米国の運動ガイドラインの改訂
最新疫学研究情報No.27
米国で1995年に公表された運動ガイドラインが、米国スポーツ医学会(ACSM)と米国心臓学会(AHA)によって刷新されました。この新しいガイドラインは健康な成人だけでなく、65歳以上の高齢者や慢性疾患のある人に対しての適切な運動内容についても明らかにしています。以下はその新しいガイドラインの内容のポイントです。
- 65歳未満の成人の健康維持・増進のための運動として、1日30分の中程度の有酸素運動(※1)を週5日以上、あるいは1日20分の活発な有酸素運動(※2)を週3日以上行う。これにプラスして(10段階で)8~10の強さのトレーニングエクササイズを週2回以上行えば、さらに効果的である
- 65歳以上の高齢者と慢性疾患のある50~64歳の成人の健康維持のための運動としては、65歳未満の成人と同じような有酸素運動が望ましい。ただし、無理なくできる程度(*会話をしながらでもできる)の強さで行うことが大切である。また足腰の弱い高齢者には、転倒防止・骨折予防のためのバランス改善運動が勧められる
今回の改訂ガイドラインでは、次のような点についても言及しています。
- 健康維持のための運動とは、日常生活の単なる動作(※3)とは別のものである
- ガイドラインの示した運動量は最小限の内容を示したものであり、それ以上の運動をすればより大きな効果をもたらすことができるようになる
- 10分以上の運動を3回行うことは、30分の運動を1回するのと同じ効果をもたらすことになる
1995年に公表された旧ガイドラインは日本でも頻繁に活用されました。今回の改訂ガイドラインも、今後日本に導入され、有効活用されるようになるものと思われます。
※1中程度の有酸素運動とは、心拍数を一定以上に高める早歩きなどのことを言います。また、中程度の有酸素運動30分というのは健康な成人の目安で、肥満などで減量の必要のある人の場合は60~90分の運動が必要になるかもしれません。
※2活発な有酸素運動とは、心拍数がかなり増加するジョギングなどのことを言います。
※3ここでの日常生活の単なる動作とは、短時間(10分以内)の「自分自身の身の回りの世話」「軽いウォーキング」「食料品の買い物」などを指します。
出典
- 『Physical Activity & Public Health Guidelines』