人類にとっての「主食」とは何か
菜食の中心に位置する「穀物」こそが最も理想的な主食
コラムNo.11
地球上にはさまざまな動物が存在していますが、その食性については、それぞれの動物の歯型や腸の長さによって決まっています。そのため、動物の種類によって、主食が異なります。例えば、肉を主食とするのは肉食動物で、果物を主食とするのはサルなどです。草を主食とするのは草食動物です。また小魚を主食とするのは大きな魚であり、他にも藻類やプランクトンを主食とする小動物などがいます。こうした地球上の動物は、食物連鎖の中で自らの主食を決定し生存しています。
では、私たち人間にとっての主食とは一体何でしょうか。これまで“肉が主食に相応しい”という見解や、“果物が主食に相応しい”という意見などが議論の対象とされてきました。しかし、いまだ明確な結論には至っていません。そうした状況の中で、ホリスティック健康学の一分野である「ホリスティック食事学」では、人間が本来摂取すべき「正しい食(主食)」についての見解を明らかにしています。
人間は肉食をベースとする肉食動物ではなく、草や木の芽や若葉だけを摂取する草食動物でもありません。そのいずれとも異なり、肉食も菜食も可能な雑食性の動物と言えます。しかしヒトの歯型や消化器官の構造が示すように、メインとすべき食物は、肉ではなく「植物」です。人間はさまざまな植物を食料にする “菜食動物”なのです。
では、私たちが摂取する幅広い植物食の中で、中心となる食物は何でしょうか。それが、「穀物」です。人間の主食として最も相応しいものは「穀物」なのです。穀物は、デンプン(複合炭水化物)をはじめ、ビタミンやミネラル・食物繊維などを豊富に含み、身体に負担をかけない最も理想的なエネルギー源として主食に適しています。さらに穀物は、豊富に収穫でき、保存も効くため、一年を通じてコンスタントに摂取することができる優れた食品です。人類にとって穀物ほど主食として相応しい条件を満たしている食物はありません。
人類は、生きるための最強の糧となる穀物を求めて、食の歴史を刻んできました。例えば、古代文明はいずれも大河のほとりで発生しましたが、それを可能としたのは、そうした地域が穀物を大量に栽培し、収穫するのに相応しい土地だったからです。インド・アジア地域では米が主食になり、古代バビロニア・エジプト・ギリシア・ローマでは小麦・大麦・キビが主食になりました。インカ・マヤ・アステカは例外ですが、そこではトウモロコシを主食とした食生活が営まれてきました。
それぞれの国は、農耕によって穀物の栽培を可能にすることで、人口を急増させ、文明を築き上げるという大変革を遂げてきたのです。穀物は、人類にとってまさに宝のような食物であり、種族の生命を維持・繁栄させるために不可欠な糧だったのです。
先に述べたように、私たち人間は、大地の産物である植物を主要な食物として生きていくように造られています。人間の食性は植物食であり、その中心に位置するのが「穀物」です。穀物を主食とした植物食(菜食)こそが自然の摂理に一致した食であり、私たちに健康と長寿をもたらしてくれるものなのです。肉食は、人間にとって相応しい食ではありません。