青と蒼と藍

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VS遠坂

第5話

 遠坂凛。
 その少女は衛宮士郎にとって憧れの少女だった。
 いや、彼に限らず、穂群原学園に通う男連中のほとんどが、彼女に対してある一定以上の憧れを抱いているといって間違いはない。
 容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群。
 そのお嬢様然とした立ち居振る舞いに悩殺された男は数知れず。
 だが、その姿があまりに完璧すぎるためか、恋愛の対象というよりもどこか高嶺の花という存在であったようだ。
 衛宮士郎にとってもそれは同様で、それなりに憧れる存在ではあっても、告白しようなどと思ったことは一度も無い。

 だから、そんな憧れの存在だった少女が、いつのまにか自分の恋人になってしまったことに関して、衛宮士郎は時々不思議な感覚を受ける。
 本当にこれは現実のことなのだろうか、と。
 こんな綺麗で可愛くて誇り高い少女が本当に自分の恋人なのか、と。
 まあ、恋人同士となる前、聖杯戦争を共に戦い、彼女の本質をあるていど理解することができたおかげで、昔のような手の届かない存在と勘違いすることはなくなっていたが。
 
 いずれにしろ、遠坂凛の恋人として、釣り合いが取れているとはとても思えない衛宮士郎にとって、彼女にふさわしい男となるということは、今後の人生指針において大きなウエイトを占めることになる。
 そう――
 とにもかくにも、衛宮士郎は遠坂凛という少女に心の底から惚れきっているのだ。



 そこまでを確認した状態で、俺はあらためて現状を把握する。

 俺の前には遠坂がいる。
 静まり返った部屋に二人っきり、ベッドの上、おまけに二人そろって裸。
 こういう事はこれまでなんども経験してきた。
 なにしろ俺たちは恋人同士だ。肌に触れ合うことを忌避するような関係ではない。
 とはいっても、何年も連れ添ってきたわけでもないので、平然と抱き合えるほどのものではない。
 いつだって羞恥心はつきまとう。
 俺たちはまだこの関係に慣れきってはいないのだ。

 ただ、それももしかしたら、今日を境に変わるかもしれない。
 それほどの事が、今、俺の目の前で起こっているのだ。
 ……というか、そうさせているのは他の誰でもない、この俺自身なんだけど。



 背中で縛られた遠坂の両腕が切なげに握られている。
 胸は反り返り、二つのふくらみが天井に向かって突き出されていた。
 大きく左右に広げられた両脚は、膝を立て、なんとかその体を支えている。
 そして、みっともなくさらけ出された下の唇からは、白く濁りはじめた液体が止め処も無くあふれ続けていた。

 まあ、なんというか……とんでもない格好を遠坂はしている。
 もちろん、やらせたのは俺。
 そしてこの姿だけではなく、むしろそれ以上にとんでもない事を「言わせた」のもこの俺。
 目の前でヒクヒクと蠢く秘唇を眺めやりながら、俺は、なんだか急に渇き始めた口を開いた。

「……遠坂。今の言葉よく聞こえなかった、もう一度言って」

 カラカラの唇を舐めながら、そう催促する。
 聞こえなかったというのは当然のことながらただの嘘で、たんにもう一回聞きたいから。
 
「ん、ん……はぁ……わたしの、お○んこと、お尻と、クリトリスを可愛がってください。たくさん……イかせてください。お願い……お願いします」

 俺の要求にほとんど逡巡を見せず素直に答える遠坂。
 おまけに、さっきよりもなんだか言葉が増えてるような気もするし。
 俺もそうだけど、遠坂はそれ以上に理性のたがが外れかけているみたいだ。

「遠坂。おねだりするだけで感じてるのか? ここ、また溢れてきた」

 ぽたっ……ぽたっ……

 遠坂の秘唇は潤いがより増している。
 お尻をつたってシーツに染みを作りだすそれは、のどが渇ききってる俺にとってなんとも魅力的。

「そ、そんなこと……」
「正直に言わないとシテあげないぞ」

 意地悪く言ってやる。
 なんだか今日の俺はこんなんばっかだ。
 だけど、すでに開き直っているのでなんの問題もない。
 終わった後が微妙に怖いけど、そんなものは後で考えることにする。

「はしたなくおねだりして、それを聞いてもらって、感じてるんだろ? 遠坂」
「う……」

 さすがに口ごもるけど、でも俺は追及の手を緩めない。

「奥からどんどんあふれ出してくるし、それが後ろにまで垂れて……こっちの穴もびしょびしょだ」
「や、やだ……」
「でもホントのことだし」

 遠坂のお尻とふとんのあいだに手を差し伸べる。
 手のひらに、ポタ……ポタ、と生温かい蜜が垂れ落ちてくる。

「ほら、ちゃんと言いなよ。感じてるんだろ?」
「………………はい……」

 ん、なんだかやけに小さい声だったけど、でも認めてくれたみたいだ。
 それに、言葉使いがなぜかものすごく丁寧。
 いつもとは全然違う。
 こんなに素直な遠坂、初めてだ。
 これだけ可愛い姿を見せられたら、俺もこれ以上、我慢できない。
 目の前でひくつく秘唇にパクッとばかりに吸いついた。

「ん……」
「はぁっ、んっ……ぁっ、士郎――っ」

 温かくてトロトロとした液体が唇の周りを潤す。
 もっと良く味わいたくて、ソコを思いっきり吸った。

 ズッ、ズズズ――

「ひぁ……っ! あ、あぁっ、んっ……くぅ……」

 のどに流れ込んでくる甘い蜜と、耳から入り込んでくる遠坂の嬌声。
 いろんな要素でクラクラしてる俺の頭。
 舌を奥まで伸ばして中の壁をこするように舐める。

「ひぃ――っ……あっ!」

 びくん、と揺れる遠坂の腰を右手でしっかりと抑える。
 のどを潤すように蜜を吸い続けながら、

「気持ちいいか、遠坂?」

 聞くまでもないようなことを聞いてみる。
 
「あ……あっ、んっ! はぁぁ……ああっ!」

 返ってきたのは明らかなる肯定の鳴き声。
 でも俺としては、もっとはっきりと、ちゃんと遠坂の言葉で聞きたいわけで。

「あれ? あんまり気持ち良くないか? じゃあ、もうやめようか」

 なんて心にもないことを言いながら唇を離した。

「やっ! 士郎っ! あ、ああ……や、やめないで……もっと、続けて……」

 どこか泣きそうな声を出しながら、俺の唇を追いかけるように腰を突き出した。
 そりゃまあ、手が封じられているし、これだけ焦らされているんだからしょうがないんだろうけど……
 とんでもない格好をしてるって気づいてるか? 遠坂。

 で、俺としては、そんな遠坂を見るのはさすがに……とんでもなく嬉しいことなので、もう一撃、言葉責め。

「続けてあげてもいいけど……どこが気持ち良いか、ハッキリと言ってくれ」

 じゃないと、わからない。
 何てことあるはずないけど、すっとぼけてそう聞いた。

「ああ……あぁ……わ、わたし……」
「うん」
「…………ア、アソコが、気持ち良いの。だから……もっと……」
「アソコって、どこ?」

 ぺろっと「ソコ」をひと舐めしながら。

「ひぃあっ! だ、から……そ、そこ、が……」
「そうじゃなくてさ、さっき自分で言ってたじゃないか。ほら、ここの事、なんて言うんだっけ?」
「あ……うぅ……」

 快楽に焼きつくされた頭でも、さっき自分が言った恥ずかしい言葉は覚えてるみたいだ。
 そのせいか、遠坂は一瞬ためらう。
 それでも、やっぱりこれ以上の我慢はきかないようで、恥ずかしがりながらも俺が望む言葉を吐き出してくれた。

「……お、お○んこ――お○んこが気持ち良いの。うぅ、あ、あ……だ、だから、わたしのお○んこ、舐めて。舌でもっといじめて――」

 ――
 ―――
 俺はなんだか得体の知れない感動にその身を焦がしていた。
 遠坂が、多分――というか絶対に、普通なら言ってくれそうにない言葉、言うはずがない言葉。
「お○んこ、舐めて。舌でいじめて」
 なんてことを言って俺におねだりしてきたのだ。
 遠坂みたいな女の子にそんなことを言わせた優越感、男なら誰もが感じるであろう女の子を自分の物にしたのだという征服感。
 だがそれ以上に、遠坂が俺に対してなにも隠さず全てをさらけ出してくれた、という事実。
 これが、俺にとっては何よりも嬉しい。
 今までのすべての努力が報われるというものだ。

 なんておかしな感慨にふけっていたら、これすら焦らしプレイだと勘違いした遠坂がまたせっついて来る。

「ああぁ……し、士郎。お願い……お、ねがい、します……もう、我慢できな、いぁ――っ!」

 そんな遠坂に、俺は最後まで言わせることなくご褒美をあげる。
 これほど素直になってくれたのなら、それに全力をもって応えてあげるのが男の義務というもの。
 それこそ、むしゃぶりつく、なんていう形容詞がふさわしい勢いでソコを責め立ててあげる。
 
「あうっ! そんなにっ、うっあ……つ、強すぎる、あ、ああぁ……!」
「……でも、気持ち良いんだろ?」
「うぅ……あっあああ……それは……」

 がくがくと体を揺らしながら、口の周りがべたつくほどの愛液を撒き散らす遠坂。
 それこそが彼女が感じているという何より確かな返答。
 遠坂の膣口を舌で蹂躙しながら、彼女の腰を支えていた左手をあの場所へと持っていく。

「きゃうっ! うぅ……」

 すでに左手中指の定位置となりつつある場所。
 小さな後ろの窄まりに指を入れると、遠坂は普通とはどこか違う声でさえずった。

「遠坂はここも好きだもんな」

 勝手なことをのたまりながら、狭いお尻の穴を突き進んでいく。

「いっぁっ、そこは……ちがっ……気持ち良くなんか……んんぁあっ!」

 お尻の中をかき回すと同時に、舌のほうも一暴れ。
 じゅるじゅると音を立てながら吸う。

「ひゃんっ! んっ! んっ! あああ……」

 遠坂の腰が小刻みに震え、膣口に侵入させている舌が優しく締め付けられた。
 お尻だけではまだ感じることができないというのは承知済み。
 でも、前のほうといっしょに責めれば、舌による直接的な快感と後ろを責められるという屈辱的な背徳感、それが両方いい感じに混ざり合って、より感じやすくなるというのもすでに解析済み。
 で、一度感じてしまえば、それが前の責めによるものか後ろからの責めによるものかは遠坂には判断することができない。

「お尻の穴をいじられて、そんな気持ちよさそうな声出して、やっぱりいやらしいなあ、遠坂は」

 だから、こんな意地悪満載の台詞も吐けるというもの。

「あ、ああぁ……そ、んな。わたし、お尻で感じてるの? あ、あっ、あぁ、そんなこと……んあぁっ、くぅっ!」

 ぴゅっ、と、秘唇から可愛らしく放たれる愛液。
 恥ずかしがらせるっていうのも、遠坂をいじめる――じゃなかった、可愛がってあげるためには重要な要素である、という事が今夜のことで十分すぎるほど良くわかった。
 それに、こうやって毎晩ほぐしてあげれば、後ろのほうの初めてももしかしたら貰えるかもしれないし。
 
「ああっ! んっ、んっ……はあぁ、し、しろう……わたし……わたし……!」

 そんな不埒な事を俺がたくらんでいるとは露とも知らず、遠坂は舌と左手による両穴責めにより、絶頂へと昇りつつあるようだ。
 指がお尻の穴を、舌が膣口を穿つたびに、ただでさえはしたなく持ち上げられた遠坂のお尻が、よりいっそう淫らに宙空を踊る。
 俺は遠坂の腰を支えていた右手を腰の下から外した。
 そのせいで遠坂の体は安定感を失ってしまうが、そこはお尻の穴に入り込んでる我が左手中指にがんばってもらう。
 それ一本で遠坂の腰が崩れ落ちないよう支えながら、右手は彼女のもっとも敏感な場所へ。
 
「ひやぅ――っ!」

 クリトリスをつまむと、びっくりしたような声で遠坂が鳴いた。
 前と後ろを責められながら、おまけにそこまで責められることになるとは思っていなかったみたいだ。
 甘いぞ、遠坂。
 なにしろここもいじめてくださいとお願いされたわけだしな、俺は。
 そして、お願いされた以上、なにがなんでもそれを叶えてあげたくなる。
 そのぐらい俺は遠坂に惚れているんだから。
 無理やりにも俺が言わせたのだという事実は――この際、忘れておこう。
 
「んあっ! あ、あああぁ……んっ……ふあぁ……士郎……わたし、もう……もう、駄目……」

 三箇所責めはさすがにきくらしい。
 今にもイキそうなのがはっきりとわかるぐらいに、遠坂の体はふるふると震えている。
 
「イキそうなのか、遠坂?」
「あぁぁ……う、うん……もう、わたし……」

 遠坂は素直にうなずいた。
 まあ、あれだけ焦らされ続けた上に、敏感な場所を徹底的に責められてるんだからそれもしょうがないよな。
 いろいろと可愛いおねだりも聞けたし、このままイかせてあげよう。
 
 ……と、思ったけど、なんとなく意地悪な考えが脳裡をよぎる。
 そして、よぎった瞬間、考えるよりも早く俺の口が勝手に動き始めていた。

「イッてもいいけど、その時は『イッても良いですか?』って俺にちゃんと許可をもらうんだぞ」
「な――っ!」
「言わないと、また途中で止めるからな」
「そ、んなこ……んぁっ! ああぁ、はっ、くぅん……やぅ……し、ろ……」

 抗議の言葉は、俺の唇と両手によって間接的にふさがれる。
 すでに言うべきことは言ったので、あとは遠坂の体を思う存分可愛がってあげるだけだ。
 特にここ。

「いぁ――あぁぁ、んっ!」

 左手中指を根元まで埋め込み、遠坂の直腸の感覚を味わう。
 奥まで突きこんだところで今度はゆっくりと引き抜く。

「くうぅ……」

 ここは膣口のほうとは違い、突くことよりも抜くことのほうが効くようだ。
 お尻の穴から手前に引き、そしてもう一度突き入れながら、膣口のほうを舌で丹念にしゃぶりつくす。
 
「あんっ、ん、んん……!」

 秘唇に慣れ親しんだ快感を受けて遠坂の体がしなやかに反り返った。
 シーツをつかむ両脚に力が入り、張りつめたようなそれが彼女の腰をより高く掲げさせる。
 俺は、それを更に持ち上げるかのように、二本の指でクリトリスを捕らえ、きゅっ、とひねるようにしてつまみ上げた。

「ふあぁ、んっっ! ああぁっ、くっ、士郎……っっ!!」

 俺の名を呼びながら泣く遠坂。
 お尻、膣口、そしてクリトリス。
 女体の中でもっとも敏感な三箇所を徹底的に嬲られ、遠坂の限界は間近にせまっていた。
 鼻孔から進入してくる匂いも、急激なまでに甘さが強まっている。
 ピンッ、と屹立した肉芽を剥いて、さらけ出されたそれを指でつんつんと突つきながら、俺は遠坂に言った。

「ほら、遠坂。なんか俺に言うことなかったっけ?」
「ああぁ……」

 熱を帯びた吐息を唇から漏らす遠坂。
 反らせた背の後ろで縛られた両手がぎゅっと握り締められ、淵から水滴をこぼす瞳がうつろに揺れている。
 
「ん、んんっ……し、ろう……はぁ、んっ、くぁっ――」

 ゆっくりと、だが確実にのぼりつめていく。
 唇を噛み、一度大きく体を痙攣させると、何かに耐えるようだった遠坂の表情が突然崩れた。

「い、あ――っうぅ……わたし、もう……イッ、ちゃ……っっ!!」
「遠坂……」
「ああぁ、んんっ、し、士郎…………うぅ、ふあんっ! 駄目! もうっ! ああぁぁ……し、ろう……イ、イッても……イッてもいいですか? あんっ、んん……イかせて……イかせてくださいっ!」

 なにかから解き放たれたように、遠坂は甲高く叫んだ。
 我慢の限界を超えてしまったようだ。
 そして俺は、待ってましたとばかりに愛撫を加速させる。
 『イかせてください』とまで言われたら、これ以上焦らすのはさすがに可愛そうだ。
 お尻の中の指を軽く曲げ、濡れた小陰唇を唇で挟み、クリトリスに右手をそえる。
 
 そして――

「イッていいぞ、遠坂」

 そう言いながら、左手をお尻から一気に引き抜き、唇で秘唇を噛みながら思いっきり吸引し、右手の人差し指でクリトリスを爪弾く。

「――――っ!!」

 無音の叫びと共に遠坂の体が硬直し、次の瞬間。

「ああぁぁぁぁ……!! ん、んんっ、イ、イッ、くうぅぅ――――っっっ!!!!」

 一瞬の静寂を切り裂くように、遠坂の声が部屋中に響き渡った。




「ん……遠坂」

 ビクッ、ビクッ、とおこりにでも掛かったかのように、遠坂の体が断続的に跳ねた。
 膣内からは大量の愛液がどっと吐き出されている。
 暴れる遠坂の腰を両手でしっかりとつかみながら、吐き出されるその蜜を舌ですくうようにのどに落とし込む。

「ふあぁ……あん、んんっ……はぁ……んんん…………」

 最後に一度、大きく腰を踊らせ、そして急に脱力したように崩れ落ちた。
 はぁ……はぁ……と大きく胸を上下させ、ぐったりとふとんの上に体を投げ出している遠坂。
 俺は愛液で汚れた口元を軽く拭うと、体重をかけないよう気をつけながら横たわる遠坂の上に覆いかぶさる。

 遠坂の顔を上から見下ろす。
 彼女は瞳を閉じたまま、どこかうっとりとした表情でまどろんでいた。

「大丈夫か?」

 普段の時とは比べ物にならないぐらい遠坂のイキかたがすごかったし、脱力しきったようにぐったりしてるので、さすがに心配になって声をかけてみる。
 遠坂のまぶたがゆっくりと開いた。

「あ……あぁ………士郎……?」

 ぼおっとしたような表情で遠坂が俺の名を呼んだ。
 どうも、まだ完全には意識が戻ってきていないみたいだ。
 
「なんか……ずいぶんすごかったな」
「え…………あ……」

 遠坂の瞳が少しずつ焦点を取り戻していき、俺の顔をはっきりと認識すると、それと同時に何かを思い出したのか急に顔を染めた。
 
「遠坂のこんなに乱れた姿、初めて見たよ」
「う、うるさい……馬鹿……」

 その声すらどこか弱々しい。
 そんな可愛い態度を取られると、なんだかもっといじめたくなってしまう。

「でも、可愛かったよ。あんなふうに『イかせてください』っておねだりする遠坂も、新鮮でなんか良いな。惚れ直した」
「ば……こんなことで惚れ直されたって……嬉しくもなんとも……」

 それはそうか。

「だ、だいたい……アンタが無理やり言わせたんじゃないっ。あ、あんな恥ずかしいこと」
「でも、遠坂も素直に言ってくれたじゃないか」

 厳密に言えば、素直に言わせた、ということになるだろうか。
 まあどっちにしろ、言ってくれたのが遠坂であるということに変わりはないわけで。

「可愛がってください、って言ったもの遠坂だし、イかせてください、っておねだりしたのも遠坂だぞ。俺はそれに従っただけで」
「う……だから、それは……士郎が……」
「うん、俺が?」

 にやにやしながら遠坂の赤くなった顔を見下ろす。
 なんか、こんなに俺が優位に立つというのも初めてのことじゃないだろうか。

「あ、あんなに…………いじめるから……」

 そう、ぼそぼそっとつぶやく遠坂はたまらなく可愛かった。
 思わず、こう、ぎゅーっと抱きしめてあげたくなる。

「と、とにかくっ! も、もう終わったんだから、早く……どきなさいっ」

 そう言い放ち、俺から顔を背けるようにする遠坂に、俺は驚いたように声をかける。

「終わった? なに言ってるんだよ、遠坂。終わるも何も、まだこれからじゃないか」

 そう言うが早いか、俺の右手は神速なる動きを示しながら下方へと滑る。

「え……あっ、ちょっ…………きゃんっ!」

 ぐっしょりと濡れている遠坂の秘唇を撫でると、犬の鳴き声みたいな声が彼女の唇から漏れた。
 達したばかりなので、いつもより敏感になっているみたいだ。

「遠坂。可愛いよ、今の声」
「う……ううぅぅぅ……」

 今度は、のどの奥からうなり声をあげる。
 恥ずかしげに顔をしかめながら、なんともいえない微妙な眼差しで俺のことを睨みつけてきた。
 どう表現すればいいのか、こう、遠坂に言うと怒られること間違いなしだけど、ご主人様にいじめられて拗ねている子犬のような……いや、遠坂なら子猫かな。

「やっ……ん、んっ……士郎、い、いい加減にしなさ……ひゃ……んっ!」

 温かな蜜を手のひらで塗り広げながら、クリトリスをやんわりとこする。
 そのたびに眉をひそめ、ピクン、ピクン、と体を揺らせる遠坂は掛け値なしに可愛い。
 よりいっそうの刺激を求め、俺は指を一本、彼女の蜜壷へともぐりこませた。

「あぁぁ……!」

 俺の指を締め付けると共に、遠坂は頤を反らしその綺麗で真っ白なのどを俺の前にさらした。
 そこに吸いついてキスマークを付けたくなったが、そうすると、絆創膏を首筋に貼っての登校というお約束のような事を遠坂が強いられるわけで、さすがにそれはまずいだろうとやめておいた。
 そんなことになると俺にもいろいろと被害が及ぶことになるし。
 だからせめてもと、俺はそのきめ細かい肌に舌を走らせた。ついでに、膣内の指をくっとひねり彼女の内部をノックする。

「んんっ、あぅっ! 士郎っ、や……うっ、いまは……駄目だってば……ひあぁ、んっ!」

 盛大にイッてしまったすぐ後なので、どうにも体が過剰に反応してしまうらしい。
 無論、俺にとっては逆に都合がいい。
 
「凄いな、遠坂の中。熱くってトロトロで……」

 そこだけ温泉にでも浸かっているみたいな感覚が俺の指を襲う。
 その中へ、俺はさらに二本目の指を挿入。
 いつもよりも柔らかくなっているそこは、比較的スムーズに二本目の指を受け入れた。

「う……あっ……士郎、んっ、んん……きつ、い……」
「ん、でも、結構簡単に入ったぞ」
「ああぁ……そんな、んっ、やぁ――! 士郎っ、そんなに、動かさないでっ!」

 クチュクチュ、グチュッ――

 遠坂のその言葉どおり、俺の二本の指は遠坂の膣内で暴れまわっていた。
 そこかしこを突っつき回すと、卑猥な音を鳴らしながら、ねっとりとした蜜が奥から奥から染み出してくる。
 
「もう一本、いけそうかな……」
「やっ、そんな――っ! あ、んっ! んんんっ――」

 三本目、挿入。
 これは結構きつかったが、親指でクリトリスをこね回しながら慎重に入れていくと、あふれ出してくる蜜のおかげで、ヌルヌルと遠坂の膣内へ埋没していった。

「あくぅ――っ! くうぅ……んっ! あ、はぁっ、士郎っ!」

 ぐっちゃ、ぐっちゃ、と三本の指でかき回す。
 膣内で指を開いたり閉じたり、ぐるっと回したりひねったり。

「ふあっ……! ん、あ、ああぁ……っ」

 髪を振り乱しながら泣く遠坂。
 再び彼女が達しそうなのは手に取るようにわかる。

「またイキそうなのか、遠坂?」
「んんっ……んっ、あ、ぁぁ……」
「遠坂、ちゃんと答えて」
「はぁ……はぁ……んっ、あ……う、ん……わたし……また……イッちゃ……」

 遠坂は涙で濡れた瞳を俺に向けてくる。
 その水滴を唇で優しく吸いながら、俺は彼女に言った。

「イッていいぞ。何度でも、好きなだけイかせてやる……」

 唇と唇を重ね、舌と唾液を絡めながら、熱くぬかるんだ遠坂の膣を穿つ。

「んんん――っっ!!! んあぁっ! く、あっ、んん――――っっ!!」

 体を引きつらせ、ドッと愛液を吐き出しながら、再び遠坂は達した。




 で。
 それから。
 
「ふう……」

 ベッドの淵に腰掛けながら、俺は肺に溜まった空気を吐き出した。
 あれから――何度でもイかしてあげると遠坂に言ってから、およそ一時間。
 俺は、その言葉にたがわぬ行為を遠坂にしてあげた。
 両の手、十本の指を操り、唇と舌が疲労でしびれるほどに駆使し、性感帯を完璧に探るべく構造解析能力をぞんぶんに発揮し、そこにこれまで培ってきた技術と経験を上乗せする。
 特に、あのセイバーとの戦いで勝ち取った自信、そして、我が体内に今なお巣くう、あの時に感じた正体の知れない力。
 そのすべて――いや、下半身のある一部を除いたすべて――それを、俺は遠坂にぶつけた。
 長針が時計を一周するだけの時間、遠坂は天上をさまよい続けていた。
 遠坂がさすがに許しを請い、俺も両手と舌が疲労を感じ始めたので、今はしばしの小休止。
 
「はぁ……」

 俺はもう一度、溜息をついた。
 ベッドに腰掛けた俺の足先は床のカーペットに埋まっている。
 で、遠坂といえば――

「ふ……んん……ちゅぷ……あむ……んっ」

 俺の両脚のあいだ。
 床の上に跪いて、俺の股間に顔をうずめていた。



「ん……いいよ、遠坂。そのまま、竿に舌をからめて」
「あむ……ん……ん……ちゅ……」

 言われた通りのことを遠坂は実行する。
 くちゅくちゅと、今夜、もうすでに何度も聞いた水の音。
 ただし、先ほどまでと違うのは、その攻守が完全に入れ替わっているというところ。
 遠坂が攻めて、俺が守る。
 ああでも、実のところ、やってることは全然違うけど状況そのものはさして違わないかも。
 攻められてはいるけれど、主導権はやっぱり俺。
 なにしろ遠坂の両手はまだその背中で縛られているし。
 
「もっと唾を出して、絡めながら舐めるんだ」
「……くちゅ……ぅ、う……んん……くちゅ……んっ」

 こうやって攻め方を指示しているのもこの俺。
 いやほら、遠坂ってまだこういうことに慣れてないから、ちゃんと教えてあげないといけないわけだ。
 もちろん、俺の指示にここまで遠坂が素直に従ってくれるのにはわけがある。


 俺に責められながら何度も達してしまった遠坂は、もうこれ以上は駄目だと泣きながらお願いしてきた。
 で、俺はその時つい調子に乗って、なんでも言うことを聞いてくれたら止めてあげる、なんてことを口走ってしまったのだ。
 意識が朦朧としていた遠坂は反射的にうなずいてしまい、そして、今こうして俺の物をしゃぶってくれているというわけだ。
 …………
 なんていうか、俺って結構アレな性格だったのか、と思わず自問自答。
 いやいや、遠坂みたいな可愛い恋人がいたら、少しぐらいおかしくなったとしてもしょうがない。
 と、今度は自分にフォローを入れてみる。

「うっ……そう、そこ……気持ちいいよ」

 ちょうど彼女の舌がカリ首の辺りをなぞってきたので、俺は思わずうめいてしまった。
 そこは俺のもっとも弱いところ。
 俺が遠坂の弱点をすみからすみまで知り尽くしているように、いずれ遠坂も俺の弱いところをこうやって知るようになるはずだ。
 そうすれば、お互いなにも言わずとも互いを気持ちよくしてあげることができるわけで、それはそれで良いことなんじゃないかなと俺は思う。

「根元まで咥えて……」
「んっ」

 俺の物が遠坂の口内へと吸い込まれていく。
 そこだけ口内の生温かさを感じることができるので、なんとも気持ちいい。

「吸いながら、先っぽまで抜いて……」
「ん……ちゅぅ……んん……」
「くっ……」

 遠坂の頭が後ろへと戻り、それにともなって彼女の口内から姿を現す凶悪なけだもの。
 そんなものが遠坂の唇から吐き出されるという光景が、俺の頭をしびれさせる。
 おまけに、俺に言われたとおり、ちゅるちゅると吸引しながら抜き出していくので、先の小さな穴から大事な液体が漏れ出しそうにもなる。
 
「んっ……んん……」

 遠坂の頭が止まった。
 ちょうど唇が張り出したカリ首に引っ掛かるような感じで、亀頭だけを咥えた格好になる。
 そして、次の指示を仰ぐかのように、ちらりと上目づかいで俺のことを見た。
 うわ……なんか、すごく可愛い。

「そのまま、先を舌で舐めまわしてみて」
「んむ……んっ、くちゅ……く……ちゅぅ……ん」

 ざらざらとした舌の表面が俺の敏感な部分を這いずり回る。
 これはまた……う、気持ちいい。
 唾液でねっとりとした舌先が俺の物の先端で蠢くと、それがそのまま背筋にまでぞわぞわっと駆け上がってくるような感じ。
 最初の頃に比べると、遠坂の成長は目に見えるように――亀頭の先で感じ取れるほどに明らかだ。

「良いよ、遠坂。だいぶ上手になったな」

 そんなふうに褒めながら彼女の綺麗な黒髪を撫でる。
 すると遠坂は、俺のことを見上げながらなんともいえない微妙な表情になった。
 こう……なんというか、ちょっとだけ嬉しいけど、それを見せるのはなんとなく悔しくて、どう反応すれば良くわからないといったような表情。
 
「ん……んっむ……んっ、んっ、んっ――」

 だから、遠坂は俺のことなんか無視して、ただせっせと俺を喜ばせるための行為を続ける。
 余計なことを考えないようにするために。

 くちゅくちゅ、くちゅっ――

 音と共に遠坂の口腔を出入りする俺の一物。
 抜き出される一物は遠坂の唾液でテラテラと黒光りし、それがまた彼女の口腔へと吸い込まれる。
 俺はもう片方の手を遠坂の頬においた。
 一物が出入りするたびにそこが形を変えるのが良くわかる。

「んっ――んん……ちゅ、ぅ……ん」

 両手が自由にならないので口だけしか使えない遠坂だが、それでも彼女が知りうる限りの技術、俺が教えた技術を駆使して、俺の物を愛撫する。
 そんな遠坂を見下ろしながら、俺は――前に慎二の奴に借りて読んだ本のことをなんとなく思い出していた。

 フェラチオという行為は男の願望の塊そのものである、とその本には書かれていた。
 男は恋人にそれをされることによって、支配感、征服感、といったものと同時に、恋人からの愛情を感じ取れるのだそうだ。
 だからこそ、男は自分の好きな女性にこういった行為を望む。
 遠坂に口でやってもらっていると、それって結構、的を獲ているのかな、と思う。
 遠坂の俺に対する愛情を、これでもかというぐらい股間から感じ取ることができる。
 ……まあ、ちょっとアレな感じ方かもしれないが。
 普段の――いわゆる昼間の遠坂は、俺と恋人同士であると感じさせるような行為を、積極的に取ることはあまりしない。
 結構そっけないところがあるし、学園内なんかでは特にそうだ。
 まあ、それに関しては俺も人のことは言えないけれど。
 だから少しでもそういうのを感じることができるというのは嬉しいもので、こうやって遠坂の髪を撫でながら口でしてもらう事はとにかく心地良い。
 
 そういえば……恋人の浮気を男性が探るには、フェラチオをしてもらうのが一番わかりやすいのだというようなことも書いてあったな。
 基本的に、フェラチオという行為は男性が女性に教え込むことが多いそうで、突然そのやりかたが変わったら、それはすなわち、別の男が別のやり方を教え込んだせいだとか何とか。
 いい加減な話だけど、現在のこの状況を考えると、その話も結構真理をついているのかな、と。

「遠坂、もういいよ」

 俺はそう言いながら、彼女の頭を股間から引き離した。
 
「あ……んぁ……」

 ズルリ……と、硬くなった俺の物が遠坂の口から滑り出る。
 このまま口の中に出して飲んでもらいたいのは山々だけど、実はまだ、そういうことを遠坂にしてもらったことはないのだ。
 フェラ自体がまだほんの数回しかしてもらったことがないし、口の中に出したことも飲んでもらったこともまだ無い。
 それなのに、この状況でいきなりそれをやるというのはさすがに憚れる。
 飲んでもらうのは……まあ、遠坂がもう少し慣れてからで。

「遠坂」
「ふぁ……あ……士郎……」

 俺が呼びかけると、ぼうっとした眼差しで遠坂が見つめてくる。
 口元から一筋、唾液が伝っているのが艶かしい。
 両脚がじれったそうに揺れ動いていた。

 もうそろそろ……いいかな。

 俺は、最後の行為に臨むことにした。



「遠坂、後ろを向いてくれ」
「……」

 跪いたままの遠坂に、俺はそう言った。
 それだけで、俺がどういう繋がり方を求めているのか、遠坂は理解したみたいだ。
 一瞬、言葉に詰まったような表情になるが、何も言わずにそれに従った。
 何でも言うことを聞くといった約束を守ったのか、文句を言っても無駄だと悟っているのか、あるいは彼女自身もそれを望んでいるのか。
 それはわからないが、とにかく遠坂は膝立ちのまま俺に背を向けた。
 その背中に手を置いて、俺はさらに言葉を重ねる。

「四つん這いになって、俺にお尻を向けて……」
「っ――」

 遠坂にとってはたぶん予想通りの言葉。
 それでも背中を震わせてちらっと俺を覗き見るのは、それがどんな恥ずかしいことかを知っているから。
 ――これまでの経験で。

 後背位。
 後ろから、それも四つん這いの状態でのそれは、俺が最も好む体位、というよりは、遠坂が最も恥ずかしがる体位。
 そして、今日は遠坂の恥ずかしがる姿をたっぷりと見せてもらおうと決めた一夜なのだ。
 だとすればこれ以外の体位などありえない。
 しかも、現在、遠坂は両腕を背中で縛られ中。
 当然、両腕を使えない状態なので、普段異常にきわどい格好になるのも間違いないところ。

「ほら、遠坂……」

 じっと止まったままの背を、そっと押す。

「…………覚えてなさいよ……士郎……」

 小さく恨み言を残して、遠坂はその裸の体をゆっくりと前に倒していった。

「んっ……」

 両腕が使えないので、急に倒れたりしないように俺は遠坂の背中を支えてあげた。
 遠坂は横を向き、カーペットの上に彼女の頬が埋もれる。
 上体の倒れ方がいつもよりも深いので、必然的にお尻の上がる角度が高くなる。
 濡れ光る秘唇も、その上に息づく小さなすぼまりも、全部俺の目の前にさらけ出された。
 
「もっと、お尻上げて」

 にもかかわらずさらに要求。
 調子に乗っていい時は、思いっきり調子に乗るべきだろう。
 もう二度とこんなチャンスは無いかもしれないんだから。

「う……馬鹿……んっ」

 あきらめの境地か。
 遠坂は素直に従ってくれた。
 膝を立て、お尻を上げる。
 それはあまりにも扇情的な光景だった。
 この光景は俺だけ見ることを許されたもので、このお尻は俺の物。
 他の誰にも、見せることも触らせることも許さない。
 ……むう、俺って結構、独占欲が強いほうなのか?
 いや、これがあたりまえか。なにしろ、遠坂は俺の大事な恋人だしな。

 俺は、その大事な恋人の大事なお尻を両手でつかむ。
 いきり立った我が肉剣が、その柔肉に突き立つ瞬間を今か今かと待ちわびていた。
 
「は――っ、あぁ……」

 先端が触れた。
 それだけで遠坂の声が上がる。

「くぁ……っ」

 亀頭の部分が遠坂の秘唇を押し広げ、そしてツルンと吸い込まれた。
 張ったカサが壁を擦りたてながら、さらに奥へ。

「ふあああああぁぁぁ…………」

 奥まで到達すると、どこか充足感すら漂わせる長い嬌声が部屋の中に充満した。
 その声は俺にとって何よりも元気の源となる。
 俺の物を受け入れながら遠坂が嬉しげに泣いてくれているのだ。
 喜ぶなというほうが無理というもの。

「あぅっ! んっ、んっ! ああぁ、士郎……なんか、いつもよりも……んん……っ」

 そう言いながら、ビクンッと背中を丸める遠坂。
 さらさらの黒髪が数本、背中から滑り落ちて絨毯の上に広がる。

「遠坂の中も……いつもより凄いぞ。熱くて、きつくて、ぐちょぐちょで……」
「んっ、ああぁ……そ……んっ、な……はあぁっ!」

 ひときわ甲高い声をあげながら遠坂の膣内が締めつけを激しくする。
 今、俺が言ったように、今日の遠坂のここはいつもよりも二割増しぐらいで凄い事になってる。
 優しく絡みついてくる肉壁。
 絶えまなく蜜を吐き出し続けるそこはねっとりと俺の物を濡らし、時折、思い出したようにきつく抱きしめてくる。
 それに負けじと腰を突き出すと、遠坂の膣内はそれまで以上のきつさと熱さで俺を迎え撃つ。

「うっ、くぅ……あぁっ! やぁ……士郎……っ!」

 目の前で艶かしく揺れるお尻を、俺は両手でがっしりと捕らえた。
 どちらかというと肉付きの薄いそれをしっかりとつかみ、すうっと呼吸を整える。

「動くぞ」

 一言だけそう告げ、俺は言葉どおりの行為を敢行。
 握り締めた両手を引き寄せ、己の凶器を最奥まで一気に突き刺す。

「ひあ――んっ! んっ、くぅっ!」

 その喘ぎ声がどこか苦しそうなのは、ぐりぐりと奥をえぐられているからだろうか。
 だが俺は、それには頓着せず、パンッ、パンッ、という音が鳴るほど、自分の腰を遠坂のお尻に打ちつける。
 
「く……遠坂」

 気持ち良い――
 いつもよりもはるかに気持ち良い。
 その気持ち良さを遠坂にも押しつけるように、奥にまで突き刺したまま腰をグラインドさせた。

「あくぅっ! くぅぅ! う、うっ……んあぁっ!」

 たまらず喘ぎながら髪を振り乱す。
 宙に舞う黒い髪を見た俺の中に、なんだか知らないが妙な嗜虐感がムラムラと沸き上がってくる。
 片手をお尻から離し、黒髪を一房、握り締める。

「きゃぅんっ!」

 くんっ、とそれを引っ張ったら、首輪を急に引かれた犬のように遠坂が鳴いた。

「やっ、士郎――っ! 急に……なにを……」
「ごめん遠坂」

 なぜか突然、もっといじめたくなったんだ。
 その髪を軽く引っ張りながら、腰を猛然と突き刺し始める俺。

「ひあぁっ! や、だ……強すぎるっ、よぉ……んっ、士郎っ!!」

 髪を引かれるままに頭をのけぞらせながら、後ろからの責めに遠坂はなすすべもなく崩れ始める。
 
 じゅぷじゅぷっ、ぐちゅっぐちゅっぐちゅっ

「あんっ! あん! んんんっ! くあっ!」

 上と下、両方の唇が奏でる淫らな合唱。
 直接的な下半身からの快感もさることながら、この芸術的な音楽も俺の脳髄を少しずつしびれさせ――

「いぁっ……いくぅ……イっちゃう……ひああぁ――――っ!」
「え……?」

 その叫びを合図に、大量の愛液と強烈な締めつけが俺の物を襲う。
 その反撃は突然で強力なものであったが、俺の防衛ラインはまだいささかも崩れてはいなかったので、それを平然と受け止めて、っていうか。
 遠坂、なんかいつもよりイクの速くないか?

「ああぁ……は、あぁぁぁ……ぁぁぁ…………」
「お、っと」

 がっくりとうなだれた遠坂の頭が、真正面から床にぶつかりそうになったので、俺はあわててそれを受け止めた。
 そのまま抱きかかえるようにして、四つん這いの彼女の体を後ろに持ち上げる。
 膝立ちで後ろから挿入したままの遠坂を、自分の胸の中に抱きかかえる格好となった。

「はあ……ん、んん……はぁ……」

 静かな泣き声が遠坂の唇から漏れる。
 その体からは完全に力が抜け、ぐったりと俺の胸に埋もれる。
 俺はそんな彼女を抱きしめながら、はてどうしたものかと考える。
 なにしろ俺の物は、遠坂の膣内でいまだ元気なままにご健在であらせられるのだ。

「遠坂」

 腕の中でぐったりとしている遠坂に呼びかける。
 それすらも聞こえないのか、閉じられた瞳はまどろみを深めたまま開く様子はない。

「むう……」

 このまま続けるのはさすがに酷かな。
 セイバーと違い、遠坂は体力的にそれほど優れているというわけでもないから。
 おまけに今日は散々焦らしたりいじめたり手と唇で何度もイかせたり縛ったり後ろからしたりで、少々、ハードな事になってしまったし。

「これが……自業自得ってやつか」

 いじめすぎたことの。
 そのせいで、この昂ぶりを静められない……

「はあ……」

 むなしいため息が漏れる。
 本当にむなしい。

「あ……ん……、あっ……し、ろう…………?」

 そのため息が今度は聞こえたのか、遠坂がうっすらと目を覚ます。
 
「大丈夫か、遠坂?」
「え……あ……う、うん……」
「そうか」

 まあ、遠坂が気持ち良かったんならそれはそれでいいか。
 と、無理やり自分と自分の愚息を慰め、遠坂の膣内から抜こうとする。

「あ、んん……あっ、士郎、の……まだ……」
「ん? ああ、まあ……」

 まだ元気です。

「あっ、ごめん、士郎。わたしだけ……その……イッちゃって……」
「いや……まあ、別にいいけど……」

 ホントはあまり良くないけど。
 でもしょうがないだろう、と諦める。

「んっ、あ……まって、士郎」

 それを抜こうとする俺をさえぎるようにして呼びかけてくる。
 
「どうしたんだ」
「……大丈夫……まだ大丈夫だから、続けて」
「え? でも……」

 俺はためらってしまう。
 だって、普段から遠坂はあまりこっちのほうには強くないのだ。
 今みたいに、数回達したらもう体力がきつくなるみたいで。
 最初の頃は慣れていなかったせいかあまり感じにくい方だったので、それが幸いして大して気にならなかったけど、慣れてくるに従い――つまり俺の開発によって感じやすくなってしまったがために、あまり無茶なことをするとすぐにダウンしてしまう。
 まあ、そこら辺のことも全部ひっくるめて、自業自得、と。
 今日は特にやりすぎた感もあるしな。

「無理しなくて良いぞ、遠坂」

 そう言うが、遠坂は首を振る。
 
「ありがとう、でも、大丈夫だから」
「大丈夫って言われても……」

 遠坂の体のことは、俺が一番良く知っている。
 ちょっと暴走して忘れかけてたけど。

「その……さっきまでは、大丈夫じゃなかったけど……今は……平気」
「今は?」

 今は、ってのはつまりこうやって繋がってイかせてあげたことで、さっきまで、ってのはもしかして手と唇でイかせてあげたことか?
 どっちかというと「今」のほうがきついような気もするが。

「うん。わたしにも良くわからないけど、ホントに平気なの。だから……お願い、続けて……」

 そう言って後ろを振り返る。
 俺をじっと見つめてくる遠坂の瞳は、なんだか……こう、ひどく潤んでいるような気がして……えーと。
 
「ううん……お、お願いします、続けてください。わたしを……もっと……いじめて」
「…………」

 ――――――



 ――衛宮士郎。
 本日二度目の理性崩壊。




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あとがき

…………
この話で終わらせるはずだったんですが。
ええと、見ての通り終わりませんでした。
すいません、次で終わります。
はい、間違いなく。

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