総行市第143号
平成20年7月7日
各都道府県住民基本台帳事務担当部長 殿
総務省自治行政局市町村課長
(公印省略)
今般、出生届の提出に至らない子に係る住民票の記載について、下記のとおり、考え方を整理しましたので、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づき助言します。
本通知の内容を踏まえて、適切に住民票の記載が行われますよう、貴都道府県内市区町村に対して、この旨を周知いただきますようお願い申し上げます。
記
記載の正確性の確保及び二重登録の防止などの観点から、戸籍と住民票は、本来、相互の連携・一致が基本であり、出生があった場合の住民票の記載には、戸籍法(昭和22年法律第224号)に基づく出生届の受理が必要であること。
しかしながら、民法(明治29年法律第89号)第772条の嫡出推定の規定の関係上、出生届の提出に至らず、結果として、住民票が作成されない事例が生じており、住民サービスの円滑な提供の観点から、対応が求められていたこと。
この問題に対応するため、これまでの考え方を基本としながらも、①出生証明書や母に係る戸籍謄抄本等により、日本国籍を有すること等が明らかで、②民法第772条の規定に基づく嫡出推定が働くことに関連して、出生届の提出に至らず、戸籍の記載が行われない者について、③認知調停手続など外形的に戸籍の記載のための手続が進められている場合には、将来的に戸籍の記載が行われる蓋然性が高いと認められるものとして、市区町村長の判断により、職権で住民票の記載を行うことができること。
出生届の提出に至らない子に係る住民票の記載に当たっては、住所地となる市区町村に対して、本人又は母その他の法定代理人から、住民票の作成を書面により申出させることとして、当該申出においては、以下のような手続をとることが適当であること。
(1)申出は書面により行うこと。
(2)申出書には、以下の事項を記載すること。
①申出人の氏名及び住所
②申出の趣旨
民法第772条の規定に基づく嫡出推定が働いているため、現在、認知調停等の手続を申立中であり、出生届の提出に至っていない○○(対象となる者の氏名)について、住民票の作成を求める旨を記載。
③出生届の提出に至らない理由
民法第772条の規定に基づく嫡出推定が働くことに関連して、出生届の提出に至らない理由を記載。必要に応じて、記載内容を証するための関係書類を添付。
なお、家庭裁判所に提出又は陳述した認知調停等の申立理由書等がある場合は、その概要を記載、必要に応じて、当該申立理由書等の写しの添付で足りること。
④住民票に記載を求める事項
イ 氏名(住民基本台帳法第7条第1号)
「氏名」については、出生証明書に記載されたものを、申出人において記載。「氏」については、認知調停や氏の変更の許可等のための手続における申立て内容が認められた場合の「氏」を、申出人において記載して差し支えないこと。
ロ 出生の年月日(同条第2号)
ハ 男女の別(同条第3号)
ニ 世帯主の氏名及びその続柄(同条第4号)
「続柄」については、認知調停手続等における申立て内容が認められた場合の世帯主との身分関係と齟齬が生じないよう、申出人において記載。
ホ 住所(同条第7号)
⑤母の氏名、生年月日及び戸籍の表示
⑥その他、住民票の記載のため市区町村において必要と認める事項
(3)申出書には、以下の書類を添付すること。
①出生証明書
出生証明書は、市区町村において、本人に係る出生の事実関係を確認するために必要。後日行われることが予定される出生届に必要なため、内容を確認した上で、裏面又は欄外余白に、市区町村長名で「○年○月住民票を作成した」旨を記載し、申出人に対し還付すること。
②母の戸籍謄抄本等
市区町村において、母が日本国籍を有する者であることを確認し、本人も日本国籍を有する旨を明らかにするために必要。
③認知調停手続、親子関係不存在確認の調停手続などの手続を申し立てている旨を証する書類
外形的に戸籍の記載のための手続を進めていることを確認するために必要。基本的には、家庭裁判所に対する申立てが受理されたことを証する書類を添付。
④その他、住民票に記載すべき事項を確認するため市区町村において必要と認める書類
住所地となる市区町村は、2の申出を受けて、申出内容を審査の上、適当と認める場合には、出生届の提出に至らない子に係る住民票を作成することとなるが、住民票の記載及びその後の取扱いは、以下のとおりであること。
(1)申出内容が確認できた場合に、申出内容に基づき、住民票を職権で作成することとし、併せて、備考欄に、出生届が提出に至っていない旨及び認知調停等の手続を申立中である旨を記載すること。
(2)認知調停等の手続が確定した場合においては、速やかに戸籍の届出が行われることとなるが、住所地市区町村は、住民基本台帳法施行令(昭和42年政令第292号)第12条第2項第1号の規定に基づき、職権で必要事項を記載(修正)すること。
また、この場合においては、(1)により行った備考欄の記載を併せて削除すること。
(3)(2)の場合において、認知調停等の手続の結果に応じた戸籍の届出が速やかに行われず、住民票の記載が修正されないときは、住所地市区町村は、申出人に対し、必要な戸籍の届出を促すことなどにより、戸籍と住民票の連携・一致を図るものとすること。