<5−1、ジャッキアップが起きる理由>

 ロールセンター高及びロール剛性前後配分が、左右荷重移動前後配分に与える影響について<4−2、左右荷重移動におけるロールセンター高とロール剛性前後配分>で述べましたが、そこで断ったように厳密にはロールセンター高を固定して考えることは正確ではありません。左右荷重移動の前後配分をサスペンション特性でコントロールできることを概念的に理解するのに、簡便のため固定して考えたわけです。更に左右輪すなわち内外輪のコーナリングフォースは実は等しくありません。何故ならスリップ角はほぼ同じでも輪荷重が異なるからです。

 これらのことを考慮しつつ、車体に入る各々の力をサスペンションリンク経由とバネ経由に分けて考えると、サスペンションリンク経由の力が、左右で大きさも入力される方向も異なるために上下方向のアンバランスを生じ、このアンバランスを左右のバネ反力の差で相殺する必要が出てきます。そのために左右のバネストロークの伸び縮みがアンバランスとなり、車体が上下方向に持ち上げられたり下がったりすることになるのです。これがジャッキアップ特性といわれている現象なのですが、言葉を羅列してもわかりにくいと思いますので、次に図を用いて車体に入る各々の力について、モーメントの釣り合いだけでなく、上下方向の釣り合いを考え、この上下方向の釣り合いから、旋回により車体がロールするだけでなく持ち上がったり逆に下がったりするジャッキアップ現象について説明してみたいと思います。


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