運動と女性の脳卒中リスクとの関連性

最新疫学研究情報No.77

運動が脳卒中の発症リスクを低下させることが、従来の研究によって明らかにされてきましたが、どのような運動をどの程度行えば大幅なリスク低減につながるのかは、確認されていませんでした。また、タイプの異なる脳卒中(脳出血、脳梗塞)の発症リスクに対して、運動がどの程度の低減効果をもたらすのかも明らかにされてきませんでした。

今回、米国のハーバード大学公衆衛生学部のJacob R. Sattelmair氏らの研究チームによって、「運動の中でも特にウォーキングは、女性の脳卒中の発症リスクを低下させる効果がある」との報告がなされました。

研究チームは、医療・保健関係に従事する45歳以上(平均54歳)の健康な米国人女性(*主に白人)3万9315人を対象に、日常行っている運動の種類や量に関するアンケート調査を実施しました。その回答をもとに"運動と脳卒中の発症リスク"との関連性について約12年間の追跡調査を行いました。期間中に579人が脳卒中(脳出血102人、脳梗塞473人、種別不明4人)を発症しました。

調査の結果、運動の種類に関係なく1週間の運動量(kcal換算)が最も多い女性は、最も少ない女性と比べて脳卒中全体のリスクが17%低下することが明らかになりました。ただし、激しい(強度の)運動を行うだけでは、脳卒中のリスクは低減しないことも確認されました。

この結果を受けて、研究チームは運動の種類・強度と脳卒中との関連性を調べたところ、中強度のウォーキング(時速4.8~6.3kmの速めのペースで、週に2時間以上行う)が脳卒中のリスクをより低減させることが判明しました。さらに中強度のウォーキングは、脳卒中の中でも特に脳出血の発症リスクを大幅に低減させることが明らかになりました。

研究チームは、「今回の調査では、中強度のウォーキングの効果が明らかになったが、激しい(強度の)運動と脳卒中の発症リスクとの関連性については確認されなかった。原因ははっきりしないが、激しい運動を行った被験者の数が非常に少なく、正確な調査結果が得られなかった可能性がある。逆に、これまでのいくつかの研究で示唆されているように、中強度の運動の方が血圧をより低下させる効果があることから、今回の結果が得られた可能性も考えられる。今後、人種や性別の違いを考慮したさらなる研究を行う必要がある」と結論づけています。

出典

  • 『stroke誌電子版 2010年4月6日』EurekAlertより
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