アルツハイマー病の“最大の原因”は、患者自身の生活習慣にある
コラムNo.42
認知症は、世界的に増加傾向にあります。日本では現在400万人が罹患し、2025年には患者が700万人を超えるのではないかと言われています。認知症には、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。その中でも、全体の半数以上を占めているのがアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)です。
アルツハイマー病は、脳に過剰に蓄積した“アミロイドβ”というタンパク質が神経細胞を死滅させることで起こると考えられています。アルツハイマー病の研究は30年以上、このアミロイドβを原因物質とする“アミロイド仮説”が主流になってきました。アミロイドβを標的とする治療薬も現在、数種類が認可されています。しかし、いずれも症状を緩和させるだけの“対処療法”にとどまっています。
アルツハイマー病の治療に一石を投じているのが、アメリカの医師デール博士です。デール博士は、薬に頼らず生活習慣の改善を治療の基本とする機能性医学に基づいた“リコード法”を開発して認知症治療に高い成果をあげています。リコード法では、まず患者の血液検査や遺伝子検査のデータをもとに、認知機能を低下させている要因(炎症・栄養不足・毒素など)を見つけ出します。その中から改善できる要因を特定し、生活習慣の改善策を提示します。生活改善(食事や運動)を徹底して行うことで脳の神経細胞の成長が促され、低下した認知機能が改善すると考えられています。リコード法によって、MCI(軽度認知障害)の患者の7割が認知機能を回復させています。
最近では、アミロイド仮説にとどまらず、「アルツハイマー病は“脳の糖尿病”である」とする説や「人間の生き方や脳の使い方にアルツハイマー病を予防するカギがある」とする説など、さまざまなアプローチからの研究も進んでいます。
現代西洋医学では、患者の症状だけを問題にして、それを取り除くことを治療の目的としています。身体にもともと備わっている“自然治癒力”を引き出して病気を治すという発想はありません。病気とは、それまでの考え方やライフスタイルが自然法則に反していたことを示すシグナルです。病気は、これまでの生き方が不自然であったことを教えています。医学は本来、こうした視点から病気の原因を掘り下げて治療を進めていかなければなりません。
人間が「自然法則」にそった生き方をするなら、病気は発生しません。たとえ病気が発生しても、自然法則に一致するための努力をすることで“自然治癒力”が働くようになり、病気は根本から治癒していくようになるのです。
自然法則に一致するための努力とは――具体的に言えば「心・食・運動・休養の“4つの健康条件”を正しく実践して生活習慣を改善する」ということなのです。