旧制第一高等学校寮歌解説

彼は誰れの

昭和4年第39回紀念祭寮歌 

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1、()()れの夕づく(をか)に 燃え立ちぬ紀念祭(まつり)のかヾり
  萬象(ものみな)は霧にこめられ  おしなべて静寂(しヾま)の底に
  沈みてし(よる)を通して   燃えさかるなりわれらがかヾり

2、白き風(をか)()()る  消たんとてかヾりのあかり
  深まさる()や何(はら)む   くろきものわが眼おほへど
  北の(かた)星ひとつあり   赤ひかる星見ずやわが友
*「星ひとつめり」とあったが、「星ひとつあり」に訂正(昭和50年寮歌集)。

3、ひたぶるに眞理(まこと)の空を ()せんとて友よ(つど)へり
  北方(ほっぽう)の星は冴えたり   ()を通し黙示さゝやく
  仰ぎ見んかヾり圍みて  かヾり圍みて友よいざ寄れ

6、()け近き彌生ヶ丘に   燃え立てよのろしのかヾり
  (たくま)しき海の(せい)もて     進むなり星影ふみつ
  暁空(あかぞら)にかヾり()えたり   のろし()えたり友よ(うで)組め
譜は、第1段から4段まで、頭に4分休符を置いたアウフタクトの曲である。曲頭の曲想文字「抑へられたる情熱を以て」とあり、これがこの寮歌の全てを語っている。具体的には下記の歌詞・語句の項で説明する。

 平成16年寮歌集で、下記のように変更されたが、依然としてこの原譜のように歌う寮生が多い。
1、拍子
 「よるをとおしてもえさかるなり」(3段2小節途中から4段2小節途中)までは3拍子だが、その他は4拍子に変更した。これにより、歌詞のアクセント(強拍の位置)が数箇所で変わった。たとえば、出だしの「かーわたーれー」は、同じアフウタクトでも「かわーれーー」と変えられた。また、この改訂で、4拍子の箇所では、五語・七語の歌詞は、形の上では各小節にぴったりと収まった。

2、音
①「かわたれの」の「たれの」(1段1・2小節)  ソーソーソーー(フェルマータ)      
②「ゆーづく」の「く」(1段3小節)          ミー
③「おかに」の「に」(1段3小節)          付点をトリ、4分休符。                
④「もえたちぬ」の「ち」(2段1小節)        ミ
⑤「まつりのかがり」の「り」(2段4小節)     付点をトり、4分休符。           
⑥「とおして」の「て」(3段4小節)         4分音符にしてブレス。
⑦「さかるなり」の「さか」(4段1小節)       ソーーソ      
⑧「われらがかがり」の「り」(4段1小節)     付点をトリ、4分休符。


語句の説明・解釈

この東大からの寄贈寮歌は、歌詞が左翼思想の過激なものであったため、発表当時、寮歌集に掲載されなかったというが、戦争前の昭和10年寮歌集や戦争中の昭和18年寮歌集にも、修正されることなくそのままの歌詞で掲載されている。京都某氏からのメールによれば、昭和4年発行の一高寮歌集には、この「彼は誰れ」だけではなく、「丘邊の春の」などの他の寄贈歌も所収されてないという。「歌詞が左翼思想で過激なため」に所収されなかったという伝説に疑問が出てきたが、当時一高に在籍した大先輩がそういうのだから、何かがあったことは確かである。

語句 箇所 説明・解釈
()()れの夕づく(をか)に 燃え立ちぬ紀念祭(まつり)のかヾり 萬象(ものみな)は霧にこめられ おしなべて静寂(しヾま)の底に 沈みてし(よる)を通して 燃えさかるなりわれらがかヾり 1番歌詞 向ヶ丘に、夕闇が迫り、人の顔の見分けがつかなくなる頃、紀念祭を祝う篝火が燃え上がった。向ヶ丘はすっかり霧に閉ざされ、すべてが静寂の底に沈んでいるが、我らの思想の篝火は、消えることなく、夜を通して盛んに燃え上がる。

「彼は誰れの夕づく丘に」
 「彼は誰れ」は、「彼は誰時」のこと。うす暗くて人の顔もおぼろにしか見えず、あれは誰、と見とがめるような明け方または夕方の薄暗い時刻。ここでは「夕づく」とあるので、夕方の薄暗い時刻。夕暮れ時は、「誰そ彼」(黄昏)ということが多い。

「萬象は霧にこめられ おしなべて静寂の底に」
 「霧にこめられ」は、思想取締りが厳しくなったこと。「静寂の底」は、ものもいえぬ暗い雰囲気をいう。

「燃えさかるなりわれらがかゞり」
 「かゞり」は、社会主義思想に対する情熱。当局にどんなに抑えつけられようとも、我等の熱情はますます燃えさかり衰えることはない。篝火にその心情を託す。「かゞり」は、また団結を象徴する。
白き風(をか)()()る 消たんとてかヾりのあかり 深まさる()や何(はら)む くろきものわが眼おほへど 北の(かた)星ひとつあり 赤ひかる星見ずやわが友 2番歌詞 当局の思想取締りの風が向ヶ丘に吹き荒れ、火と燃える我らの社会主義思想を跡形もなく消そうとしている。一段と深くなる闇の中で当局は、一体、如何なる思想取締りを画策しているのであろうか。学校がどんなに社会主義思想を取り締まろうとも、我らには、ソビエト・ロシアという北方の希望の星がある。ソビエト・ロシアは、第1次5ヶ年計画を発表して、経済を復興し、着々と社会主義建設を進めている。我が友よ、地上に出現した理想郷、赤光る星ソビエト・ロシアを見てみないか。

「白き風丘の上に荒る 消たんとてかゞりのあかり」
 「白きもの」は権力を意味する(園部達郎一高大先輩)。赤い思想を取り締まる権力を「白い風」といった。「消つ」は、火などの発する盛んな勢いをあとかたもなくするの意。
 「『白き風』は右翼テロを暗に意味している」(一高同窓会「一高寮歌解説書」)。
 大正14年9月25日 一高社会主義研究会解散(学校からの強い要望)。
 昭和 2年6月20日 不穏ビラ撒きで生徒2名大量処分、一高における
               左翼学生の初の処分。
     3年7月 3日 全県警察部に特別高等課が社会主義運動取締り
               のために設置された。
         月 6日 生徒1名、都下学生自治擁護同盟のデモに参加、
               無期停学処分。
  学外では、社会思想団体・東大新人会の解散、京大・河上肇、東大・大森義太郎、九大・向坂逸郎らが大學を追放された。
 
「深まさる夜や何孕む」
 「深まさる夜」は、厳しくなる取締り。「何孕む」の「何」は、思想取締りの内容。

「くろきものわが眼おほへど」
 「くろきもの」は、岡田生徒監(園部達郎一高大先輩が生徒主事というのと同じ)。この寮歌が寄贈された時は、まさに向陵刷新會、弁論部、柔道部(所謂隠れ社会科学研究会のメンバー)が中心となって、生徒主事の排斥運動の最中であった。しかし、この運動は、紀念祭直後の所謂「三月事件」によって鎮圧されてしまう。「わが眼おほへど」は、社会思想・活動を取り締まろうとも。
 「『くろきもの』は、権力による言論弾圧を暗に意味している」(一高同窓会「一高寮歌解説書」)

「北の方星ひとつあり 赤ひかる星見ずやわが友」
 「星」は、地上に初めて建設された社会主義国家ソビエト・ロシアのこと。ソビエト連邦の旗には、鎌と槌、赤い星が描かれていた。鎌は農民、槌は労働者、赤い星(五芒星)は五大陸の労働者の団結と共産党の指導を意味する。社会主義者やインテリゲンチアには、ソビエト・ロシアは、地上に出現した理想郷(ユートピア)であり、希望の星であった。昭和3年10月1日、ソ連は第1次5ヶ年計画を発表し(昭和4年4月に開かれた第16回党協議会で第1次5ヶ年計画「最上」案承認)、恐慌下の世界の中で工業化と農業の集団化を進め注目を浴びた。
*ロシア革命により生まれたロシア社会主義ソビエト共和国(ソビエト・ロシア)は、大正11年12月30日、ロシア・ウクライナ・ベロルシア・ザカフカースの4ヶ国で連邦国家(ソ連)を結成し、昭和15年に連邦は15ヶ国と最も拡大したが、ペレストロイカ後の平成3年に解体した。
 「『赤ひかる星は、大正6年のロシア革命以来、着々地歩を堅め且つ拡げてきたロシア共産党が、大正12年ソ連邦に発展し昭和2年には、スターリンの下に、第1次5ヶ年計画を発表して、その未来性を誇示したことなどと、之亦無関係ではなかろう。」(井上司朗大先輩「一高寮歌私観」)
ひたぶるに眞理(まこと)の空を ()せんとて友よ(つど)へり 北方(ほっぽう)の星は冴えたり ()を通し黙示さゝやく 仰ぎ見んかヾり圍みて かヾり圍みて友よいざ寄れ 3番歌詞 ひたすらに真の社会である社会主義社会に思いを馳せようと友が集まった。北方の星は、澄んだ光を放って輝き、夜を通して黙示をささやいている。すなわち、ソビエト・ロシアは我らにコミンテルンを通じ社会主義運動への参加を呼びかけている。篝火を囲んで、北方の星を仰ぎ見よう。友よ、篝火を囲んで集まれ。

「ひたぶるに眞理の空を 馳せんとて友よ集へり」
 「真理の空」は、赤光る星、ソビエト・ロシアのように、階級がなく全ての人が平等で幸せな社会主義社会。「馳せんとて」は、思いを馳せようと。

「北方の星」
 既述のとおりソビエト・ロシア。

「夜を通し黙示さゝやく」
 「黙示」は、本来は「万国の労働者よ、団結せよ」と労働者に対し決起を促す呼びかけであろうが、、ここでは社会主義運動への誘い、さらにはコミンテルンを通じての指令と解す。ソ連共産党は、コミンテルンを通じ、直接、各国共産党を指導した。
死の静寂(しじま)ひたにかぶさる 呑まんとてかゞりのあかり 深まさる()や何寄する 厚きもの耳をおほへど ()(かた)に波ひゞくあり  ひた寄する(しほ)聞くやわが友 4番歌詞 死の世界のような沈黙が辺りを蔽い、社会主義活動の篝の炎を飲み込もうとしている。一段と深くなる闇の中で当局は、一体、どんな取締りをしてくるのであろうか。厳しい言論統制によって、わが耳を塞いでも、ソビエト・ロシアの偉大なる躍進のニュースが海外から直に伝わってくる。君もソ連の第1次5ヶ年計画等、ソ連の躍進のことは聞いて知っているだろう。

「死の静寂ひたにかぶさる 呑まんとてかゞりのあかり」
 当局の取締りが迫り、一高の社会主義活動は、風前の灯に立たされている。「ひたに」は直接。大正14年9月25日に一高社会主義研究会は解散させられたが、一高社会科学研究会を秘かに組織し、向陵刷新会、弁論部、柔道部の合法的組織の中に潜り込み活動していた。しかし、紀念祭直後の所謂三月事件で鎮圧されてしまったことは既述のとおりである。この歌詞は、まさに鎮圧前夜の様子を詠ったものであろう。
 「而して此の學年末に當り、思想問題より生徒18名の犠牲者を出し、且之と關聯して向陵刷新会の解散を命ぜられたるは、光輝ある向陵の歴史に取りて大いに遺憾なる事件なりとす。」(「向陵誌」大正4年3月)
 「5名の新任委員中4名までも、『三月事件』で奪はれた我辯論部は、こゝに一大受難期に遭遇しなければならなかった。更生か?、將、また壞滅か? 學校黨局の過重なる干渉と、保守的寮生の惡罵、嘲笑との嵐の中に我辯論部は、あまりにも重き歴史的使命をその双肩に擔ふべく、再建に努力せねばならなかった。」(「向陵誌」辯論部部史昭和4年度)
 「まず、寮内では、向陵30年の歴史の一支柱だった中堅会(寮内の一種の警察権を握る)が総代会で大激論の末、廃止となり、続いて今迄寮生の青春の血をわかせた対抗(対校か)試合にまでも批判の声が生れ、寮生活自体が動揺したことと、外部の世界では、昭和2年以来の金融恐慌による経済不況で、失業者が続出、之をうけて、思想界では、福本イズムを主流とする尖鋭な共産主義理論で吹き荒び(福本和夫氏は大正6年英法、藤沢市に健在)、之に対し、当局側は、三・一五の大検挙に続き、内務省に特高、憲兵隊に思想係、司法省に司法検事を設置等で、着々強力な弾圧にのり出し、わが寮委員からも数名検挙者を見るという実情で、之に対する寮生のリアクションとしての『昭信会』のような国本的団体が生れている。この寮の内外の時代の激励は、大きな不安となって、彼の胸を打つだろう。」(井上司朗大先輩「一高寮歌私観」)

「深まさる()や何寄する」
 「深まさる夜」は、厳しくなる取締り。「何寄する」の「何」は、取締りの内容。2番歌詞の「深まさる夜や何孕む」と同趣旨。

「厚きもの耳をおほへど」
 「厚きもの」は当局の厳しい言論統制。

「遠ち方に波ひゞくあり ひた寄する潮聞くやわが友」
 ソ連共産党の指導の下、国際的にコミンテルンが組織され、指示・情報は刻々と日本支部=日本共産党に入ってきた。「波」や「潮」は国際的に広がる共産主義運動、コミンテルンの運動である。折しもソ連共産党は第1次5ヶ年計画を発表したところであり、世界の注目を集めていた。「ひた」は接頭語で、その状態以外に何物でもないことを表す。
 昭和2年 7月15日 コミンテルン日本問題特別委、「日本問題に関する
               決議」(27年テーゼ)
 昭和3年 7月17日 コミンテルン第6回大会、綱領採択。
       10月 1日 ソ連、第1次5ヶ年計画開始。
 「『遠ち方に波ひゞくあり』の『波』は自由を象徴する。」(一高同窓会「一高寮歌解説書」)
ひたぶるに自由(まま)なる王國(くに)を ()けんとて友よ(つど)へり 大洋の潮高鳴れり ()を通し朽ちし陸噛(くがか)む 乗り出でんかヾり踏み越え かヾり踏み越え友よいざ立て 5番歌詞 ひたすらに自由なる国で思いのまま暮らせるようにと、友らが集まった。コミンテルンに指導された国際共産主義の大きな潮流が、資本主義に毒された日本の岸に打ち寄せ、日々、体制を崩している。日本資本主義は、早晩、崩壊する運命にある。国際共産主義運動と手を携えて、友よ、今こそ立つべき時が来た。団結の力を示して、友よ、いざ起て。

「ひたぶるに自由なる王國を 驅けんとて友よ集へり」
 「自由なる王國」は、貧富の差も、階級もない真に平等な社会主義国家。現実の世界にソビエト・ロシアという社会主義国家が出現した。3番歌詞の「ひたぶるに眞理(まこと)の空を ()せんとて友よ(つど)へり」と同趣旨。「思いを馳せる」から、「実際に暮らす」と一歩進んだ。

「大洋の潮高鳴れり 夜を通し朽ちし陸噛む」
 「大洋の潮」と「朽ちし陸」は、①山東出兵と中国、②コミンテルンと日本が考えられる。
 山東出兵は、中国革命軍の北伐に対し、我国の満蒙権益と青島・済南の日本人居留民を保護するために田中義一内閣が行った山東省への出兵。第1次が昭和2年5月、第2次が昭和3年4月。第2次出兵では、済南に着いた北伐軍(この時は国民党政府軍)と軍事衝突が起こり、中国側の死傷者は5000人に上ったという(済南事件)。 
 コミンテルンは、既述のとおり、ソ連共産党の指導の下、各国共産党を直接指導するために組織された国際組織。日本共産党は、コミンテルン日本支部の位置づけである。
 4番歌詞の「ひた寄する潮」を国際的共産運動のコミンテルンと解した立場から、「大洋の潮」と「朽ちし陸」は、②のコミンテルと日本と解す。「欧米の自由的風潮」と解す説もあるが、全体の脈絡を説明できない。
 「『大洋の潮』は欧米の自由主義的風潮、『朽ちし陸噛む』は、自由を見失おうとしている日本をますます混迷させる。」(一高同窓会「一高寮歌解説書」)。

「乗り出でんかヾり踏み越え かヾり踏み越え友よいざ立て」
 「乗り出でん」は、高鳴る大洋の潮、すなわち国際的共産運動に歩調を合わせ。「かゞり踏み越え」は、団結(「かゞり」)から前進して行動に訴えよの意か。その結果が、6番歌詞の「のろし」となる。
 「伝統の固定化した殻を破って、新しい思想の世界に踏み出すことをすすめ、励ましている。」(井上司朗大先輩「一高寮歌解説書」)
()け近き彌生ヶ丘に 燃え立てよのろしのかヾり (たくま)しき海の(せい)もて 進むなり星影ふみつ 暁空(あかぞら)にかヾり()えたり のろし()えたり友よ(うで)組め 6番歌詞 明け方近い彌生が岡に、燃え上る篝火を焚いて狼煙とせよ。国際共産主義コミンテルンの指導の下、巌をも崩す怒濤の勢いを以て社会主義社会に向け前進しよう。暁の空に篝火は燃え上り、万国の労働者よ団結せよと狼煙が上がっている。友よ、腕を組んで前進しよう。

「明け近き彌生ヶ丘に 燃え立てよのろしのかゞり」
 1・3番歌詞にある「かヾり」から「のろし」の語となった。たんに紀念祭の篝火ではなく、社会主義革命に向かって、行動を起こせと檄する「のろし」のことであろう。
 コミンテルン日本問題特別委、所謂日本27年テーゼ(昭和2年)によれば、まず封建的専制勢力を打破して民主主義革命を実現し、ついで社会主義革命へ転化させねばならないという戦略を策定した(二段階革命説)。

「逞しき海の勢もて 進むなり星影ふみつ」
 「逞しき海の勢」は、「夜を通し朽ちし陸噛む」(5番歌詞)国際的共産組織コミンテルン。「星影」は、2・3番歌詞の「北方の星」「赤ひかる星」、すなわちソ連旗の五芒星である。「星影ふみつ」は、コミンテルの指導の下に歩むこと。既述のようにソビエト連邦の旗には、鎌と槌、赤い星が描かれていた。
 「『海の勢もて』-『ひた寄する潮』『太洋の潮』を受けて、自由主義のさらなる勢いを表す」(一高同窓会「一高寮歌解説書」)

「曉空にかゞり映えたり のろし映えたり友よ腕組め」
 さらに社会主義活動への同志の団結を呼び掛けている。
                        
先輩名 説明・解釈 出典
園部達郎大先輩 昭和4年、私共入寮した時の『寮歌集』には載っていなかったが、寮歌教師の島田さんがわざわざ謄写してきて教えてくれた。そして『白き風』は権力、『くろきもの』は生徒主事、『赤ひかる星』はソ連と解するとよく分かるだろうと。島田さんは全くのノンポリなのだ。この年の4月16日、共産党員の大検挙があり、この当りから毎学期処分者が出た。或る友の調査では、この7年位の間に処分者150名、退学はこの間の中途退学者の多いので推測がつく。運動部と雖も例外はない。結局、私の組からは5名停学者が出た。何しろこの関係の本を所持しているだけでも掴まるのだ。私など秘かに頂いた本は、逸早く自宅の本棚の裏に隠し、帰宅の折、読んだが、よく分からず、河上肇先生の『貧乏物語』で愁眉を開いた。こんな有様だから、この歌を『寮歌集』から削っても何の足しにもならず、間もなく正式に採用されるようになった。 「寮歌こぼればなし」から


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