タブノキ

(クスノキ科 タブノキ属)


 雌雄同株常緑大高木。高さ30m、目通り径3.5mに達する個体もある。イヌグス(犬楠)またはタマグス(玉楠)とも呼ばれる。暖温帯性常緑広葉樹林の主要構成樹種のひとつで、沿岸地域の極相林のほか、社寺境内や墓地などに植栽されるものも多く、名のある巨木も少なくない。


分布:本州、四国、九州、南西諸島全域。 関東~北陸では沿岸地域に普遍的、東北地方では沿岸地域に局地的。一般に温暖地の沿岸地域に多い。国外では朝鮮半島(南部)、中国、台湾、フィリピンに分布する。県内ではほぼ全域に生育するが、自生の個体は県央部~県南部に多い。極相林のほか、遷移林や二次林に若木や幼木が多い。都市部では植栽されたものを多く見かける。

樹幹:暗褐色。樹皮に裂け目はなく、細かい皮目がある。幹は直立するが、太い枝を多く分け、堂々たる樹形となる。
枝葉単葉。葉柄は明瞭で、葉は枝先に輪生状につく互生。長さ8㎝~15㎝程度の倒卵状長楕円形で先端が若干突出する。比較的明瞭な羽状脈をもち、脈端は葉縁にわずかに達しない。葉縁は全縁。厚い革質で、表面には光沢がある。成葉の寿命は通常2年程度である。休眠芽は大きく赤い。
両性風媒花。花期は5月~6月。枝先から円錐花序を出し、淡黄緑色の直径5㎜程度の小さな花を多数つける。花被片は6個。
果実漿果(単漿果)。黒紫色で直径およそ1㎝の球形。花被が残る。7月~8月に熟す。動物散布型で鳥類が主。
増殖法実生挿し木取り木(高取)が可能。実生は発芽率がやや低い。
保護:種としては指定されていないが、各地で天然記念物などに指定されている巨樹が多い。県内では香取郡山田町に所在する宇賀神社境内の「府馬の大楠」が県指定天然記念物となっている。
その他:公園樹や建築材、家具材、彫刻材のほか、パルプ原料にも利用される。

成葉と休眠芽 壮年木 壮年木の樹皮

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