検索から来られた方はコチラ
A長所
R34スカイラインの売りは“ドライビングボディ”。’98年5月にR34が発表される前からCMで盛んに宣伝していました。
まさに“ドライビングボディ”でした!
ボディ剛性を徹底的に見直したR34。まずはっきりその恩恵を感じるのが、歩道などの段差を乗り越えるときです。
ボディ剛性があまり強靭でない車だと、段差を乗り越えるときにミシミシとボディがよじれるのがわかります。これは結構重要な事で、ゆっくり車を動かして段差を乗り越えると、揺れが大きいのです。AE101レビンの場合、ボディ剛性がそれほど低いわけではなかったのですが、それでも多少のよじれは感じました。
この文章を読んで「そんなバカな」と思った方もいらっしゃると思います。ですが、6年前から比べると、今の日本車はボディ剛性が素晴らしく、ちょっとやそっとじゃよじれる車は少なくなりましたが、当時の日本車では大げさでなくここまでボディ剛性の高かった車は少なかったように思います。
次に“ドライビングボディ”の恩恵を感じるのが、カーブを曲がるときのロール感です。
この手のスポーツタイプの車は、まず足回りを固めてというのが常套手段になりつつありますが、下手に足回りを固めなくても、きちんとロールしてタイヤが路面にグリップしてくれるのです。
ボディ剛性が弱い車だと、ロールが妙に大きくなり、カーブで不安定になって危険極まりないのですが、R34だと、足回りだけがきちんと機能してくれるので、安心してカーブをこなすことが出来るのです。
カーブだけではなく、バンプ(路上の段差)を乗り越える際にも有効で、バウンドして衝撃(揺れ)が収まるのを待つのではなく、段差の衝撃をボディ全体で受け止め、ショックアブソーバーだけを機能させて衝撃を押さえ込むので、縦の揺れによる車酔いはないのではないかと思います。
R34の足回りは硬めだと思うのですが、乗り心地が決して悪いわけではなく、余分なやわらかさを極力取り除いたといったほうがいいかもしれません。それでもこのボディ剛性があれば、ショックアブソーバーが硬くても決して車がバタつくこともなく、快適なドライビングが楽しめるのです。
伝統のRB25DE。最後の直6スカイラインと言われる所以は、この名機にあります。
このエンジンの歴史はそれほど古くはなく、R32の時代にデビューしたエンジンです。もちろん大基はRB20DEですが。
当時はGT−Rとオーテックバージョンを除けば、スカイライン初のオーバー2リッターエンジンでもあります。GTS−t・typeMに搭載されていたRB20DETの215psに比べると見劣りする180ps。世間は3ナンバーブーム(2.5リッター以下の自動車税が値下がりした事が発端)で、同クラスに位置するセフィーロ、ローレル、マークU3兄弟、ディアマンテなどがこぞって2.5リッターエンジンを発表し、R33に繋がっていくわけです。
R33にモデルチェンジされても180psのままでしたが、R34にモデルチェンジした際に200psに到達し、ボディに対してパワーが追いついてきた感があります。
実際、RB25DEはスペック以上にパワフルに感じます。Dレンジにシフトしアクセルを開けると、一気に6000rpm(ATモードで)まで到達します。吹き上がりはさすがNAエンジン。途切れなくタコメーターの針が上がっていく様子は、加速感もあいまってとても気持ちのいいものです。
もちろん実用エンジンとしても十分に使えるエンジンです。ただし、あまりエンジンを回すクセをつけすぎると、街乗りの際のシフトが3速と4速で行ったり来たりしてしまうので、街乗りは大変乗りづらくなりますので注意が必要だと思います。
このエンジンの育て方は、慣らし運転が終わった後、一日に1回は思いっきり回転をリミットまで上げてやるのがいいようです。やりすぎると燃費やオイルに負担がかかってしまいますが、ある程度毎日続けていくと、低回転も高回転も綺麗に回るようになります。
今は新車で買えるエンジンではないので、前オーナーのクセを取る事が先決でしょうが、おそらく中古車でも使える手なのではないかと思います。
M−ATxは、日産車の中で一番にR34に搭載されました。僕はこの新型トランスミッションを「セミオートマ」と呼んでいますが、シフトレバーを左に倒すと、マニュアルモードで走る事が可能なのです。シフトレバー右上にあるスイッチを入れると、ステアリングについているスイッチでシフトも可能になります。
このアイテムは、僕の印象では、雰囲気を楽しむためにあるものと割り切ったほうがいいと思います。最初は面白がってシフトしてみたりしますが、シフトアップに関して言えば、このマニュアルモードを使う必然性は感じません。ステアリングスイッチに関しても同じ事です。使うことによってむしろ安全性に問題が出てきます。
それでは、何が長所なのかというと、シフトダウンの時に恩恵を感じるのです。
4速から減速するとき、マニュアル車だと、普通にシフトダウンしますよね?今までのAT車では、基本的に2速にしか(シフトキーを押さないで)シフトダウンできませんし、普通のATではシフトを積極的にするという行為をあまりしないと思うのです。Dレンジに入れてそのままと言う方のほうが多いのではないでしょうか?
これはあくまで気分的な問題なのですが、マニュアルモードを利用してエンジンブレーキをかけると、普通のマニュアル車と同じような感覚でシフトダウンが出来ます。気分と言いましたが、これはシフトダウン時の誤操作を防ぐ意味もあるのです。
AT車では、Dレンジにシフトレバーを移動すると、そのままシフトレバーに触らないと言う方が結構多いと思いますが、このまま下り坂でフットブレーキを多用すると、ブレーキの効きが甘くなる危険があります。マニュアル車だと3速や2速にシフトダウンしますが、それと同じ行為を、M−ATxではマニュアル車と同じ感覚で出来るのです。
この方法、特に雪国に住んでいる方に有効で、フットブレーキではすべてのタイヤにブレーキがかかり車の挙動が不安定になるところを、この方法でエンジンブレーキをかけると後輪だけにブレーキがかかり、前輪のコントロールが自由になるために、車の挙動を比較的安定させることが出来るのです。
僕はこのM−ATxに関しては、安全装置と考えています。安全装置としての機能は、僕にとっては最高だと思います。また、シフトダウンしたあとの加速の事を考えても、最終的には“速く走れる”ことに繋がってきますので、M−ATx搭載車の方は、ぜひ積極的にシフトダウンしてもらいたいと思っています。
![]() |
“最後の直6スカイライン”としての誇りが、このR34には詰まっています。
2001年6月にV35にモデルチェンジし、結果的に“最後の直6”となったR34は、セールス的には短所の欄で述べた通り、45,000台ほどしか売れませんでした。商業的には完全に“失敗作”でした。
では、なぜ今の時代になってR34がもてはやされているのでしょうか?
答えは簡単。従来のスカイラインファンには、V35は“スカイライン”ではなかったからです。
従来のスカイラインファンは、後で述べるS54Bからの“羊の皮を被った狼”であるスカイラインを“スカイライン”と認めていたのであって、サーキットでの裏づけが皆無のV35を認めたがらなかったのだと思います。伝統の直6エンジンがここで途絶えてしまった、というのもあると思います。スカイラインがここまでスポーツセダンとして長い間君臨して来たのは“直6エンジン”あればこそなのですから。
現行車時代は、あまり見向きもされていなかったR34ですが、“最後の直6”というステータスが、現在中古車市場をにぎわせているようです。最後の直6ということは、最高最強の完成型直6エンジンと言う事も言えるわけです。当然ボディもマルチリンクサスも熟成されて、最高に気持ちのいい走りが出来るスポーツセダンに仕上がっていると言っても過言ではないと思います。
時代は、直6エンジンからV6エンジンにほとんどバトンタッチされた状態です。パッケージングからすると、当然の事ながらコンパクトなV6エンジンに軍配が上がるのでしょう。
では、決してパッケージングがいいと言えないスカイラインが、ここまで人気があったのでしょう?
それは、スカイラインが“スカイライン”であり続けたからではないでしょうか?
この長い伝統を持つ車のオーナーになれた。そう思わせる魅力が、R34の最大の長所だと思います。