青と蒼と藍

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VS遠坂

第4話

 パクッと……目の前にちょこんと立つ――を口に含んだ。
 ゆっくりと、味わうように、舐め、しゃぶる。
 口の中で――が硬くなっていくのが舌先を通して感じ取れる。
 それに比例するかのように溢れてくる甘い蜜。
 あとからあとから湧き出してくるそれは、どれだけ飲み干そうと喉を鳴らしてもいっこうに渇く気配がない。
 それでも、丹念に丹念に、飽くことなくその蜜をすすり続ける。
 そうしていてもそこが渇くことは決してないけど、その代わり、滑り込むように聞こえてくるかすれた声が耳朶をうつ。

「はぁ……んっ、んっ、くぅっ……はぁ……っ……んっ」

 必死で抑えようとしているのに、我慢しきれずに漏れ落ちる声。
 その声を聞きながら、俺はよりいっそう唇の動きを加速させる。
 舐め回したり、噛みついたり、吸ってみたり……珍しいおもちゃを与えられた子供のようにそれを弄くり回す。
 
「ひっ――あぁぁ……んっ!」

 引きつるような声と共に少女の体が跳ね、その瞬間がおとずれようとしたその時、彼女の体を責めさいなんでいた唇と指を、俺はあっさりと引き離した。



 ぐったりと――
 それこそなんの偽りもなくぐったりと、仰向けのまま布団に沈みこむ少女。
 全身にうっすらと汗を浮かべ、天井に向かってささやかに張り出した胸が、苦しげに上下する。

「ん……そろそろ降参するか、遠坂?」

 俺は横たわる遠坂にそう尋ねながら、彼女の蜜でよごれた口元を手で拭く。
 手で拭いて、今度はその手を見下ろした。
 それは口元と同じように遠坂の物で濡れていた。
 口だけでなく、手も使って遠坂を責めていたのだからそれもあたりまえ。
 それでもって、濡れている場所を濡れている物で拭いたって意味が無い、これもあたりまえ。
 俺の口元は最初よりもひどくなってしまった。
 唇を濡らす蜜が甘いにおいを放ち、それが鼻孔を強くくすぐる。

 これはこれで心地良いもんだけど、さすがに少しは綺麗にしたい。
 とはいっても、口元はもちろん右手もびっしょり濡れているし、都合により左手は現在つかえない、服で拭おうにも着ていた服は全部ベッドの向こうに放り投げてしまった。
 他に綺麗なものといえば……

「ん……」
「ふぁ――っ! ちょっ、士郎。そんなとこ……くすぐった、んっ」

 遠坂の真っ白な太腿。
 その内側にぴったりと吸いつくと、遠坂がくすぐったそうに身をよじる。
 そのまま逃げようとするので、右手でそれを押さえながら、撫でるように唇を滑らせた。

「んっ……あ、うぅ……」

 感じている時とは若干ニュアンスの違う声。
 こういう声も良いかなぁ、とか思いながらふるえる脚にキスを落とす。

「いっ……あ――」

 あ、と……強く吸いすぎた。
 慌てて唇を離したら、そこにはうっすらと赤い痕が――これは俺の物だぞ――というような感じで自己主張している。
 うーん、これは……後で遠坂に怒られるかも。
 後難を心配しながら、ごまかすようにその赤い痕を舌でぺろっと舐めあげた。
 遠坂のその部分は、俺の唾液と、俺がなすりつけた遠坂自身の蜜によって濡れ光っている。
 で、ある程度は綺麗になった自分の口元を、最後の一掃除と舌で舐めた。
 わずかに残っていた液体が舌に触れ、遠坂の味が口の中に広がる。
 まあ、遠坂の味といっても、別にはっきりそうとわかるわけではないけど。

「そろそろ……降参する気になったか?」

 さっきよりも更にぐったりとしてしまった遠坂に、俺はもう一度そう聞いた。



 あれから――俺の「いじめてやる」宣言から、すでに一時間以上が過ぎている。
 その間、俺の攻撃にさらされながら、遠坂はなお屈服しない。
 イキそうになる寸前でおあずけをくらい、そのまま敏感になってしまっている体を再び責められて高みに連れ去られそうなところでまたおあずけ。
 このコンボをもう十回以上くらっているというのに、遠坂の口から降参の一言は出てこない。
 今もそう。
 尋ねた俺に対しての返答は。

「――っ」

 この瞳が正確にものがたっている。
 誰がアンタなんかに降参するもんですかっ――というよりは……
 誰があんな恥ずかしいこと言うもんですかっ――そんな感じだ。

 ……うーん。
 拒否する気持ちは思いっきり良くわかるんだけど、そろそろ言ってくれても良いんじゃないかな、と思う。
 というよりも――そろそろ言ってくれないと俺のほうが限界に達しそう。
 なにしろ、好きな女の子がこれだけの姿を自分の目の前にさらしているのだ。
 遠坂より先にこっちの我慢が尽きてしまいそうになる。

 いっそのこと――このまま一気に遠坂を……


 ああ――駄目だ駄目だ。
 それでは、この戦いの敗北を自ら認めてしまうようなもの。
 ただでさえ俺に有利な夜の戦い、なおかつ彼女の両手を後ろ手に縛り『呪いガンド』をも封じたこの状況。
 これだけのお膳立てが整っているというのに、自ら敗北の道を行くなどということは許されない。
 ここで勝たなければ、俺は一生、遠坂に頭が上がらなくなってしまう。

 ……いやまあ、普段はそれでも別に良いんだけど、夜の……ベッドの上では、やっぱり、なぁ。
 俺も一応男だし。

 もう一度、遠坂の瞳を下方から覗き込む。
 そこにはやっぱり強い光を放つ遠坂の瞳。
 降参しそうな雰囲気はまだないが――ちょっとだけ、そう、いつもよりもちょっとだけ、その瞳が切なげに潤んでいるような気がする。
 もう少しだろうか?
 もう少し押せば、遠坂は俺の前に可愛い姿を披露してくれるだろうか?
 降参して、教えてあげたあの言葉を言ってくれるだろうか?

 ――よし。
 こうなったら、絶対に、なにがなんでも、この戦いに勝ってみせる。
 後でどれほどの魔術鍛錬を課せられようが、何発もの『呪いガンド』をくらおうが知ったものか。
 今、この瞬間の遠坂凛を可愛がるのだ。

 すっと……体の位置を元に戻し、再び攻撃態勢を整える。

「ぁ、ん……」

 下方へ移動していく俺を、悔しげな、泣きそうな、切なげな、いろんな要素が混じりあった顔で、遠坂が見送った。




 俺の体がすっぽりと入り込むほどに開かれた遠坂の両脚。
 彼女としても脚を閉じたいようだけど、さんざん俺の責めをくらっているために力が入りきらないみたいだ。
 ほんのちょっと右手で太腿を押すだけで、簡単にその部分がさらけ出される。
 綺麗なピンク色をした遠坂の秘唇。
 可愛らしく息づくそれが、いまは元の形がわからないほどに濡れそぼっている。
 一時間以上、俺の攻撃を耐えてきたのだから、それも無理はないか。
 むしろ、いまだに決壊していないことを称賛すべきだろう。

 とはいえ、これ以上の攻撃を受け続けたら、すぐにでも崩壊してしまうだろうことは想像に難くない。
 俺としても、遠坂が降参する前にイかせてしまっては意味がないので、今後の責めはじゅうぶん注意して行わなければいけない。
 その部分が放つ遠坂の香りに頭をクラクラさせながら、俺はゆっくりとそのピンク色の唇にキスを落とした。

「ゃ――っ!」

 途端に跳ね上がる遠坂の体と声。
 それを優しく押さえつけながら、舌を膣内へスルスルと潜り込ませ、その上部に茂る繊毛に右手を持っていく。
 くすぐったいような感覚を与えてくるその茂みをかき分け、そこに屹立する肉豆を親指と人差し指でつまむ。

「ひっ、あぅ……!」

 クイクイッ、とそこをひねると、そのたびに遠坂の声が一オクターブ上がる。
 膣口から流れ出してくる蜜を、舌を伸ばしストローのようにしてすする。
 甘い。
 味覚がやられてしまったのか、それがとんでもなく甘く感じられた。

「んっ――あぁぁ……士郎……」

 ニーソックスに包まれた脚がピンと張り、白いシーツをくしゃくしゃにしていく。
 つま先が布団をグッとつかみ、遠坂の腰がじっとしていられないかのようにせり上がった。
 
「ん、遠坂……」

 彼女の腰が持ち上がったので、唇で愛撫しやすくなった。
 舌は膣口、右手は肉芽、そして左手は――
 実のところ、俺の左手はさきほどから遠坂のある一点を責め続けている。
 それがどこかというと……。

 俺は左手の中指をそこからゆっくり抜こうとする。

「ひゃん――っ、んっ、ぁぁ……」

 いつもとは違った遠坂の鳴き声。
 気持ちが良い……という感じではない、不思議な鳴き声。
 くすぐったい、とか、じれったい、というのとも少し違う。
 気持ち悪そうに、それなのに無視できないほどの刺激が送られてくるので、どう反応すればいいのかわからず戸惑っている、そんな感じだろうか。

 指の第一関節までを引き抜くが、先っぽだけはまだそこに入れたまま。
 三分の二ほどが抜き出されたその指には、水色のうっすらとした膜のようなものが張られている。
 中指にぴったりと張り付いているそれは、いわゆるその――ゴムだ。
 避妊だけではなく、ねっとりとしたジェルが潤滑油がわりとなって性交の手助けをしてくれるという一品。
 普段は別の部分を守ってくれるそれが、いまは俺の中指を包み込んでいる。

 で、その中指が責めている遠坂の「そこ」というのは――

「やぅ……し、ろう……そこは、いぁ……だめ」

 そう……「そこ」
 後ろのほうにひっそりと息衝く、遠坂のもう一つの穴。

 ――お尻の穴。

 もう一度、そこの奥まで指をもぐりこませると、遠坂が苦しげに息を吐いた。
 さっきまでは別の箇所を責められていたため、そっちの刺激に気を取られてお尻を意識していなかったみたいだけど、今はそうはいかない。
 ここまではっきりと指を動かされると、その指を何処に入れられているのかが確実に認識できる。
 というか、俺もわざとそういうふうに攻撃しているし。

 根元まで埋め込んだ中指を上のほうに――つまり、膣口のほうへと折り曲げる。

「くぅ――ぁっ!」

 じっとりと汗をかいたまま、体をくねらせる遠坂。
 感じているわけじゃなく、多分、お尻のほうに指を入れられることで強烈な羞恥を感じているのだと思う。
 まだ俺も、遠坂がここで快感を得られるほどには、彼女の体を開発できているわけじゃないから。
 だから今は、遠坂の羞恥を引き起こすアクセントとしてだけ、ここを責める。
 もっと先へと進むには、まあこれからじっくりと……

「んっ」
「ひあぁぁっ! あ、あっ! ん――っ!」

 ピチャピチャと音を立てながら舌を使う。
 蜜を塗りつけた花びらみたいになっている小陰唇を口で引っ張り、唇で軽く噛みながら吸う。

「あっぁ――!!」

 右手の指で捕捉ずみの肉芽は、つまんだり、引っかいたり、つねったり、転がしたり、弾いたり、ありとあらゆる手管で弄ってあげる。

「ふあっ! あん、んん、んっ!」

 そして、左手は当然のごとくお尻のほうを攻撃中。
 指を折り曲げて、ひねる。

「――――っ!!!」

 声にならない悲鳴。
 どうしようもない衝動に突き上げられて、遠坂の体が大きく揺れた。
 あ、またイク。
 俺は攻撃をやめる瞬間を見計らう。
 イかせてしまっては元も子もない。
 遠坂には悪いんだけど、今日に限っては心をあくまにする。
 いつもは逆なんだし、一回ぐらいなら許してくれるだろう、と、ちょっとだけ心の中で弱気になりながら。
 
「ん……あ、あぁ……士郎……っ!」

 官能が高まってきた遠坂の声だけど、どこかそれが空しい響きに聞こえる。
 もう彼女も悟っているのだろう。
 今回も俺がイかせてくれないのだろうと。

 そんな遠坂に対して、俺は限界ぎりぎりまで責めることにする。
 もしかしたら今度はイケるのかも、と思わせておいて、やっぱり寸前でおあずけ。
 こうすることがより効果的。
 ……ちょっとひどいかな、とは思うけど……
 いやいや、そのぐらいしないと、多分遠坂は降参してはくれないだろう。
 今日だけ……今日だけだ。

「ふぁぁっ……士郎っ……し、ろう……」

 途切れながらのかすれた声が俺の名を呼ぶ。
 あと少し――
 ここから先は慎重に慎重を期して……
 
「――――」

 視覚を閉じる。
 視覚を閉じて、触角で――の中身を視る。
 ―――途端。
 頭の中に沸き上がってくる一つのイメージ。

「あっ、んぅ……あ、あぁ、ぁぁぁ……」

 ピチャ、ピチャ、クチュ……

 蜜が舌の上で跳ねる音、右手の指に感じる尖った肉芽、左手から伝わってくる直腸の感触。
 それら以上の情報が、頭の中に直接入り込んでくる。
 構造解析――
 それがたとえどんな物でも、己の魔力を通し、触れることでその構造を把握する。
 かつて切嗣に「なんて無駄な才能だ」と嘆かれたりもしたこの能力。
 実際、これまでの人生で、自転車を直すこととかテレビを直すこととかストーブを直すこととかにしか利用されなかったこの能力。
 それが今は、頼もしい武器として大いに活躍している。
 俺自身、こんなことにも利用できるとは思ってもみなかった。
 普段はそんなこと思いつきもしないし、大体の場合、その時の俺にそんなこと考える余裕なんて無いから。

 右手から、左手から、唇から、舌から――
 ありとあらゆる場所に触れ、遠坂の体の設計図ともいうべき情報が頭の中でイメージされる。
 どこをどうすれば彼女が感じるのか、どうすれば鳴き声を上げさせることができるのか、どうすればイかせることができるのか……イク寸前でおあずけを食らわすことができるのか。
 すべてが――手に取るように、正確に把握できる。

 それをじっくりと解析し、浮かび上がった攻略ポイントを的確に愛撫しながら、

「ごめんな、遠坂。もう少しだけ俺にいじめられててくれ」

 聞こえないぐらいの小声で、俺はそう彼女に謝った。






「はぁ……はぁ……は、あぁ…………」

 俺がゆっくりと体を起こした時、遠坂は断続的な吐息を漏らしながら布団の中に沈みこんでいた。
 今回も、遠坂はイッていない。
 これまで以上の限界ぎりぎり、臨界点を完璧なまでに見切った俺の愛撫。
 燃え上がり焼け付く寸前だった遠坂の体と心は、達するという冷却機関を発動させることなく、今もなお低温で燻り続けている。
 
「んっ……ん、ん……」

 もどかしげにくねる遠坂の真っ白な両脚。
 俺はちょっと体勢を変えるべく、無意識のうちに俺を絡めとろうと動くその両脚のあいだから身を起こした。
 仰向けに沈み込む遠坂の横に膝を着く。
 ちなみに、左手だけはそのまま、あの場所から移動していない。
 この体勢なら、俺の攻撃に遠坂がどんな反応を見せるのかを簡単に確認できる。

「あ……」

 すぐ横に来た俺に、遠坂は熱にうなされたような瞳を向けてきた。
 体はまだ適度な温度を保ったままで、冷却されてはいないみたいだ。
 というか……そうさせないために、俺の左手は今も遠坂のお尻のほうで活動を続けているわけなんだけど。
 そこがまだ気持ち良さを感じるほどに発展していないということが、この場合は有利に働く。
 いくらこっちを責められても達することはできず、それでいて、後ろを弄られる羞恥心のために平静を取り戻すことも不可能。
 
「ふっ、ぅあ……」

 後ろに入れた中指で中の壁を引っかくと、なにかじれったそうな動きを遠坂が示した。

「ここ、どんな感じだ、遠坂?」

 お尻の中で指を蠢かせ、顔を寄せながら聞くと、遠坂がどこか怒ったような表情になる。
 それで俺を睨みつけてくるんだけど、でもなんとなくそれに力が無いような……
 まあ、ここまでの事を考えるとあたりまえか。

「気持ちいいか?」
「ぅっ――そんな、はず……ないでしょ、馬鹿……」

 なんともいえない様子で遠坂が顔をしかめた。
 そんな遠坂の表情を注視しながら、中のしわをほぐすように指で丹念にこすってみる。
 
「これは?」
「ぃあ――っ、ぁ……」

 口ではっきりとした答えは返さずに、ただ眉根を寄せながら首を振る。
 
「じゃあ――」

 そう言いながら、左手の親指を前の穴へ……

 クチュゥ――

「ひぁ――っ!!」

 確かな蜜の音を響かせながら、左手の親指は遠坂の秘唇の中へと消えていった。
 後ろのほうとは明らかに温度が違う膣内。
 太い親指でもやさしく迎えてくれるだけの包容力もある。
 そんな場所を突き進んでいく我が親指。
 ある程度まで行ったところで、若干の針路変更、そして中指との共同作戦。
 お尻と膣。
 その間にある薄い壁を、二本の指で挟み、さらに擦りあげる。

「こういうのはどうだ?」
「くぅあっ! んっ、や……士郎、んっ!」

 今度は完全に感じてるみたいだ。
 後ろだけだと性感を刺激するにはいたらないようだけど、敏感な前と組み合わせればやっぱり効果はある。

 うーん、そうだな。
 後ろだけで感じさせるにはまだ時間がかかりそうだ。

「まあ、これからずっと、先はあるし」

 あせる必要はない。
 ゆっくりと開発してあげれば良いだけだ。

 ん……なんか、当初の目的から、どこかが微妙にずれ始めたような気が――
 まあ、気のせいということにしておこう。

 そんなことを考えているあいだにも、俺の左手は自在な動きを見せている。
 秘唇のこぼす蜜が左手の手首までを濡らしていた。

「はぁ、んっ、んっ……あぁ……」
「遠坂……」

 俺は横から覆いかぶさるようにして体を倒し、遠坂の唇にキスを落とした。
 唇が柔らかさと甘さに包まれる。

「んっ、んぅ……ぁぁ……ん、士郎……」

 口の中に縮こまっている舌を吸い出すように絡めながら、なお左手で下方を愛撫するのも忘れない。
 くちゅくちゅ、と、上下両方の唇から聞こえる水の音。
 唇と左手でじっくりと責めながら、遠坂の性感を少しずつ昂ぶらせていく。

「あぅ――っ!」
「あ……」

 左手がちょっと強めに秘唇を嬲ると、その感触に耐えられず、遠坂が顔を背けた。
 そのおかげでキスをすべき唇が俺の目の前から消えてしまった。
 代わりに視界に入るのは遠坂の横顔。
 切なげに歪む表情とか、うっすらと赤くなった小さな耳とか、うなじのラインを隠す綺麗な黒髪とか、キスマークをつけたくなるような真っ白な首筋とか……
 正面じゃなく、横からこうやって観察するのも結構良いかも。

「ん……」
「ひゃん――っ!」

 俺は衝動のままに、遠坂の可愛らしい耳に噛みついた。
 噛みながら……舌を這わせて愛撫する。

「やぅ……士郎、やだ、そんなとこ……んっ、ぅ……」

 くすぐったいのか、気持ち良いのか、気持ち悪いのか、どれとも取れるような反応を返してくる遠坂。
 ふつうなら判断に迷いそうなところだけど、ここが彼女の弱点のひとつだと知っている俺は、責めることを躊躇しない。
 耳たぶを甘く噛みながら、耳孔にふぅっと息を吹き掛けた。

「ひぁっぅ……うぅ……」

 一瞬、びくっと体を反応させ、その後それを隠すように唇を噛む。
 すべての弱点が俺に見抜かれている、ということは遠坂もじゅうぶんわかっていることなんだろうけど、だからといって素直に感じていると認めたくはないらしい。
 それが悔しさから来る行動なのか、羞恥から来るものなのかは俺にもわからないけど――遠坂は意地っ張りである、ということだけは疑いようがない。
 そして、そんなところが俺の気持ちをより昂ぶらせているということには、たぶん遠坂は気づいていない。

 闘争心を燃え上がらせた俺は、左手の動きを一気に躍動させる。

「んぁっ! や、士郎っ! ん、んっ、つ、よすぎる、あぅ……っ!!」

 クチュッ、クチュッ――

 俺の動きにどこまでも敏感に、そして正確に反応してくれる遠坂。
 親指に対する膣の締めつけは確実にその強さを増している。
 その圧力に負けないよう、俺は左手に意識を集中させた。
 すさまじい速度でピストン運動を展開させる。

 グチュッ、グチュッ、グチュゥッ――

「いっ! あぅっ! ちょっ、まっ……ん、ひぁ――っ! ゆるし……し、ろう……っ!!」

 後ろの穴と、前の穴。
 俺は左手の中指と親指を駆使し、その両の穴を思う存分突きまくる。
 肉壁をこすり上げ、突き上げ、腕を回すようにしながら内部を堪能し、遠坂のより甲高い鳴き声を上げさせる。
 
「ふあぁっ……んっ、んっ! くぅ――」

 ピュッ、ピュッ、と可愛らしい水音を鳴らして飛び散る遠坂の愛液。
 噴水のようなそれが俺の腕を濡らし、さらにシーツの上にも小さな池を作り上げていく。

「うわっ。凄いな、遠坂。俺の手、もうびしょびしょだ」
「あぁぁ……そんなこと、無い……」
「ほんとだって。ホラ、音も聞こえるだろ?」

 そう言ってわざと音を立てるように腕をくねらした。
 感じている証拠ともいうべき蜜の音が、絶え間なく部屋の中に響きわたる。

「んっ、あっ! 馬鹿ぁ、やめて……んぅぅ……」

 体をくねらせる遠坂は今にもイキそうな状態になっている。
 このままイかせるわけにはいかないので、俺は少しだけ腕の律動を緩めることにした。
 ただ、これまでのように、急に止めることはしない。
 ある程度イキそうな状態を保たせたまま、それでいて決してイケないような状況を作り上げる。
 そのために必要な情報は、俺の脳裏に、イメージとしてすでに焼きついている。


 切嗣――
 切嗣が俺に言った「無駄な才能」
 確かに普段はあんまり役に立たない能力だけど、それでもやっぱり、俺がこの能力を授けられたのには意味があったんだよ。

 たぶん、だけど……


「ひあぁぁ――――っ!! 士郎……っ!」

 おっと、危ない。
 変なことに気を取られている場合じゃなかった。
 イかせてしまっては元も子もないんだ。
 すべてを見通す力、そして、これまで幾たびもの夜を彼女と共に過ごし、つちかってきた技術と経験。
 あらゆる力を総動員し、イかせないように、じっくりじっくりと責めあげる。

「あ、あ、あぁぁ……んっ、あ……ふ……ああ、も、ぅ……また……」

 じれったそうな声が遠坂の唇から漏れ落ちた。
 それと同時に、より強い刺激を受けたいのか、彼女の下半身が俺の左手を追いかけるように浮かぶ。
 たぶん、無意識のことなんだろうけど、こうやって求めてくる遠坂っていうのも新鮮で可愛いよな。
 そんなことを思いながら、その腰の動きから左手を遠ざけるように扱う。
 焦らし作戦はいまだ継続中。
 それを追いかけるように遠坂の腰がまたちょっと上がる。

「遠坂。いま自分がどんな格好してるかわかるか?」
「……え?」

 仰向けになったまま、両腕は縛られて腰の下。
 そのために上体を持ち上げることができず、それなのに腰だけを上げようとするから、当然その姿は――

「あ――」

 遠坂も気づいたみたいだ。
 慌てて腰を引こうとするが、今度は逆に俺がそれを追う。
 左手をほんのちょっと動かし、遠坂の弱点である箇所を中から指で押す。

「きゃぅ、っうぅ……」

 びっくりしたような声が遠坂から漏れて、そして腰の位置がさっきの場所に戻った。
 膝を立て、腰を突き出し、背を反らせのけぞる。
 ブリッジ――というほどあからさまな格好でもないけど、それでも女の子にとって恥ずかしい体勢であることには間違いない。
 おまけに裸だし、腕は縛られてるし、股間からはたっぷりとした蜜が零れ落ちてるし。

「士郎、や、やっん……はぁ……うぅ、ひぁっ!」

 体に与えられる刺激、自分がいましている格好を無理やり認識させられた羞恥心。
 さらには――

「はしたないなぁ、遠坂。こんな格好で腰振っちゃって」

 俺の言葉責め。
 三方向からの攻撃に、遠坂の頑強な精神力も、そろそろ崩壊間近か。

「あ、あんたが……んっ、くぅ……そ、そんなこと、するから……んぁあっ!」
「ん? 俺のせいか?」
「くっぁ、そ……そう、よっ」
「どっちかというと、遠坂がエッチなのが原因じゃないのか?」

 そんなことを言いつつ左手をくねらせながら、耳たぶをしゃぶる。

「そんな、わけっ……ひぁっ! な、無いっ」
「んん、そうかな?」

 じんわりと言葉でいじめながら、さらに遠坂を追い詰めていく。
 意地悪すぎるというのは自覚してるけど、今日だけはとことんまでいじめ役に徹する。
 ……それに、なんとなく俺自身、そういうのが好きなのかなぁ、とか最近思い始めてるし。
 うーん。
 普段の生活ではこの真逆だから、それの反動なのかもしれない。

「あうっ――うぅ……し、ろう……わたし、もう……」
「イキそうなのか?」
「う、うん……」

 恥ずかしげに俺を見つめてくる遠坂の瞳は、確かにそれが真実だと認めていた。

「ふーん。で、遠坂。なにか俺に言うことなかったっけ?」
「う…………」

 遠坂が軽く唇を噛んだ。
 先ほどから、それを言わそうとする俺と言うまいとする遠坂、この両者による戦いがくり広げられているのだ。
 ここで言ってしまえば、それはすなわち遠坂の敗北となり、彼女のこれまでの我慢が水の泡と消えることになる。

「どうする、まだ我慢するか? 俺はそれでも構わないけど」

 余裕を持って俺はそう言うが、実のところ俺にも限界は近い。
 好きな女の子が、自分の目の前でこれほど乱れた姿をさらしているのだ、しかも裸で。
 健全な男なら我慢などできるはずもないし、そして俺も健全な男の端くれだ。
 そろそろ我慢の限界を突破してしまいそう。

 とはいえ、それを正直に言うようなことなど、当然するはずがない。
 これは俺と遠坂の戦いであり、どちらかの我慢が切れた時が、すなわち勝敗を分かつ時。
 だったら、少しでも余裕をあるところを見せておいたほうが有利な状況を生めるというものだ。

「さっき、ちゃんと教えてあげただろ。イキたいのならなんて言えばいいか」
「あ……ぅ……」

 俺は余裕の表情を装い――実は内心結構あせっているのを隠しながら――そう遠坂に聞いた。
 いつもの遠坂なら、俺の余裕の無さをおそらく看破しただろうが、俺以上に余裕をなくしている今の遠坂には、そういった冷静な判断ができない。
 隠しきれない体の火照りを実感しながら、ただうつむいて我慢するだけだ。

「なあ、遠坂……」

 耳元でささやきつつ、俺の左手は彼女の股間をまさぐり続けている。
 唇は耳たぶを捉え、右手で遠坂の艶やかな黒髪を優しく梳く。
 激しい愛撫は止め、ゆっくりと優しく、遠坂の体と心を溶かしていく。

「は、あぁ……ん、ん……士郎……」

 うっとりとした声音で俺の名を呼ぶ遠坂に、俺は優しく微笑みかけた。
 ……のだけど、俺としてはここが勝負どころと見定め、実は思いっきり気合を入れている。
 この場をしのがれたら、たぶん、今宵の戦いは俺の敗北となるだろう。
 もう我慢できそうにないし、俺が。

 クチュ、クチュ、チャプ、チュプ……

「あ、はぁ……ん、ん、んぁ……あぁぁ……」

 上と下から聞こえてくる水の音と、ひっきりなしに漏れる遠坂の鳴き声。
 そして俺は、遠坂が降参する瞬間を、今か今かと待ちわびている。
 
 まだか……まだか……
 遠坂から言ってくれないとこれには意味が無いわけで、そして俺の我慢の糸はそろそろぷっつりと切れそうで。
 ああ――
 このまますべてをかなぐり捨てて、遠坂を思いっきり抱きたく――

「わ、わかった……」
「……え?」

 俺はちょっとばかり変な答えを返してしまう。
 えっと、今の「わかった」ってのは……

「わかった……ん、はぁ……言う……言うから……お願いだから、イかせて……」
「……」

 それは――この戦いに、俺が勝利した瞬間だった。




「い、言うって、な、な、なにをさ」

 う――やばい。
 焦らすはずの言葉がやたらとドモってしまった。
 落ち着け、落ち着け。
 ここでしくじってしまったらこれまでの苦労がすべて吹き飛んでしまう。

「なにをって……わかってるでしょう」

 遠坂のその言葉を聞き、とりあえずほっとする。
 どうやら俺の失態には気づいていないみたいだ。
 静かに深呼吸をして、胸の動悸を鎮める。

「ああ、わかってる。でも……ちゃんと言えるのか、遠坂?」
「言わなきゃ……最後までシテくれないくせに」

 うん、まあ――それはそうだな。
 そのためにここまでがんばってきたんだし。

「それじゃあ、さっき教えたとおり――俺におねだりしてみせてくれ」
「っ――」

 おねだり。
 それはつまり――遠坂が俺に対して、イかせてくれるようお願いすること。
 さらに、俺が教えた言葉とは。

「わ、わたしの……」
「うん、遠坂の?」
「ぅ――あ……」

 遠坂はなにかを言おうとして口ごもってしまう。
 さすがにアレを口に出すのは恥ずかしいのか。
 だが、それを言わせないことには俺の完全勝利とはならないわけで、その言葉を遠坂の口から引き出すために、俺は柔らかな愛撫を彼女の体にほどこす。

「あっ、あぁ……ん、し、ろう……」
「遠坂、ちゃんと言って」
「……う、うん」

 そう小さくうなずいた遠坂が、すぐになにかに気がついて言い直す。

「――はい……」





 ゆっくりと遠坂の腰が上がっていった。
 両脚を大きく開き、震える膝が少しずつ立てられていく。
 腕は後ろ手に縛られたままで自由の利かない体。
 仰向けのままで、腰だけを上げる姿は先ほどと同じ。
 ただ、さっきまでと違うところは、両脚を開いたその先に俺がいるということ。
 遠坂のすべてが俺には丸見えであるということ。

 特等席に陣取った俺の視界に、遠坂の濡れ光る秘唇がはっきりと映し出された。

「……」

 そのあまりにもな光景に、俺は思わず生唾を飲み込んでしまう。
 いやだって――遠坂だぞ。
 目の前で脚を広げて膝を立てて腰を浮き上がらせて、とんでもない恥ずかしい体勢を取ってるのはあの遠坂だぞ。
 そりゃまあ、彼女にこんな格好を取らせたのは俺自身ではあるけれど。
 真っ白な肌も、すらっと伸びた綺麗な脚も、ベッドの上に広がる長い黒髪も、自らが吐き出した甘い蜜にまみれているその秘唇も、そこから水滴のように垂れ落ちる愛液も、すべてがあの遠坂凛の物。
 そして――その全部が、今は俺の物。
 手を伸ばせば簡単に手に入る俺の物。

「っ…………」

 俺は衝動的な征服欲に駆られ、その可憐な獲物に襲い掛かってしまいそうになるが、すんでのところで思いとどまる。
 かなり恥ずかしい格好をさせたのは事実だけど、まだ肝心の台詞を言わせていないのだ。
 この甘い香りにつられるわけには……
 くっ――
 勝利目前で思わぬ強敵が現れたものだ。

 俺はその性衝動をなんとか堪える。
 遠坂の肝心な部分から軟弱にも目を逸らし、高く立てられた彼女の両脚に目をやった。
 あ、さすがに体勢がきついのか、彼女の両膝は今にも崩れそうにふるえていた。
 思わず遠坂のお尻に手をのばし、下から支えてあげる。

「ん、ぁ……」

 そのまま、つい、そこが見やすいように持ち上げてしまう。

「や、ん……士郎」
「うわ……す、ごいな……」

 視界に飛び込んでくる遠坂のソレ。
 ぐっしょりと濡れ、左右に割り開かれたそこは、なにかを待ちわびているかのようにフルフルと震えていた。
 誘われるように、もう片方の手をそこに伸ばしかけるが、この衝動にも俺はなんとか耐え、逆に遠坂に聞く。

「遠坂……ここ、どうしてもらいたい?」

 それを――ちゃんとお願いすれば、その通りにしてあげる。
 そう言って遠坂の反応を待つ。

「……さ、さわって」

 小さな声が返ってくる。
 ん?
 教えたのとだいぶ違う。

「そうじゃないだろ、遠坂」

 そんなことを言いながら、目の前にある花びらに、フゥッ、と息を吹き掛けた。

「ひやぁ――っ! あ、ぁ、んっ、ん……」

 敏感になっている遠坂の体は、たったそれだけの事でも素早く反応する。
 秘唇からあふれた蜜が花びらからこぼれ、お尻を伝ってシーツの上に落ちる。

「教えたとおりに言ってくれないと、またおあずけにするぞ」

 正直、これ以上の焦らしは、遠坂にじゃなくて俺自身に対してのおあずけになるのだが、とりあえずそれを隠しながらできるだけ意地悪く言う。
 はぁ……はぁ……という遠坂の声が、静かな部屋の中で切なげに響いている。
 


「……わ、たしの……」



 そして、ゆっくりと……遠坂が言葉をつむぐ。

「んっ、ぁ……わたしの……お……」

 声が震え、両脚が震え、体全体が震えている。


「わたしの……お○○○と、お尻と、ク――――を……、たくさん可愛がってください。お願い……します――」




 瞬間――
 ブッツリと、俺の最後の理性がハジケ飛んだ。




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あとがき

やるんなら徹底的に。
そういうわけで、いじめられまくりな遠坂凛と、
予想以上に暴走し始めた衛宮士郎。
やりすぎたかなとは思いつつも、最早、修正はきかず、
なんとなく開き直り気味。
まあとりあえず、次でようやく本番へ突入します。
――な、長かった……

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