「わ、分かった。
ユニカッター」
RYOの手から放たれる銀色の光が、エレベータのワイヤーを切断する。
ゴーという音とともに、支えを失ったエレベータは急速に落下していった。
ガシャッ!。
はるか下から、物凄い音が響いてくる。
その瞬間、RYOの耳にはシオンの断末魔が聞こえたような気がした。
「よしよし、さすがにユニレンジャーや。
うんうん、それでええ。それでええんや」
満足げな虎仮面。
「大丈夫や思うけど、念の為に確かめに行こか」
虎仮面に促され、二人は長い非常階段を下り始めた。
“これで平和は守られる”
そう思うものの、シオンを殺してしまったRYOの心は重い。
「RYO、お前の気持ちも分からんでもない。
そやけどな、社会には法なりルールがある。
その法やルールが成り立つのは何でや分かるか?」
「・・・」
「それは強制力があるからや。
強制力のない法は法やない。
ただの理想論や。砂上の楼閣に過ぎん。
今、オシンの奴は法を犯そうとした。
そやから・・」
「わ、分かった、虎仮面。
もう言わないでくれ」
「うん。まぁええやろ。
落ち着いた時に、よう考えてみる事や」
二人は地下工場にたどり着いた。
シオンが作ったミサイルが、すでに発射台にセットされている。
階段の隣にはエレベータの扉があった。
虎仮面はここでもバカ力を発揮し、エレベータの扉をこじ開ける。
地面に叩きつけられ、無惨な鉄の塊と化したエレベータが現れる。
虎仮面が鉄の塊を持ち上げると、シオンの死骸があった。
白かった肌は血に染まり、頭部がザクロのように割れている。
思わず吐きそうになるRYO。
「ふふふ。ユニレンジャーも所詮は世間知らずのお坊ちゃんだねぇ」
突然、二人の後で声がした。
メデューサだ。
「私の生まれた国ではね。
そういうのは日常茶飯事だったんだよ。
私は、そしてシオンも、そういう悲劇のない世界を作ろうとしたのに」
「そ、それは仕方がなかったんだ。
こうしなければ、今この地上に住んでいる人の命が・・」
「そうだ。お前は60億の人類を守る為に、シオン一人の命を犠牲にした。
だがね、ユニレンジャー。
それは、数千兆の人類を守る為に、60億の命を犠牲にしようとしたシオンと、
結局は同じ事だったのだよ」
「・・・」
「ケッ。婆さん、お前、そんな説教垂れる為に、
棺桶の中から出てきたんかい」
返答に詰まるRYOに代わって、虎仮面が進み出た。
「ええか、婆さん。よう聞けよ。
オシンは人の事に口出ししようとしたから、天罰を受けたんじゃ。
今の世界の事は、今生きとる人間が決める!。
文句あるんかい」
「それで、22世紀で人類が死滅してもか」
「あぁそうや。
22世紀で戦争するかどうかは、そいつらが決めたらええ。
わしらの事はわしらで決めるんじゃ」
「なるほど。
崖から突き落としておいて、生きるか死ぬかはお前達で決めろと言うのだな。
どうやら、決着をつけねばならないようだ」
「フン。んな事、最初から分かっとるわい」
睨み合う虎仮面とメデューサ。
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選 択 肢
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