はいぱ〜不定期徒然草


我々は宇宙人だ!!〜その1:数学的に宇宙人を想像する〜

(もし1966年に地球に来たルタン星人が1万人ぐらいだったら,2005年にはこんな光景も・・・・)
*バルタン星人は当初侵略者ではなく故郷を失った宇宙難民だったのです。
ただ人数がべらぼうな数だったため、地球人(科学特捜隊)との交渉は決裂!
交渉にあたったバルタン星人が逆ギレして暴れたため、
宇宙船ごとウルトラマンに成敗されてしまいましたのです。

(それからウルトラ一族とバルタン星人の果てしなき戦いがはじまったのです。)

私はいま悩んでいます。それはコンビニで販売されている「王立科学博物館」シリーズでガンプラの背景用にスペースコロニーを大量導入しようとして、大人買いしたら、HG・ウェルズの火星人が大量にダブってしまったのです。ウェルズの火星人というと、例の軟体動物が進化したタコ型生物で、ビグザムのような巨大歩行機械で太陽系第三惑星のホモ・サピエンスを恐怖のどん底に叩き込んでおきながら、風邪であっけなく全滅したアレです。そんな彼らフィギュアで一同にそろえると結構不気味です。夜道でこいつらに出会ってしまったら、本当にこいつが攻めてきたらと思うと夜も眠れません。


(古典的火星人の団体)

こいつらの登場以降、我らが緑の地球はX星人、バルタン星人、グレイ、ケロン人と数々の宇宙人に狙われることになったのです。

   
(緑の地球を狙う宇宙人たち:右からX星人、バルタン星人、グレイ、ケロン人)

でも、今のところ宇宙人は地球人=ホモ・サピエンスを除くとフィクションの存在です。


(パイオニア宇宙船に乗せられた宇宙人に向けたホモ・サピエンスの紹介)

ところで、まじめな話として宇宙人が本当にいるかどうか、これからSFの王道「宇宙人」を何回かに分けて取り上げてみましょう。まず、第1回目は数学的なアプローチから。

 

1.ドレークの方程式〜数学的なアプローチ〜

まず、下の方程式を見てください

 N(地球外文明の数)=R×Fp×Ne×F1×Fi×Fc×L

これが有名なドレークの方程式です。それぞれの変数を解説すると

 

R:銀河系で1年間に生まれる恒星の数

Fp:生まれた恒星系が惑星を持つ確率

Ne:恒星系で生命が生まれる可能性がある惑星の数

F1:その惑星で実際に生命が生まれる確率

Fi:その惑星の生命が知的生命体まで進化する確率

Fc:その知的生命体が他の恒星系にむけ通信を試みるほどの文明を持つ確率

L:その文明が継続される長さ

 

おのおのの変数に観測・推論の結果で導かれた数値を入れれば地球外文明(ETC)の数がはじき出されるわけです。このドレークの方程式は、ビジネスの世界のマーケティングの手法で、市場規模を推測する「フェミルの推論」をそのまま、銀河系レベルに当てはめたものです。

余談ですがこの「フェミルの推論」は、アメリカの物理学者:フェミルが「シカゴにはピアノの調律師が何人ぐらいいるか」という、意地悪クイズを論理的に推論して解答した手法が元となっており、いまでは外資系企業や大企業の面接ではこの「フェミルの推論」で解かなくてはいけない意地悪クイズが入社試験に実際に出ます。ですから、ドレークの方程式はトリビア(無駄知識)としてではなく、一般教養として皆さん覚えておいてください。

 

2.各変数を検討する

では、このドレークの方程式を解いてみるため、それぞれの変数を観測結果・推論で埋めて見ましょう。

 

@R:銀河系で1年間に生まれる恒星の数

 はっきり言います、正直言ってわかりません。地球人自体が銀河系のすべてを把握しているわけではないので何とでも数字を入れることができます。

 
(我々の”天の河銀河”の想像図。ちなみに地球がある太陽系はオリオン腕と呼ばれる外側に近いの領域にある)
(天の川の写真:天の川は銀河系の中心方向を地球から見たものである。この光点全てが恒星である)

 ただ、銀河系に恒星がやたらとあるのは事実ですから、次の式で大雑把に1年当たりに誕生する恒星の数を推論できるのではないでしょうか?

1年間に誕生する恒星の数(R)=銀河系の恒星の数(S)÷銀河系の年齢(H

 銀河系の恒星の数(S)=約2000億=約2×1011

 銀河系の年齢(H)=100億年=1010

よって

 

 R:銀河系で1年間に生まれる恒星の数=20

 

という推定が妥当と思われます。もっとも、銀河誕生以来、寿命を迎えて超新星爆発を起して消えた恒星もかなりあったと思われるので、その分の穴埋めで実際はこれよりも多いかもしれません。ただ、寿命を迎えた星がどのくらいあるのか、恒星のライフサイクルは一定なのかわからないので、今回はこの数字を当てはめます。

 

AFp:生まれた恒星系が惑星を持つ確立

これも非常に難問です。2000億個の恒星すべてを調べたわけではないのでなんともいえないです。ただ、現在のところ地球型惑星は未確認ですが太陽系の木星や土星のような惑星を持つ恒星系は約100発見されていますので

単純に言えば現在観測されているベースで

 

100÷2000億=1/20億=0.0000000005=5×1010

 

ということになります。しかし、太陽系外惑星の探査はまだ始まったばかりです。上記の数字は最低数と考えるべきでしょう。ですからFpの値は下記の範囲内と考えられます。

 

         ×1010Fp≦1

 

と考えるのが妥当でしょう。最近の観測では恒星系が惑星を持つのはスタンダードなことらしいということがわかってきています。だからFp=1とも考えられます。

 

しかし太陽系外惑星にはかなりへんてこなものも混じっています。たとえばペガサス座:HD2094586b(オシリス)は通称ホットジュピター(煮えたぎる木星)といわれています。この惑星は大きさが木星の77%(地球の22倍)、恒星との距離が700Kmしかなく、恒星にあまりにも近いため表面温度が1000℃を超えます。しかし、惑星の質量があまりに大きいため重力が強く恒星に近いながらも、大気が恒星風に吹き飛ばされず存在します。その大気は恒星の熱で表層のガス雲を形成しているはずの水素、炭素、酸素、そして惑星のコアを形成していると思われる鉄までも分子レベルで蒸発して渦巻いているのです。太陽系で言うと一番内側を公転している水星と太陽の距離の1/8のところを木星が回っていて、常に煮立っている状態になります。地球と太陽の距離(1天文単位)が約1.5Km、太陽と木星が約7.8億キロ(5.2天文単位)のところにありますから、太陽系に比べるといかにへんてこな状態かがお分かりいただけるでしょう。


(ホットジュピターの想像図:恒星とほぼ同じ大きさのガス状惑星が至近で公転している)

 

ですから、太陽系のような惑星を持つという意味で、ここはFpの推測範囲の中間を取って

 

Fp:生まれた恒星系が惑星を持つ確立(太陽系と同じ惑星を持つ確率)=0.5

 

と推測します。

 

BNe:恒星系で生命が生まれる可能性がある惑星の数

Fpを太陽系と同じ惑星を持つ確率と考えた場合、太陽系をモデルに考えることができるでしょう。理論上太陽系で生命が誕生可能だといわれる位置にある惑星は、一番楽観的な幅を取った場合、内側から金星、地球、火星の3惑星が挙げられるといいます。実際、地球は生命にあふれていますし、火星では1997年に南極で発見された火星由来の隕石から微生物の化石が発見されたという騒動がありましたし、最近の火星探査の結果、過去に生命を誕生させるために必要な水が存在したらしいと推測されています。


(太陽系の諸惑星で生命が誕生する領域は内惑星帯の金星・地球・火星といわれる)
(しかし金星は太陽に近すぎ、火星は太陽から遠くまた質量が十分でないといわれる)


(2004年火星探査機オポチュニティが送ってきた水があった痕跡地形の写真)


(1996年に発表された地球外生命の化石といわれるものの写真)
(1984年南極で発見された火星由来の隕石の調査の過程で発見された。36億年前のバクテリア状生物とのこと)
(しかし、その後化石説には反論が相次ぎ、2004年現在これがなんなのかははっきりと分かっていない)

上記の、三惑星のほかに木星の衛星、エウロパが生命を生み出す可能性が考えられています。木星の衛星群は、巨大な質量を持つ木星の潮汐力で地殻がこすられるような形で、火山活動が起こります。実際、衛生のひとつイオでは火山活動が観測されています。それで、氷で覆われたエウロパも表面の観測から、表層の氷の下には、木星の潮汐力による火山活動によって氷が溶かされた海があるのでは推測されています。で、地球でも深海底の海底火山(ホットスポット)の周りには独自の生態系があり、地球の生命はこのような環境で生まれたという説もあります。そういったことから、理屈のうえではエウロパも生物がいてもおかしくないと考えられています。


(木星のガリレオ衛星群。木星に近いほうからイオ、エウロパ、カリストロ、ガニメデ)
(第一衛星イオでは活火山の活動が観測されている。原因は巨大惑星木星の重力による)


(木星の第2衛星:エウロパ。全休表面は氷に覆われている。表面の模様は変化していることが観測されている。)
(氷の変化からエウロパの氷の下には木星の潮汐力が引き起こした火山活動の熱で氷が溶けた海があるといわれている)


(地球の深海熱水噴出孔の再現模型。地球でも太陽の光と酸素に頼らない生態系が存在する)
(エウロパにも同様な環境があるのではと期待されている。)

(エウロパの話についてはまた改めてしようと思います。)

 

このようなことからここは太陽系のデータをもとに一番楽観的な数値をとって

 

Ne:恒星系で生命が生まれる可能性がある惑星の数=4

 

とします。他の恒星系が太陽系と同じとは思えないのですが、暫定的に太陽系のデータを当てはめることとします。

 

 

CF1:その惑星で実際に生命が生まれる確率

これは比較的容易に導くことができます。先ほど太陽系で生命が生まれる可能性がある星を、金星、地球、火星、エウロパの4つとしました、しかし実際に、生命がいる星、生命が観測されている星は地球のみです。ここでは火星の微生物化石騒動、これから行われるかもしれないエウロパ探査の結果については無視して、

 

F1:その惑星で実際に生命が生まれる確立=1/4=0.25

 

とします。Bと同じく太陽系でのデータを他の恒星系でも当てはめることとします。

 

DFi:その惑星の生命が知的生命体まで進化する確立

これが一番の難問です。そもそも知的生物とは何か?ということにぶち当たる問題です。もしかしたら、地球で知的生命体はホモ・サピエンスのみと思っているのは人間だけで、実はゾウには輪廻転生の概念が存在し、クジラには「我思うゆえに我あり」というデカルトの哲学を理解する能力があるかもしれません。カラスやインコは彼ら独自の音楽を楽しむ文化があるかも知れず、ただ人間がそれに気づいていないだけということも考えられます。上記のように、必ずしも知的生物であることと文明を作ることはイコールではないと思われます。し、我々が恒星間飛行を可能とした場合、我々はこれまでの知性の概念を変えるような存在に次々と出会うかもしれません。
(この問題についてもまた改めて取り上げようと思います。)

  
(右:アフリカゾウ。ゾウは仲間を弔うような行動が観察されている)
(中:ザトウクジラ。クジラは低音の歌でコミュニケーションをとるという。ちなみに歌には方言や流行があるという)
(左:ヨウム。アリゾナ大学で飼われているアレックスは人間と英語でコミュニケーションが取れる)

とりあえずここでは知的生命体=文明を作れるボディと頭脳をもった生物として定義しましょう。

文明を作れるボディとして考えられるのはヒューマノイド形態、もしくはそれに類する形が考えられます。これは両手が自由に使えること、(もしくはそれに類する器官が存在する)、知的活動を支えるハードウェアである巨大な脳を支えられることが条件になります。そうなると人間のような直立二足歩行で脳を支え、自由になった両手で道具を使うという形態が理想的になります。もしくはゾウのように四足歩行でも、鼻のような手に変わる器官があれば文明を作ることは可能かもしれません。また、高度な知的活動を支えるためには脳をアイドリングさせておく必要がありますので常に体温が一定な恒温動物である必要があります。

このようなことから、地球に関して言えば知的生物になりうる生物は哺乳類と鳥類に限定されてきます。鳥類は飛行に特化しすぎているので、手が自由に使える条件を満たすためには祖先の恐竜までさかのぼる必要があります。実際、恐竜ではトロエドン、レエリナサウラ、ダチョウ恐竜、ヴェロキラプトルなど二足歩行で前足を使って物をつかむことができたであろうと推測される中小型恐竜で恐竜人類という科学シミュレーションがなされています。


(恐竜人類とその祖先恐竜のトロエドン)
  
(トロエドンと同じような恐竜人類への進化が想定できる恐竜たち)
(右:ヒプシロフォドン、中:オルニトムミス、左:ヴェロキラプトル)

そういうことでかなり乱暴ですが、地球を例に取れば哺乳類ないしは鳥類=恐竜に相当する生物が進化できれば必然的に知的生物が誕生すると考えることにしましょう。もちろん、地球でもそのようなことは考えにくいのですが、これが一番楽観的な考え方です。

また、条件さえよければ軟体動物や両生類でも知的生物に進化することは可能かと思いますが、今回はその過程で哺乳類・鳥類=恐竜に収斂進化すると考えます。

 
(右:両生類が進化したと思われると思われるケロン人)
(左:フュチャーイズワイルドより2億年後の地球に生息する知的生物スクイボン。イカの子孫である。)

では地球では哺乳類・鳥類=恐竜はどうやって生まれたのでしょうか。実は地球の歴史を振り返ると恐竜も哺乳類もほぼ同時期、三畳紀後期に誕生しています。石炭紀までは両者は同じ原始有羊膜類(原始的な爬虫類)を祖先として共有していましたので、両者はその後のペルム期や三畳紀半ばの大絶滅に対して各々違う対処法をとって進化した生き物であることがわかっています。ということは生命誕生から三畳紀半ばまでの大絶滅までの生物を進化させてきた要因、地球物理学的イベント(大陸移動、マントルプリュームの上昇による火山爆発とそれに伴う気候変化)もしくは天文学的イベント(天体衝突)がひとつでも欠けたら彼らは誕生しないと考えて差し支えないのではないでしょうか。

でも天体衝突などは本当の偶然です。また月を作ったジャイアントインパクト、生命を飛躍的に進化させた全球凍結(地球表面の水がすべて凍る超氷河時代)なども必然なのか、偶然なのか、これからの研究が待たれる問題です。


(天体衝突の想像図:このような天体衝突は偶然発生するものであるが大量絶滅の要因になる)

では数学的に哺乳類・鳥類=恐竜を生み出すための確率を求めることはできないのでしょうか?

ひとつだけ方法があります。生物が誕生してこれまで2600万年周期で生物は程度の差こそあれ大量絶滅にさらされているという仮説があります。これは地球内部の動き、マントルの対流に関係があるのではといわれています。つまり地球は自らの内部要因で2600万年周期で何らかの大変動を起し、それが生命の進化に影響を与えていると考えられます。



(マントルの概念図)
(地球の内部は万年単位で流れるマントル層が存在し、定期的に地殻表面(我々の世界)に大変動をもたらす。)

そこで、これまたかなり乱暴ですが生命誕生から三畳紀半ばまでの2600万年周期の変動がひとつでも欠けたら哺乳類・鳥類=恐竜は誕生しないと仮定しましょう。

 

では早速計算してみます。

生命の誕生が35億年前、

哺乳類・鳥類=恐竜を生んだ三畳紀半ばの大量絶滅が2.5億年前。

生命誕生から哺乳類・鳥類=恐竜誕生までの期間:35億−2.5億=32.5億年

2600万年周期の変動の回数:32.5億÷2600万=125回

2600万年周期の変動が1回でもかける確率:1/125=0.008

以上のことから地球で哺乳類・鳥類=恐竜が生まれる確率は0.008となります。

今回はFi哺乳類・鳥類=恐竜が生まれる確率としていますので、

 

Fi:その惑星の生命が知的生命体まで進化する確率=0.008

 

となります。またこれもB、Cと同じく地球以外の恒星系でも当てはまるとします。

 

DFc:その知的生命体が他の恒星系にむけ通信を試みるほどの文明を持つ確率

こいつはさらに難問です。問題はホモ・サピエンス自身がなぜ文明が生まれたのかわかっていないからです。ましては、恐竜人類やゾウ人類、パンダ人類、カラス人類など他の哺乳類・鳥類=恐竜系の生物から進化しうる知的生命体が文明を、しかも他の恒星系に向け通信を試みるほどの文明を持つかどうかなんて想像するいがいありません。

しかも、人類は条件がよければいつまでも狩猟採集生活を続けそれにあわせた文化を発展させ続けるということは、アフリカや南米の先住民、イヌイットの生活を見ればわかります。また、自然と共生するタイプの遊牧文明(モンゴル人)などはそのままほっておけば(農耕文明や工業文明との接触がなければ)いつまでも遊牧にあわせた生活を続けると思われます。

 
(右:アフリカの狩猟採集民、左:モンゴルの遊牧民)

しかし、ひとつだけいえることは人間が石器時代から増殖しようとしていたということです。それは狩の豊穣を願ったラスコーの壁画や呪術的色彩を施されたマンモスの骨から石器時代人が自らの繁栄=人口の増加を望んでいたことがうかがえます。人口の増加は、やがて狩猟採集よりも人口を養える農耕を生み出し、農耕社会を円滑に運営するため文明が誕生し、そしてユーラシアを起源とする工業社会が生まれたといえるでしょう。自らの種族の増殖を目指すのはどの生物(他の惑星の生物も含む)にもいえることですから、人間だけは例外だったとは思えません。ただし、農耕社会というブレイクスルーをすべての知的生命体が体験するかということはわからないのです。自らの繁栄=人口の増加を望んでいても農耕の発見が宇宙レベルで必然とはいえないのです。

かってカール・マルクスは唯物史観を打ちたて、狩猟採集→農耕社会→封建社会→工業社会→社会主義世界という社会の進化の流れは生産力の上昇、つまりは人口と生産手段の発達によって必然であると唱えました。マルクスの唯物史観は一見正しいように見えますが歴史学、文化人類学、社会学の研究成果が進むにつれ、ほころびが目立ち始め、今では時代遅れのものと考えられています。今では、多くの人間が自らの歴史・社会に必然性はなく、なるようになってここまでいたったと考えています。地球人を例に取れば、歴史の歯車が狂えば今でも宗教に縛られた暗黒時代のままかもしれませんし、ピラミッドを量産して満ち足りた生活をおくっているかもしれないのです。


(カール・マルクス:1818〜1883)
(彼は「資本論」などの著作で唯物史観を提唱し、人類が技術文明に至るのは必然と考えた。)

そういった点で、工業文明への発達が必然か否かはわからないのです。ですから、このことを数学的に表現すれば、知的生物が恒星間通信を行う確率の範囲は

 

            ≦Fc≦1

 

となります。0はさまざまな諸条件がそろえば知的生命体に農耕社会へのブレイクスルーと工業社会へのブレイクスルーが起こらないという立場です。1はマルクスの唯物史観にそった形のものになります。

余談ですが、カール・マルクスは共産主義の提唱者というより人類の社会・歴史の大統一理論に挑んだ人物として評価されるべきでしょう。実際、人類=ホモ・サピエンスはマルクスが考えた以上に複雑な知的生物で、彼の理論は時代遅れのものになってしまいました。しかし、人類=ホモ・サピエンスがもうひとつのブレイクスルー(民族、宗教、伝統社会の壁を乗り越えた人類としての種の社会)を迎えるためには、科学技術だけではなく、人文・社会科学においても大統一理論の必要性があると思います。その点、マルクスの理論ではなく志は引き継がれるべきではないでしょうか。閑話休題。

 

話を戻して、ここでは暫定的に確率の範囲の中間値をとって

 

Fc:その知的生命体が他の恒星系にむけ通信を試みるほどの文明を持つ確率=0.5

 

とし、他の恒星系でもこの数字を当てはめます。

 

EL:その文明が継続される長さ

これこそまさに未来や推測に属する問題で、正直わかりません。地球を例にとって一番、悲観的な予想をすれば、明日にでも核戦争が始まって、「北斗の拳」や「風の谷のナウシカ」みたいな世界になるかもしれません。この場合、異性人探査が始まって今日までということでL=40年ということになります。

また知的生物はどの惑星でも、まず自分の星の資源を利用すると考えられます。地球の場合は地下資源の埋蔵量はあとMAX100〜150年といわれているので、他の星も同様だと考えればL=200年程度になります。

ただ、他の惑星の資源の埋蔵量はわかりません。さらに、他の惑星の知的生命体が地球人ほど精神とテクノロジーのアンバランスさを持っているかどうかはわかりません。ここでは楽観的に知的生命体は、自らの惑星を飛び出し恒星系内すべての資源を利用できる程度の文明、地球人で言えばガンダムの宇宙世紀ぐらいの文明には達すると仮定しましょう。

  
(右:スペースコロニー/左:火星基地。)
(このレベルまで文明が達すれば太陽系内の資源が利用でき文明の寿命は飛躍的に延びる)

ここまでくれば、エネルギー・資源問題・環境問題から解放され一年戦争のような全人口の半分を失うような事態になっても何とか文明を維持できるでしょう。この場合は文明の長さはエネルギー・資源問題・環境問題の縛りから開放されて、生物種としての問題になるでしょう。これは地球人=ホモ・サピエンスでも同じと思われます。

我々の文明は現在のホモ・サピエンスの肉体というハードウェアをベースに作られています。この肉体が変容したとき、我々の文明は現在の延長線上にあるかどうかは未知数です。おそらく、他の知的生命体も自らの肉体というハードウェアを文明の基盤にしているでしょう。どんなに文明が発達しても種として寿命を迎えて、ハードウェアが絶滅してしまえば身もふたもない状態になります。(もっとも他のハードウェア、ロボットやコンピューター、知性化させた類族に文明を引き継がせるという方法もあるとは思いますが・・・・・・・・)

 

ここでは地球人をベースに数値を推測してみたいと考えています。ここでは

 

L=ホモ・サピエンスの種の存続期間−恒星間通信以前の期間=知的生命体の文明長さ

 

と仮定してみましょう。

 

そもそも種に寿命はあるのか?ということですが、これはあるという人と、ないという人がいます。今回の場合は種の老衰という考えではなく、既存の知的生命体のヴァージョンアップ版(もしくはヴァージョンダウン版)が登場し、既存の知的生命体が取って代わられるという事態を想定します。ただし、宇宙に進出したらすぐにニュータイプが登場するというのはなしです。

この場合、過去に地球上でおきた知的生命体の交代劇、ネアンデルタール人(ホモ・サピエンス・ネアンデルターシス)と現代人=ホモ・サピエンスの例が知的生命体の種としての寿命を考える上で参考になる出来事でしょう。

 
(右:ネアンデルタール人/左:最初のホモサピエンス)

ここで旧いネアンデルタール人の種としての生存期間が置き換わった我々現代人の生存期間とほぼ同じだろうと仮定します。その理由は、地球で知的生命体の交代例としてはそれぐらいしかないからです。北京原人からネアンデルタール人では単なる進化になってしまいますし、時代が旧すぎてデータの正確性に疑問がありま。

それでは問題の交代劇を見てみましょう。

ネアンデルタール人の登場:約30万年前

現代人の誕生      :約10万年前

ネアンデルタール人の消滅:約 3万年前

 

ネアンデルタール人の生存期間:30万年−3万年=27万年

(現代人との並存期間は7万年)

上記のようにネアンデルタール人は種として27万年の期間生存し、新種の現代人と7万年間共存していました。彼らが消えたのは我々現代人が滅ぼしたのか、混血という形で飲み込んでしまったのかは諸説あります。ただし、肉体というハードウェアが違う人類が7万年共存していたことを考えると、一番楽観的に見てホモ・サピエンスも次世代の人類と数万年程度は共存できそうです。

それで、人類が始めて農耕を始めたのがおおよそ1万年前。人類が恒星間通信=異性人探査を始めたのは20世紀後半に入ってからです。テレビやラジオなどの電波が宇宙に漏れたとしても、ラジオが実用化されたのは100年ほど前ですから、まぁこの期間は無視してかまわないでしょう。このことからホモ・サピエンスは誕生からほぼ10万年の間、恒星間通信以前の状態にあったといえます。

でネアンデルタール人の生存期間をベースにして、文明にたいして一番楽観的な見方、知的生命体が自らのテクノロジーで自滅せず。少なくとも恒星系のエネルギー・資源を使う程度までは文明を発達させ、種としての寿命を全うすると考え場合、

L:その文明が継続される長さ=27万年−10万年=17万年

と考えることができます。

3.地球外文明を計算する

ここでこれまで曲がりなりにも検証してきた数値を見てみましょう。

R:銀河系で1年間に生まれる恒星の数=20個

Fp:生まれた恒星系が惑星を持つ確率=0.550%)

Ne:恒星系で生命が生まれる可能性がある惑星の数=4個

F1:その惑星で実際に生命が生まれる確率=0.2525%)

Fi:その惑星の生命が知的生命体まで進化する確率=0.0080.8%)

Fc:その知的生命体が他の恒星系にむけ通信を試みるほどの文明を持つ確立 =0.550%)

L:その文明が継続される長さ=17万年

 

これをドレークの方程式に代入してみましょう

N(地球外文明の数)=R×Fp×Ne×F1×Fi×Fc×L

         =20×0.5×4×0.008×0.5×170,000

         =27,200

 

N(地球外文明の数)=27,200

 

ついに答えが出ました。今、我々が生きている銀河系には理論上27,200個の恒星間通信が可能な地球外文明=宇宙人が存在するというのが今回の結論です。

 

4.広大すぎる銀河系

しかし、我々の住む銀河系は広大です。

銀河系を平面の円盤と仮定した場合、銀河系は直径が10万光年ありますから、この円盤の面積は以下のとおりになります

 

銀河系の面積=5万光年×5万光年×3.14785千万平方光年

 

となります。で、その銀河系円盤に均等に地球外文明がある場合、銀河系内で地球外文明一つあたりが占有できる面積、そして、その面積を地球外文明の母星を中心とした円で想定したときの半径を以下で求めてみます。

 

球外文明一つあたりが占有できる面積=785千万平方光年÷27,200

                  =28,860,294平方光年

 

また母星を中心とした円の半径をAと仮定したしたとき、その半径Aは

 

  3.14×A=28,860,294平方光年

  A=9191176.4平方光年

  A=3031.7光年

 

この半径が隣り合う地球外文明同士の円同士が接する接点までの距離になります。一点で接している円同士の中心間の最短距離は、接点を通る直線に垂直な線となります。この場合、単純に半径の2倍が最短距離になりますので、隣り合う地球外文明の母星間の距離は

以下のとおりになります。

 

A×2=3031.7光年×2=6063.4光年

 

つまり、平均して地球外文明間の母星同士の距離はおおよそ6,000光年ぐらいあるということになります。これは、この宇宙で一番速い光速のスピードでメッセージ交信をして、相手に届くのが6,000年かかるということです。同じく、相手が光速で返信してきても6,000年かかります。つまり、最も早い光速でメッセージのやり取りをしても双方向コミュニケーションが成立するためには理屈上1万2000年かかる計算になります。

今から1万2千年前となると人間がマンモスを主食にしていた時代で、6000年前だと

ようやく文明が始まりかけたところで、ピラミッドすら建っていない超古代です。

どうやら超高速ワープか超光速通信でもない限り宇宙人とコミュニケーションをとるのは難しいようです。

さらに悪いことに、今回の計算では銀河系を平面と仮定し、均等に地球外文明、もちろんそれを支える恒星系があると仮定しました。しかし、皆さんご存知のとおり、銀河系には中心部分で1.5万光年の厚みがあり、恒星の密度も中心に行くほど濃く、外側に行くほどすく少なくなります。そして、残念ながら太陽系=地球が属しているオリオン腕は銀河の中心部から2.8万光年のところにあり、銀河系でも恒星の少ない辺境に属します。(その証拠に地球では銀河系中心部を天の川として観測できます。)

 
(真上、真横からみた銀河系。太陽系が銀河の辺境にあることが分かる)

そのうえ、地球が自転し、太陽の周りを公転しているように、太陽系も動いており、他の恒星系も動いています。

つまり、計算で導かれた6,000光年というのは本当に最短で実際は、隣の地球外文明の母星はもっと遠いということです。

5.結論〜フェミルのパラドックス〜

このように今まで数学的に宇宙人にアプローチしてみました。

その結果は、27,200個の地球外文明という一見多そうな数字でした。しかしこれも楽観的な数値の積み重ねで、実際はもっと少ないかもしれません。また、すべての地球外文明と意思疎通が可能とは限りません。相手のほうから信号を送っているのに、地球人には理解不能という事態も考えられます。

そのうえ、銀河系は広大で、地球は辺境です。

今回取り上げたドレークの方程式の生みの親の一人、アメリカの物理学者フェミルはこう言っています。

「みんな(宇宙人のこと)はどこにいるのか?」

これは、「宇宙人がいるはずだったら、なぜ我々の前に姿を現さないのか?」というフェミルのパラドックスとして知られています。

しかし、今回の検証で皆さんご理解できたでしょう。銀河系はたぶん生命には満ちていて文明もあるはずだと思うが、地球人がそれを知るにはあまりにも銀河は広大だということを・・・・・・・・・。運がよければ、数千年、数万年前に地球人にわかる形で発信された、「俺はここにいる!!」という宇宙人の叫びを聞くことができるかも知れません。

 
(宇宙からの電波をキャッチするSETI計画のアンテナ)
最近は全世界PCをつないでPCの空き領域を使い宇宙人を探すSETI@homeもある。
詳しくは:http://www.planetary.or.jp/setiathome/ まで

でも、確実にいえることはまず毎週、多様な宇宙人が侵略にやってくることはないということです。これで、枕を高くして眠れます。



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