五代純は、仕事で七曲署の捜査一課を訪れていた。
「五代純です。資料を頂きに来たんですが・・・」
「ああ、五代警部。はい、伺ってますよ」
と、顔を上げた喜多収は、二の句が告げなくなっていた。
「どったの、オサムさん」
その様子に気付いた、太宰準が、今度は固まった。
「マイコン?」
「・・・?」
五代は首を傾げた。
すると、その名前の出ていた、通称マイコンこと、水木悠が、西條昭と共に、部屋に戻ってきた。
「うわわわ」
五代も、水木と顔を見合わせて、お互いが数歩、後ずさった。
西條は、その様子を見て、けたけた笑い出した。
「ああ、あんたか。ハトが言ってた、五代って」
西條が鳩村の名前を挙げたので、五代はびっくりして西條を見た。
「え、ハトさんをご存知なんですか?」
「ご存知も何も。腐れ縁。五代さんがいなくなってからの話だけどさ」
「そうなんですか。ハトさん、元気ですか?」
「元気過ぎて、若干迷惑?」
西條が言うにあわせて、二人とも笑いあった。
「迷惑かけてるのって、ドックの方だよね・・・」
「だよね」
「DJ、マイコン。何か言ったか?」
「「いいえ、なーんにも」」
綺麗にハーモニーを奏でる二人を、西條はじろりとにらみ付けた。
「事実だろぅが」
喜多が、お茶を持って、そう言った。
「オサムさん・・・、俺って、そんなにトラブルメーカーですかぁ?」
「俺が知り合った刑事たちの中では、一番だな」
「探偵も入れたら?」
喜多は、少し上を向いて考えていたが、
「やっぱり、お前が一番だわ」
と答えた。
「はい、五代さん、お茶どうぞ」
がっくりうな垂れる西條を通り越して、喜多は五代をソファーへと案内して、お茶を出した。
応接セットは、部屋の片隅、窓際にあった。
そこへ五代は、窓を背にして、大きめなソファーに座った。
「有難うございます。ここも楽しいですね」
五代は、にこやかにそう言った。
「で、本日はどんな御用でここに?」
西條は、その五代の向かい側に座った。
「裁判の資料を纏めてて、ちょっと足りない所があったので」
「・・・誰だっけ、その事件の書類作ったの・・・」
「ブルースですよ」
机の向こう側から、太宰が口を挟んだ。
「あのやろ・・・。非番上がったら、説教だな・・・」
ブルースこと、沢村誠は、本日休みで、奥さんと、子供に家族サービス中らしい。
「お茶、ご馳走様でした。そろそろ、おいとまします」
「おや、すみません、引き止めたみたいで」
「いえ」
西條は、五代に軽く会釈をしたところで、向かいのビルの屋上にきらりと光る物を見た。
それが、狙撃用のスコープと瞬時に判断した西條は、とっさにテーブルを乗り越え、五代を庇って床へと転がる。
ガラスが激しく飛び散り、その音に、部屋の中にいたメンバーはとっさに机の影に隠れた。
「ドック!」
喜多が、机の影から声を掛ける。その問いに答えはなく、呻き声が聞こえた。