<5−2、サスペンションの瞬間回転中心について>

初めに、サスペンションの瞬間回転中心について説明したあと、車体に入る各入力の重心回りのモーメントの釣り合いと上下方向の釣り合いを考えてみましょう。

サスペンションの瞬間回転中心とは、各輪をこの場合は前(または後)から見たとき、車輪がその瞬間どこを中心に動いているかという動きの中心点のことです。5.1のようなサスペンションがあったとすると、その瞬間の回転中心は、アッパーリンクとロワリンクの延長線上の交点になります。どうしてそうなるかというと、アクスルとアッパーリンクの接続部A点はこの位置を中心とした微少ストロークではフロントビューで見てアッパーリンクに直角に動くのでその瞬間中心はアッパーリンクの延長線上にあるものと考えられます。同様にアクスルとロワリンクの接続部B点はフロントビューで見たロワリンクの延長線上にあるものと考えられます。ところでアクスル(ここではA、B、タイヤを含むリンク以外の部分)全体としては一つの不可分の物体なので、微少変位においては同一の方向に動くと考えられます(1つの物体がある瞬間に別々の方向に動くことはない)。従って先程の二つの条件を同時に満たす「アッパーリンクとロワリンクの延長線上の交点」がその瞬間中心となるわけです。


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