この日の朝は、どうだったかよく覚えていない・・・。 昨日申し込んだミトラツアーのお迎えが10時に来るんで、10時前にはホテル中庭へ来て待ってた。
10時ちょうどに、運転手のおじさんが迎えにきた。 ミニバスに乗り、次のホテルへ行き、ツアー客を拾っていく。
その中でも、太平洋岸のアメリカとメキシコ国境の町ティファナ(ロスからバスで3時間、サンディエゴから30分) から来たという中年夫婦と、いろいろ話しが盛り上がる。
しかし、私以外のツアー客はモンテ・アルバンツアーだったんで、途中で合流したミニバスへと私ひとり移動。 折角仲良くなったのに・・・。

 ミトラツアーへと行くミニバスには、メキシコのどっかから来た(忘れた・・・)夫婦(以後、メキシコ夫婦)と、 スペインから来た女の子2人(以後、スペイン女性2人)と私の5人。それに運転手兼ガイドのAlberto。
Albertoがスペイン語で行程を簡単に説明したあと、思い出したように「あっ、皆、スペイン語でOKだよね?」 と聞く。他の4人はそれぞれに「Si(はい)」「Si」「Si」「Si」 と答えたあとに、最後に私が「No!」・・・。
別にオチを狙ったわけでもないんだけど、皆「えっ?」とした顔をしたあと、笑い出す。
Albertoはどーも英語苦手そうだったし、スペイン語圏の人の英語って結構なまって聞こえて、 中途半端な英語力の私にとって、かえってわかりづらい。
「でも、スペイン語でいいよ」と彼に言うと「わかった」ってホッとしてた。

 ミトラ遺跡はオアハカから東へ46km、バスで1時間半かかる。
このミトラツアーは、 オアハカ〜エル・トゥーレ テオティトラン・デル・バジェミトラトラコルーラ〜オアハカ の所要4時間N$150(1,900円弱)トゥーレの木

 まず、エル・トゥーレ(El Tule)村に立ち寄る。
ここには、糸杉の1種、トゥーレの木(Arbol del Tule)がある。 樹齢2000年以上、高さ42m、幹回り58mという巨大なこの木は、アメリカ大陸最大の木と言われている。 (左写真;ファインダーに入りきれてない・・・)
塀で囲まれていて、中へ入るにはN$3(40円弱)を払う。
おもしろいことに、この木について書かれている石碑には『重さ636.107トン』と言う文字が・・・ うーむ・・・どうやって量ったんだろう?それも細かい数字まで・・・んー、これはナゾだ。

 Albertoがある程度説明後、「(時計の針が)15分になったら車に戻るように」と言って、 5分間ほどのフリータイム。
しかし、私は"15分間のフリータイム"と勘違い。んー、この1本の木周辺で15分間は長すぎ? と思い、少しウロウロした後、近くのお土産屋さんを覗いたりしてた。
と、私の名前を呼ぶ声が・・・。Albertoが笑いながら手招きしてる。 「もう何してるの?車に乗って行くよ」ってな感じで言いながら・・・。
あれ?まだ時間あるはずなのに・・・と思いながら、車に乗ってやっと勘違いに気づいた。


 オアハカTOP




 エル・トゥーレ村を出発して、お世辞にも"いい道"とは言えない道路を走る。 道路整備の遅れてる秘境(?)育ちの私にとっては、結構好きな道だけど・・・。
次に向かったテオティトラン・デル・バジェ(Teotitlan del Valle)村は、 サラッペという羊毛の織物で有名。 羊毛を紡ぎ、染色し、織って、販売までしている家(?)を訪問見学。
私たちが行ったとき、別の欧米人ツアー客たちが来ており、約20人前後での見学となった。

 男の人(主?)が染色の説明をし、欧米人ツアーのガイドが英語で通訳説明する傍らでは、 女の人(奥さん?)が羊毛を黙々と紡いでいた。 昔ながらの木製の糸車を回しながら、刈り取ったままの羊毛を器用に糸にしていく。
ちなみに我らガイドのAlbertoはとゆーと、ボケッと突っ立ってたなぁ・・・。

 ここでの染色は伝統的手法で、今なお染めている。
赤色はふつう、木の実なんかで染めている場合が多いでしょ?しかし、ここはメキシコ。 なんと、ウチワサボテンを3ヶ月かけて白くカビさせ、そこに寄生する「 エンジムシCochinilla」を使って赤く染めている。
主(?)は、プチプチと白いカビがついたサボテンを持ってきて見せ、 そして、白いカビを採ってつぶしてごらんとジェスチャー。
白いカビを指でつぶすと、みるみる白から鮮やかな赤へと変わる。 ひょぇ〜!これって、エンジムシの血?姿かたちないにせよ、体液にかわりはない。 虫(とくにイモムシ系)が苦手な私にとって、ちょっと気持ちわる〜。 織り機

 茶色は草の実、黄色は樹皮、黒は・・・なんだったっけ?写真撮ればよかった・・・。
とにかく、すべてが自然の物での染色で、手間ひまかかってる。もちろん、化学染料とは色合いが 違って、落ち着いた色調。
織り機も昔ながらのもの(左、右下写真)で、 大きさによるけど、だいたい一つのサラッペを1ヶ月から3ヶ月かけて仕上げる。 機械織りより、目がしっかり詰まっていてムラがない。ずっしりとした重みがある。 織り機

 これらの工程を見たあと、ここで出来たサラッペが展示販売されてる部屋へ行くと・・・うーむ、 どれも落ち着いた色味で温かみのある手間ひまかけた超高級品に見えてくる・・・。 デザインも古代サポテカを彷彿とさせるものばかり。
バックパックゆえにサラッペは重くて買っていけない・・・と思いつつも、 目にとまったサラッペがあった。90cm×140cmぐらいで遺跡のレリーフを思わせる形の鳥(?)が黒、赤、黄で 織られている。両端は、濃さの違う茶や赤でシンプルな幾何学模様で縁取られた感じ。

 「欲しい・・・」で、女の人に「これいくら?」と聞く。メキシコペソで いくらかはっきり忘れたけど、日本円にしてだいたい3万円ぐらい?と思った。
ちょー高い!物価の安いメキシコでこの高さだから、同じ物を日本で買うとなると・・・10万円以上?? しかし、この色合い、このデザイン、この厚み、この肌触り・・・2度とお目にかかることもない? おまけにここで買うのが一番安く買える・・・中間マージンないからね・・・。
えーいっ!『1品豪華主義』とゆーことで買っちゃえぇ!

 それから、友達のおみやげ用にコースターも買う。
コースターは、5〜8個ぐらいずつ連なった状態で織っていて、自分で切り離すようになってる。 色合い、デザインがすべて異なるため、なるべく気に入ったものが多いのを3本(?)選ぶ。 ちょうど、20個分のコースターになり、1個300円ぐらいの値段。
私としては、結構いい値段のおみやげだけど、是非友達にも触れて欲しい織物だったんで、 奮発して買っちゃいました。ここでしか買えないものだからこそ、おみやげとしての 価値があるんじゃぁ?なんて・・・。

 で、とりあえず値切ってみたものの、「とても時間をかけたものだから・・・」と言われれば、それまで。
すべての工程を1ヶ月かかったとしたら、1ヶ月分の給料分の値段してもおかしくないかな? とゆーより、現物を見たら、3万円でも安いのかも?ほんとそれぐらいいい物。
現金は持ち合わせてなかったんで、カードで買うことにした。しかし メキシコでは、カードで買うとなると手数料が上乗せされてしまう。 何%だったか・・・?少なくとも5%以上あったはず・・・。
で、ちょっとマケてくれたのと、手数料上乗せ分の料金もマケてくれるとゆーことで、 結局R$3,340(約4万円)・・・このサラッペって実は4万円近くあったみたい・・・ アバウトな換算してた私・・・これって、よかったのか?悪かったのか?
でも、買わなかったら、今ごろ後悔してたかな?


 オアハカTOP




 テオティトラン・デル・バジェ(Teotitlan del Valle)村を出て、ミトラ(Mitla)遺跡へ向かう。
サポテカ人がモンテ・アルバンを放棄したあと、ミトラが宗教の中心地となり、9〜12世紀にはサポテカの祭祀センターとして栄えたらしい。 生にえの儀式なども行われ、後にミステカ人も埋葬地として利用したため、多くの墳墓が発見されている。
17世紀にスペイン人宣教師が地中からサポテカの王たちの墓を見つけたらしいが、多くの生にえの死体に驚いて再び封印して埋めたらしい。
とにかく、ミトラの見所はなんといっても、壁面の幾何学的モザイク。 サポテカ人の建築技術、芸術的才能が高かったのがよくわかる。
モザイクのパティオ

 あまり整備されてない駐車場へ着く。露店をぬけ、入口でR$27(340円弱)払う。
中に入ってまず目に入るのは、石柱のグループ(Grupo de las Columnas)の遺跡群にある モザイクのパティオ(Patio de Mosaicos)。 小さく切断した石をモザイク調にはめ込んで、何種類もの幾何学模様をデザインしている。 緻密なデザインに感動ものだった。(右写真)
モザイクのパティオ
サン・パブロ教会

 モザイクのパティオ全景(左写真)が見える木陰でAlbertoは説明。だけど、私にはサッパリわからなかったんで、キョロキョロ・・・と、 立派な赤い屋根の教会が駐車場向こうに建っていた。
これは、1590年に遺跡の上に遺跡の石材を利用して建てられたコロニアル調のサン・パブロ教会(左下写真)。 キリスト教布教のために先住民の文化を破壊したあらわれのようなものらしい。
この教会の裏手にも教会地域のグループ(Grupo de la Iglesia)の遺跡群が残っている。
しかし、さすがメキシコ。駐車場と遺跡の間の塀はサボテンでつくられてた。
石柱のグループ、北の中庭
石柱のホール
石柱のグループ、南の中庭

 モザイクのパティオは石柱のグループの北の中庭に位置する。 中庭側にまわると、建物の入口の壁には独特の赤い色がしっかり残っていた。(右写真)
しかしまぁ、このモザイクのパティオの壁全面には、ものの見事な幾何学模様がこれでもかって感じで施されていた。 見れば見るほど感心するし、見れば見るほど味がでる。 ひとつひとつの石が手彫りで、ひとつひとつはめ込んでいるせいか、 現代にみる機械的な幾何学模様とは、ぬくもりが全然違う。

 階段を上って、中へ入ると38mの細長いホールに6本の石柱が等間隔で建てられている 石柱のホール(Sala de las Columnas)がある。(右写真中)
屋根には竹やシュロなど、とりはずしのできる素材が使われていたといわれている。 このホールの隣りには天井が竹で覆われた部屋があった。この竹の天井は再現したもの(?)。 窓がなくて薄暗い感じだった。

 この部屋を出て、脇の細い通路を行く(潜る?)と、また小さなホールみたいなところへ出る。 ここの壁もまた幾何学模様。(左写真下) モザイク
Albertoがずっと説明してたんだけど、何を言っているのかほとんどわからなかった・・・。

 再び、北の中庭に出て、今度は南の中庭へ向かい、狭い道を歩く。
この南の中庭には、生命の石柱(Columna de la Vida)と、二つの地下墳墓がある。
生命の石柱は、抱きついて両手が届かなかった長さで余命を測るものらしい。 長さが短いほど長寿ってことは、手が長い人は長生きするってことになる?まぁ、深く考えるのはやめよう・・・。

 ここでAlbertoは、ようやく自由時間を与える。地下墳墓へ行きたい人は行ってもいいらしいが、問題は時間。 「5分後に駐車場」と聞こえた。
「え?」ここから駐車場まで歩いても4〜5分はかかるんじゃぁ?また、聞き間違い?
Albertoは「じゃぁ」とさっさと去っていく。んで、傍にいたスペイン女性2人に確認してみる。 「5分?」と尋ねると、彼女たちも「信じられない」ってな感じでうなずく。
5分ってことは、もう駐車場へ向かえ!っと言ってるようなもの。 しかし、せっかくだから、地下墳墓へ行ってみないことにはね。

 中庭にポカンと開いた穴(右写真下の右下部分)が2箇所あり、大きい方の穴へと向かう。
2mぐらい木の階段を下り、横穴をくぐってジメジメとした土の上を歩いていくと、突き当たりにちょっとだけ広い空間があった。 そこが埋葬されてた場所(?)・・・って、そこに何があったのか・・・何もなかったのか・・・全然記憶にない・・・。
ただ、メキシコ夫婦に、そこをバックに写真を撮ってくれと頼まれ、撮った覚えはあるんだけど・・・。

 地下墳墓から出て、駐車場の方へ向かう。露天でミネラルウォーターを買っていると、また、私の名前を呼ぶ声が・・・。 車の傍で、Albertoが手招きしてる。
「はいはい」と慌てて向かうと、まだ他の人は来てないじゃん。 まったく、こいつは私の名前を呼ぶのをおもしろがっているんじゃぁ?だって、他のツアーの人の名前呼んでるの聞いたことない。
Albertoは「さぁ、メスカルを飲みに行くぞ!」とニコニコ。彼のテンションにつられて私も「わーい!行こ行こ!」ってな感じ・・・。 うーむ、彼のテンションについていってるのは、私だけだったのかも?
他の人たちも車へ戻ってきて、オアハカの地酒、メスカル工場へと出発!


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