心の病気に対する“根本療法”と“対症療法”

対症療法中心の、これまでの治療法

心の病気(精神障害)の根本原因である心の不自然さ・不調和を取り除く治療が“根本療法”です。それに対して、心の表面上に現れた症状(異常)を取り除く治療が“対症療法”です。

現代西洋医学における精神医学(脳医学)の治療は、薬物を用いて脳に働きかける方法がメインとなっています。心は脳を介して発現するため、脳に対する働きかけは、一見すると心の異常をコントロールしているように映ります。しかし、心の病気のすべてが脳の機能の異常から発生しているわけではありません。薬物を用いて脳の働きをコントロールするのは単なる“対症療法”であって、本質的な治療とは言えません。それはどこまでも、心の表面部分を鎮めるだけの方法にすぎません。心の不自然さ・不調和という“根本原因”を取り除いているわけではないのです。こうした薬物による対症療法は、生命に関わるような緊急事態においてのみ、最後の手段として用いるべきです。

これまで“心の病気”に対して行われてきた治療法は、西洋医学・民間療法を問わず“対症療法”でした。現代の心身医学では、瞑想や呼吸法・暗示法・運動などを取り入れた治療も行われていますが、それらもやはり“対症療法”ということになります。安易に薬物に頼る西洋医学の治療法と比べるなら、瞑想や呼吸法や暗示法といった方法は優れています。そうした治療法は、単に脳レベル(肉体レベル)に働きかけるだけでなく、サイキックレベル(霊体レベル)の不調和の解消にも効果をもたらします。しかし、病気の根本原因に向けての働きかけではないため、その治療効果は部分的・一時的なものにとどまります。いったんは治ったように見えても、時間の経過とともに病気がぶり返し、“もぐらたたき”のような状況に陥ってしまいます。

心の病気の“根本療法”とは――心の病気の根本原因にアプローチして、心の不自然さ・不調和を取り除く

 心の病気の“根本原因”は、心の未熟性(霊性・人間性・社会性の欠如)にあります。当然、心の病気を治療するためには、そうした根本的な原因を取り除かなければなりません。「自然法則(利他性の法則・霊優位の法則)」に反した不自然で不調和な心を変えないかぎり、病気は治りません。

心の病気の“根本療法”について具体的に言えば――「物質中心の利己的な考え方・生き方を改める」ということです。物欲とエゴに支配された考え方・生き方を改める努力を通して“心の未熟性”という根本原因を取り除くことができるようになります。それこそが、心の病気の根本療法なのです。

本来、人間の心は、育児教育と人間関係(愛情関係)を通して形成されていくものです。家庭における育児教育は、子供の心を育み、最低限の霊性・人間性・社会性を養うプロセスになっています。正しいプロセスを踏んで育てられた子供は、「自然法則(摂理)」に一致した、調和のとれた心を持つことができるようになります。“霊的存在者”としての最低ラインに立つことができるようになるのです。そして成長とともに他人に気を配り、他人と協調することができる霊的・精神的な大人になっていきます。

現在、多くの人間が心を病んでいる根本的な原因は、育児教育を通して形成されるべき最低限の霊性・人間性・社会性を身につけていないところにあります。それは、現代人の間に明確な「育児・教育観」がないからです。子供をどのような人間に育てたいのか、子供の心をどう育てたらよいのかについての明確な指針がないのです。その結果、親は子供の心を育てられず、体は大人であっても心は子供のままの人間、肉体本能に翻弄(ほんろう)される幼稚な人間をつくり出すことになっています。

現在では、最低限の自己コントールさえできず、まるで幼児のような自己中心的な心を持った人間が多くいます。霊性・人間性・社会性の欠如した未熟な心、不自然で不調和な心が、やがて破綻状態を招くことになります。“利他性”と“霊優位”という自然法則から逸脱した考え方・生き方が、さまざまな心の病気(異常)として表面化するようになるのです。

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