ストレスを減少させ、脳と心に良い影響をもたらす “有酸素運動”
コラムNo.40
現代の脳科学によって、運動が心に及ぼすメカニズムが徐々に解明されるようになってきました。ウォーキングやジョキング・水泳などの有酸素運動がストレスを減少させ、ストレス対策としてきわめて優れた方法であることが分ってきました。運動は、気分転換に大いに役立ちます。その影響力は酒(アルコール)や甘い食べ物(砂糖)以上で、運動によって脳内のセロトニンが増え、ストレスに対処する力が高まります。
セロトニンは、脳内の情報伝達物質です。このセロトニンがドーパミンやノルアドレナリンなどの興奮を引き起こす脳内物質の過剰な分泌を抑えて精神のバランスを保ち、自律神経の働きを整えます。また、セロトニンは睡眠を促すホルモン“メラトニン”の原料でもあり、質のよい睡眠を保つためにも欠かせません。こうしたストレス対策や睡眠のために重要なセロトニンが、ウォーキングなどの有酸素運動をすることによって増えることが明らかにされたのです。
また、運動が脳内のGABA(ガンマアミノ酪酸)の分泌を引き起こす事実も分かりました。GABAは抑制性の神経伝達物質で、不安障害のさまざまな症状を大幅に和らげる(50%以上解消)ことが数多くの研究によって確認されています。
さらに運動によって、心筋からANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)が分泌され脳に入っていくようになります。ANPには鎮静効果があり、これによって不安が解消されるようになります。
このように適度な運動が、脳と心にきわめてよい影響をもたらすことが科学によって次々と確認されるようになっています。心の病気に対する補助的治療法として、運動はまさに優れた方法と言えます。