心の病気の根本療法の進め方と、その難しさ

心の病気治療の第一歩は自己コントロール――「霊優位の法則」との一致

心の病気の根本療法は、利己的・自己中心的な考え方・生き方の間違いを本人に自覚させるところから始まります。肉体本能に流されてきた、これまでの自分の考え方・生き方の間違いに気がつくことが治療の出発点です。

肉体本能に支配され、物欲・肉欲を追求することの間違いに気がついたなら、次は自分の欲望をコントロールすることを覚えなければなりません。肉体本能のままに生きるのではなく、物欲・肉欲をコントロール(自制)することを身につけなければなりません。それは、心を「霊優位の法則」に一致させるための努力です。肉体本能をコントロールしてこそ、霊的存在者としての健全な心(正常な心)を持つことができるようになるのです。

こうした物欲・肉欲のコントロールは、現代人には時代遅れの偏狭な方法(堅苦しい禁欲生活)のように映るかもしれませんが、それは人間が「自然法則(摂理)」に一致するための不可欠な実践です。欲望をコントロールする力を身につけることで、日常生活を規律正しく、はつらつと過ごすことができるようになるのです。

利他愛の実践――「利他性の法則」との一致

自己コントロールの次は、“利他愛の実践”という、よりレベルの高い治療法に進んでいきます。利他愛の実践に向かわせるためには、人生の目的は金銭や名声や権力の追求にあるのではなく、他者への奉仕にあることを本人に自覚させることが必要です。利他愛の実践を通して「霊的成長」を達成することが、人生の目的であることを教えなければなりません。

他者への奉仕活動・無償のボランティア活動は、利他的な心を育むことができる優れた治療法です。同時にそれは、心を調和状態にするための効果的な治療法です。心の病気を根本から治すためには、具体的な奉仕の行為が欠かせません。他者との間に協調関係を築き、力を合わせて行う奉仕活動の楽しさ・喜びが分かるようになったとき、利己的・自己中心的な心の不自然さが拭われるようになるのです。

心の未熟性という心の病気の根本原因を取り除くためには、それとは正反対の「利他性の法則」に一致した実践をすることが必要です。“利他愛の実践”は、心の病気の治療法として最も効果的なものです。医療関係者は患者に対して、奉仕活動の素晴らしさと喜びを教え、患者の心に利他性が増していくように導くことが大切です。それこそが、心の病気の根本療法なのです。

最近では、動物との触れ合いを通して心の病気を治療しようとする“アニマルセラピー”が行われています。これは動物と触れ合うことでストレスを軽減したり、心を落ちつかせようとする治療法です。患者は、動物を相手にして「利他性の法則」に一致した行動をとることで心を調和状態に向けることができるようになります。しかし、利他愛の対象をいつまでも動物に限定したままでは、本当の意味での治療にはなりません。対象を動物から人間に拡大していくことによって心の異常さが取り除かれ、正常化するようになっていきます。

また、“認知行動療法”といって、患者の考え方や心の反応の仕方を変えていこうとする治療法も行われるようになってきました。これは、心の病気の根本療法に通じる優れた治療法です。現在、主流となっている薬物療法のような副作用もなく、効果という点においても大きな違いがあります。ただし、この治療法には長い時間と根気が必要となります。そのため、優れた治療師がいなければよい結果は得られません。

“心の病気”の治療の難しさ

このように心の病気の根本療法は、患者に正しい考え方・生き方を教え、納得させ、具体的に実践(体験)させるという方法によって進められます。しかし、これを実際に行うのは、とても大変なことです。なぜなら患者の心の中には、それまでの人生でつくられた不自然で不調和な思いが、しっかりと根づいているからです。それを取り除くのは、容易なことではありません。そのため、心の病気の根本療法は困難を極めることになります。

自分の心を変えることの難しさは、誰もが実感しているものと思います。心の病気を治すのに大きな困難がともなう理由は、まさにその点にあるのです。心の持ち方を変えることができなければ、いつまでたっても病気は治りません。「自然法則(摂理)」に反した異常な心を持って生きるのは、本人にとっても辛いことなのですが、自分を変える力は湧いてきません。人任せで、受け身の姿勢をとり続けるため、病気の状態から抜け出すことができないのです。特に大人になってから心の病気を発症した場合には、治療はいっそう難しくなります。病気を抱えたまま一生を過ごすことになりがちです。

家族や周りの人が心配して、何とか立ち上がらせたいと思っても、本人がその気にならないかぎり回復は望めません。心の病気の治療には、“馬を水辺に連れて行っても、水を飲ませることはできない”という譬(たと)えが、そっくり当てはまります。本人が、「このままではいけない。何とか今の状態から抜け出したい!」と思うようになるまで、病気を克服することはできないのです。

深刻な霊的エネルギーの枯渇

「霊的エネルギー循環理論」によれば、心の健全性は霊的エネルギー(生命エネルギー)の量によって決定します。大気中に充満する霊的エネルギーが「霊」から取り入れられ、それが霊的領域を満たし、身体全体を循環することで健康が維持されるようになります。霊的エネルギーの流れが正常であるなら、心は「自然法則」に一致し、調和状態に置かれるようになります。霊的エネルギーが十分にあるか否かによって、心の状態が決定されることになるのです。

“心の病気”は、心の霊的エネルギーが欠乏しているところから生じるものです。霊的エネルギーが枯渇して心が不調和状態に陥ってしまうと、新たな一歩を踏みだすための気力が湧いてこなくなります。そのため、心の病気から立ち直るのが難しくなるのです。心の健全性(正常性)を維持するためには、一定量の霊的エネルギーが必要です。まして異常に陥ってしまった心を正常に戻すためには、さらに多くの霊的エネルギーが必要となります。しかし、そうした霊的エネルギーを与えてくれる治療法は、スピリチュアル・ヒーリング(注)などの特殊な治療法以外にはありません。

(注)スピリチュアル・ヒーリングの中には、「スピリット・ヒーリング」というきわめて特殊な治療法があります。これは、霊界の霊(スピリット)が治療師として地上の患者に霊的エネルギーを与えて治療を進める、というものです。この特殊なヒーリングによって、地上の患者の霊的領域に霊的エネルギーが注入され、心の正常化が促されるようになります。(*スピリット・ヒーリングについては、日本スピリチュアル・ヒーラーグループ発行の書籍『スピリチュアル・ヒーリングとホリスティック医学』やホームページで詳しく取り上げていますので、それをご覧ください。)

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