7 公序良俗(こうじょりょうぞく)
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●公序良俗(こうじょりょうぞく)
私人間の法律である民法に社会規範が含まれているのに違和感を感じるのはわたしだけでしょうか。
民法第90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」とあります。
公の秩序というのは私人間であっても法律である限り、違法行為を認めないことは理解できます。
でも、「善良の風俗」には違和感が伴います。
移り気な人間の集まりの社会だから、良い悪いの判断は時代の変化とともに移り変わるはずだからです。
所有権絶対の近代市民社会であっても、モラルの欠ける、アンフェアーな行為は許されないと理解しておきます。
詐欺や脅迫に至らなくとも許されない法律行為、たとえば薬物使用などがあるということでしょう。
【補足】 民法の基本原則について
1近代民法の三大原則
法律の講義に必ず出てくるのが「●●の三原則」といわれるものです。
三つ挙げたと思ったら大切なのはひとつだけだったり、その他が加わって四つも五つもあったりして戸惑います。
民法だと、はじめに「近代民法の三大原則」が飛び出します。
@所有権の絶対性、A契約自由の原則、B過失責任の原則ですね。
この三つは近代以前には市民に認められていなかった権利です。
王権や徒弟制度に縛られ職業選択も移動も制限があった時代から個人の自由が法律で認めらるための考えです。
それじゃ、どこに条文があるかと見渡してもどこにもありません。
所有権の絶対といっても、日本国憲法第29条(財産権)は公共の福祉というしばりをかけています。
契約自由は憲法にも見当たらないし民法にもありません。
しかし、過失責任の原則は民法第709条に「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護されている利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」とあります。
でも、これでは加害者が特定できない損害、あるいは故意や過失がない損害は泣き寝入りするしかないわけです。
というわけで、近代民法の三大原則は、公害や無過失責任の反省のもとに修正され、特別法を作っています。
2民法の基本原則
それでは我が国民法の基本原則は何かと言えば、民法第1条(基本原則)にとどめる先生と第2条(解釈の基準)を含める先生に別れます。
基本原則は、@公共の福祉、A信義誠実、B権利の濫用です。
解釈基準は、@個人の尊厳、A両性の平等です。
先に挙げた近代民法の三大原則よりしばり(制約)がかなり増えています。
これを自由権の侵害とみなす人もいますが、民法は法律だということを忘れてはならないでしょう。
私人どうしの取り決めなら互いに契約を交わせば済むわけです。
そこに法律が介在するのは、私人に格差があるからそれをフェアー(公正)にする必要があるからです。
金持ちと貧乏人がバカラ賭博をすれば資金が多いほうが勝つに決まっているし、働き先を探す人と雇う(雇用者)では力関係が異なるからです。
国民全般にかかわる法律は公平と公正が求められるから自由に制限が加えられるます。
こんなことは当たり前で繰り返すこともありませんが、民法は法律だということを忘れてはならないでしょう。
わたしは基本原則の三つの中で最も大切なのは「信義誠実」だと思います。
商売であるか否かにかかわらずフェアー(公正)な判断と行動によって法律行為が行われなければ、キツネとタヌキの化かしあいになります。
解釈基準の二つは日本国憲法に基づく追加で、これも当たり前すぎるものの、今でも性による差別がありますから尊重すべきことでしょう。
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