「バイブレーショナル・メディスン(波動医学)」の間違い
コラムNo.12
米国の医師リチャード・ガーバーは、神智学の複数の霊体説を基にして、従来のホリスティック医学に欠けていた「霊的要素」を医学理論の中に取り込み、霊性・精神性・身体性という真のホリスティックな人間観に立った総合的な医学理論を打ち立てようとしました。彼は、真のホリスティック医学のモデルづくりを目指したのです。その医学モデルが『バイブレーショナル・メディスン――いのちを癒す「エネルギー医学」の全体像』(*日本教分社出版発行 原題『Vibrational Medicine ; New Choices for Ourselves』)として発表され、注目を浴びることになりました。
ガーバーは、神智学の身体観を土台として理論構築に乗り出し、これに現代科学の知見や現代医学の知識を導入して「バイブレーショナル・メディスン」という総合医学理論のモデルをつくり上げました。バイブレーショナル・メディスンは、神智学の「多次元身体観」を、ほぼそのままの形で取り入れています。そして、その上に「生体エネルギー理論」を導入して理論体系化を図りました。
ガーバーが、「霊の問題」を医学理論の中に取り入れ、医学を霊的視点から論じようとした試みは、きわめて意義のある画期的なものと言えます。しかし彼は、“神智学”をそのまま踏襲するという決定的な間違いを犯しました。最大の失敗は、医学理論の出発点に、神智学的な身体観を導入したことです。もし神智学の身体観が、あらゆる角度からの検証に耐え得る完璧なものであったならば、それを採用したとしても何の問題もありませんが、神智学の複数の霊的身体論は、霊的真実からはあまりにも隔たっています。神智学は単なる思弁によって創作された欠陥思想であり、その間違った身体論を理論体系化の出発点とし、総合医学理論の土台としたことは致命傷と言わなければなりません。
バイブレーショナル・メディスンは、新たな医学理論モデルの提示という点では大きな功績があったと言えますが、ホリスティック医学理論としては、単なる空論以外の何物でもありません。理論構築の出発点となる身体観が間違っていたために、ガーバーの労作は、残念ながら砂上の楼閣に等しいものになってしまったのです。