法律用語あれこれ 
1 事理弁識能力
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「能力」てなんだ

 他人に頼らずものごとを一人で判断できる能力といえばいいものを、「ものごとを主体的に判断できる能力」というのも固い表現だ。
 これは「意思能力」の説明だが、主体的うんぬんというのもよそよそしい。
 そして、この「能力」というのも、権利能力、意思能力、責任能力、受領能力、行為能力、不法行為能力に細分される。
 能力は「資格」と同じだという解説が多い。権利を主張し、判断をし、責任を負い、受け取るのもそれが確実にできる資格があるとみなされるからだ。
 ただ、不法行為能力を資格というのにためらう。不法行為は「故意」や「過失」を問われるから、正常な判断力を持っているのが前提だろう。
 そういうものも資格になるのだろうか。盗人に資格というのも変だ。

制限行為能力者

 昔は「禁治産者」や「準禁治産者」という、言葉からして「危ない」とか「怪しい」イメージがつきまとう法律用語があった。
 それは精神疾患者や放蕩人を意味していたが、今では「制限行為能力者」として、被後見人、被保佐人、被補助人の3つに区分された。
 いずれも判断能力が欠ける程度で区分される。「被」が付くのは受身の立場を示すようだ。

事理弁識能力(じりべんしきのうりょく)

 法律用語集に見当たらないけれど、一般向けの民法解説書に登場するのが「事理弁識能力」だ。
 少なくとも3冊の解説に登場する。民法第7条、第11条、第15条に出ている「事理を弁識する能力」をそのまま使っているのだろう。
 事理というのは「ものごとのすじみち」や「道理」だ。
 「弁識」は国語辞典に見当たらないが判断力だから、ものごとを一人で判断できることをいうのだろう。

 屁理屈を並べるのは好きだけど、枝葉末節や重箱の端を詮索するのは苦手だ。
 ロジカルシンキングがもてはやされているけど、定義が不明確な言葉をあれこれ並べ立てるのもうっとうしい。
 法律家にだまされないよう基本からやり直すのも遅いだろうか。

 【補記】
 用語になじめない方は民法用語(1)をごらんください。
 未成年者と制限行為能力者を混同していましたので訂正しました。ごめんなさい。
 
これは行為能力の区分で、いずれも保護の対象になります。
 損害賠償とのかかわりでは未成年者と制限行為能力者を総称して「責任無能力者」といい、責任能力はありません。
 それじゃ、彼らが他人に与えた損害はどうなるかといえば法定代理人(親権者、後見人、保佐人、補助人など)が監督責任を負います。

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