ホリスティックな「健康観・病気観」(理論モデル2)

医学にとって人間観・身体観の次に大切なテーマは、「健康観」と「病気観」です。「健康と病気の本質的な違いは何なのか?」「健康とはどのような状態のことなのか?」「病気はどのようにして発生するのか?」――こうしたことを知らないかぎり、医学は病気を治療するという使命を果たすことはできません。病気を取り除いて人間を健康にすることが医学の究極の目的ですが、そのためには“健康”と“病気”に関する本質的な理解が不可欠なのです。

誰もが健康と病気については知っていると思っていますが、その状態を具体的に説明してくれと言われると、はたと答えに詰まってしまいます。多くの人が、「健康とは肉体に異常がなくて病気ではない状態」「病気とは肉体に異常があって健康ではない状態」といった二律背反的な説明に終始します。

現代西洋医学では、身体の異常を医学検査の数値によって判断します。数値に異常がなければ“健康”、異常があれば“病気”と診断します。その結果、人間は“病人”と“健康人”に二分されることになります。病院の検査で異常がないと言われると、誰もがほっと胸をなでおろします。自分は健康であると思って安心します。ところがそうした人が、医学検査を受けた直後に病死するといったケースがしばしば発生します。こうなると現在の医学検査は、健康かどうかの判断基準としてはあまり頼りにならない、ということになります。

ここでは、霊的観点に立った真のホリスティック医学の「健康観・病気観」について見ていきます。「健康とは何か?」「病気とは何か?」について、西洋医学のような分析的な見方ではなく、トータル的な広い視点から明らかにしていきます。真のホリスティック医学の「健康観・病気観」を11のポイントに整理して学んでいきます。

健康観のポイント①

人間は本来、健康であるように造られている。病死は“異常事態”

これまで、私たちの身体に備わっている驚異的な仕組みについて見てきました。それを通して「人間は本来、健康であるように造られている」ということが分かりました。“健康で生きる”という大目的のもとに無数ともいえる構成要素が準備され、それらが互いに協力して、各自の役割と目的を達成するようになっています。こうした身体のシステムがスムーズに展開されていくとき、人間は健康で長寿を全うし、最後は老衰で自然死するようになります。

古来、神と呼ばれてきた「知性的生命(サムシング・グレート、大霊)」は、人間が地上世界において健康で生き、霊的成長を達成するためのさまざまな仕組みを設けました。人間の身体には、そうした知性的生命(神)の配慮が満ち満ちています。人間が神によって造られた摂理と一致し調和状態に置かれると、霊的エネルギー(生命エネルギー)が全身を循環し、各構成要素を活性化して、生命活動がスムーズに営まれることになります。

このように人間は、地上人生を健康で過ごし、寿命を全うするように造られています。人間の肉体には、そのための驚異的なシステムが備わっています。全身の生理機能を維持し、健康を保つためのあらゆるシステムが設けられているのです。その1つがホメオスターシス・免疫システム・自然治癒力という「生体維持機能」です。

健康観のポイント②

健康とは、人体のすべての構成要素が調和状態にあること(健康の定義)

すべての構成要素が“生きる”という人体(生命体)の大目的にそって、他の構成要素と協力して役割を果たすようになっています。その結果、人体の内部にはネットワークが形成されることになります。私たちの身体には、無数のネットワークが存在し、さらにそれらを包括するような巨大なネットワークが形成されています。

身体のさまざまな構成要素が順調にネットワークをつくるなら、身体全体が自然界と調和し、健康を維持することができるようになります。「霊」「心(精神)」「身体」という構成要素が調和しているとき、人間は健康が保たれるようになります。健康とは、人間の構成要素(霊・心・身体)が健全なネットワークを形成し、身体全体が調和状態に置かれ、自然界と一体化した状態のことなのです。このシンプルな定義に、健康と病気の本質が明確に示されています。

人間の構成要素の調和状態と健康

健康観のポイント③

人体の調和状態は、自然法則との一致によってもたらされる

自然界の摂理に一致することによって、調和がもたらされる

真のホリスティック医学では、“健康”とは身体全体の調和状態、“病気”とは身体全体の不調和(アンバランス)状態と定義します。身体全体の調和状態は、「自然法則(神の摂理)」に一致することによってもたらされます。したがって、“健康”とは自然法則に一致した状態、“病気”とは自然法則に反した不自然な状態ということになります。

自然界は初めから、神(サムシング・グレート、大霊)の摂理に一致した状態を維持していますが、人間は“自由意志”のもとで摂理に一致することによって、調和状態が維持されるようになっています。摂理に一致するということは、自然界と一体化するということであり、それによって人間に調和と健康がもたらされるようになるのです。

病気は、自然法則との不一致から発生

人間は、「自然法則(摂理)」に反した不自然な状態に置かれるようになると、全身が不調和状態に陥ります。“病気”は、こうした自然法則との不一致による不調和状態から発生します。不自然で不調和な状態が肉体機能に異常をもたらし、病気を引き起こすことになるのです。

病気は、「自然法則(摂理)」との不一致状態の反映です。摂理から外れた結果、生じたものです。人間は摂理に一致してこそ、霊的存在者として自然な状態に置かれるようになります。人間は本来の調和状態を保って初めて、健康を維持することができるようになっているのです。摂理から逸脱し、不自然で不調和な状態に陥ると、そのゆがみが苦しみ・痛みとなって現れるようになります。病気の苦しみ・痛みは、本人の考え方や生き方が摂理から外れていることを示すサインなのです。

自然法則と健康

“利他性”という自然法則

人間は自然法則(摂理)に一致することで自然界と調和し、健康を維持することができるようになっています。その自然法則とは、具体的には「利他性の法則」を指しています。自然界は、利他性という自然法則によって支配されています。宇宙・自然界とそこに存在する万物は、利他性という自然法則のもとで維持・運行するようになっています。

“利他性”とは、1つの個が全体のために奉仕し、全体に協力し、全体の秩序と幸福を優先するあり方です。そのとき個は、大きな世界の一員となって、より大きな幸福に浴するようになります。これが自然界を支配している「利他性の法則」です。

宇宙も自然界も「利他性の法則」に貫かれており、各世界を構成するものすべてが全体のために奉仕し、協力して全体の進化を促し、“一大調和世界”をつくり上げるようになっています。人間も自然界の一員である以上、利他性の法則によって支配されるようになっています。人間は本来、利他性の法則の支配のもとで宇宙・自然界・生物界と調和関係を築き、“一大調和世界”の一員として生きるように造られているのです。

そのとき人間は、自然界が用意してくれた喜びと幸福を満喫することができるようになります。自然界の摂理に一致し、自然界と一体となったとき、人間に調和がもたらされ、健康が維持されるようになるのです。

自然界と一体化するとき、生命エネルギーに満たされる

人間は自然と触れ合うとき、「霊的エネルギー(生命エネルギー)」が充電されて心の疲れが癒され、心身がリフレッシュするようになります。この心地よさ・清々しさのために、多くの人々が自然との触れ合いを求めます。人間は自然界と協調関係を保ち、自然界と一体となるとき、全身が調和状態に置かれるようになります。そして自然界にみなぎっている「生命エネルギー」によって心身が満たされるようになるのです。

人間が自然との触れ合いの中でこうした体験をすることができるのは、自然界が常に「利他性の法則(摂理)」に一致した状態にあるからです。自然界の営みと様相は、摂理の完全な支配下に置かれ、摂理に一致しています。それに対して“自由意志”を持った人間は、摂理から外れた生き方をして不調和(アンバランス)状態に陥っています。自然界は摂理に従って存在し、神が定めた調和状態を保っているのに対して、人間がつくり出した世界は摂理からかけ離れた状態にあるのです。

霊的視点から見ると、自然界は明るくまぶしい光に包まれ、人間界は暗くどす黒い霊気に包まれています。

健康観のポイント④

最も大切なことは“心の調和(心の霊主肉従状態)”

心の不調和が、肉体の病気の根本原因

人間の健康にとって一番重要なことは、“心の調和”です。もし心が不調和状態にあるなら、身体の各構成要素もすべて不調和状態に置かれるようになります。心の調和は、人間の健康を左右する最大の要因と言えます。“心の不調和”とは、すなわち心の異常であり、これが肉体の病気の根本原因になっているのです。したがって、心の不調和を解決しないかぎり肉体の病気を完治させることはできない、ということになります。

病気の本当の原因は、「霊・心(精神)・霊体」という肉体より上位の構成要素にあります。肉体の病気の多くが、心の不調和によって発生しています。異常な状態に陥ってしまった心が、病気を引き起こしているのです。

心の調和とは

心が霊主肉従の状態にあること

人間は、動物にはない霊的構成要素を持っています。人間だけに「霊」と「霊の心(魂)」と「霊体」があるのです。この点が人間と動物の最大の違いです。人間とサルやチンパンジーとの根本的な違いなのです。人間は霊的構成要素を持っているため、動物にはない高度な知性を有するようになっています。人間特有の高度な知性は“脳”という物質的要素の機能によるものではなく、「霊」と「霊の心(魂)」という霊的要素から発生しているものなのです。

人間は、霊の心から発する“霊的意識”と、脳から発する“肉体的意識(肉体本能)”の両方を“1つの心”として感じる特別な存在です。動物は肉体的意識しか持っていませんが、人間は違います。こうした人間の心が調和状態に置かれるのは、霊的意識が肉体的意識に対して優位(上位)にあるときです。人間は動物とは違い、“霊的存在者”として造られています。したがって、人間独自の霊的要素を肉体に優先させてこそ、霊的存在者として本来の状態をつくることができるのです。

霊的意識が肉体的意識をコントロールして優位に立っているとき、これを“心の霊主肉従状態”と言います。反対に肉体的意識が優位に立っているとき、これを“心の肉主霊従状態”と言います。

霊的意識が優位に立っているなら、心は調和状態に置かれ、自然界と一体化するようになります。肉体本能に支配されるようになると、心は自然法則から逸脱し、不自然で不調和な状態に陥ってしまいます。人間は常に、“心の霊主肉従状態”と“心の肉主霊従状態”との間を揺れ動きながら歩んでいるのです。

現代人の多くが、心の肉主霊従状態のまま人生を過ごしている

残念なことに、現代人の多くが“心の肉主霊従状態”で人生を過ごしています。心の肉主霊従状態が続くと、不自然で不調和なあり方が常態化し、やがてそれが肉体の異常(病気)として表面化するようになります。肉体本能に支配された心の不調和状態が続くことで、肉体に異常が発生するようになるのです。心の肉主霊従状態に陥ってしまっている現代人は、その間違いに気がつきません。それが心の不調和を増幅させ、病気を蔓延まんえんさせることになっています。

物質文明が未発達の時代には、人間は質素な生活を余儀なくされ、極端な肉主霊従状態に陥ることはありませんでした。ところが近代以降、物質文明の発展にともなって人々は物質的に豊かな生活を手に入れ、“物欲・肉欲”を際限なく追求するようになってしまいました。その結果、地球上に病気が増え続けているのです。

心の調和とは、心が利他的状態にあること

現代人は物欲・肉欲に支配された生き方をすることによって、霊的存在者としての資格をみずから手放しています。心が不自然で不調和な状態にあることが当たり前になっています。“心の不調和”について別の言い方をすれば――「利己性に支配された心の状態」ということになります。反対に“心の調和”とは――「利他性という自然法則(神の摂理)に一致した心の状態」を言います。

人間が自分のことより人類全体の進化と幸福を願い、また動物全体の幸福を願い、そのために自分の人生を捧げようとするとき、その心は「利他性の法則」と一致し、平安が訪れるようになります。これが心の調和状態であり、自然界と一体化した状態です。常に全体の幸福を願い、利他愛の実践に励むとき、心は神の摂理と一致し、調和状態に置かれるようになります。このように心の調和は、利他愛と一体関係にあるのです。

 “利他性”の反対が“利己性(エゴ)”です。利己性とは、全体より自分のことを優先することです。他者の幸福・全体の幸福より、自分の利益と幸福を優先することです。周りを犠牲にしても、自分の喜びと満足を求めることなのです。こうした利己性に支配された状態は神の摂理に反しており、その人の心を不自然で不調和な状態に陥れます。

心を摂理にかなった利他的な状態にしないかぎり、全身が調和状態に置かれることはありません。利己的な思いを持つこと・利己性に心が支配されることが、実は肉体の病気の一番の原因なのです。心が利己性にとらわれることで、全身が不調和状態に陥り、それが肉体に異常を引き起こすことになるのです。

利他的な心と健康

心の不調和が招く“心の苦しみ・痛み”

人間には、自分が「神の摂理」から外れた不自然で不調和な状態に陥ると、それを感知するセンサーが与えられています。心が“利己性”に支配され、摂理から逸脱した状態になると、心に苦しみ・痛みが生じて異常を知らせるようになっているのです。心の痛みとは、不安や恐れ・悲しみ・怒りといったマイナスの感情のことであり、霊的エネルギー(生命エネルギー)が欠乏した心から生じるものです。

こうした心の苦痛を放置し続けると「生命エネルギー」の流れがとどこおり、身体全体の不調和状態が進行し、やがて肉体に異常が現れるようになります。利己性に支配された不調和な心から生じた心の苦痛が、肉体の異常(病気)を引き起こすことになるのです。

ここでは4つのポイントを紹介しました。5~11についての詳細は、当研究所発行の書籍『ホリスティック医学入門&ホリスティック健康学入門』をご覧ください。

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