市川の歯科技工士にここだけの言いたいこと
(第49話)
  鮎釣りの楽しみ。

  5月11日が、近県で最初の鮎つり解禁でした。待ちに待った解禁です。岡崎の矢作川です。
 前日から、車中での1泊です。釣り場所の選択が勝負です。

  前日の午後1時には現場に到着。明日にむかっての釣り人、ギャラリーを交えて場所の選択と
 同時に酒盛りです。

  解禁前の酒盛りと昨年の自慢話に花をそえながら、このセレモニーが楽しみの一つとなります。

  明日の天気は晴れ、ただし夜中は大雨の予想が伝わっていたのですが明日は天気、大水は
 出ないだろうと勝手に解釈して、オトリ鮎を川に沈めて、朝を待ちました。
 朝の4時には川にはいります。早々と午後7時には車中で眠りに入りました。12時ころから
 猛烈な雨が降り始めました。

  車のボンネットに当たる雨音に目を覚ましました。外には一歩も出られず4時ころまで猛烈な
 雨でした。

  4時までの雨、川は濁流となり釣りは無理、でも諦めきれず川をながめていると、ダムの放流
 という情報です。

  前日に沈めたオトリカンと魚、竿たてなどは濁流に流されてしまいました。以前にも同じような
 経験をお知らせしました。

  これで3回目でした。今年は最初から不運にとなりましたが、6月に入り、中日新聞社主催の
 鮎釣り大会に出場しました。

  6月5日の鮎釣り大会では第3位の入賞。

  6月19日の大会では準優勝となり、新聞社取材班から、81歳を超える来年こそ優勝ですねと
 励まされました。

  チョット自慢のトロフィーと賞状の写真を紹介します。技工術は少々ダメになってきましたが、
 鮎釣りは老いてますます盛んとなりました。

  次の情報は歯科技工業会に元気を生み出せる情報を送ります。

 

(第48話)
  日技厚生会より下記の連絡があり、少し苦言を言ってみたいと思います。

  高齢者、男性の平均寿命80歳代を迎えております。が、現役の歯科技工はいま少し、頑張ら
 ねばと思っています。

 ・ 2016、3月3日にて、日技厚生会(満了脱退・加入資格喪失)の案内を受け取りました。
 当制度の加入継続年齢(満80歳未満)を超える事となります。つきましては、更新時より満了
 脱退のお取り扱いをする旨の連絡を受けました。

 ・ いよいよ、日技も退会を促されているような違和感をもっています。

 ・ 老体は消えるのみは良いが、生涯研修時の知識人の技術、知恵などロボットには不可能な
 技工を伝授してもらっているのか。

 ・ 歯科技工の魅力について、世界の桑田先生、経営面の第一人者和田先生などに知恵を
 もらわねば、技工消滅の一途となってしまう。

 ・ 一人ラボは機械化のながれに乗れない、ロボットと競合が資金、投資面で厳しい、苦しい
 時代に差し掛かっています。「一人ラボの明日への知恵」

 ・ 高齢者と言われる技工技術、その現役から機械化に押しつぶされない工夫、知恵をもらう
 努力をしているのだろうか。高齢者から魅力となる基を探り出すべきでしょう。

 ・ 日本歯科技工士会は高齢者を75歳迎えるヒトは会費の(減額)免除が規約に記してあった
 ように思います。退会者、会員の減少により、規約の変更があったと記憶します。

 ・ 80歳を境に高齢者の会員はどうなる?

 ・ 私自身は現役の歯科技工士ですが、終了の時期が来たのでしょうか。。

 ・ 歯科衛生士学校講師5年目。2年まえに大きな改革、歯牙解剖学の彫刻について学生への
 負担を?分1工程で終了できるような工夫教育が完成しました。


  チョット余談・8年前から、歯科技工分野を外部的に見てきました。
 (3月6日)3月3日満了脱退)と同じ時期に指導者としての終了証書とは妙な気持です。

 ・ 岡大、スーパー大学院、2015〜16年度医療、介護連携スキルアップFD講習(U期生)
 高齢者の心と身体のしくみ、疾病、予防の科学を受講終了したことを証明する。

 修了証書を頂きました。

 ・スーパー大学院岡山./ NPO法人ヘルスセンター./ NPO法人口腔健康科学ネット、H28年度
 委員、理事の継続就任の依頼を受諾しました。

 ・ 「筆者のテーマ」NO1・高齢者の年頃を迎え、チョットだけ寿命が気になる。

 ・       サブ  ・健康寿命と老化、ボケ、物忘れと性の関わり。

 ・       サブ  ・細胞分裂を停止したときが生命の終わり。    

 ・ 岡山大学院医歯学総合研究科(元口腔病理病態分野再生医療研究室)歯科学修士 市川和男

 ・ この問題を順次報告します。

(第47話)
  2年間のご無沙汰により、歯科技工業界の大きな変革期到来となっています。

 1 機械力(ロボット)と技術的な競争。

 2 歯科技工士の激減。(特に、静岡県は歯科技工学校がない)(新卒者の激減=就職後の
   離職者の増加)

 3 一人ラボの経営にかげりがでてきた。(機械化の波に乗れない)(一人ラボの平均年齢が
   高齢者の仲間入り増加・跡継ぎの減少)

 4 海外委託業者の機械化増加。海外でのCAD・CAM、資材と日本の機械、資材が同等に
   活用される時代の到来である。

 ・ 機械化について大変参考となる資料を紹介する。

 (日本歯技―人と機械による共創社会へ)を読んで。2015年2月号。日本歯技誌。

 ・ 技術産業化してきた歯科技工業へ大きな心情を投げかけていることに、気がついた点を
   仲間のみなさんに報告したい。

 ・  歯科技工業が最も危ぐしているのは機械化(CAD/CAM)により仕事が奪われる時代の
   到来かと心配している方も多い。

  つまり、日技取材者(綾部、廣崎氏)原文のまま、単純なルーチンワークは、いずれ機械に
 置き換えられてしまうかもしれません。しかし、どのような仕事においても、従来通りのマニユアル
 でできないものを「こうすればできるかな」と考えながら相違工夫をする業務担当者、あるいは
 相手の心情を考えながら行う業務担当者は、当分は機械に置き換わらないでしょう。

 ・ 第21話。歯科技工士が生き残るには歯科医療の流れに逆らってはならない。(参照) 

  つまり、機械力(ロボット)の優れた能力と戦っても、取材者の言う単純なルーチンワーク
 (クラウン、インレー、コアーの精度的な面)は勝てない。機械力の優れた能力に逆らわずに
 どのように対応するかである。

 ・  ヒト、技術者には相手の心情、また、審美性、色調などを考える能力が備わっている。

   第26話 患者の満足度について報告してある。

 (相手・患者さんの心情を考える力を参照されたい)。

 ・  日本歯技の本文・山口幸平先生は「多重知能切」を引用されて知能には技術的知能、
   人格的知能、芸術的知能の3つを分類しているという。

 ・  山口先生の人格的能力とは、対人的能力や個人にない知能といって、対人関係を良好に
   保つ力であり、反省する力を知能としている。3つ目、芸術的能力、音楽的な知能、
   アスリート的知能、そして空間的知能を指します。

 ・  人格的知能と芸術的知能は合わせて「実践的知能」と呼ばれていることを紹介された。

  歯科技工士には技術面において創意工夫・相手の心情を考えて作業が行える。

   第44話・匠の技・名人芸と技工技術力について。生き残りとして参照されたい。

(第46話)
  国際的な低技工料金問題の流れから、歯科医療(技工)の空洞化の危機が押し寄せ始めました
 海外的な情報には、機械化、ロボット技工の対応こそが生き残れる、といった報告もあります。
 日本の歯科技工はロボット技工と競合するのか、戦いを受けてたつのか。
  問題は、だれのための技工技術かが問われています。(例、患者のための技工とは)
  今、歯科技工士になりたいと希望するヒトが減少してしまった、業界に魅力、経済面を
 引き出す情報の話が必要のように思う。具体的に今年は話を進めたいと思います。

  新年早々に桜の花が咲きました。気候の、狂い咲きか、良いしらせの早咲きと思います。

            

(第45話)
    対談・迷走する「7:3」環境整備、力を合わせて・拝聴して。
                               歯科学修士 歯科技工士   市川 和男

 「7:3」問題とは、24年間と言う歳月が過ぎ去り大臣告示が、もの悲しい感があるように思います。
 対談における各論、内容に大臣告示の重要性を強く表明され、感動に価する表現が数多く
 あります。現場で辛く、悲しい想いに流されて来た歯科技工所の一人として御礼を申し上げます。

  歯科医師会、歯科技工士会双方にお願いがあります。

 1 社会保険の歯科診療医療報酬点数は国の定めとした告示。(大臣告示委託技工)法の告示は
  同じものとして受け取る義務があると思います。

 2 社会保健歯科診療報酬点数―大臣告示委託技工料(委託技工料を何十%か差し引く)つまり、
  税法上の診療原価から何十%かを差し引く決まりです。
   言い換えれば、同じ財布(診療原価)の中で利潤感覚の話し合いをするので解決策が難しいと
  思うのです。

 3 医薬分業「薬価差益」と同様の「歯技分業」(診療原価から委託技工料を分離)

  (対談引用)=保健歯科技工制度を創設して直接請求の道を模索する。

  2000年4月、歯科医療への15項目の提言シンポジュームの中で「歯・技分離」補綴物=モノを
 切り離す。「医療かモノか」「歯科医療の位置付け、技工料の切り離しの考え方」。シンポジストの
 一人は医科に於ける「薬価差益」と歯科における技工料の問題を「似ている」と称していました。
                                    (2000,4、日本歯科新聞より)

 4 社会保健の点数は日本全国どこでも同じ点数なので、歯科技工料も全国統一をして、あとは
  技術勝負のはず。

 ・ そもそも歯科医師は医院経営の面で出来るだけ安くしてほしいという気持ちが働きます。
 歯科技工所は仕事がほしいから短絡的に値段を下げる。つまり、診療原価、同じ財布の中から
 委託技工料を差し引くことに問題が起きます。

  歯技分業となれば技工サイドは自身の財布の中身「技術の工夫、レベルアップ・歯科医療への
 貢献・補綴物の出来上がりへの責任感=患者さんの喜びを確保する」に精進する。並びに
 大臣告示を守るのが当然の義務となります。精進と義務の果たせない者は自然淘汰の道が
 付いてきます。

 : 筆者も2000年、当時歯技分業問題について模索していました。今日も、医薬分業を参考に
 歯技分業への法的な道標を研究する余地があると信じています。

(第44話)
後編

   一般社会に歯科技工業をアピール、PRの道を探る。

  これまで一般社会に業界をアピール、PRなど、歯科界に大きく影響、評価された面、一説を
 掘り起こし、皆で、今一度業績を振り返り、学び直して参考とするべきである。
  ここに、各界の方々の言葉や表現の一説を紹介したい。(敬称略)

  ・21世紀の歯科技工士像を探る「対談」  和田弘毅先生  桑田正博先生 

  他産業と比較して魅力が無いと言うのも一つは経済の問題、経済面を支えているのは
 歯科技工料金ですが、ヨーロッパ諸国と比べて日本の技工料金は低い。労働時間と仕事量
 から適正な技工料金を設定するためにも、もっと説得力ある科学的な情報を社会に与える努力を
 するべきである。
  歯科技術を前提とした職業と言うものから全人類的な幸せとか、健康と言う大きなテーマを
 持たなければいけない。(「歯科技工」 VoI.21.No,1 1993,1)

  ・審美は心満たす医療   かずきれいこ先生

  ドクターの感じる美と患者が満足する美は一致するとは限らない。大切なことは、患者さんが
 納得して社会に出て行ける美をつくること。そのためには患者の要望を引き出すコーデイネーター
 が必要である。その役割は歯科技工士が担うべき、と提言している。
                (「日本歯科新聞」2006、5,16.より)

  ・ケアマネジャーの受験資格を付与すべきである。  安藤申直先生

  人材活用の面から歯科技工士にも歯科衛生士のようにケアマネジャー(介護支援専門員)の
 受験資格を付与すべきである。高等教育の実現は、“人類の健康と幸福のため”と理解しており、
 もし、人間の可能性を限定するようであれば、まさしく「国家の貧困」が露になるだろう。
 (東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科=口腔保健工学専攻の設置に寄せて、より)

  : かずき先生、安藤先生の言うように社会の人々に対する心満たす医療のコーデイネーター・
   ケアマネジャーのできる人材育成、その指導者を掘り起こすべきである。

  ・いい歯を選ぶ時代です。  和田弘毅先生 

  入れ歯とは、この程度のものだと思っていませんか。もはや、いい歯を撰ぶ時代です。
 あなたにお似合いのドレスを仕立てるように、あなたのお口に馴染む素敵な義歯に仕上げます。
 あなたにしか喜んでいただけない歯をご用意するために。(社内広報文より)

  : 社のPRであっても一般社会、患者さんの「入れ歯のPRであり」入れ歯をよりよく感じさせる
   メッセージとなっている一説である。

  ・入れ歯と人相学との関わり 良い入れ歯見つけて。  筆者

  高齢化社会を迎え、人生の後半をどう楽しく生きるか。入れ歯の噛み合せが良く食べ物が
 おいしく食べられる人ほどボケ老人になりにくい等、入れ歯の調子がよければ体の調子も
 良くなると言う統計がありますよ。
  良い人相はその人の幸いをもたらす、人相は変わるものであり、入れ歯によって変えられる
 こともあり、心の持ち方により入れ歯は若さ、若返りの健康器具にもなる。
                (静岡新聞)(SBSラジオ放送)より   

  ・専門性評価の世界初の認定制度(審美歯科技工士)  桑田正博先生

  専門性の認定が保健福祉に貢献・歯科医師に認定があるように歯科技工士、衛生士にも
 専門性が求められる時代。
  この認定制度により専門性のある優秀な人材が瞬時に探せるようになれば、歯科医療を
 享受する患者に対しても良い影響を生み、国民の保健福祉へ貢献することになると確信している。
                (日本歯科新聞2004・1,27より)

  ・国家資格は日本の誇り ・桑田正博先生

  資格制度を持つ貴方、世界に誇れる歯科技工士・誇れるものには、それなりの実も伴わねば
 ならない、あなた方は世界にも冠たる能力を有している専門家だと、歯科人の他分野からも、
 国民からも認めてほしい。それに恥じない歯科技工士の有るべき姿を保たねばならない。
 この関係がより歯科界を活性化させるのではないか。
                (2010年4月4日 日本歯科新聞より)

  ・待っていては生残れない ・桑田正博先生

  自分たちの意思表示と社会のニーズとの調和が取れていない業種は淘汰される。歯科人に
 求められているのは心情豊かに国民との思いを共有した上での仕事であり勉強ではないか。
                (日本歯科新聞 2010,8,3) 

  社会的地位向上 資格認定・インプラント専門歯科技工士。
  日本口腔インプラント学会認定(民間資格)

  インプラントの専門的知識と技術を確保するとともに、口腔インプラント学の発展及び向上を図り
 国民の口腔保険の増進に貢献することを目的に設立。

 : つまり、国民の口腔保険の増進に貢献を目線にしたPRであり、歯科技工士の社会的地位向上
  に繋がり、インプラントの専門知識(資格獲得)と言う魅力あるPR戦術は参考とすべきだと思う。

  ・ラボのイメージが変われば歯科技工業界は確実に変わる。 石川曲男氏 

  歯科技工所のイメージを一新した造りにより、しゃれた喫茶店か宝石店と見違える外観。
 会社帰りの通行人が喫茶店と間違えて顔を出すという。ここは何をしているところかとたずねる、
 歯を作るところと聞き、歯科技工士さんですか、きれいな職場で仕事をしているのですねと
 言われる。
  責任者「野菜でも作った人の顔が見えるようになっている。歯科技工士も作った人や場所が
 患者さんに分かれば安心すると思う」。 魅せる歯科技工士への変身。綺麗さを維持する
 プレッシャーもあるが仕事は楽しい。これからの歯科技工所のスタイルとして展開できれば
 歯科技工所のスタイルは確実に変わり、業界の活性化に繋がる。
               (日本歯科新聞、第1708号:原文抜粋)

 : 商根逞しいPR戦術と解釈するむきもあろうが、一般社会、学生、会員、医療関係者が
  歯科技工業は汚い、きつい、魅力のない職業のイメージを払拭するPRと考えることができる
  一説であろう。

  まとめ(知恵を絞る)
  以上のような、情報、知恵を集約、実施する方法、立案を全国レベルでアンケート方式により
 募ることを提案する。例えば、製作技工料金7:3問題を直接請求に置き換える方策。
 大臣告示委託技工料金も直接請求となれば(歯科技工士に対する報酬の適正化)解決の道は
 開ける。製作歯科技工料の改善で陳情・要望書の提出もあるだろう。再々度の訴え、方策を
 考えることである。歯科技工士の直接請求権=保険技工資格制度の実現となれば、専門職として
 の資格制度、その魅力・経済的な効果、地位向上として業界改革の道標が見えてくる。
  海外再委託の問題も(保険技工制度、直接請求権)=保険医制度と同じシステムとなれば
 海外の技工所(海外再委託)も医療保険技工の請求権、資格を取得せねばならない。
 今日の医療は患者主体型であり、補綴物の作成場所(国、製作者名)の記載が義務となろう。直
 接請求の制度化となれば、歯科技工物の安心・安全面を担保するPL法(製造者責任法)から
 しても、トレーサビリティ(追跡)の難しい海外再委託は世の中に受け入れないのは当然であろう。
  昔、医薬分業に踏み切った薬剤師業界の知恵には何かがあった。その経緯を研究することで
 ある。2000年の時期、歯科医療への15項目の提言シンポジュームの中で「歯・技分離」
 補綴物=モノを切り離す。医療かモノか、歯科医療の位置付け、技工料の切り離しの考え方。
 シンポジストの一人は医科に於ける「薬価差益」と歯科における技工料の問題を「似ている」と
 称していた。     (2000,4、日本歯科新聞より)

  筆者らも直接請求問題に絡んで=医薬分業の日本薬剤師会の知恵を横目に、歯技分業実施
 への道を叫んだ時期もあった。高齢者には、去り行く業界とばかりに諦めきった方もあるだろうが、
 過ぎ去った記憶のなかに経済的、技術的、また、忘れえぬ魅力、技工の喜びの感覚を知恵として、
 きっと貸して下さることを信じている。

  最後に、資料提供や文章校正などご指導とご協力いただいた桑田正博先生(愛歯技工専門学校
 校長)、安藤申直先生(仙台歯科技工士専門学校 講師)、和田弘毅先生(和田精密歯研株式
 会社会長)に深く感謝申し上げます。

(第44話)
前編

   左甚五郎に纏わる名人芸の物語と入れ歯吸着の原理について

  左甚五郎は修行の途中、大工仕事のアルバイト先で板削りを請け負った。一日のバイトが終った
 親方に3枚の仕上げた板を提出した。親方曰く、一日でたった3枚の板削りとは何事だ。明日から
 は仕事を出せない。大目玉で首となった。甚五郎は仕方が無いので削り終えた3枚の板を縄で
 くくりつけ、そばの池に放り込み、その場を立ち去った。後日、親方は2〜3枚の板が必要となり、
 池に放り込んであった板を取り出し、板の一枚を取り出そうとしたがどうしても剥がれない。つまり、
 板の削り面の精蜜度が高く、水分で吸着して「ノリ付け原理の働き」で剥がれない現象となった
 のである。

  精神を研ぎ澄ませた板一枚の大工仕事も左甚五郎の名人芸の作品として残された逸話である。
 これは患者さんに入れ歯の吸着原理の説明に通じるものであり、歯科技工士の入れ歯作りの
 基本となるロウ型、プラスチック材を石膏模型へ密着性を可能とする技工技術こそが(入れ歯吸着
 となる)匠の技である。名人芸による板削りからの密着性と技工士の匠の技に置き換え=入れ歯
 吸着と同じ原理(患者さん説明用)が技工技術、表の顔として訴えられる一説となる。

   職業選択のランク付け

  話題は変わって、昭和30年代(筆者の青春期)若い女性に魅力ある職業選択の話題である。
 その彼女らの好みの職種について週刊誌でランク付けが発表され、常に上位となっていた職種は
 パイロット、医師(歯科医師含み)、弁護士、外交官であった。上位職業に混じって歯科技工業が
 1回だけでは有るが10位内にランクインしたことがあった。
  一方、時代は経済成長期、歯科技工業界では桑田正博氏らの海外留学が報じられ、留学した
 人々の現地活動の実際、海外研修の報道は若い歯科技工士の憧れと羨望の的となっていた。
 ことに、桑田氏の帰国を境に開催された講演会は多くの受講者で溢れ、ポーセレン技法、白い歯、
 審美技術の存在が、日本中の歯科医院に波及し口元審美として人気の的となり、爆発的な
 ポーセレン研修会の始まりでもあった。

   海外留学が与えた影響

  全国的にポーセレン技術は口元審美の原点として社会に浸透していった。言い換えれば、美しい
 口元、真っ白い美しい歯を作るのは歯科技工士という職業人、その存在が一般社会に知られる
 ようになった時代でもあった。
  しかも、留学、海外研修での勉学は参加者自身の誇り、自信に繋がったのである。やっと、
 世の中で歯科技工士が認められたと言う意識もあったことは間違いない。当時、歯科技工士の
 レベルアップには海外研修、海外活動こそが学びのゴールと定めた時代であったように思う。
  事実、「桑田氏らに続け」とばかり、多くの若い歯科技工士達が海外で活躍するようになったと
 言っても過言ではない。あれから半世紀、私たちは経済的な波に翻弄されてきた。浜の波のように
 寄せてくる波(良い)、引いて行く波(悪い)、時には、大津波のように斯界をメチャメチャに混乱させる
 こともあったと思う。世迷言のように思われるかも知れないが、これらの経験を幾度となくしてきた
 高齢者の体験を少しでも吸い上げ、聞き入れ、参考にして欲しいと思う。

   高齢者の日技認定講師更新者がいなくなって来た
 
  世代交代と言うことになるのかも知れないが、日技認定講師の更新に「著名者」として活動した
 方々の名前が見当たらないのは寂しい限りである。業界において歯科医療全体の学識者として
 君臨してきた人も多かろう。当然、一般社会と業界との関わりも多く、世の中への貢献に繋がる
 一面がマスコミを通して報じられたこともあった。
  1970年代の若い歯科技工士には留学と言う目的、夢の実現に向かって突っ走る者、また、
 ポーセレン技術を学びたいというゴールへの意気込みには眼を見張るものがあった。1974年、
 桑田正博氏の発表論文の一説を紹介しよう「歯科の道に生きるということ」われわれ歯科界に
 生きる者は、みな“歯科の道を通じて人類の福祉に寄与する”との共通した目的のもとに努力して
 いるはずである。「プロ意識に徹しよう」、歯科界は小さな世界ではあるけれども、自然に代わり、
 神に代わって人体の大切な機能の一部を回復してゆかなければ成らない。その責任と使命は
 絶大なものである。
  「目的は人類福祉だ」われわれでよいものを開発してゆこう。われわれでよい技術を生み出して
 ゆこう。そして世界の歯科界に供してゆこうではないか。これ全てが人類福祉とつながるものと
 確信している。(原文のまま)

  まさに、今、叫ばれている一般社会の人々の健康と入れ歯との関わりをアピールするかが
 問われている(健康器具の製作者・人類福祉と言う目的)指導的立場の方々はしっかり受け取り
 道標を示すことである。日技認定講師の誕生の頃、生涯研修会の始まった時期には研修会も
 満席が多かった。特に、桑田氏の講演は医療関係者、歯科医師、技工士で会場を埋め尽くした
 のである。
  実は、日技認定講師の名簿の中に桑田正博氏の名前が存在しないのである。このことは
 生涯研修(学会)としての魅力損失に価するのではないだろうか。魅力のない業界とレッテルを
 貼られている昨今であることは前述の通りである。それを増長するだけである。その再生としては
 これまで活躍され優れた講演経験者、元日技役員有志の知恵をお借りするのも良い。

  また、研修会において優れた講演活動を行なった経験者には、特例としての厳選した「名誉日技
 認定講師」の称号を与えても良いのではいだろうか。

  また、高齢者からの「会費再徴収の改正規約」の経緯もある。「生涯研修の規約」も改正すれば
 よいと思う。また、研修会の開催では、会員、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士だけでなく、
 一般社会の市民を巻き込んで(歯科技工士の顔が見える)講演内容を企画すべきである。

  入れ歯と健康、若返り、噛むことと脳の働き、食べる楽しみと長寿への道標のような内容を考える
 ことが重要であり、人が集まりやすい方策を考えよう。


(第43話)
  「魅力ある職業でなければならない歯科技工業」
  「誇りと自信に繋がるには経済力があってこそ、魅力に繋がるのだ」

                                 歯科学修士 歯科技工士 労務管理士 
                                                   市川 和男

  筆者は、現在76歳の現役の歯科技工士である。若い人の鑑となるべく歯科学修士と労務管理士
 の取得にチャレンジし、結果として、中心学的な歯科学と周辺学的な労務管理について知識を
 深め、自営者としての視野を広めることができた。
  これまでの歯科技工業界の経済的な歩みの中で、地元県技役員ならびに日技学術委員
 (日技学会幹事)の経験から、現在の斯界の不評(魅力の無い職業)のレッテルを克服する知恵は
 無いものかと、日々、悲痛な想いで考え悩む一人の日技会員である。ここに、蛮勇を奮っ て経験と
 知恵が悪評から抜け出せるヒント、切っ掛け、引き金になることを願って投稿するものである。

   日技リーダーの方々へ願うこと

  我々は医療専門職として歯科技工士の国家資格の免許を受けていながら、他の医療職種と
 比較し誇りと自信が持てず、仕事に魅力が無い、長時間労働と低賃金で働き甲斐が無い、また、
 社会的地位の評価基準に当てはめても専門職でありながら社会の中に顔が見え無い、
  この「3つの無い」を持つ職業といわれて久しく、無常にも時間だけが過ぎている。
 世迷言にしても「日技リーダーの方々へ」とは仰々しいが、あれから半世紀、砂浜の小さな波の
 ように経済的流れの良い(寄せる波)、悪い(引く波)に翻弄され、時には大地震や大津波のような
 こともあったと思う。
  何れにしろ、これまで幾度と無く経験してきた体験を苦言として、いや、アドバイスだと思って、
 少しでも吸い上げ、聞き入れ、参考として頂きたい。

   入れ歯の専門技術者についてのPR 

  国民の中に浸透させるべく、健康の源の「食べる、噛む」ための“入れ歯と言う医療器具の
 製作者”の中心は歯科技工士であることのPRについてしっかりとした戦略をたてること。
  また、国民に理解され易い歴史的背景を持つ物語的なエピソードを交えて工夫すると効果が
 あるように思う。
  例えば、歯科技工士のルーツは、入れ歯師、仏師、彫刻師の流れに、血筋を受け継ぐ技術者で
 あることを伝えるのも一つの方策であろう。
  本稿では、入れ歯師、彫刻師の話題は多く持っているが入れ歯との関わりから話しを進めたい。
 静岡の東照宮の門前上にある龍の彫り物は左甚五郎の作であることは有名である。
 この左甚五郎さん修行時代の物語と入れ歯の吸着の原理がここに繋がる。

(第42話)
  素晴らしいこと。
 
 ・古橋博美氏・日本歯科技工士会の新しい会長に就任されたこと。

 ・紫綬褒章を受賞されたこと。
 
  浜松の地元にて名誉ある受賞です。また、新会長の誕生です。
 県技、支部合同の祝賀会も計画されています。
 歯科技工界も魅力の無い職業と評価されて久しくときが流れています。業界も大きな落ち込みの
 時期に古橋氏のご苦労ははかり知れないものがあります。
 祝賀会の日程が決まったら、ぜひ、皆んなで馳せ参じ、お祝いをしましょう。

(第41話)
  患者との接点が多くの誌面に掲載されるようになりました。技工業会に変革の兆しが出始め
 ました。

 ・ 歯科技工業は生き残る為に歯科医療界の流れを知る。

  近年、歯科医療の危機・崩壊、倒れる歯科医院問題の話題に加えてインプラント使いまわし
 問題などが専門分野、専門誌での報道だけでなく一般新聞、週刊誌などでにも取り上げられる
 時代となっている。
 
  ― 歯科の患者離れ、健全な歯牙(歯質)の削りすぎが特に、問題視されている ー

  削らない治療システム=補綴物の需要と供給のアンバランスとなりつつある中に、量産、産業化 
 海外委託技工、低料金だけの技工?手造りの技工の魅力はどうなった。ロボット、CAD,CAM、
 機機化技工は産業界の量産合戦とは異なる技術でありたいと思う。

 1・歯牙を削らない治療の流れは?

 1・歯科技工士が生き残るため、技工の魅力の原点を探る。患者が何を求めているか。

 1・患者との接点(技工士の修士、博士学位が何故重視される? 患者との直接接点の認可が
   表面化する理由?)

 1・歯科治療の流れ・歯牙を削って治療する方法から再生医療、自然治癒などが変革への
   道しるべ?

 1・一般社会の新聞、週刊誌には再生医療、自然治癒、歯牙の切削をしない治療、ホワイトニング
   が取り上げられている。

 1・歯科技工教育の見直し・ロボット機械に無い手つくり技工の利点、患者との心の触れ合い。
   魅力ある職業、原点を探る必要。

 1・海外委託などは患者不在の問題、患者との接点といった問題が身近に迫ってくる。


  テレビ,新聞、週刊誌の報道を技工士の業務にあてはめて考える必要があるのではと
 思うのです。