ホリスティックな「治療観」(理論モデル3)

病気やケガを治すのは「自然治癒力」――“治療の主役”は自然治癒力

私たちの身体には、病気になったときにそれを癒して元通りにしようとする「生体維持機能」が備わっています。それが「自然治癒力」です。病気やケガは薬物によって治るものではなく、患者自身の身体に備わっている自然治癒力によって治るものです。いかに最新の医療技術をもってしても、病気そのものを治すことはできません。病気を治すのは、どこまでも患者自身の自然治癒力なのです。

その自然治癒力は生命力の働きの1つであり、「知性的生命(神、サムシング・グレート、大霊)」の働きの反映と言えます。生命力が減少すれば自然治癒力も後退し、どのような治療を受けても病気が治ることはありません。

自然治癒力の存在を認めない西洋医学

唯物主義に立脚する現代西洋医学では、「自然治癒力」という言葉はタブーです。自然治癒力という言葉は、西洋医学の中では科学的なものとは認められず、宗教がらみの迷信と見なされます。自然治癒力を認めるなら、医学の“対症療法”は不要になってしまうと考えるのです。それは、西洋医学の存在自体を否定することに通じます。

現代西洋医学では、「免疫システム」による病気治癒の事実を認めています。この免疫システムは、自然治療力の1つと考えることができます。自律神経やホルモンといった全身調節系や、そのもとで働く酵素や情報伝達物質が関与し、それらのチームワークによって免疫システムが作動することになります。「身体にもともと備わっていたシステムが作動することで病気が治癒する」――これは免疫システムが、まさに自然治癒力の1つであることを示しています。さまざまな要素(神経系・ホルモン系・生体エネルギー系など)が作動することによって自然治癒力が発現し、病気が治癒するようになるのです。

今後、自然治癒力のメカニズムが明らかにされるにともない、西洋医学もその存在を認めざるをえなくなっていきます。

治療の本質は、自然治癒力の働きを高めること

病気治療の主役が人体内に存在する「自然治癒力」である以上、治療とは、自然治癒力の働きを阻害している原因を取り除いたり、低下していた自然治癒力の働きを高めるということになります。これが治療に関する一番の本質です。

真のホリスティック医学における“ホリスティックな治療”とは、自然治癒力の阻害要因を取り除いて、自然治癒力の働きを最大限にまで高めることに他なりません。従来の西洋医学は対症療法にこだわり、異常な箇所を取り除くことを主な目標にしてきました。全的(ホリスティック)にではなく、局所的にアプローチしてきました。それがしばしば全身の作用である自然治癒力の働きを阻害し、病気を長引かせ、深刻化させることになってきたのです。医学が病気を治すのではなく、重症化させてきたのです。

自然治癒力の働きを阻害する、間違った考え方と生き方

病気を引き起こす原因は、生体維持機能を低下させる「間違った考え方と生き方」にあります。自然法則に反した考え方(心)と生き方(生活)が自然治癒力の働きを阻害した結果、肉体の病気が発生するようになるのです。

その間違った考え方と生き方とは、具体的には次のような4つの内容を意味しています。1つ目は、不安・恐れ・悲しみ・怒り・絶望といった心の不調和のことです。ストレスを抱えた心・利己的で自己中心的な心・不安定な精神状態を言います。2つ目は、不自然で間違った食生活です。3つ目は、運動不足です。そして4つ目は、睡眠不足・過労といった休息の欠如です。

「心(精神)」「食」「運動」「休養・睡眠」という4つの不調和が原因となって自然治癒力の働きが阻害され、病気が発生したり、治癒のプロセスが妨げられて病気が悪化するようになるのです。

病気治療は、患者本人の自己努力がメイン――“セルフヒーリング”が本当の治療

病気は、自然法則から外れた間違った考え方や生き方によって発生したものです。病気の原因をつくったのは、自分自身です。その意味で病気は、“自業自得”と言えます。したがって本当の治療とは、自分がつくってしまった病気の原因を、自分で取り除くことです。病気治療の“大原則”は――「自分で治療をする、患者自身が治療の主役となる」ということです。自己努力によって自然治癒力が正常に働くようになったとき、病気は自然治癒するようになるのです。

病気の治療というと一般的には、病院に足を運んで医者に診(み)てもらい、医者に治してもらうことであると思っています。それが世間の常識になっていますが、本当はそうしたあり方は間違っています。病気になったら病院に行けばいい、医者に治してもらえばいいと考えているかぎり、病気を根本から治すことはできません。西洋医学による対症療法は、症状を抑えたり異常部分を取り除くだけであって、根本的な治療にはなっていません。

根本療法と対症療法

病気の根本原因を取り除く治療が、本来の正しい治療です。そうした治療は“根本療法”と呼ばれます。病気の根本的な原因を取り除くという治療は、最も合理的で効果的な治療法です。しかし、西洋医学では病気の根本原因が分からなかったために、表面上の異常を取り除くという“対症療法”に終始することになってしまいました。

根本療法を行うためには、病気の原因が何であるかを正しく知らなければなりません。病気の“根本原因”は――「間違った考え方と生き方」にあります。患者は、これまでの自分の不自然で間違った考え方(心)と生き方(生活)が病気の根本原因であることを、しっかりと認識しなければなりません。そしてその根本原因を取り除く努力を、自分でしなければなりません。“根本療法”とは――患者本人の「自己努力」であり、それが“ホリスティックな治療法”ということになります。しかし、大半の人々は自己努力を避けて医者に頼り、医者に病気を治してもらおうとします。

現代西洋医学では、検査をして数値が異常であれば病気と診断し、主に薬物による“対症療法”を施します。対症療法とは、表面上に現れた異常を取り除く治療法です。その結果、数値が正常範囲に戻れば病気は治ったとします。しかし、一時的に表面上の異常がなくなったとしても、真の原因はそのまま身体に内在しています。そのため時間をおいて病気が再発したり、他の症状が現れるようになるのです。

対症療法は、命に関わるような緊急事態には威力を発揮することもありますが、それはどこまでも緊急時における一時的な対処法です。免疫機能が低下して重い感染症にかかっていたり、ケガをして大量出血をしているなど、命に危険が迫っているときには対症療法は頼りになります。抗生物質の投与や外科的処置によって生命を取り留めることができます。このように対症療法は緊急事態への対処法としては効果的ですが、生活習慣病や慢性病には、ほとんど効果はありません。

予防医学と治療医学

医学は、治療に対する考え方の違いから、大きく2つに分かれます。1つは“予防医学”で、病気が発生しないようにすることを目標とする「予防重視の医学」です。もう1つは“治療医学”で、発生した病気を治すことを目標とする「治療重視の医学」です。大半の人は、治療医学を当たり前の医学であると思っていますが、それは間違っています。

治療医学を中心としているのが「現代西洋医学」です。西洋医学では、医療行為とは病気の治療を意味します。しかし古来、伝統医学には、病気が発生する前に予防法を講じて病気自体を発生させないようにするべきという考え方がありました。伝統的な民間医療では、こうした考え方を“養生法”や“健康法”として説いてきました。まさに“予防医学”を医療の正しいあり方とし、その重要性を教えてきたのです。

真のホリスティック医学における治療とは、“予防医学”と“治療医学”の双方を意味しますが、より重視するのは予防医学のほうです。真のホリスティック医学の予防法は、「ホリスティック健康学」として示しています。真のホリスティック医学では、根本療法である予防医学と対症療法である治療医学の両方とも必要なものとしますが、医学の使命としては予防医学が優先されるべきである、と考えているのです。

予防医学は、根本療法と表裏一体

病気の根本原因が何であるかを知らなければ、効果的な予防医学を展開することはできません。予防医学を謳(うた)っていても、その内容が具体的で正しくなければ、絵に描いた餅になってしまいます。病気の根本原因について明確に知ることが、予防医学を進めるうえでの出発点となるのです。

真のホリスティック医学では、病気の根本原因を不自然で間違った考え方と生き方であるとします。これが、すべての病気の根本的な原因です。これに各自の体質や生活スタイルが加わって、さまざまな病気(異常)が発生するようになります。

自然法則に反した不自然な考え方(心)と生き方(生活)とは――具体的には「利己的・自己中心的な心」「物欲・肉欲に支配された心」「不安・恐れ・悲しみ・怒り・絶望などの不調和な感情」「間違った食生活」「運動不足」「睡眠不足・過労」といったものです。こうした間違った考え方と生き方を日常生活の中で克服していくことが、病気を発生させないための“予防医学”であり“養生法”ということになります。しかもそれは、すでに病気を発症させている場合には“根本療法”にもなるのです。予防医学と根本療法は、表裏一体の関係にあるのです。(*予防医学の具体的な内容については、『ホリスティック健康学入門』で述べています。)

医学の一番の使命は“予防医学”

医学の本当の使命とは、病気を発症させないような生き方(生活)の方法を人々に教えることです。病気になった人を治療することは医学にとって当然の使命ですが、それだけが医学の使命ではありません。病気の治療が一番であってはならないのです。病気にならないようにする医学――すなわち“予防医学”こそが、医学にとって本来の使命であり、「真のホリスティック医学」が目指す方向なのです。

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