青と蒼と藍

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VS遠坂

第2話

 普段よりも数度、温度が上昇しているように感じられる。
 ねっとりとしたピンク色の薄い膜があたりを覆い、その部屋の暖気を圧縮しているよう。
 ゆるやかに、だが確実に、日常の風景から遠ざかっていくその部屋。

 その原因は明白。

「ん……あっ、し、ろう……」

 俺の名を呼ぶ美しい少女と。

「……遠坂」

 その少女の唇をついばみながら、彼女の名を呼ぶ俺。
 衛宮士郎と遠坂凛。
 恋人同士である俺たち二人が、ひとつの部屋でこうやって唇を重ね合わせてるから。

 ぴちゃぴちゃ、と、かすかにひびくこの水音も、今この部屋ではあたりまえのこと。
 心地よい音楽。
 唇の隙間からゆっくりと舌を差し入れると、遠坂がそれを迎え入れるように唇を開いた。
 絡みつき、交わいあう。
 二週間ぶりということもあるからか、遠坂はいつもよりも積極的のような気がする。
 こうやって舌を絡めあうキスは、けっこう嫌がることもあったんだけど、今日はそれがない。
 むしろ彼女のほうから押しつけてくる。
 唇が触れ合うだけのキスももちろん嫌いじゃないけど、
 これぐらいの、少し、はしたないぐらいの口づけのほうが、お互いを感じあうことができるので俺は好きだ。
 だからこれは望むところ。呼吸が苦しくなるぐらいに遠坂の柔らかい唇を味わった。

 しばらくそんなキスを交わしていたら、遠坂の身体から徐々に力が抜けていった。
 緊張のため少し硬かった身体が、いまは脱力して柔らかくなっていく。
 遠坂の背中に左手をまわして、崩れ落ちそうになるその身体を支えてあげた。
 すうっと、お互いの唇が離れる。

「……遠坂……」
「はぁ……ん、ぁ…………」

 閉じられていた遠坂の瞳がゆっくりと開かれる。
 それを正面から見つめた。
 じっと見つめ、薄桃色に染まった頬に右手をふれさせる。

「あ……ん……士郎……」

 心地よさげな声が漏れた。
 彼女の背中を支える手に体重がかかる。
 俺はその背中を支えたまま、ベッドに腰掛ける彼女の後ろにまわった。
 背中から遠坂を抱きしめる。

「……ねぇ……士郎?」
「ん、なんだ」
「その……ほんとにするの?」
「あたりまえだろ」

 ここまで来てなにを言っているのか。
 だいいち、いまさら止まれるはずがない。

「でも、大丈夫なの?」
「大丈夫って、なにがだ」
「あなたの身体。だって、ほら……昨夜……」
「……ああ」

 昨夜受けた仕打ちを思い出す。
 思い出す……それだけで気分が滅入ってしまうぐらいのきっつい鍛錬。
 確かに心配するのはわかるが、そもそもの加害者は遠坂なわけで……ああ、だから余計に心配するわけか。

「それなら、さっきも言ったけどもう問題ない」
「……でも」

 まあ俺も、あの疲労がこんな短期間で抜けるとは思っていなかった。
 最低でも二、三日はあとを引くだろう、特に――いわゆるアッチのほうはしばらく役に立たないだろうと、そう考えていた。
 でも……下を見る。

「大丈夫だよ、遠坂」

 もう、これ以上なく大丈夫だ。




「ん、やっ……士郎……」

 後ろから、服のなかに両手を侵入させ、下着に覆われた二つのふくらみに手をかける。ちょうど俺の手にすっぽりとおさまる、遠坂の胸。

「あ……ぅ……」

 優しく揉みあげると、小さな喘ぎ声とともに遠坂の頤が上がった。
 身体を密着させ、首筋からその顎のラインを舌でなぞる。
 遠坂の身体がぷるぷると揺れ、うごめき続ける俺の手をぎゅっと握り締めてきた。

「ぁ……士郎、あんまり……胸は……」
「ん? なんでさ?」

 触っててこんなに気持ちいいのは他にないぞ。
 これを味わうなというのは拷問にも等しい。

「だって、わたし……あんまり、大きくないし……」
「……」

 まあ、それは……確かにそうだけど。
 両手でそれを確認する。
 でも……うん。セイバーよりは大きいぞ。
 そう言おうとしたけど、微妙に……フォローになっていないような気がしたのでやめておいた。

「やっぱり、大きいほうが好きなんでしょ、男の子って」
「まあ……一般的にはそうなのかもしれないけど……」

 大は小を兼ねるともいうし、大きくないとできないこともいろいろとある。

「でも俺は遠坂の胸が好きだな」
「え……?」
「俺の手にはちょうど良いし、柔らかいし……うん、それに……遠坂の胸だしな」

 大きかろうが小さかろうがそんなのはどうでもよくて、いま触れているこれが遠坂のものだということ。
 それだけでじゅうぶん、それだけで俺にとっては魅力的。
 その上、大きかったら確かにいうことはないかもしれないが、それだってこれからの成長を期待すればいいだけのこと。
 揉めば揉むほど大きくなるとも言うし。

「だからさ、気にするようなことないぞ。俺は遠坂の全部が好きなんだから……って、どうした、遠坂? なんか、顔真っ赤になってるぞ」
「う、うるさいっ、馬鹿っ!」

 褒めたつもりだったけど、なんか気にいらなかったのかな。
 遠坂は顔を背けてしまった。
 仕方がない、許しを得るためにこの柔らかな双乳を愛でることにしよう。

「や、ちょっ……んぁ、し、士郎っ!」

 さっきよりもちょっと強めの愛撫。
 彼女が言うとおり決して大きくはないが、形が良くて、なおかつ弾力に富んだこのふくらみ。
 ぐにゅぅ、と指をめり込ませても、反発するようにすぐに押し返してくる。

「ぅあ……つよ、すぎる、んっ」
「ああ、悪い」

 俺は素直にそう謝った。
 強く触りすぎるとけっこう痛い場所らしいしな、ここって。
 手の動きを優しいものに切り替える。
 丸く、お餅の形を手で整えるように、下着の上からやんわりと揉みしだく。

「あれ……?」

 そうやって優しめの愛撫をほどこしていると、時折手のひらに感じる異物。
 柔らかさのなかに混じりこんだ硬い感触。

「遠坂、もう感じてきてるのか?」
「な、なによ、いきなり……」
「いや、ほら……乳首立ってる」

 下着越しにもわかるそれは、遠坂が感じ始めたということの何よりの証拠。
 時々、指と指のあいだに挟まり、ひっかかるように「ぷるっ、ぷるっ」と揺れた。

「ん、なんか……いつもよりも硬い、かな?」
「馬鹿っ、そ、そんなこと……」
「ほんとだって」

 それを確認すべく、俺は下着のなかに手を滑り込ませ直接さわることにした。

「……んっ」

 触れると同時に、ぴくん、と遠坂が反応した。
 なんとなく、いつもよりも敏感になってるんじゃないかな、遠坂は。
 そんなことを思いながら、暖かい、というよりも熱くなっているその乳房を手で包む。
 そして乳房をそのまま揉みながら、手のひらで先端の突起を押しつぶした。

「やぅ……ん、ん、あぁ……」
「ほら、やっぱり、もうこんなに硬くなってるじゃないか」
「そんな、こと……んっ……」

 よりはっきりと認識させるために、その左右両方の乳首、硬くしこった突起を指でつまんだ。
 くりくりと、硬さを堪能するようにころがす。

「や、めなさい……士郎……」

 と言われるが、やめろといわれると余計にやりたくなるのが男というものだ。
 乳房いじめをより積極的に遂行する。
 特に先端の突起。
 その手触り、ほどよい硬さ、どれをとっても逸品だ。
 これを無視して通り過ぎることなど、俺にはできない。
 親指と中指で軽くつまみ、より際立たさせるためにすこし引っ張る。
 その上で、人差し指を使って乳頭を軽く引っかいてやるのだ。

「きゃっぅ……ぅ」

 しゃっくりをするかのような震えで、遠坂がその俺の行為に応えた。
 彼女の横顔をちらっと覗き見ると、批判のまなざしで俺を睨んできている。
 でも、普段と違いまったく怖くない。
 多分……睨んでるくせに視線の矛先が一定せず、瞳が潤んでいるのを俺から隠そうと必死なのがバレバレだから、だろう。
 調子に乗った俺はもっともっと楽しむことにした。

「あ……」

 小さな呟き。
 俺の手が、その魅惑的な二つの果実を下着の中からもぎ落としたのだ。
 そのもぎたての果実を、下からすくい上げるように揉みたて、指と手のひらを使いきゅっきゅっと絞りながら、服の中で上下左右に揺さぶった。

「んぁっ……! や、士郎……こすれる……んっ」

 服の中、しかも下着というガードを失っているため、胸を揺らされるたびに先端が服の生地にあたるらしい。
 もちろん俺は――さらにこすらせるため乳房を絞りたてながら上下運動を加速させる。
 生地の裏側に乳首の先端が引っ掛かり、

「くぅっ、んっ……ぁっ」

 そのたびに遠坂の可愛らしい鳴き声があがった。



「もう……いい加減にしないと……ひどいんだから……」

 心地よい鳴き声を聞き続けていたら、遠坂が俺の手を押さえながらそう言ってきた。
 弱々しい力。
 このていどならこの手を振り解いてさらにいたずらをエスカレートさせることも可能だけど、俺は素直にうなずいた。

「ああ、わかった」
「……え?」

 その素直さに、逆に遠坂が驚く。
 ん。
 別に驚くことなんて無いと思うけどな。
 俺だって――そろそろ遠坂の胸を直接見たいし。

 そういうわけで……両手をそのふくらみからいったん離し、そのまま遠坂が着る赤い服に手をかけた。
 この服はボタンがついてなので脱がせること自体は簡単だ。
 でも、着ている本人がおそらく抵抗するだろうと考えると、その困難さは飛躍的に増大する。
 この少女は大抵おとなしくはしてくれないから。

 正直なところ、普通にボタン付きとかの服のほうが脱がせやすい。
 キスとかをしながらじっくりと脱がせることができるし、そうやって相手の性感を徐々に高めることもできる。
 だけど、この服の場合はそうはいかない。
 スピードこそが最も大事になる。
 抵抗するよりも早く取り去ることができるか、勝負は一瞬だ。



 俺はこの赤い服のすそに手をかけ、しばし時を見計らう。

「ん……し、ろう……?」

 胸のふくらみへの攻撃が突然やんだので、不思議そうに俺の名を呼ぶ遠坂。
 後ろから彼女を抱きしめ、振りむいた彼女の唇を奪った。

「あ、ん……ぅん……ん」

 なにかほっとしたような声を上げ、静かに瞳を閉じる遠坂。
 俺は唇をずらしていき、首筋をぺろっと舐める。

「く、んっ……」

 小さな鳴き声と共に、細い、すらっとした顎のラインが跳ね上がり、身体から力が抜けていった。
 瞬間――
 素早く、だが乱暴にはならずに、服のすそをめくり胸の上まで持っていく。

「あ……」

 問題はここから。
 相手が抵抗するよりも早く、このツインテールを突破することが最大の難関。
 以前は良く失敗して、胸の上のあたりに服が巻きついたまま……とかでやったりしたものだ。
 まあ、それはそれで……結構良かったけど。
 しかし今日は完璧を期す。
 服が汚れるとか、しわになるとか、そんなことを考える必要の無い状態で彼女を抱きたい。
 俺は遠坂の脇の下まで持っていった手で彼女の二の腕を上に押した。

「え……あ……」

 必然的に、遠坂の両腕が上方に持ち上げられる。
 そのまま自分の両手を彼女の頭のほうに持っていき、服の首をぐいっとあける。
 ここをツインテールが通過すれば俺の勝ち、それを阻止すれば遠坂の勝ち?だ。
 そして俺は、一気に勝負をかけた。



 すぽんっ
 という音は別に聞こえなかったが、おれは作戦に成功した。
 赤い服が最大の難関を突破し、その勝利の報酬と言わんばかりにツインテールが美しく揺れている。
 ここまでくればあとは簡単。両手から服を抜き取るだけだ。

「やだ……や、ん……士郎」
「あ、こら、遠坂。服つかむなって」

 簡単に抜き取れると思ったのに、途中でしっかりと遠坂が握りしめてしまった。
 そのまま胸元に引きつける。
 俺が見たいと望んだ物はその服の下に隠れてしまった。
 む、これでは服を脱がせた意味がない。

「遠坂」
「――いやっ」

 お願いしようとしたが即座に否定される。
 胸を見られるのがよほど嫌らしい。
 初めての時もそういえばこんな感じだったな。
 下のほうは脱いだくせに上だけ着ていた。
 あの時は、間近にさしせまった理由があったからいやいやながらも脱いでくれたが、それ以降ははっきりと遠坂の全裸を見せてもらっていないような気がする。
 上を着たままか、もしくは電気を消して部屋を暗くしてから、そういうのばかりだった。

 遠坂は自分の胸になにかコンプレックスでもあるのだろうか。
 さっきも言ってたけど、大きさのことか?
 そんなのぜんぜん気にしなくて良いんだけどな。
 大体、セイバーのほうが遠坂よりも小さいけど、それですら俺は気にしていないのに。
 セイバーの胸と比べたら、遠坂の胸はしっかりとした「おっぱい」だ。
 形も良いし張りもある、感度は……セイバーのほうが上かな。

「ねえ、士郎……」
「なんだ」
「電気……消して……」

 恥ずかしげにそう言ってきた。
 やっぱり、そうでもしなければ見せてくれないということか。
 まあ……遠坂が言うんだったら仕方ないか、と、いつもの俺なら考えただろう。
 でも今日は違う。
 今日は遠坂のすべてが見たい。
 遠坂のすべてを、徹底的に愛したい。

 それに……そうやって事を運べるだけの心理的余裕が、今日の俺にはあった。
 普段は、遠坂本人を目の前にしたら彼女の美しさにただ圧倒されて、落ち着くまもなく身体を重ねるだけだった。
 それなのに、いまは余裕を持って対処できている。
 裸で、恥ずかしげに頬を染めて、潤んだ瞳を向けてくる俺の大好きな女の子。
 それを目の前にしても慌てずにいられる自分が不思議だ。

 なんでだろうな。
 それは考えてみたところでわかるはずもない。
 唯一つ、自分でも理解していることは――
 自分の体内……身体の内側から、今にもあふれそうになるほどの「力」が湧き出し続けているということ。
 こんなこと、いままで経験したこと……
 あ、いや……一度だけ、似たようなことは経験があった。
 あれは……そう、あのセイバーとの激闘のさなかのこと。
 敗北寸前まで追い詰められた俺に、突如舞い降りた信じられない奇跡。
 苦し紛れの作戦のはずがなぜか起死回生の一撃となり、俺を最高の勝利へと導いてくれたあの夜。

 あの夜以来、俺はセイバーに一度たりとも敗北していない。
 その事実が俺に自信と経験を植え付けてくれた。
 あの時と今とでは、若干、感覚は違うけれど、それでも驚くほどの「力」と「余裕」が俺の中には存在する。

「士郎……はやく、電気消して……」

 再び遠坂が言った。
 頼みごとをしたらすぐに聞いてくれるはずの俺がなかなか動かないので、ちょっとだけいらついているのかもしれない。
 そんな遠坂を背中から抱きしめたまま、もう一度考える。
 遠坂の全部が見たい。
 彼女が見せたがらないもの、恥ずかしがっているもの、そのすべてが見たい。
 そうすることは、多分、遠坂の意にそぐわないことであり、俺にしても後々なんらかの被害をこうむるかもしれない。
 終わった後に『呪いガンド』の乱れうちでも食らうかもしれない。
 明日から地獄の魔術講座が開かれるかもしれない。
 それでも――

 俺はそのすべてを乗り越えてみせよう。
 存在そのものを賭けるだけの価値が、この戦いにはあるのだから――

「どうしたの? 士郎?」

 考え込んでしまった俺に、遠坂が心配そうに声をかけてきた。
 俺の覚悟はすでに決まった。

「遠坂……」

 名前を呼びながら、再び彼女にキスをする。

「あ……ん、士郎、まって……電気を……」
「いやだ」
「……え?」

 遠坂がこちらを向いて、驚いたように聞き返してくる。
 俺はその瞳を正面から見据えながら、もう一度はっきりと答えた。

「いやだって言ったんだ、遠坂」
「なにを……」
「たまには、遠坂の全部を俺に見せてくれよ」
「え……あっ、ちょ、まちなさいっ」

 そんな制止の声などもちろん聞かない。
 俺は遠坂のすべてをむき出しにするため、いまにも外れそうになっているブラジャーをまずは取り除くことにした。
 背中のホックを右手一本で外し、淡い水色の下着をするりと抜き取る。
 
「あ……っ! だめっ!」

 当然、遠坂の手がその俺の行為を阻止しようと動いた。
 その隙を見計らって、今度は遠坂の腕に絡みついた赤い服を左手でつかむ。
 ブラのほうに気を取られたのか、服のほうに対する遠坂の注意力は散漫になっていた。
 あっさりとそれも奪い取ってしまう。

「あ……っ! やっ、士郎っ! か、返しなさい!」
「駄目だ」

 これを防壁として使われるわけにはいかない。
 両方とも、ベッドの向こうへと放り投げてしまう。

 完全にさらけ出されてしまった遠坂の上半身。
 両手で胸を覆い、俺の腕の中から逃げ出そうとする。
 それを逃さず、しっかりと繋ぎとめる。

「は、離しなさい、士郎っ!」
「離したら逃げるだろ?」
「あ、あたり前でしょっ」
「じゃあ離さない」

 あっさりと言い放ち、両手に力をいれ遠坂の身体を引き寄せた。
 腕の中に抱きとめ、胸を必死で隠そうとする遠坂の両腕の隙間に侵入を試みる。

「んっ、やっ……士郎! やめて!」
「なんでさ……嫌なのか?」
「べ、別に嫌なわけじゃないけど……その、いつもみたいに、ふつうに……」
「これも結構ふつうだと思うけど」
「だから……明かりを消してよ……」
「だからそれは駄目」

 拒否。
 それじゃあ意味がない。

「な、なんでよ?」
「暗くしたら……遠坂の身体が見れないじゃないか」

 こんな綺麗な身体が見れないなんて、そんなもったいないこと出来るはずがない。

「そんな……別に見なくったって、その……できるじゃない……」
「いや、今日はそれじゃあ足りない」
「た、足りないって……」
「さっきも言ったろ。今日は、遠坂の全部が見たいんだ。背中も、胸も、脚も、お尻も、それに……アソコも」
「ば、ば、馬鹿なこと言わないでよっ! そ、そんなこと……出来るはずないでしょう――っ!!」

 があー、と吼える遠坂。
 そんな遠坂に俺はにっこりと微笑んでみせた。

「大丈夫、心配しなくていいよ」
「……え?」
「遠坂は何もしなくていいから。今日は――全部俺がシテあげるから」

 そのぐらいの余裕が今日の俺にはある。
 でも、遠坂はその答えじゃあ納得しないみたいだ。
 まあ……あたりまえだが。

「馬鹿っ! それじゃあ何の意味もないじゃない!」

 全部を俺に見られる、ということには、まあ変わりはない。
 能動的か受動的かが違うだけ。

「じゃあ、遠坂が自分で見せてくれるか?」
「そ、そんなはしたないことっ! するわけないでしょうっ!」

 こういうことに関しては遠坂は受動的で保守的なほうだ。
 逆に、セイバーの方が以外にも能動的で柔軟だったりする。

「それじゃあ、俺がやってあげる以外ないだろ?」
「だから――なんでそうなるのよ!」

 むう。
 堂々巡りだな、これじゃあ。
 こういう時、普段ならたいてい俺が折れるんだけど、今日に限っては俺にそんな気はこれっぽっちもない。

「いつもみたいで……いいじゃない。その、お互い気持ちよく、なれるんだし……」

 恥ずかしそうにぼそぼそっとつぶやく遠坂。
 言うとおり、確かに気持ちよくはなれる。
 だけど、やっぱり足りないんだ、それじゃあ。
 俺の身体……特に、下のほうにあるその部分が、なんだかよくわからないぐらいに自己主張しながら、遠坂凛のすべてを見せろ、と叫んでいるのだ。
 だから――

「遠坂が感じてくれる顔、鳴くところ、鳴きながら俺の名前を呼んでくれるところ、それにイクところ、今日はその全部が見たいんだ」

 リビドーの赴くままにそんなことを宣言した。








 なんとも恥知らずな言葉を言い放った後、俺は体勢を変えることにした。
 背中から可愛がるというのも悪くはないけど、できれば身体の全部を視界に入れておきたい。
 そういうわけで、おれは遠坂の肩をつかみ、ぐっとそばに引き寄せた。

「きゃっ……」

 小さな悲鳴と共に、俺の胸の中に遠坂が背中から倒れこむ。
 彼女の後頭部が俺のお腹にあたる。
 ちょうどそこが枕になったみたいに、遠坂の裸の上半身が俺の腕の中にすっぽりと入り込んだ。
 どことなく、ペットを膝の上で可愛がる姿が連想される。
 下を向くとすぐそこに遠坂の顔。
 視線は逆さまに交差するが、彼女の顔が真っ赤になっていくのはよくわかる。

「や、だ……ちょっと士郎、こんな格好……」

 完全に抱きとめられてしまい、それでもじたばた逃げようとする遠坂。
 なんだかそれすらも可愛い。

「あんまり暴れるなって、遠坂」
「そ、そんなこと言ったって」

 なんとか抜け出そうと試みているようだが、俺は両脚をうまく使ってそれを許さない。
 遠坂が動くたびに、ツインテールが揺れながら俺の身体を撫でる。
 結構気持ちいい。
 服の上からというのがちょっと残念だが。
 俺もそろそろ服を脱ごうか。

「でも、まあそれは後でいいか」

 いまそんなことしたら、せっかく捕まえた可愛い獲物を逃がしかねないからな。
 そんなことをつぶやき独り納得しながら、俺は捕獲した獲物を吟味することにする。

「あ、んっ、はぁ……」

 遠坂の胸に両手を這わせ、揉みほぐす。
 むにゅ、むにゅ……と、いろんな形に変形する乳ぶさ。
 遠坂のそれは、俺の手にしっとりと吸い付いてくる。

「やぁ……ん、士郎……胸は……」

 遠坂が俺の手をつかみながら、そう訴えてきた。
 触られるだけならまだしも、そこに……見られながら……というのが加わると、どうしても気になるらしい。
 さっきも思ったことだけど、どうも遠坂は自分の胸にコンプレックスを感じているみたいだ。
 いや……胸のことに限らず、自分のことを女の子らしくないと、そう思っているようなところが彼女にはある。
 俺からしてみれば、遠坂がなんでそんなことを気に病むのかがわからない。
 確かに、時々、彼女があかいあくまに見えることもあるけど、こうやって二人で夜をすごす時の遠坂は見紛うことなき女の子だ。
 それも……最高に可愛い。

 よし。
 遠坂のためにも、今日はそれを証明してあげよう。
 俺の腕の中にいるときは遠坂は可愛い女の子なんだっていうことを、彼女にじっくりと教えてあげよう。
 そうと決まれば、まずは胸からだ。

「遠坂の胸……すごい柔らかいな」
「な、んっ、あぅ……」

 言いながら、両手でその双乳をもてあそぶ。
 そのたびにプルプルと素早い反応を返してくれる。

「柔らかいし、それに……感度も前より良くなってるんじゃないか?」
「ぅ、あっ……ん、そ、んなこと……」
「ほら、揉むたびに声出してくれるし……それに――」

 可愛らしく突き立った先端の突起を、指先で突っつく。

「ここも、こんなに綺麗だし」
「ぅ――っ!」

 遠坂の身体に一瞬力が入った。

「小さくて、薄いピンク色で……」

 つまんでフニフニと指先で転がした。
 そうすると、その突起は徐々に、だが確実にその硬さを増していく。

「あ、また硬くなってきたぞ、遠坂」
「……う、るさい……馬鹿……」
「こんなに感じて、乳首立たせて……俺の手で触られるの、そんなに気持ちいいのか?」
「あぅっ――く……。い、いいわけ、ないでしょう……んっ」

 素直じゃない。じゃあ、もっと可愛がってあげないと。
 今度は乳ぶさ全体をこねるように揉む。
 下のほうから上に持ち上げるように、横に引っ張るように、円を描くように、たんねんにたんねんに……愛情いっぱいの手打ちうどんでも作るかのように揉んであげる。
 
「はぁ……ん、うぁ……士郎……」

 遠坂の吐息が熱を増していき、それに比例するように乳ぶさも熱を帯びていく。
 さらには……こねればこねるほど、この二つのふくらみが弾力性を増していくようにも感じられた。
 いや、それ以前に……なんとなくだけど。

「なあ、遠坂?」
「ん、ぅ……あ、な、によ……」
「なんかさ……前より、胸、大きくなってないか?」

 そう言って、再び遠坂の胸を揉みたてる。
 むにゅむにゅ、と、俺の手にいじられまくるふくらみは、やはり、最初に触れたころと比べると、わずかだがその質量が増しているような気がした。

「ん、やっぱり。少しだけど、大きくなってる」
「ふぁっ……ん、ん……そんなに……しないで、よ……」
「毎回、こうやってちゃんと揉んでたからかな?」
「知らないわよ……そんなこと……」
「だって、ほら。胸って揉まれれば大きくなるとか、そういうこと良く聞くじゃないか」

 それが事実だったとは知らなかったけど。
 ということはだ。
 これからもこうして遠坂の胸を揉み続けてあげれば、彼女のコンプレックスの一端を解消してあげることができるかも知れない。
 いやそれどころか、愛撫になれてくれば感度のほうももっと上がるかもしれない。
 実際、初めてのときは結構感じにくいほうだったのだ、遠坂は。
 それが――

「んっ、あ、士郎……もう、いい加減に……ふぁっ」

 こうやって素直な反応を返してくれるようになったのは俺の努力の賜物、じっくりと丹念に彼女の身体を開発してきたおかげ。
 この上さらに胸まで敏感になり、さらには大きくなって、あんなことやこんなことまでできるようになったとしたら……
 一石二鳥どころか、三鳥、もしかして四鳥ぐらいはあるかもしれない。

「これからはたくさん、胸、揉んであげるからな、遠坂」

 遠坂のためはもちろん、俺のためにもなる。
 なのに――

「馬鹿なこと……ぁっ、ぅ、言わないでよ……」

 遠坂はそんなことを言って俺の手をつかんできた。
 ぎゅっと握り締め、自分の胸から引き剥がそうとする。

「あ、駄目じゃないか遠坂。邪魔しないでくれ」
「いや。やっぱり恥ずかしい……」
「なんでさ。すごく綺麗だよ、遠坂」
「うぅ……だから、そういうのが恥ずかしいの。お願いだから、せめて電気を消してよ……」

 そうじゃなきゃ、この手を離さない。
 そんな気持ちを込めているかのように、しっかりと俺の手をつかむ遠坂。
 振りほどくことはできるけど、そうした場合、行為の途中ずっと妨害してくるだろう。
 そんなことになったら『思う存分遠坂を可愛がる』ということが出来なくなってしまう。
 それはやっぱりいやだ。
 遠坂の綺麗な姿を見れなくなるということは残念だけど、ここは電気を消してあげるしかないかな。

 そんなことを考えていたら、俺の視界の中にあるものが飛び込んできた。
 遠坂の滑らかな黒い髪。長いそれを、ツインテールに纏めているのは黒いリボン。
 それを見た瞬間、俺の脳裏にあるひらめきが飛び散った。

 ちょっと短めのリボン。
 難しいかもしれないが……左右二つあるから何とかなるか?
 いや、そもそもこれをやったら、本当に明日の朝日を拝むことができなくなるかもしれない。
 うそ偽りなく――あかいあくまの手によって、俺は人間をやめさせられるかもしれない。

 それでも行くのか?

 イメージする。

 煌々と照らす明かりの下で、白く滑らかな肌が光を反射する。
 その白い肌が、俺の手が触れるたびにピンク色に染まり、瞳から透明な雫をこぼしながら俺を見つめる。
 泣いているのか、それとも――に打ち震えているのか。
 どちらにせよ、そんな遠坂を俺は思いのたけを迸らせながら、いじめてあげる……じゃなかった、可愛がってあげるのだ。
 そして……そんな彼女の手には黒い――が――のように絡みつき……



「ちょっと、士郎? どうしたの?」

 遠坂の声が聞こえた。
 そりゃあ、自身の胸のふくらみを揉みしだいている男が、そのまま止まってなにやら妄想にふけっていたとしたら、そんな男の支配下に置かれている女の子が心配するのも無理はない。
 俺は意識を引き戻した。遠坂を見つめ、笑う。

 それは――覚悟を決めた笑みだった。



「士郎?」
「わかったよ、遠坂」
「え……あ、うん……」

 明かりを消してくれると思ったのだろう。
 遠坂がうなずき、俺の腕をつかんでいた手を離す。

「その代わりさ……髪、おろしてくれないか」
「髪を? 別に……かまわないけど」

 そう答えて髪をとこうとするが、

「あ、俺がやるからいいよ」

 俺はそう遮った。

「う、うん、いいけど……」

 少しだけ疑念のはらんだ声。
 さすが遠坂。するどい。
 でも俺は引き下がらない。

 そのためになら、この命を失ってもいいと……そう、思ったのだから。

 そんなわけで俺は遠坂の黒いリボンを解く。
 右、次に左。
 さらっ……と、長い髪が静かに鳴る。
 髪を解いただけなのにそれだけでずいぶんと印象が変わる。
 妙に大人っぽく変身した遠坂。
 そんな彼女を胸の中に抱きかかえながら、俺は手の中にある黒いリボンを見つめた。
 二つのそれを、一本になるように結ぶ。

「士郎?」

 なにをしているのかと、遠坂が唖然とそれを見ていた。
 そんなことには気にせず、

「よっと……」
「あ……」

 俺の胸の中に横たわるように抱きかかえられていた遠坂の身体を起こす。
 遠坂がちょっとだけ寂しそうな声を出した。

「遠坂、ちょっと我慢してくれよ」
「……え? なにを言って……」

 俺は遠坂の両腕をつかみ、後ろに引く。

「きゃっ、な、なに……?」

 それには返答せず、遠坂の腕が彼女の背中で交差するようにもってくる。
 そのまま手首を重ね、そこを固定するようにリボンを――

「え、え……? ちょっ! 士郎っ! なにしてんのよっ!」

 後ろ手に縛られた状態。
 そうなったところでさすがに異変に気づいた遠坂が、非難の声をあげる。
 俺は答えない。
 まだ――最後の仕事が残っている。

「――――同調トレース開始オン

 きん――と、魔術が発動する。
 強化。
 今日はなぜかやたらと調子のいい、強化の魔術。
 それを、ちょっと力を入れたらすぐにほどけてしまいそうなリボンに施す。

「やっ、なに魔術なんて使ってんのよ、馬鹿っ!」

 あわてて振りほどこうとする遠坂だが、俺の魔術はすでにそのリボンを支配下においていた。
 貧弱な布キレが、最強の高度を誇る宝石のように光り輝く。

「……完璧、だ――」

 そのあまりの出来に、俺は思わずそんなことをつぶやいていた。
 これほどまでに完璧な強化、俺の人生の中で間違いなくこれが初めてだろう。
 極限なまでの集中力がそれを可能としたのだ。

「こ、のっ……士郎っ! は、外しなさいよ、これ!」

 後ろ手に縛られた遠坂が当然のごとく主張する。
 俺もまた、それを当然のごとく聞き流した。
 せっかくうまくいったというのに、いま外したら何の意味もないじゃないか。

「くっ、こんなものっ!」
「無理だよ、遠坂」

 自ら外そうとする遠坂だが、いくら遠坂とはいえ、一度魔力を通したものにさらに魔力を通すことは難しい。
 しかも、俺の強化は完璧だった。
 余分な魔力が通過する余地は皆無に等しい。

 そのことを遠坂もすぐに理解したようだ。
 外すことをあきらめ、俺のほうを向き、キッと睨みつけてくる。
 だが、いつもの強さがその瞳には無い。
 彼女自身も、自分が置かれている立場がどれほど危ういものなのか、敏感に察しているのだろう。

「外しなさい、士郎……」
「駄目だ」
「……っ! こんなことして……っ」
「…………うん、ごめんな、遠坂」
「……え?」

 あっさりと謝ってきた俺に、すこし驚く遠坂。

「でもさ、もう俺も我慢できないんだ。俺は……遠坂の全部を愛したい」
「な――」

 あまりにも直球な発言に、さすがの遠坂もたじろぐ。
 というよりも、遠坂はこういう言葉に意外なほど弱い。
 これだけ美人で、優等生で、学園の男どもには人気抜群の高嶺の花で、知らぬものがいないほどの有名人なのに、ほんの些細なことでも頬を赤らめるところがある。
 まあ、今日のに関しては、ほんの些細なことではまったくないわけだが。

 俺は硬直したままの遠坂を後ろから抱きしめる。
 引き寄せ、耳元に唇を近づけて、ささやいた。

「今夜は……思いっきり可愛がってあげるからな、遠坂」



 そして、長い夜が始まる。




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あとがき

サーヴァントであるセイバーは歳を取らないので、当然、成長もしない。
でも、遠坂凛の――は、士郎くんの努力があればきっと大きく成長する。
だから安心していいぞ、遠坂。

そんなわけで、なんだか知らないけど妙に長くなりそうな悪寒。
お暇な方は適当につき合ってやってください。

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