼けは見たことないが、色が見えるようでした


      
   凱風快晴

 
       八ケ岳:天狗岳

私がぼっとして眺めていたら、10人くらいの人を引き連れた団体がやって来ました リーダらしき人が、A4版位の赤富士をプリントした紙を高く捧げ、皆に「このは構図は三角形で、正三角形では整いすぎるので・・・」と何か解説しています そこに付いてきた人も他に絵を見ていた人たちまでもが、プリントした絵を観ながら話を聞いています その人たちは、本物の絵はロクに観ません

「なんともったいないことだろう・・・ この素晴らしい絵の前にいてプリントされた絵を観ているとは・・」
と、悲しくもあり人がそちらに固まるのでありがたくもありました 

前回来た時には出ていたと言うメトロポリタン美術館所蔵の「神奈川沖浪裏 」 真っ白の波だったという作品を見逃したのは、なんとも残念でした 波が真っ白ならどの位の迫力があったのかと考えながらも、揺れる小船に摑まる人たちの様子まで上手いと感心した カタログで見ると掴まる人の頭まで白いので、随分印象が違ったろうなと思います

「山下白雨」 上空は晴れ、真ん中に曇、そして稲妻 地上の雨は描き込んでいません 山歩きする私には実感で、隠し絵のようで嬉しくなりました 北斎にはあちこちにユーモア隠れていてソレを見つけるのも楽しいものです


のんびり楽しむ私たちは、すぐに1時間半が過ぎます さて、疲れたけれど休んで最初の部屋に戻ろうかという時に
ダメ元だから、途中で外に出してくれるか受け付けで尋ねてみよう」
と、いうことになりました

「何のために?」と、受付のお姉さん

「疲れたのでお茶でも飲んで来たいんです」と、素直に言ったら

「門の外に出なければいいですよ」「ポン!」と入場券に判を押してくれました

「こんな事ってあり?」言ってみた自分たちが驚いてしまいました

           

私たちはお昼には早すぎる時間、空いているレストランで悠々と食事とおしゃべりを楽しみ体力の回復をしました そして、今度はみんなの食事の時間で空いて来た北斎展、残りをのんびり周りました

前回丁寧に観ているので後ろからぐるりと周り、もう一度観たかったものや観なかった作品を丁寧に鑑賞しました 前半はまだ人をそう邪魔に思わないで観られましたが、この頃は凄い混雑になっていました

この日私は
背の高い人はいいわね・・ カカトの高いブーツを履いて来て良かった」
と喜びました 

  * 後で読んだ安藤さんの北斎展の記事はソコから始まっていました


「七福神図」清長・国貞・豊春・春英・豊広・北斎の合筆とは凄い!

「これは一同に会して描いたのだろうか?」
「いや、売れっ子たちにそんな暇はないだろうから順に回したのだろう」
「誰が最初で誰が最後に描いた」

と、順番を見たり楽しんだ絵です

鯉図では、「鯉にもお茶目な鯉なんているのかしら?」と思うような目のクリクリした鯉は、デザイン的になのに生き生きしていて、北斎の漫画センス&デザインセンスを思いました


友だちは北斎漫画と下の酔った女性が気にいったようでした そして、北斎が庶民の文化を詳しく描いた事で、後の江戸の研究にどれほど役に立ったのか分からないと教えてくれました きっと時代物の作家はこのカタログが大いに役立つだろうと言うことでした 

絵としてしか観ない私には、歴史や文学の事にはまったく頭がおよびません 違う分野の人と観るのは楽しい、と思うことの一つです



私は「鵜飼図」がことに好きな絵でした たいまつの煙から川の風を感じ、水の匂いを感じます 北斎の絵は、どれも煙の絵がいいなと思いました 

私は自然の風や空気を感じる絵がことに好きでしたが、写真の右の絵は会期の展示期間の短さで見逃したことが残念です

展覧会はいろいろ観てきましたが、この人ほど好奇心と元気に溢れ、その作品すべての分野が超一級の人は知りません 

「北斎は、絵を描くのが楽しくてたまらず、描いて描いて描きまくり、死ぬ瞬間まで元気に描いてそのまま逝った人のようです












この扇の絵は北斎没年の作とありますが、何処にも死の影などありません 90歳で描いたとは思えない 絶筆と言われる右の龍が天に昇っていく絵は、北斎が笑いながら天に昇って行くように感じました




                                                * 記事の写真はカタログとパンフレット、国立博物館HPよりお借りしました
 
                                    * 「北斎展&燕子花図展」& 「北斎展とカフェ」 も参考にどうぞ・・

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