2005年2月14日
横浜市長 中田宏 様
住基ネット問題神奈川県連絡会
公用閲覧の厳正な運用を求める申し入れ書
私たちは個人のプライバシー権の保障と個人情報保護の徹底を求めるために、聞き取り調査や情報公開請求を通じて住基情報の大量閲覧の実態を調査してきました。その過程で公用閲覧の存在を知り、メンバーが青葉区と泉区で情報公開請求した結果、官公署が区役所に提出した計56件の請求書が部分公開されました。
民生委員、区職員、自衛隊からの申請もありましたが、最も多かったのが警察署からの請求です。別紙として部分公開された公用閲覧請求書のサンプルを添付しましたが、警察官が一度に796件もの大量の住基情報を閲覧している場合もあります。本人の知らないところで、警察が日常的に住基情報を収集していたことに不安を抱く市民も多いはずです。
犯罪捜査のために個人情報の収集が必要な場合もあるでしょう。しかし、請求書には目的記載の欄がなく、真に職務に必要不可欠な閲覧か否かを職員は判断できません。さらに、多くの場合が「閲覧文書の有無」欄に「無」と記載されているように、捜査関係事項照会書等の職務上の閲覧を証明する公文書が添付されていません。これでは、不正請求に対する備えが不十分といわざるを得ません。
現に警察官による不正請求事件は横浜市内及び神奈川県内でもあり、大阪府では不正請求に係る個人情報が差別調査という人権侵害に悪用された例もあります。そのためか、神奈川県警も「捜査関係事項照会書等の適正な運用・管理要領の変更について(連絡)」(平成15年4月22日付)を出し、「照会書の発出などは、捜査主任官が個々の照会ごとに照会の必要性、照会内容等を十分検討し、責任を持って発出の要否を判断した上で所属長決裁を受けさせること」(同連絡3照会要領(3))など厳正な手続きを講じているところです。
こうした中で、職務上の閲覧であることの確認方法を欠いたまま漫然と公用閲覧に応じることは、市の個人情報保護条例の第3条(実施機関の責務)及び第9条(利用及び提供の制限)に反すると言わざるを得ません。住基情報の流出・不正な取扱いへの市民の不安にこたえ、住基ネットの市民選択制を導入した横浜市で、同じ個人情報が適正に扱われていないことはきわめて遺憾です。直ちに対策を講じ、公用閲覧に対する市民の不安を解消してください。
なお、今回の問題のように住基情報がずさんに扱われるのは、依然として住民基本台帳法が住基情報を原則公開としているからです。自治体の事務担当者で構成される全国連合戸籍事務協議会を通じて、これを原則として非公開・閲覧禁止とするよう横浜市も国に対して要望し続けてきました。問題の根本的な解決には、市民と協働して住民基本台帳法改正に向けた動きを強めることが必要です。
よって、下記のことを申し入れます。
1.すべての区役所における公用閲覧の実態を調査し、公表すること
2.公用閲覧請求者に対して目的記載とともに、職務上の閲覧を証明する公文書の添付を求めること
3.住民基本台帳法改正(住基情報の原則非公開)を、市長として国に強く働きかけること
以上
初版:2005年08月21日、最終更新日:2005年11月05日
http://www5f.biglobe.ne.jp/~yabure/yokohama01/m050214.html