団体理念

~ギャンブル依存は、「病気」ではなく生活・人生の問題~

 当事者が中心に2000年にワンデーポートは設立されました。当初は、自助グループ(ギャンブラーズ・アノニマス)の考え方を指針としていました。「ギャンブル依存症は回復できる病気である」と考え、グループセラピーを主体としたカリキュラムを組んでいました。
 開設して4~5年ほど経過したときに、依存の問題を抱える人には個別性があり自助グループの考え方が合わない人が存在することに気づきました。また、ギャンブルに触れる前から個別的な課題を抱えている人が多いこともわかってきました。(個別的課題)
・ギャンブルをはじめる前から、金銭管理が苦手である
・大学生活に入った直後、あるいは就職後からギャンブルや生活上の問題が生じている
・軽度の知的障害や発達障害の傾向を持っている
・家族の期待が大きすぎる・仕事でのストレスを抱えている(仕事があっていない)
・パチンコや競馬しか楽しみがない  

 このような背景に目を向けたときに、ギャンブルという行為だけに目を向けて「病気」と考えることは、その人にとっての本当の問題から目をそらすことになると考えるようになりました。
 個別的な背景に目を向けると、必要な支援もギャンブルの問題が解決した後の生活も、一人ひとり異なり、Aさんの解決方法が、Bさんに合うとは限らないということがわかってきました。 
 仕事があっていないのであれば、転職を含めた就労支援が不可欠になりますし、自分にどんな仕事があっているのかを考えるところから始める必要があります。軽度の知的障害や発達障害がある場合は、福祉サービスの利用ができるかもしれません。家族の期待が多き過ぎる場合は、家族の理解が必要です。原因は複合していることが普通であり、家族歴、成育歴から解きほぐして見極めなくてはなりません。生活、人生の視点から見ると、ギャンブルへの依存は「結果」であることが見えてきます。
 ワンデーポートでは多様な背景に向き合う中で、ギャンブルの問題を抱えていた当事者の経験が他の人に役立つとは限らないこと、ときに「私のようにすれば回復できる」という当事者性により、傷ついたり、困難が増幅することがわかってきました。
さらには、「入所しないと回復しない」という考え方も変えました。自己解決が可能な人、家族の協力だけで解決できる人、個別相談だけで解決できる人もいることに着目し、施設のやり方に合わせるのではなく、問題を抱えた人の課題に即して必要な支援を提供するようになりました。

~指針~

 現在、ワンデーポートでは「暮らし」「仕事」「余暇」の視点で一人ひとりの個別的に考えてもらうことを問題解決の糸口にしてもらっています。自己解決しているをめざす人も、入所カリキュラムを受ける人も同様です。自分にあった「暮らし」をするために金銭管理はどうするのか、家族と同居がいいのか一人暮らしがよいのか。どんな「仕事」があっているのか。リラックスできる「余暇」はどのように過ごせばよいのか……。自分にあった生活に変えてもらい、人生の充実をはかることがゴールになると考えています。

~それぞれの方のニーズに応えるための専門家チーム~

多様なニーズに応えるために、ワンデーポートでは様々な専門家と連携したチーム支援を行っています。
刑事事件を起こした方には連携している弁護士を、債務整理は司法書士、発達障害の診断は児童精神科医、
障害年金申請については社会保険労務士などと多様な連携により問題解決を図ってもらいます。
どんな問題背景にも対応したいと考えています。

~事業内容~

  • 電話相談(無料)
  • 家族への個別相談(無料)
  • 入所施設の運営
  • 本人の個別相談
  • 通所による支援(無料)
  • 社会啓発を目的としたセミナーの開催

Q&A

Q.「ギャンブル依存症」は病気と考える必要はないのですか?
A.はいそうです。国際的な疾病分類ではdisorder(障害)と定められています。障害とは社会との関係の中で生じるものという考え方があり、感染症のような疾患や病気と考えるのは無理があります。
Q.病気ではないのなら、本人の自覚が大事だとということですか?
A.自覚や自身の工夫で解決できる方もいます。しかし、借金や就労や家族関係に問題が生じているのであれば、それぞれの方に合った支援やが必要だと思います。「病気」と考えるより「生活や人生の課題」と考えたほうが、よりきめ細かな対応ができると思います。
Q.「依存症」になると脳が変わるという話を聞きました。ほんとうでしょうか。
A.たとえば、パチンコが好きな人と嫌いな人ではパチンコをやる前、やっている最中の脳画像には違いが出るそうです。人間は好きなことをすれば脳に変化が生じます。ある行為が好きな人と嫌いな人では脳画像に違いが出るのは、パチンコに限ったことではありません。依存症は脳の病気だとする根拠はまったくありません。2019年報告書の篠原菊紀先生のお話に詳しい説明が記されています。
Q.一度依存の問題を持ったら、コントロールして遊ぶことは不可能ですか?
A.個人差があるので一概には言えませんが、多額の借金繰り返すなど度をすぎて賭けるようになった方は、コントロールして遊ぶようになることは難しいと思います。ただ、一部の人は生活が安定すると趣味の範囲で遊べるようになる人もいるようです。
Q.医療機関に相談したら、家族が手を貸しすぎるから息子は気づくことができないと言われました。息子は私が関わらないとゴミ屋敷になり、お金もすぐに使い果たしてしまいます。手を貸さないで見ているだけでほんとうによいのでしょうか?
A.お母さまが関わってきたから、息子さんは失敗しながらも生きてくることができたのだと思います。「依存症」支援の古い考え方には、家族は一切関わってはいけないという考え方があります。これは間違った考え方です。ある程度の失敗を許容して、手を差し伸べることを続けてください。
Q.パチンコ業界と接点を持つことは依存問題の支援に矛盾するのではないですか?
A.ワンデーポートは開設直後からパチンコ関係者と交流し、現在は組合やホール企業からの寄付を受けています。パチンコホールと関係を持つことで私たちに以下のようなメリットがあると考えています。
・ホールの中で見えている「のめり込み」問題実態を知ることができる(視野が広がる)
・ホール企業からの寄付は使い道が自由であり、柔軟な事業が可能になる
・利用者の皆様の利用費が軽減される