「ちっ・・・」
喜多は、軽く舌打ちをして、続いて水木と太宰に声を掛けた。
「DJ、マイコンっ! 正面のビルだ! 誰か連れて、行けっ! 緊急配備を忘れるなっ」
「了解っ」
水木と、太宰は影に隠れつつ、ドアを出て行く。
喜多は、物陰を伝い、西條と五代の所へとたどり着いた。
「・・・ドックっ」
「っ・・・、オサムさん、平気・・・平気。五代さんは?」
「平気じゃないだろっ。左腕、血が出てる」
「自分なら、西條さんのおかげで、何とか・・・」
五代は、西條に押し倒されたときに、椅子に頭をぶつけて、こぶを作った位で済んだ。
西條は、左腕を弾が掠めて行った為の切り傷が出来ていた。
「どっちを・・・狙ったんだ・・・?」
西條は、そう呟いた。
水木と、太宰がたどり着いた狙撃場所には、鳩村の時と同じように、五代の写真が置いてあった。
だが、これには、マーカーの×印はなかった。
「これ、マイコンじゃないよね・・・?」
「・・・隣の女性、知らないもん・・・」
西部署から、平尾と、北条、山県が、七曲署に駆けつけた。
「ジュンっ」
「お久しぶりです」
「ああ、結婚式以来か・・・?」
「そうですね」
四人が、旧交を温める間も与えず、西條が口を出した。
「これ、五代さんですよね」
軽く処置をしただけで、西條はもう捜査に加わっていた。
その手には、太宰たちが持ち帰った写真があった。
「あ、はい、自分です・・・」
「隣の女性は?」
「自分の妻です。明子っていいます」
「今、彼女は?」
「自宅にいると思いますが・・・!」
「一応、連絡して、至急警官を向かわせてください」
「了解しました」
その様子に、平尾が驚いた瞳を向けた。
「まさか、アコちゃんにも、何か・・・?」
「念のためだ。ここで狙撃されたということは、マイコンの可能性も捨てきれない」
「え、俺?」
水木は、いきなり出てきた自分の名前に、面食らった。
「俺、そんなにハードじゃないですよっ、ドックじゃないんだから」
そのいらない一言に、西條に睨みつけられた水木は、小さくなった。
大下と立花が合流するのは、その1時間後だった。