・こちらのページでは、現在眼科で行われている緑内障治療についての医学的な根拠や、問題点などを解説しています。全て最近の眼科学専門書より内容を抜粋して解説していますので、掲載した時点での確かな内容となります。眼科では緑内障の治療として最初は点眼薬、その後は一足飛びに手術となることが多いですが、眼科での治療に疑問や不安を持たれた場合には、こちらのページが少しは参考になるかもしれません。
○緑内障における眼圧下降治療のエビデンス
○緑内障における視野障害と検査について
○緑内障への薬物治療について
○眼圧下降手術と合併症
○院長からひとこと
○緑内障への針治療のページ ←一般的な説明のページはこちら
・緑内障に対する日本や欧米での研究から、現在主流となる眼圧下降治療についてのエビデンス(科学的な裏づけ)により、判明している事実について説明します。世界各地で行われた臨床試験の結果を検討した上で、現在眼科で行われている医療を冷静に見てみると、必ずしも適切とは言えない場合があることも分ってきます。
・高眼圧症について、平均24.9mmHgの高眼圧群に対して点眼薬による治療を行い、平均19.3mmHgで5年間経過観察を行った結果、緑内障性の視野変化や視神経乳頭・網膜神経線維層に変化を起こした割合は、無治療群に対して4.4%対9.5%と、緑内障発症リスクは約50%低下した。(OHTS)
・高眼圧症について、平均23.5mmHgの患者群に対して、炭酸脱水酵素阻害薬とプラセボ(偽薬)を用いて、5年間観察したところ、眼圧が1mmHg高くなる毎に緑内障発症リスクは18%増加した。(EGPS)
・高眼圧症に対する点眼薬の効果(平均20〜25%の眼圧下降)は、半数程度の患者さんにとって意味のある治療と言えます。しかし一方で、半数の患者さんには効果が認められないことも事実です。またOHTSでは、副次的な解析結果として、高年齢、視神経乳頭部の大きな垂直C/D比、視野検査でのPSD高値、高いベースライン眼圧、薄い中心角膜厚が、高眼圧症から緑内障を発症するリスクファクターであることを示唆しています。また家族歴や近視も危険因子とされています。
・薄い中心角膜厚が緑内障発症リスクという内容は意外ですが、40μm薄いと81%もリスクが増加するという内容です。角膜を削るLASIK等は大丈夫でしょうか。緑内障では有りませんが、LASIK手術後に黄斑疾患を発症する割合が高いという指摘もあります。高眼圧の方はLASIKに対して慎重になる必要があるかもしれません。
・開放隅角緑内障について、点眼薬による治療群(25%の眼圧)と非治療群に分け、平均6年間の観察中で緑内障の進行がみられたのは、45%対62%であり、眼圧が1mmHg高まる毎に、緑内障進行リスクが13%高まった。(EMGT)
・既に発症した緑内障では、眼圧下降は進行に対して効果があることは証明されているものの、例え25%の眼圧下降が得られたとしても、平均6年間の進行リスクは30%程度低下するに過ぎないことが示されています。また副次的な解析結果より、高いベースライン眼圧、偽落屑、視野障害の進行度合い、高年齢、視神経乳頭出血が緑内障の進行に関わることが明らかになった臨床試験です。
・正常眼圧緑内障(NTG)について、145眼を対象に30%の眼圧下降(点眼・手術を含む)を目指した治療群と、経過観察とした無治療群に分け、両群の視神経乳頭と視野の変化を検証した結果は、治療群(22/66・33.3%)と無治療群(31/79・39.2%)で進行し、明確な有意さは無かった。ただし治療群では手術後(線維柱帯切除術など)を中心に、白内障進行例が多く見られ、白内障進行例を除くと治療群(8/66・12.1%)は、無治療群(21/79・26.6%)に比較して、進行した割合は有意に少なかった。(CNTGS)
・無治療のNTGについて、約3分の1の症例は3年以内に、半数の症例は5〜7年で視野欠損の進行を認めた。(CNTGS)
・正常眼圧緑内障(NTG)に対しても、眼圧下降治療は有効であることは確認できるものの、例え30%の眼圧下降が得られたとしても進行する例は少なくなく、進行リスクは無治療の半分程度に留まること。またNTGに対する手術療法は、白内障の進行を合併し易く、特に若年者には積極的に適応する理由は無いと考えられます。
・NTGでは半数の症例で、5〜7年は無治療であっても進行しなかったことを示す結果であり、進行性がみられない症例では、薬物治療を含めて積極的に行う必要はないと解釈するのが妥当です。
・開放隅角緑内障に対する手術療法の臨床試験であるが、副次的な解析結果として、観察期間中の平均眼圧が14mmHg以下、あるいは1回の測定でも19mmHg以上の眼圧が観察されない、眼圧コントロールが良好な場合には、平均15mmHg以上の場合に比較して、視野障害進行が緩除であった。(AGIS)
・開放隅角緑内障への眼圧下降治療の有効性に関するエビデンスのひとつです。点眼薬などによる眼圧下降の数値やコントロールの目標として意味のある結果です。視野障害の進行は概ね14mmHg以下へと、良好にコントロールされた場合にはブレーキがかかると考えられます。
・眼圧は一般に、健常者が坐位(座った姿勢)から仰臥位(仰向けの姿勢)に体位が変われば、0.3〜6mmHgの上昇します。このため睡眠時の眼圧は昼間の時間帯よりも高くなります。また最高眼圧は午前中であることが多く、夕方から就寝前までが最も低くなります。緑内障の患者さんでは、一日の眼圧の変動幅が大きくなる傾向があります。夏季と冬季では、高眼圧症例について平均1.4±2.0mmHgの差が生じ、症例により10mmHg以上の変動がある事実も報告されています。
・眼圧の測定値については、眼科で用いられる標準的なGoldmann圧平眼圧計では2〜4mmHgの誤差が生じ、治療前後の眼圧値の差が2.5mmHgを超えない場合には、治療効果とは認められないとされています。上記に挙げた国際的な眼圧下降治療のエビデンスや、眼圧についての基本的な考え方を踏まえて、眼科での治療では様々なリスクを背負うことになる患者さんの立場からも、緑内障の治療方針を考える必要があります。
・千秋針灸院へ来院される緑内障を持つ患者さんの多くは、大学病院などで手術などを含めて、かなり厳しい内容を説明されている場合があります。しかし点眼薬や手術には合併症のリスクがあり、特に手術では多くの場合に、一度行うと元どうりにすることができません。上記の内容は緑内障専門医の先生なら、常識的な内容であり、かつ現在行われている眼科医療の根拠になるものです。眼科で手術や投薬を進められた際には、医師の説明を聞くだけでなく、ご自身でも上記の内容について検討していただき、納得のいく治療法を行ってください。
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・視野検査は緑内障の診断や管理のために、視神経乳頭などの眼底所見と共に欠かすことのできない検査です。緑内障の視野障害は、概ね9割が視野の中心より30度以内から始まるとされていますので、眼科では視野中心部の検査に優れたハンフリー視野計(静的視野検査)が主に使用されます。
・検査結果の信頼性指標の見方
・固視不良 マリオット盲点への視標への応答が20%以上ある場合に固視不良と判定
・偽陽性 見えないはずの視標を見えたとする応答が33%、または15%以上あると偽陽性と判定
・偽陰性 明らかに見えるはずの視標を見えないと33%以上で応答する場合
・視野検査全体の信頼性を表している指標です。固視不良は視線が固定できず動いてしまう状態。偽陽性は積極的にボタンを押す意識が働きすぎたり、検査法を理解できていない場合。偽陰性は疲労時や意図的にボタンを押さない場合などで値が高くなります。自動視野計では測定者の熟達はあまり必要としませんが、適切に行われていない視野検査は信頼性の低い結果しか得られないことがあります。
・グレースケールの見方
・グレースケール 5dbごとの感度で視野を色分けして表示
・視野内の感度を表したもので実際の見え方に近く、視野欠損の状況が分かり易いですが、眼瞼下垂や疲労などの影響を受けやすい傾向があります。見易さを重視して少ない検査点の値を補完して表示されているため、軽度の感度低下は判定され難い問題などもあり、他の値と合わせて評価する必要があります。
・検査点毎の視野の障害部位(同年齢の正常眼に対して視野異常の確率を5、2、1、0.5%で表す)の見方
・トータル偏差(TD) 実際の測定値と年齢補正をかけた正常眼との差の値
・パターン偏差(PD) TDに視野全体の感度から補正をかけて、局所的な視野障害を明確にした値
・視野障害の評価として分かり易く、臨床上重視されています。TDとPDは似た結果を示すことも多いのですが、白内障などで視野全体に感度低下がある場合には、TDのみでは局所的な視野障害の評価が難しいため、PDが大切になることがあります。
・半視野テストとグローバルインディックス(視野全体を統計解析した数値)の見方
・半視野テスト(GHT) 上下の半視野異常で始まる緑内障の特徴から、初期緑内障の判定に用いられる
・平均偏差(MD) 視野内の平均的な視野欠損の状況の値
・パターン標準偏差(PSD) 局所的な視野欠損の状況で、視野内の感度のムラを表す値
・VFI (Visual Field Index) 実用視野(Quality of Vision)を重視した指標 正常は100%、視野消失0%で表示
・緑内障性視野障害を客観的に表す結果で、進行や重症度の各種評価・判定に用いられています。MD、PSDは数値として表されるため、視野障害の状況を分かりやすく理解することができます。近年では患者さんの実用視野を重視したVFI値が、有効残存視野として重視されています。
・以上は代表的なハンフリー視野計についての内容ですが、ゴールドマン視野計(動的視野検査)なども行われることがあります。30度を超える視野も検査できることや、子どもや高齢者の視野検査に適していますが、測定者の熟達度に結果が左右されやすい傾向があります。測定者が異なることで大幅に結果が変わってくると、治療方針にも影響する場合がありますので注意が必要です。
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・緑内障では近年、様々な新薬が処方されるようになり、これまで以上に患者さんの状況や体質に合わせた薬物治療が可能になってきました。反面、選択肢が増えたことによる混乱や、他科で処方された薬剤も含めて、時には明らかに間違った処方が行われているケースもみられます。最近の多岐にわたる緑内障治療薬について、特徴や注意点を挙げ、特に問題になりやすい副作用について、重点的に解説します。
・プロスタグランジン関連薬 眼圧降下作用(++〜+)
・局所(目)への副作用があるが、全身への影響は少ない
・目の周囲や虹彩への色素沈着、睫毛の異常増殖がみられる。また網膜疾患がある場合には、網膜浮腫等が悪化する場合もある。一日一回の点眼(ウノプロストン系を除く)でも眼圧降下作用は高く、全身への影響が少ないため、現在の第一選択肢となっている。ただし目周囲への色素沈着が生じやすいことから、美容上の理由で避けられる場合もある。またヘルペスウイルスによる角膜上皮炎を再活性化することがあるため注意を要する。
・ラタノプロスト・・・キサラタン、ラタノプロストなど
・トラボプロスト・・・トラバタンズ
・タフルプロスト・・・タプロス
・ビマトプロスト・・・ルミガン (副作用症例が多い)
・ウノプロストン・・・レスキュラ
・交感神経β遮断薬 眼圧効果作用(++〜+)
・全身的な副作用が強い(特に循環器に関わる副作用)
・眼刺激症状と共に、局所麻酔作用により、角膜の知覚低下が起こるため、涙液分泌機能低下によるドライアイや、点状表層角膜炎が起こり易い。コンタクトレンズ使用者では半数以上で副作用の報告がある。防腐剤の影響も重なり、β遮断薬1剤での角膜障害の発生率は12.9%〜32.5%、他剤との併用では40%〜66.7%とされる。
・一昔前は主流の点眼薬だったが、循環器への影響が強いため、特に心疾患の持病を持つ方には、内科医との連携が必要になる。また片眼への点眼でも両眼へ作用し、就寝時は眼圧降下作用が弱まる特徴がある。長期に使用した場合に、緩やかに血圧を下げる傾向があり、眼灌流圧(平均血圧と眼圧の差)の低下をもたらす可能性がある。
・チモロールマレイン酸塩・・・チモプトール
・カルテオロール塩酸塩・・・ミケラン
・ベタキソロール塩酸塩・・・ベトプティックエス
・レボブノロール塩酸塩・・・ミロル
・ニプラジロール(αβ遮断薬)・・・ハイパジール
・ブナゾシン(α1遮断薬)・・・デタントール
・炭酸脱水酵素阻害薬 眼圧降下作用(+)
・副作用は局所(目)、全身への影響ともに比較的少ない(内服薬は除く)
・他のタイプに比較して、重篤な副作用は比較的少ない傾向であるが、眼圧降下作用は単独ではやや劣る。網膜浮腫を軽減させる作用があるため、網膜浮腫への治療に使用されることがある。内服薬(ダイアモックス)については、効果は高いものの腎機能などへの影響が大きく、進行した糖尿病などでは用いるべきではない。プロスタグランジン関連薬や、交感神経β遮断薬と併せて使用されることが多い。
・アセタゾラミド・・・ダイアモックス(内服) (副作用症例が多い)
・ドルゾラミド塩酸塩・・・トルソプト
・ブリンゾラミド・・・エイゾプト
・合剤 眼圧降下作用(++)
・副作用は局所(目)、全身的な副作用(循環器等)
・緑内障では数種類の点眼薬が用いられることから、点眼の利便性と確実性を考慮して合剤が開発された経緯がある。副作用については個々の特徴を受け継ぎ、眼圧降下作用は別々に2種類を点眼した場合よりも、やや弱いとされている。しかし1剤の点眼で済むことから、点眼忘れや不適切な点眼が改善されることで、本来の薬効以上に、現実的には効果的な場合も期待されている。
・トラボプロスト+チモロールマレイン酸塩・・・デュオトラバ
・ラタノプロスト+チモロールマレイン酸塩・・・ザラカム
・タフルプロスト+チモロールマレイン酸塩・・・タプコム
・ドルゾラミド塩酸塩+チモロールマレイン酸塩・・・コソプト
・交感神経刺激薬(+)
・副作用は全身的な副作用(循環器等)
・房水産生抑制と房水流出改善作用を生かし、眼圧下降作用を示す点眼薬です。但しジピベフリン塩酸塩については、散瞳作用があり狭隅角の症例には使えません。またブリモニジン酒石酸塩は全身に吸収されるため、眠気、めまい、徐脈、低血圧などを生じる場合がありますが、比較的問題は少ないようです。
ブリモニジン酒石酸塩(α2刺激薬)・・・アイファガン
ジピベフリン塩酸塩(非選択性)・・・ビバレフリン
・副交感神経刺激薬(+)
・副作用は縮瞳(暗黒感)、気管支喘息(発作を強める恐れ)
・ピロカルピン・・・サンピロ
・ROCK阻害薬(+)
・副作用は強い充血、角膜上皮障害、めまい、霧視など
・現時点の国産新薬で、海外では未認可のため実績はありません。房水流出を促進する作用があり、プロスタグランジン関連薬と併用することが多いです。他の点眼薬に比較して強い充血が特徴ですが、防腐剤(ベンザルコニウム)の副作用による角膜上皮障害や霧視による視力低下が目立って多い印象です。点眼時の刺激感や視力低下を感じたときには眼科で角膜を診ていただき、角膜障害を生じている場合には防腐剤フリーの点眼薬等に変えて貰いましょう。無理に点眼を続けると角膜障害が遷延し、回復が難しくなることもあります。
・リパスジル・・・グラナテック (副作用症例が多い)
・緑内障で用いられる点眼薬は、薬剤自体の毒性や防腐剤、添加物により、またドライアイやコンタクトレンズの装用、複数の点眼薬の使用により角膜上皮障害を生じやすくなります。特にプロスタグランジン関連薬とβ遮断薬との併用例では高率で出現します。緑内障の点眼薬を使用されている患者さんの結膜の充血は、副作用のサインと考えられます。近年では特に夜間の眼灌流圧(平均血圧と眼圧の差)の低下が、緑内障性視神経障害の原因の可能性の一つとされています。私の個人的な意見ですが、就寝中に眼圧降下が期待できないβ遮断薬は、効果対副作用の大きさを考えれば、今後は積極的に用いる必要はないと考えます。
・当院へ来院される患者さんが主に使用されている、代表的な点眼薬を挙げてみました。処方される点眼薬が変更されるなどして、眼圧以外にも視力や視野、その他の局所(目)や全身の症状に影響が出ているケースは少なくありません。私は専門家として「目から全身を、全身から目を診る」視点から、必要であれば指摘することで、患者さんが副作用を避けられるよう努めています。
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・線維柱帯切除術 (レクトミー) 【主に高眼圧の緑内障全般】 眼圧下降◎ 副作用×
・前房と結膜下組織の間に新たな房水流出経路を作製する手術で、作製した強膜弁を縫合して濾過量を調整します。眼圧下降効果は最も高く広く行われている手術です。安全性は高まってきましたが、低眼圧や感染、眼内炎等のリスクがあり、術後は長期に渡って経過観察が必要になります。当院でも低眼圧(眼圧0)を生じ低眼圧黄斑症を起こした方が来院されています。正常眼圧緑内障では行うべきではなく、点眼薬や他の手術でどうしても下がらない高眼圧(22以上)が続く場合などに限って検討すべきでしょう。
・線維柱帯切開術 (ロトミー) 【主に開放隅角緑内障】 眼圧下降○ 副作用△
・線維柱帯を切開し、シュレム管への房水流出を促す手術で、眼圧下降効果は切除には劣りますが、レーザー線維柱帯形成術に対しては上回ります。切除術による低眼圧や感染、眼内炎等のリスクは少なくなりますが、時間と共に切開部分が塞がり効果が弱まります。また切開可能な回数は3回までに限られています。点眼薬やレーザー線維柱帯形成術では眼圧下降が不十分な場合や、線維柱帯切除術の前に検討する手術です。
・レーザー線維柱帯形成術 (SLT) 【主に開放隅角緑内障】 眼圧下降△ 副作用○
・レーザーを線維柱帯に照射して房水流出を改善させ、眼圧を下降させる手術です。観血的手術の線維柱帯切開術や切除術に比較して安全性は高くなりますが、眼圧下降の効果は点眼薬1本分程度とされ大きな効果は望めません。また切開術と同じく時間と共に効果が弱まります。しかし点眼薬を適切に行えない場合など、有効な場合があります。高眼圧ではない正常眼圧緑内障の診断であれば、SLTまでで検討すべきでしょう。
・レーザー虹彩切開術 【主に閉塞隅角緑内障】
・瞳孔ブロックを原因とする隅角閉塞を解消して、眼圧を下降させる目的で行われる手術です。手術後の平均7年後から進行する水疱性角膜症の発症が問題になりますが、急性に発症する閉塞隅角緑内障の状況からすると、緑内障発作の発症時には止むを得ない部分はあります。しかし周辺虹彩前癒着(瞳孔ブロック)がない閉塞隅角症の場合に、進行予防などとして行われる場合も多く、水疱性角膜症のリスクを考えると必ずしも妥当な選択とは言えません。また長期間のコンタクトレンズ装用や手術歴などがある場合にも、角膜内皮細胞の減少を考慮すると手術は極力避けるべきでしょう。なお水疱性角膜症の治療は原則として角膜移植となり、緑内障とは別に角膜移植後の適切な免疫抑制治療や経過観察が生涯に渡り必要となります。
・付記 千秋針灸院の針治療 【緑内障全般】 眼圧下降△ 副作用 無し MD値(視野)改善効果 有り
・少し強引ですが、当院の鍼治療を眼科での手術療法と比較すると、眼圧下降としてはSLT程度、副作用は無し、他に視力やMD値(視野)に一定度の改善効果があることが分かっています。週1回〜隔週1回程度(当初のみ週2回程)の治療間隔を続ける必要はありますが、長期間続けても副作用の心配が無く、点眼薬と併用しながら他の治療方法では得られない、視力や視野の改善に繋がる可能性があり、検討に値する治療法です。特に正常眼圧緑内障の患者さんは、日常生活全般へのアプローチも含めて血流改善の治療は非常に有効です。
・統計症例報告 「鍼施術による緑内障性視野障害へのアプローチ」 平成29年3月15日
【第34回「眼科と東洋医学」研究会一般口演 平成29年3月12日 台東区区民会館】
・当院は、眼科専門医の先生方による研究会で、緑内障への適切な針治療がMD値(視野)を一定度改善する事実を統計的に報告しました。詳しくは上記リンクをご覧下さい。
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・緑内障を深く突き詰めていくと、現在の緑内障治療の課題が見えてきます。眼圧と緑内障の関わりへのエビデンスはあるものの、眼圧測定自体が角膜厚や強度により左右されてしまい信頼性に疑問があること。視野障害の進行評価についての基準が明確でなく、様々な原因により視野の結果が左右されてしまうこと。高眼圧はリスクではあるものの、眼圧を十分に低下させても進行する緑内障が少なくないこと。眼圧が高くなくても発症・進行する正常眼圧緑内障が非常に多いこと。他科の医薬品や眼科での点眼薬による副作用が軽視されがちなことなど、結局のところ緑内障への確実な治療効果を見込める治療法は、まだ無いというのが本当のところです。
・鍼治療についても不明な点は多いのですが、多くの場合に網膜の感度が上がり、視力の改善や一定度までの視野回復が得られる場合もあることが分かってきました。高眼圧の症例では明確に眼圧が下がる結果も得られています。また正常眼圧緑内障の多くの患者さんに低血圧症や、血圧が低めの傾向が分かり、眼灌流圧(平均血圧と眼圧の差)の低下に着目することで、血流改善へのアプローチが大切になることも示唆されます。千秋針灸院では針治療を含めて、従来の眼科での緑内障治療に囚われず、眼科医学の根本に立ち返った治療法や日常生活の改善から、緑内障への取り組みを深化させています。
関連リンク
●眼科領域の難病治療を提携治療院で (当院ページ)
●参考文献・蔵書一覧 (当院ページ)
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