法律用語あれこれ
民法のあらまし
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  もくじ

   はじめに
   1総論
   2物権
   3債権
   4親族
   5相続

●はじめに

 この用語集を作るために多くの方々の著作を読ませていただきました。簡単に書かれていますが法学部の学生向きの本で、素人にはやや煙たいのが難点です。
 そこで、この用語集は基本用語とそれがかかわる用語をグループにまとめ、全体像が把握できるように整理しています。
 条文を読んでつまずきそうな用語やその考え方を説明していますが、コンメンタールのような詳細な解説ではありません。
 
わたしの解説を盲信せず、まず条文を読み流してください。条文の読み方は13の「法令基礎用語(抄)」をあわせてお読みください。
 明示した条文は必ず読んでください。説明を省いた部分があります。
 条文を明記しなかった用語には、学説による解釈も含まれています。
 たとえば、物権編で損害賠償にかかわる「損益相殺」は条文がありません。過失相殺は418条です。
 その前の債務不履行も「履行遅滞」412条と「履行不能」415条は表記されていますが「不完全履行」はでてきません。
 
条文を明記しなかったのは限られたスペースでまとめるために省略しています。
 最もコンパクトに事例と解説がまとめられた著作は、菅野耕毅さんの『事例民法入門<第2版>』(法学書院・2011年)でしょう。
 丁寧な索引とわかりやすい図表、それに主要な判例索引も付いているのでおすすめします。
 なお、用語集は条文の順に並べていませんので注意してください。民法の構成は「民法条文の構造」を眺めてください。

1総論

 私権と公権、権利と義務、責任、作為など
当たり前すぎる用語から始めています。物権や債権では別な用語が用いられますのであえて加えました。
 民法の総則編は、他の編の基礎となる用語が多いので、他の編でつまったら総則に戻ってください。
 権利義務の主体である「人」と客体である「物」が、いつから資格を持ち、どのような制約を受け、どんな能力を持つかを簡単に整理しました。12の「人が関わる用語集」をあわせて読んでください。
 法人については平成18(2008)年12月から大幅な改正があったので省略しています。削除された条文は『学習六法<第7版>』(日本評論社)に掲載されています。
 民法は人の「意思」と「行為」が重視されます。意思の不存在や、意思の有効・無効は重要な用語です。
 条件・期限・期間は契約の効力発生や損害賠償にかかわりますが簡単な説明でとどめました。
 時効は権利の取得と喪失にかかわりますが簡単な説明にとどめています。
 この編で試験に取り上げられるのは「善意と悪意」「意思の不存在」「責任無能力者の保護」「代理」などです。

2物権

 解説書はなじみやすさから債権の契約から始まることが多いですが、民法の財産権は物権から始まります。
 物権は占有権から始まりますが、
所有権を最初に説明しました。債権との違いは所有権の方が具体的だからです。
 10種類の法定物権は概要の説明にとどめています。似たものをまとめて違いを説明しています。
 先取特権にかかわる「第三所有者」と抵当権の実行にかかわる「法定地上権」に触れています。
 第三者とかかわる対抗要件は試験問題に取り上げられるテーマですがキリがないので簡単な説明にとどめました。
 この編で試験に取り上げられるのは「対抗要件」「担保物権」など限られたものです。

3債権

 今後に民法の改正が行われる予定で、そのための解説書も多数出回っています。
 典型(有名)契約が13もあり、その前の総則がこと細かく決められていてうんざりする編です。
 ここでは、
債権と債務、給付と反対給付について権利と義務とのつながりに触れました。
 債権の発生原因は契約以外にもあり、責任の取り方にかかる用語も
「担保責任」「償還」「返還」「賠償責任」と異なります。
 この編で試験に出されるテーマは、「債務不履行」「保証」「手付」「相殺」「危険負担」「代位権」「詐害行為」など幅広い。
 いずれにしても売買や委任は
日常正確に欠かせないのでやや詳しく解説しています。

4親族

 この編は憲法とかかわる条文が多いのに注意してください。
「法の下の平等」と「個人の尊厳」が家族のキーワードです。
 合意のもとに結婚した夫婦を中心に、子の認知や養子縁組を交え、監護や教育の権利義務により子を育成する手続きが定められています。
 夫婦の破綻は離婚ですが、互いの財産だけでなく、離婚後の親権行使などにも民法は規定しています。
 家族制度を崩壊させたといわれる親族編には、親族の「扶け合い」や「扶養義務」の規定があります。
 
子どもは物でなく、出生から権利能力を持つ人間です。また、慰謝料を請求するための人質ではないことを確認しましょう。
 この編は、「結婚の条件」や「離婚手続」ぐらいしか試験では取り上げられません。

5相続

 この編は、いかにして遺言書を作るかとか、どうやって遺産を受け取るかの解説本が多く出ています。
 試験問題も、遺産相続にかかる手続や計算があれこれ出されます。
 受け取る財産もなく、残す財産もない
わたしにはかかわりが少ない編ですが、常識程度の用語をまとめました。
 財産があるばかりに最高裁まで争って、兄弟がいがみあう現実を仕事や親類で見聞きし、うんざりしています。
 用語の解説が最も雑で、簡単になったのも触れたくないという意識が働くからでしょうか。


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