アオスジアゲハ

Graphium sarpedon nipponum



概要

食餌 主食:タブノキクスノキシロダモなどのクスノキ科常緑樹
代替:イヌガシ、ヤブニッケイ、ゲッケイジュなど、ほとんどのクスノキ科常緑樹が利用可能。 他にはアブラチャン、バリバリノキ、クロモジなどのクスノキ科落葉樹も同様に利用できる。他県では、自然状態でマメザクラを食べて羽化に至った例があるというが、試していない。
増殖:タブノキ:実生、挿し木、取り木(高取)が可能。実生は、完熟して落下したばかりの新鮮な果実を採集する。果肉を洗い落とし、一昼夜日陰の風通しの良い場所で表面のみ乾燥させ、過湿と乾燥に注意して冷暗所に保管する。播種は翌年3月〜4月。挿し木は一般的な常緑広葉樹の方法に準じるが、やや難しい。取り木は環状剥皮法か半月状剥皮法で水苔を用い、5月〜6月に行うと比較的成績が良いようだ。このほかに幼木を山取りする方法があるが、大木になるので地植えよりも、やや大きめの容器に鉢植えしたほうが使いやすい。4月下旬〜6月中旬の発育期に行うと新枝が萎れることが多いため、この時期は避けたほうが無難。
採集 ステージ:幼虫。卵は食樹の新芽や若葉に1個ずつ産み付けられるが、条件の良い食樹では多数の♀が集中して産卵する傾向がある。特に伐採後の大木から出たひこばえに集中する傾向があるので、このようなポイントを探しておくと効率よく採集できる。幼虫は全幼虫期間を通じて食樹の葉表に静止する習性を持つので、見つけるのは簡単である。蛹は食樹で蛹化した場合、きわめて葉とよく似た形態であるため、探すのは非常に難しい。
適期:卵は5月、7月、9月とその前後。 幼虫は5月下旬〜6月、7月下旬〜8月中旬、9月上旬〜10月上旬。一般に9月以降に採集した卵と幼虫が越冬蛹となるが、不整休眠の傾向が強いので、他の時期のものでも休眠蛹となることがある。
難度 幼虫:容易。食樹さえ切らさなければ、ほとんど手がかからないくらいカンタンだが、本種の飼育を開始する前に、鉢植えにした食樹を十分に用意しておく必要がある。 また過湿と高温にはやや弱い。
成虫:困難。飛翔力と移動性が強く、樹液などには集まらない種なので、屋内での飼育は難しい。
採卵:不明。情報を乞う。
飼育法  夏季に密閉容器などで飼育した場合、食草のクスノキやタブノキの若葉は腐敗しやすいので、過湿と高温によりウィルス病で融けて死ぬことが多い。開放飼育をしたほうが良いが、クスノキ科常緑樹はいずれも水揚げが極めて悪く、花瓶挿しだとすぐにしなだれてしまうので、鉢植えにする必要がある。また、終齢幼虫は蛹化などの際にかなり長距離を歩行するので、ネットがけが必須。
備考  卵は産付直後のものを除き、タマゴヤドリバエの寄生リスクがある。また黒色に変色したものはウィルスに侵されていることが多い。5月〜7月に採集した幼虫には、蛹から脱出するアゲハヒメバチが寄生していることがあるが、幼虫の外見では判別できない。蛹化後、体の一部が黄色くなったりして変色したものは、ほぼ間違いなく寄生されている。

記録

採集 記録 蛹型 性別 食餌 備考
St Date Loc 産卵 孵化 終齢 前蛹 蛹化 羽化 産卵 給餌
2003年 第3化(夏型)
1 E 2003/7/15 木更津市菅生 7/13 7/18 8/7 8/21 8/22 9/4 緑色 タブノキ タブノキ  
2 E 2003/7/23 木更津市菅生 7/22 7/27 8/19 8/30 9/1 9/12 緑色 タブノキ タブノキ  
※採集総数20個体、死亡個体18(うち2齢(1)・4齢(4)・終齢(10)・前蛹(2)・蛹(1))、死因はすべて感染症。羽化個体2。
2003年 第2化(夏型)
1 E 2003/5/20 木更津市菅生 5/16 5/22 6/9 6/21 6/23 7/8 緑色 タブノキ タブノキ  
2 E 2003/5/20 木更津市菅生 5/16 5/22 6/10 6/21 6/22 7/7 緑色 タブノキ タブノキ  
3 E 2003/5/20 木更津市菅生 5/19 5/24 6/12 6/26 6/27 7/10 緑色 タブノキ タブノキ  
4 E 2003/5/20 木更津市菅生 5/19 5/24 6/12 6/28 6/29 7/15 緑色 タブノキ タブノキ  
5 E 2003/5/20 木更津市菅生 5/20 5/24 6/12 6/27 6/28 7/15 緑色 タブノキ タブノキ  
6 E 2003/5/20 木更津市菅生 5/20 5/24 6/12 6/28 6/29 7/12 緑色 タブノキ タブノキ  
7 E 2003/5/22 木更津市菅生 5/21 5/27 6/15 6/29 6/30 7/17 緑色 タブノキ タブノキ  
8 E 2003/5/22 木更津市菅生 5/21 5/27 6/16 6/29 6/30 7/14 緑色 タブノキ タブノキ 羽化失敗
9 E 2003/5/22 木更津市菅生 5/21 5/27 6/18 7/1 7/2 7/18 緑色 タブノキ タブノキ  
※採集総数16個体、死亡個体7(うち3齢(1)・4齢(1)・終齢(3)・蛹(2))、死因は、3齢・終齢(1)が脱皮失敗、ほかはすべて感染症。 羽化失敗1、羽化個体8。

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