野球戦士・真樹(5)
櫻井や、その配下のショッカーによって散々に痛めつけられ、ついに屈服した真樹。
櫻井の前にひれ伏す姿には、すでに野球戦士の面影はない。
だが、勝利を収めた櫻井にとっても、それは狐につままれたような勝利であった。
最初はあんなに八百長を拒んでいたにしては、簡単に屈服しすぎだ。
このまま、真樹の敗北を信じて良いものか・・。
だが、櫻井にはその判断がつきかねた。
ゾル大佐に視線を向ける。
櫻井の意を察して、ゾル大佐が歩み出た。
「フン。最後は言う事をきいたとしても、一度は逆らったのだ。
その分の罰は受けてもらう。立て、真樹!!」
ゾル大佐に命じられ、真樹が弱々しく立ち上がる。
「戦闘員、さっきの室内練習場に、グランドの整地用に土が盛ってあったな。
あれを運んでこい。
真樹を生き埋めにするのだ」
ゾル大佐の命令を受け、戦闘員が台車に乗せて土を運んでくる。
運ばれてきた土が、無抵抗のまま立ちつくす真樹の足下からかけられた。
まず、スパイクが土に埋まる。
土は次第に高さを増し、ストッキングも土に埋まった。
降りしきる雨の中で、戦闘員にとっても重労働なのだが、
野球で生きていく道を断たれた彼らには、悪の道しかない。
やがて、丸出しにされていた股間も土に埋まった。
下半身は身動きできない状態だ。
そこで、真樹は後ろ手に縛られ、さらに土がかけられる。
土はスコップで固められ、最後には円錐形に盛られた土の中から
首から上を出しただけの状態になった。
「ははは。エースであり、野球戦士の真樹君が、
随分みっともない格好になったモンだねぇ」
真樹の生き埋めが終わったところで、雨を避けて様子を見ていた櫻井が
マウンドにやってきた。
「ふふふ。どうだね、野球戦士でありながら、マウンドで生き埋めにされた感想は?」
ゾル大佐も後に続く。
真樹はただうなだれるだけだ。
「ふふふ。逆らった罰だ。
しばらく、そうやって頭を冷やすんだね。
さて、雨も激しくなった。
我々はしばらく休憩にしませんか?」
「休憩?!」
真樹を置き去りにして、休憩にしようというゾル大佐の提案に、
一瞬、櫻井は怪訝な表情を見せた。
だが、彼も頭の回転は速い。
ゾル大佐の自信ありげな態度に、策があるのを察し、
「そうだな。我々まで真樹君に付き合う必要はない」と了承した。
真樹を取り囲んでいた面々が引き上げていく。
グランドではただ一人、マウンドで立ったまま生き埋めにされた真樹が
雨に打たれていた。