【廃墟マニヤ File011】

N木山剥製動物園(群馬県)

(その2)

林道脇の看板

まだインターネットなどによる情報収集が困難だった時代の話です。その頃の私はポンチを求めて、目を皿のようにして地図を眺め、市販のガイドブックにおかしな記述がないかチェックを入れ、そして休みになると温泉地や観光地をぐるぐるとあてもなく走り回っていました。そんなとき、この動物園を見つけたのです。

国道をはずれ林の中の砂利道をしばらく進むと、かなり錆で傷んだ看板が現れました。初冬を迎えた別荘地はまるで人の気配が無く、本当にこの先にそんな観光施設があるのか不安になってきます。

 

全景

看板からさらにしばらく進むとプレハブのような建物が見えてきました。先ほどの看板を見ると別荘地の開発もやっているはずなのですが、まったくそういった様子もありません。建物と建物の間にかかっているアーチ状の部分に「N木山剥製動物園」と書かれているのが、かろうじて判読できました。

 

入口

入口に近寄ってみるとしっかり鍵がかけられています。まわりの様子から予想できましたが、どうやら営業していないようです。それでも、どうしても入ってみたかったので、周囲に管理人がいないかと探し回ってみましたがムダでした。あきらめきれず建物の周りもぐるっと回ってみます。でも、ご覧のように鉄格子があって、もし鍵が開いていても中に入ることは不可能でした。

ちなみに扉の横の白い板には観覧料が表示されています。「大人200円、小人100円、団体30人以上2割引き」……まず30名以上がここにやってくることはありえないでしょう。

 

内部の動物たち

仕方なく入口からのぞいた写真です。ここは北極(?)エリアらしくシロクマやアザラシ、ペンギンなどがいます。他の部分にはテンやキツネ、クジャク、ライオン、トラ、ワニ、そして驚くべきことにゾウがいました。残念ながら窓が曇らせてあるため、肉眼でかろうじて判別できる程度で、写真は残っていません。

剥製を集めて動物園というちょっと「アレ」なコンセプトを実行してしまっている所は案外多いのですが、通常は販売目的であったり施設の中の一部分であって、「それ」だけでしかも「動物園」を前面に出している大胆な所は、あまり見たことがありません(実は動物園というのは、剥製でない生きた動物を見せるために生まれたものなので、ぐるっと回って元に戻ったという気がしないでもありません。ちなみに岸和田の東洋剥製博物館もあんなことになっていますが、元々は動物園を作りたかったという話です)。

 

剥製動物園中央

叫び声やうなり声もなく、訪れる者はもちろん管理人すらおらず、ある種完成された静寂の世界がここにはありました。

……しかし残念ながら次に訪れたとき、この動物園は消え失せていました。道を間違えたのかとあたりを探してみたのですが、その気配すら見つけることはできませんでした。今となっては、写真がなければ、本当に存在していたかさえあやふやな気がします。

 

END
(1989.11)


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