8月14日(木) “〈『中国新聞』より−〉在ブラジル被爆者訴訟、広島県はまだ争うのですか…”

 私たちブラジル在住被爆者の仲間2人(両名ともすでに亡くなりました…)が存命中だった2006年3月のことです。2人は日本に行くことができないので、代理人の弁護士にお願いし、広島県に被爆者健康手帳の交付申請をしました。
 ところが広島県は同年4月、両名の申請を却下しました。
 1人は同月に亡くなりました。残る1人も翌07年3月に亡くなりました。

 2人(うち1人はご遺族)は2006年7月、県に対して却下処分の取り消しを、また県と国に対しては慰謝料などを求めて、広島地裁に提訴しました。
(⇒2006年7月31日付

 それから2年近くが経った今年7月31日。広島地裁は原告の主張をほぼ認め、却下処分の取り消しと、国に対して賠償の支払いを命じました。
(⇒2008年7月31日付

 この判決を不服として、広島県は13日、控訴しました。

 まだ争うのですか…。

 ……

 このニュースは14日付『中国新聞』が報じられました。以下に紹介します。

(ホームページ管理者)

ブラジル訴訟 広島県は控訴
(「中国新聞ホームページ」8月14日付から全文抜粋)

 広島県は13日、来日しないことを理由にブラジル在住の日本人男女2人(いずれも故人)の被爆者健康手帳の交付申請を却下した県の処分を違法とした広島地裁判決を不服とし控訴した。計−−−万円の賠償を命じられた国は同日、控訴しないことを決めた。

 県庁で記者会見した健康福祉局の糸山幸一総務管理部長は「手帳交付は国の業務を代行する法定受託事務で、当時(2006年3月)は法定外の申請を県独自の判断で受理できなかった。裁量権の乱用を指摘した判決は受け入れがたい」と述べた。

 控訴しない場合、法定受託事務全般や、在外被爆者の手帳申請をめぐる他の訴訟への影響が大きいとして「国から控訴するよう強い要請を受けた」とも説明した。

 一方、厚生労働省は、韓国人元徴用工訴訟で在外被爆者を援護対象外とした旧厚生省通達を違法とし、国に−−−万円の賠償を命じた昨年11月の最高裁判決が確定したのを踏まえ、判決を受け入れると発表した。

県の控訴に在外被爆者ら失望
(「中国新聞ホームページ」8月14日付から全文抜粋)

 「もう争う必要はないはずなのに…」。在ブラジル被爆者訴訟で広島県が控訴した13日、在外被爆者や支援者に失望が広がった。今年6月の被爆者援護法の改正で、海外居住地での被爆者健康手帳申請を認めることが決まった。にもかかわらず、いわば手続き上の理由で亡くなった原告の遺族と争い続ける行政の姿勢を、疑問視する声も相次いだ。

 「長年放置され、何の援護もないまま亡くなった仲間が多い。これ以上、争いを長引かせないで」。在ブラジル原爆被爆者協会の森田隆会長(84)は、広島地裁の判決を待たずに亡くなった原告2人に代わって訴える。

 県が控訴の理由としたのは、手帳交付を国から代行する法定受託事務について、知事の裁量権を認定した部分。県は控訴に必ずしも積極的でなかったが、被爆者援護というよりも行政全般にかかわる手続き論を重視する国の意向に従った。控訴を表明するこの日の会見で、県側は「被爆者の援護とは別問題」と強調した。

 これに対し、在外被爆者訴訟の支援を続ける田村和之龍谷大法科大学院教授(66)は「法定受託事務は自治体に判断権があるとの解釈が一般的で、誤った法解釈を前提にしている。地裁レベルの判決には従えないという国のメンツとしか思えない」と疑問を示した。

← 8月12日 へ戻る          8月23日 に進む →