日曜大工

       ES-335 maintenance ギター磨き!

           今回はかなりくたびれたギターのメンテナンス!!
           長い間放ったらかしにしていた'94年製!
           気合いを入れて磨き上げてリセットすることにした!

メンテナンスのついでにというか、最初にキャパシタ(コンデンサ)を交換した!
今では貴重品の Sprague Black Beauty 160P の NOS が手に入ったのだ!
容量は 0.022μF 耐圧は 600DVC だ!
こういうパーツはどんどん品薄状態になりつつあるので、見つけた時に買っておくべきだ!

出音についてはラーメンの味と同じで、好みの分かれるところだが、中域に特徴があり、とても音楽的なパーツである!
60年代初めにギブソン社が使用しており、同じスプラグ社の Bumble-Bee に次いで人気があるキャパシタである!
キャパシタは色々と試してみると、好みの音に近づけていけると思う!
セミアコの ES-335 は構造上、レスポールのようにコントロール・パネルを外して作業するということが出来ない!
リイシュー・モデルの本機の場合、一旦コントロール全部をピックアップ・キャビティから取り出す必要がある!
この際、下準備なしで引っ張り出すと後で大変な思いをする!
コツとしては、ポットやジャック類にヒモやコードをくくりつけておくと元に戻す時に便利だ!
私の経験では、0.5mm ほどの細い針金が一番固定も作業もし易い!(写真は電気コードだが・・)
まあ、コードが外れてしまっても f ホール経由でしばり直せば何とかなるので、あまり神経質にならなくてよいはずだ!(ただ、ジャックは手こずるので慎重に)
後は、つないだ線の端を別の線と結んでおかないとスッポリ中に入ってしまうことがある!
ブリッジ・ピックアップを外すと、コントロール側に大きく開口部が見える!
ヴィンテージの ES-335 はこの穴が無かったはずだ! たしか f ホールから作業したはず・・
(そういう緻密な作りが音質に影響を与えているのかもしれない)
逆に、リイシュー・モデルはポットが大きいので f ホールからパーツを取り出すことは困難だ!

外したピックアップでボディに傷が入らぬようにウエスで保護すると共に、ピックアップ自体もキッチンペーパーなどでラッピングしておくと良い!
ピックアップの足がボディ上を走るとなかなか見事なキズになる!
ピックアップ・キャビティーよりコントロールを引っ張り出した状態!
順番に向きを調整しながら引っ張ると、すんなり出てくるはずだ!
堅く感じたら何かが引っかかっているので、無理に引っ張ると断線の危険がある!

本機は以前にスプラグ社のオレンジ・ドロップ 715P を取り付けていた!

ここでポット類を何度もひっくり返したりしていると、固定したコードが絡まって元に戻しづらくなるので要注意!
ブラック・ビューティー装着完了の図!
キャパシタはポットの上にコンパクトに配置した方が良さそうだが、 f ホールがある場合は、 ホールと反対側に位置するように取り付けると、穴から見えずにスッキリする!
もちろん Bumble-Bee なんかを付けて自慢したい人はホールの真下に見えるようにすればよい!

ギブソンの回路はアースされているシールドの網線が剥きだしなので、キャパシタの足には絶縁用のチューブを装着した方が無難だ!(アース側は問題ないが、ポットの端子とキャパシタ間でショートするとトーンが効かなくなる)

絶縁には配線用の伸縮チューブもいいが、アレは熱を加えないといけないので、私はフェンダー系の配線材の芯線を抜き取って被覆だけを使っている!
引っ張り出したついでに、POT と JACK のメンテナンスも行う!
ここからいよいよ磨きに入る!

先ずはコントロールのポインタ・ワッシャー!

こういうパーツのメッキはお粗末なので、結構早期にサビが出る!
ルーターでバフ掛けして元の輝きを取り戻した!
サビが酷くなるとメッキごと剥がれるので、早期の対応が望ましい!
私はナットやワッシャーのバフ掛けには、研磨剤に定番の「青棒」を使用している!

室内でバフ掛けすると研磨剤がかなり飛び散るので、紙袋で「超」簡易型ブースを作って使用している!

最近思いついたのだが、 水槽を横にするとサンドブラストのキャビネットみたいに使えるかも・・

マスクもしておかないと緑色のハナクソと対面することになる!
ナットやワッシャー類はこれでピカピカ!
新品に近い輝きを取り戻した!
(写真は真っ黒に写ってしまったが・・)
ポットやジャック類を元に戻すときには、ピックアップ・キャビティーからパーツを押し込みながら、くくりつけたコードを優しく引っ張れば元の穴に戻るはずだ!

注意すべきはナットを締め付ける時だ! ポットはくくりつけたコードを外す前にナットを締めるとよい!
折角元に戻ったパーツが落ち込まないように注意深い作業が必要だ!
ツルっと手元がスベると、無情にもパーツは手の届かぬ所へと落ちて行く・・
ポットは f ホールからドライバーなどで持ち上げてやれば何とかなるが、やはりジャックは大変だ!
特にジャックは先に固定したコードを外さないとナットを締められないので、ドライバーやプライヤーで固定しながら慎重に作業する必要がある!
再度引っ張り出してやり直す事を考えると、ジャックを真っ先に固定すべしっ!
無事に全てのパーツが所定の位置に納まった!

小さなパーツでも、キラリと光ると存在感がある!

そうそう、ラッカー塗装の場合はナットを締めすぎると周囲のラッカーが割れてしまうのでほどほどに!
さて、ここから本格的なクリーンアップだ!

先ずはハードウェアだ!
外せる物は全て取り外して、水洗い出来るパーツは「Gold Parts」で紹介した「2001」の原液に浸けて洗浄する!

2001 の購入は楽天等の通販サイトで「洗浄液 2001」で検索すればヒットする!
輝いたところで薬液を流水で洗い流す!

くれぐれも、くれぐれも、排水口にサヨナラ〜 ということにならぬよう、ザルの使用をお勧めする!
洗い終わったら水気を拭き取り、形状がややこしいパーツはエアで水気を吹き飛ばす!
写真ではスプレー式のエア・ダスターを使用しているが、直ぐに空になるし少々臭いもあるので、普段の作業ではエア・ブラシを使用している!

ねじ(特にねじ穴)やバネ、ワッシャー類は、指板の潤滑剤などをスプレーしておくと、結構サビを防げる!

CRC-556やシリコンルブ はギトギト・ネバネバになり、蒸発しにくいのでギターにはオススメしない!
さらに輝き度アップのためにバフ掛けを行う!

ブリッジやペグなどは結構すり傷がついていたりするので、先ずは青棒で磨くのだが、本機のようなニッケル・メッキは磨き跡が残ってしまう!
そこで、さらにプロクソンのワックス研磨剤で仕上げ磨きを行う!

面積が大きいパーツはルーターのバフも大きく、ソフトな物で作業した方が仕上がりが綺麗だ!
光りました!
この状態になると「鏡面仕上げ」と言っても差し障りのないレベルだと思う!

折角磨いてもニッケル・メッキは直ぐにくすんでしまうので、
Gold Parts」で紹介したフッ素コーティングを施した!
結果は触っても指紋さえつきにくく、スベスベツルツルになった!
続いてボディの磨きに入るのだが、先ずはキズのケアから!
(コンパウンドでのツヤ出しは コチラ )
キズがあるといくら磨いてもヌメったような光沢は期待できない!
トップコートの磨きキズぐらいはコンパウンドでほとんどを除去出来る!
下地に達しているキズになると 「磨き」 ではなく 「リペア」 の領域だ!
私はギブソン社で分けていただいたコンパウンドを使用しているのだが、これは塗装のウェザー・チェックに入り込んでも跡が残らないので、とても重宝している!

すりキズ、引っ掻きキズを修正する場合は、コンパウンドだけで作業すると日が暮れるので、まず#2000番手ぐらいの耐水ペーパーで水研ぎするのが手っ取り早い!
ラッカー塗装が「すりガラス」状になるが、その後にコンパウンド一発でツルピカになる!
以前オレンジ・スクゥイザーを
取り付けた際にできた引っ掻き
キズを修正する!
写真では分かりづらいが、
結構目立つキズだ!
まず、#1000〜#1500ぐらいの
耐水ペーパーで水研ぎする!
ペーパーを幅15mmほどの短冊に
切り、丸めて極少量の水をつけ、
軽〜くキズの上だけ細くコスる!
軽くね!
続いて#2000ぐらいの
耐水ペーパーで少し広い
範囲をコスる!
丸めているのは余計な
部分をコスらないのと、
力を入れすぎないため!
さらに「超精密研磨フィルム」の
#4000ぐらいで磨いてぼかす!
これは省略してもよい!
要はちょっとづつ番手を上げて
磨けば後のコンパウンド仕上げ
が楽なだけのこと!
磨くのはトップコートの薄い
クリアー膜のみだが、当然
こんなすりガラス状になる!

しかし心配無用!
ここからコンパウンドで磨くと
一気にシャイニング!
スカっと艶やか、こんな感じに!
ビューティフルだ!
ポリッシュで仕上げると光る!
車やプラモデル用のコンパウンドでも充分な仕上げが期待できるがリキッド・タイプが良い!
ねり状のコンパウンドは概ね拭き取りの際に粉が沢山出るので私は嫌いだ!

写真のカー用品の液体コンパウンドは「超極細」 9800 番手!
これぐらいになるとツヤ出しにはいいが、逆に細かすぎてキズは消しにくい!
粒子が細かいほどツルピカになるが、労力は増大するので「細目」でキズを消し、「極細目」で仕上げるといった具合に、目的に合ったコンパウンドを選ぶべし!

あとはリキッド・タイプのコンパウンドでも、乾燥したらパウダー状になるものは、ラッカー塗装のウェザー・チェックに侵入すると跡が残り除去が困難なので、まずは目立たない所で試してみることが肝心だ!
ウェザー・チェックは磨きでは消せない! 本格的に修正するにはオーバー・ラッカーが必要だ!
コンパウンドでのキズのケアはタテタテ・ヨコヨコと角度を変えて直線的が基本だ!
渦巻き磨きは御法度だ!

また、コンパウンド磨きは力を入れたら効果があるというものではない!かえってキズをつける!
あくまでストロークの回数勝負だ!

ウエスに塗料が付くようだと下地に達しているのでコスリ過ぎだ!そこまでヤルと色が剥げる!
修正出来るのはあくまでトップコート表面の薄いキズだけだ!
小面積づつ作業し、納得いくまで楽しみながら根気よく!
ウエスは使い古しの綿100%のTシャツで充分だろう! 私はそれを小さく切りながら使用している!
勿論ネル生地だと申し分ない!手芸店などでメートル単位で買っておくと多用途に使用できる!
表面を整えたらツヤ出し作業だ!
今回はラッカー塗装が若干乳化して白くくすんでしまっていたので、FREEDOM の SP-P-12 f54 shiner というポリッシュを購入して使用してみた!
ポリ塗装が「汚れる」のに対し、ラッカー塗装は「くもる」ので、そのくもりを除去するという製品らしい!
2000円ほどするので、チと高価だがなかなか良い仕上がりを得られた!
深みのあるサンバーストが蘇った!

ポリ塗装のギターだと、クモリではなく汚れの問題なので、ポリッシュはタートルなんかの車用ケア・グッズで充分だ!
ワックスもカルナバ蝋のシュアラスターでビカッと光る!
ヘッドも弦の交換時に弦の先でつけてしまったキズや磨きキズがついていたので、やはりコンパウンドで除去し、ポリッシュで磨き上げた!

このヌメリ感が写真で伝わるだろうか!
曇りのないブラックに白蝶貝のインレイが映える!

インレイの白さから、トップコートのラッカーがまだそれほどアメ色に変色していないことがわかる!

そうそう、ラッカー塗装部にレモンやオレンジのオイルを塗ると、ラッカーがくもってしまう!
この手のオイルは指板用にとどめた方がよい!
ウ〜むむ・・
蘇りました! 私の ES-335 !

94年製なので、ただいま16歳!
人間だとピチピチなのだが、
ギターはくたびれが出るお年頃・・

「磨き」は根気と妥協との戦いだ!
二日がかりになったが、
すっかりベイビー・フェイスに戻った!

こうしてまた、愛着が深まってゆく・・
Let's Play !



指板ピックガードなどのメンテナンスは BACK して、それぞれのページを参照してくれ!
ついでにケースもクリーン・アップ!
いつもはラナパーで磨いていたが、今回は
リンレイの「革・レザーのつやピカシート」を使った!
名前がいいじゃないか!
つやピカ・・

ラナパーほどベトつかず、なかなか綺麗になった!
ムフっ!