失敗山日記 V−3 |
ビバーク、ヒグマ、幻聴幻視、ビバーク、・・・ |
in トムラウシ(大雪山系,2000年7月) 掲載 2003年9月 |
by 山へ行っちゃあいけない男(登山不適格者?) |
ジャンプ ( その2 その3 その4 その5 その6 全10回程度になりそうです ) |
その1 |
前年、長雨で引き返した、銀泉台〜白雲小屋〜高根が原〜忠別小屋〜トムラウシ〜トムラウシ温泉の長大なコースへの再挑戦です。白雲テント場で丸2日の停滞後、昨日は高根ヶ原経由で忠別小屋泊。 今日はトムラウシを目指します。まずは五色岳へのハイマツの中の登山道。ところでこのハイマツが身の丈をはるかに超す代物で、狭い登山道をトンネルのように囲んでいます。その名の由来の「這い松」とは大違いで、地面を低く這ってなどいません。本州のハイマツとは桁違いの高さです。 枝葉を掻き分けて進むような狭いトンネルゆえ、一昨年初めて通ったときは朝露でびっしょりになったので、今回もレインウェアを身につけました。ところが早立ちのパーティが通ったのが露払いになったようで、枝葉には前日の雨も朝露も残っておらず、たいして濡れません。それよりも、トンネルの中の蒸し暑さが相当こたえます。 |
藪は先行者が2,3人あっただけで、朝露による濡れ具合が格段に違うもの。朝寝坊のせいもありますが、朝一番の出発は避けるようになりました。 藪のないことが分かっている登山道でも、朝一番は蜘蛛の巣がうっとうしいですし。 |
五色岳で展望を楽しんで降りる途中、休んでいたトムラウシから来たパーティーが、 「トムラウシまでですか? 膝あたりまで水があって、絶対ビショビショになる 所がありますよ。」 というようなことを言っているのを、どうかなあと聞き流して先に進みました。この言葉が脳の片隅に蓄積されてしまったことが、不幸に繋がるのですが。 道は平坦な所が多く、化雲平の花、その先の不思議な格好の巨石などが、重いリュックを背負う身をなぐさめてくれます。天気もまあまあです。 天沼の先で、たくさんの大岩で埋まった平らな谷になりました。岩の上を伝い歩きます。岩の下の地面は平らなようですが、私はこの種のガレ場は苦手で、けっこう神経を使います。時刻は、2時は過ぎていたと思われます。 その岩が終わりかける頃、前方から年配の男が1人やって来ました。(私も年配には変わりありませんが。) 「こんな岩の地形はこれで終わりですか?」 と、希望的な予測で聞くと、 「こんな岩の上ばかりだ。」 と不機嫌に答えて、どんどん離れていきます。 それにしても無愛想な男だなあと不快になりましたが、この先のガレ場の連続が思いやられ、こちらはトボトボと歩きます。このとき余計な事を聞いたことが、すぐ後の不用意な行動に繋がるのです。 暫く先でゆるい下りとなり、また大岩が無数に転がった場所に出ました。今度は大岩が埋めているのは傾斜のある谷です。さっきの男の言ったとおり、これからまたガレ場がつづくのかと、何の疑いもなく苦手な岩伝いに挑みます。 今度は下りですし、岩と岩の隙間もけっこう深いうえに、上を歩きやすい岩が続きません。少し進むと、上に植物が生えた、人が歩いた形跡のないような岩になってしまいます。 右に数歩行っては戻り、左に数歩進んでは戻りという具合に少し繰り返した後、登山道ではないのではと戻ってみると、岩に丸いペンキの印があるのです。 前方には短い雪渓が見えるので、とりあえず雪渓まで降りて、はっきりした踏み跡をさがすことにしました。人の歩いた形跡のあるなしにかかわらず、乗りやすい岩を見つけつつ進むことになりました。 距離的には10mか20m程度だと思いますが、しばらく進むと、方向ははっきりしませんが、上の方向から話し声が聞こえました。この時はまだ危機感がなく、声の方向を確かめることもなく先に進みます。 距離は短いが、歩きにくい大岩のガレ場が終わり、ひんやりした雪渓の上に立ちました。予想に反して靴跡のようなものは見つかりません。間違えたかなとも思いましたが、もう少し進んでみることにしました。 |
*連載の読み物のように、1日1ページずつ読んでいただくのが私の希望です。 |
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