最先端の科学を駆使しても、“食の本質”には迫れない

さまざまな角度から「食」へアプローチする「ホリスティック食事学」

コラムNo.44

これまで世界中の研究者が、“正しい食”とは何かを突き止めようとして、最先端の科学を駆使して探究してきました。現在では食の研究は、生化学や分子生物学や遺伝学などとタイアップし、先端科学の一分野を形成しています。最新の検査機器によって、食品中に含まれる微量栄養素の解明が進んでいます。また疫学調査によって、地球規模での“食と病気”の関係が明らかにされつつあります。さらには人類の食の歴史を振り返り、そこから“正しい食”とは何かを突き止めようとしている研究者もいます。今や食の研究は最新科学を用いて進められ、生化学の最前線の一翼を担っています。

しかし、そうした科学的な研究には「ホリスティックな観点」が欠けているため、なかなか“食の本質”に迫ることができずにいます。食には多くの要素が含まれ、さまざまな側面があります。そのため科学のような分析的・還元主義的な方法では、その本質と全体像に迫ることができないのです。

人間に健康をもたらす“正しい食”とは何かを明らかにすることが、「ホリスティック食事学」の1つの目的です。食を健全なものにすることによって、身体全体の健康づくりに貢献することが「ホリスティック食事学」が目指す方向です。そのためには“正しい食”とは何かが明確にされなければなりません。食には多くの要素が含まれ、さまざまな側面があるため、一面的な視点から良し悪しを判断することはできません。科学的・分析的な方法だけでは、食の本質に迫ることはできません。多元的・多面的にアプローチしないかぎり、“正しい食”とは何かを明らかにすることはできないのです。

『ホリスティック医学入門』で述べたように、私たち人間は「霊」と「心(精神)」と「2つの身体(霊体・肉体)」から構成されています。霊的次元と物質的次元という異なる2つの領域にまたがって存在しているのが、地上世界に住む人間なのです。したがって食の影響を論じる際には、食が私たち人間の霊的部分にどのような影響をもたらすのか、精神的部分にどのような影響をもたらすのか、また肉体という物質的部分にどのような影響をもたらすか、という3つの面から見ていく必要があります。

さらに人間が地球という環境の中で存在し、他の生命体(動物・植物)と共存・共生していく宿命にある以上、外部の環境や他の生命体との関係という観点からも、食の意味を考えていかなければなりません。そうした総合的・多面的な視野のもとで眺めることによって初めて、食の本質と意味を理解することができるようになります。人間に健康をもたらす“正しい食”とは何かが明らかにされることになるのです。

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