分布 |
国内: |
本州(秋田-岩手南部以南)、四国、九州。島嶼では佐渡、伊豆諸島、隠岐、対馬、壱岐、五島列島、南西諸島。食樹の関係から東北地方では稀。 北限はタブノキの分布北限に一致し、平地~山地まで汎く分布する。 |
県内: |
市街地を含めて全域に棲息し、個体数も多い。 |
国外: |
朝鮮半島南部、東洋区のほぼ全域~豪州北部にかけて汎く分布する。原名亜種はインド北部~フィリピン(ロンボク)産をさす 。日本産は分布の北限にあたり、本亜種には朝鮮半島産を含む。 |
変異 |
形態: |
比較的顕著な地理的変異があり、かつてはいくつかの亜種に細分されていたが、近年は本亜種に統一されたようである |
季節: |
やや不明瞭。斑紋が若干相違する。春型(第1化)と夏型(第2化~)が知られる。 |
性差: |
ほぼ同型。斑紋に差はないが、♂は後翅内縁に襞状の折り返し部をもち、灰褐色の長毛を多く生じる。 |
生態 |
環境: |
食樹の自生する樹林(温帯性照葉樹林)。日当たりのよい林縁的環境を好むが、人家周辺や市街地など多様な環境に進出する。 |
発生: |
多化性。本州では通常年3回~4回、4月上旬に姿を現す。北限付近では2回、九州南部では4回~5回程度、南西諸島では5回~6回。ただ、第2化個体がそのまま休眠蛹となって越冬することもあり、かなり複雑な様相を呈す。 |
越冬: |
蛹。食樹の葉裏や他の枝、付近の建物などに見られるが、数個体がまとまって蛹化していることが多い。葉裏で蛹化する際にはほぼ例外なく頭部を葉柄に向ける。 |
行動: |
昼行性。移動性は強く、飛翔は敏速で、波形を描いて鋭く飛ぶ。♂は樹木のある山頂付近を 比較的緩やかに飛んで占有し、同種の♂のみならず他種とでも激しく追飛する。 |
食性 |
幼虫: |
食植性/葉。クスノキ科常緑樹のクスノキ、ヤブニッケイ、タブノキ、シロダモ、イヌガシ、カゴノキ、バリバリノキのほか、クスノキ科落葉樹のアブラチャンなど。3齢までは主に新芽や若葉、4齢以降はこれらに加えて硬化した成葉や越年葉も食べる。県内ではタブノキとクスノキ、シロダモが多く利用されている。他県ではマメザクラで羽化に至った例が報告されているという。 |
成虫: |
食植性/花蜜。訪花性は強く、ハルジオン、アザミ類、ツツジ類、ウツギ、イボタノキ、イタドリ、センダン、ヤブガラシ、ネムノキ、クサギなどさまざまな花で吸蜜するが、白色系の木本の花を好む傾向がある。吸水性は非常に強く、♂は湿地でよく吸水し、大集団を形成することも稀ではない。 |
類似種: |
ミカドアゲハに似るが、斑紋が相違する。 |
保 護: |
指定されていない。 |
その他: |
- |
天敵 |
捕獲: |
幼虫はアシナガバチ類 、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類。成虫はオオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類。 |
寄生: |
幼虫に寄生し、蛹から脱出するキアシブトコバチ、ヒメバチ科ヒメバチ亜科のアゲハヒメバチ(Holcojoppa mactator (Tosquinet, 1889))、クロハラヒメバチ(Psilomastax pyramidalis Tischbein, 1868)などのほか、終齢幼虫から脱出するヤドリバエ科のマダラヤドリバエ、Senometopia prima (Baranov)などが知られる。 |