遅ればせながら「運命を分けたザイル」を観てきました。ご覧になった方もいらっしゃるでしょうが、久しぶりにガツンとくる映画でした。
内容はアンデスの未踏の岩壁に二人のイギリスの青年が挑み、見事初登攀を成し遂げたものの下降中アクシデントに見舞われ、壮絶な下山を強いられるというものです。下山中、クレバスに落ち宙吊りになったパートナーを助けられずやむおえずザイルを切断するサイモン。クレバスから壮絶な脱出を試みるジョー…。実際の当事者であるジョーとサイモンのインタビューと登山の再現フィルムを交互に織り交ぜ、そのインタビューがそのままナレーションになってゆくというドキュメンタリー風の作りになっています。そのせいか再現の俳優が「あれ、本物だっけ?」と思わせるほどの現実味を帯びています。山岳映像もよく撮っているなと思わせる見事なものでした。
それにしてもこのような遭難劇をくぐり抜けた2人のその後の人生は、大きく変わってしまったんじゃないかと思いました。2人にとってこの登山は振り払おうとしても振り払えるものではなく、まるで亡霊のようにたえず背後にあって脅かし続けたのではないでしょうか。それから自由になるため、ジョーは本を書き、映画を作る必要があった…。山はいとも簡単に人の人生を翻弄する力をもっているのだ。そんなことを考えさせられる映画でした。重い内容ですが、一見の価値はあります。
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