電車を乗り継ぐ旅
2004年07月25日
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  先週から我が家では「JR相模線」が何かと話題になってきた。慌て者の娘は、息子が通学に使っていた「相模鉄道」と勘違いしている。確かに海老名(えびな)で合流し、いずれも相模川の砂利運搬の鉄道として開設されている。また、海老名駅には「小田急線」も走っているから電車にうとい妻子は混乱するようだ。
  手でドアを開け閉めすることを話したら、「見たい乗りたい」と言い出す。期待に応えるのが親父の務めである。さっそく古本屋で西村孝昭著『相模線沿線散歩』(かもめ文庫、二〇〇一年)を買い込み、車両の写真を見せるといつ出向くかと言い出す。
 
 昨日は午後二時から妻と娘を連れて、「ホリデー・パス」を買い込み茅ヶ崎に向かった。でも、相模線に乗り込むと暑さに敗けて途中下車はやめた。待ち合わせで停車するたびにホームに出て写真を写すと「みっともないから止めてよ」と妻や娘に非難された。
 寒川駅から下溝駅までは「トウモロコシが咲いてるわ」
「畑ばかりじゃない」
「お寺も多いし、夜は寂しそう」などと勝手なことを並べたあげく、
 上溝駅から橋本駅にかけては
「大きなショッピングセンターもあるよ」
「けっこう人も多いのね」と妻子が感心しあうのも可笑しい。
 五五分の乗車は家族が盛り上がって意外に短い。
 
       
           茅ヶ崎駅      今回の主人公      開閉ボタン
      
  
         寒川神社の駅     賑やかな車内     相模線の車両


 橋本駅で横浜線を待つ間にようやく煙草が吸えた。家を出て二時間半ぶりの煙草がうまい。妻と娘は京王線が乗り入れる賑やかな駅に驚いている。相模原にはクルマで年に数度出向いているが橋本駅は妻子には初めてだから
「大きな本屋があるわ」
「進学塾も多いね」と感激するのが可笑しい。


  相原駅や八王子みなみ野駅の看板を眺め、近所の誰それが通うと大学名を並べていた娘が
「せっかくフリーパスを買ったんだから普段使わない線がいいわ」と言い出し、
 八王子駅から中央線で吉祥寺駅に向かうのを止めて、「八高線」に乗り換えた。

     
  
         八高線の車両   大きな開閉ボタン     東福生駅
      
 八高線に乗ると「お父さん、この電車も押しボタンがついてるわ」と娘が叫ぶ。大声で話すからまったく恥ずかしい。
「これも写しておいて」と指示するのも癪だ。八王子と高崎を結ぶ八高線は私も初めて乗車するから駅名を確かめる。北八王子駅があるのも初めて知った。拝島駅や東福生駅は横田基地沿いだから少しは馴染みがあるが、その他は皆目分からない。妻は西武鉄道の枝線である拝島線や池袋線を見つけて娘に説明を始めた。相模線に比べると駅の間が長く、標高も高いほか茶畑と山が多い景色だ。直線が多いので電車のスピードも速い。


 高麗川(こまがわ)駅には六時前に着いた。川越線と八高線の分岐点である。妻と娘がトイレに入る間に周りを眺めたが、ホームに売店もなく寂しい場所という印象しかない。この周辺の地名は高麗(こま)を始めとして飯能、小手指など朝鮮に関わるようである。

     
  
            高麗川駅       ジーゼルカー    川越線車両

  八高線はジーゼル車に変わり騒音と振動が激しくなった。
「お父さん良かったじゃない、ジーゼル車よ」と娘がささやく。
 陽も落ちて山の間を走るのも退屈である。小川町駅や寄居駅で東武東上線を見かけたが池袋までは遠いという印象しかない。浴衣姿の娘たちが去った車内は急に静かになった。


  食事に有りつけると期待した高崎駅には七時半を過ぎて着いた。期待に反してホームには飲物の自販機しかない。高麗川から一時間半もかかり、空腹も加わって妻子は無口になっている。八高線が全線走行に二時間半もかかるのに互いが驚くのも可笑しい。
  倉賀野駅に戻り、高崎線を待つ二〇分間は互いに空腹で愚痴を並べた。
「ずいぶん寂しい駅じゃない、●●がついて来なかったのも分かるわ」
「お父さん、このルートは大丈夫なの」と妻子が不満を並べる。

関越道なら分かるが鉄道網にうといから内心は不安である。大宮か上野に向かえば何とかなるだろう、と自分に言い聞かせた。


  熊谷駅に着くころは互いに夕食の話しばかり並べた。この車両も開閉ボタンがついているが自動開閉である。途中の籠原(かごはら)駅には、新宿や池袋経由で湘南ライナーが走っている。行田(ぎょうだ)、鴻巣(こうのす)、 桶川(おけがわ)、上尾(あげお)と馴染みの駅名が出てきて一安心した。埼玉県で分かるのは加須(かぞ)付近に限られる我が家である。鴻巣付近では花火を車窓から眺めたが丸い花火だけで単調だった。
  大宮駅には九時一五分に着いた。さっそく下車して食堂を探すが、どこも一〇時閉店である。慌てて店に飛び込むとラストオーダーの時刻だ。食事をあわただしく済ませると妻子も口数が増えた。
「横浜なら飲食は一一時までやっているわ」
「大宮で下車して正解ね」
「今日の旅はスリリングだったわ」と姦しい。


  東京駅までは新幹線を使った。東海道線と根岸線を乗り継いで山手駅に着いたのは一一時五〇分である。タクシーで自宅に戻ると一二時だった。
「電車の旅は食べ物持参にしなくちゃ」と妻がつぶやくと、
「半日で一都三県まわちゃた」と娘が満足気に息子に説明する。
 めげないところが頼もしいパートナーである。


 参考事項

1ホリデー・パスはJR東日本の指定区間を1日自由に乗り降りできる周遊
券で、横浜発は大人1人2,300円です

2大宮・東京間の新幹線自由席特急券は大人1人1,040円です

3今回乗り継いだJR線は、「東海道線」、「相模線」、「横浜線」、「八高
線」、「高崎線」、「長野新幹線」、「根岸線」でした

4所要時間は乗り換えと食事時間を含めて10時間でした。旅費ソフトでは
307.1km、6時間ですが乗り換え時間のロスがけっこうありました。

 行動記録:

14:00出発→14:52横浜東海道線・29.8km)→15:30茅ヶ崎相模線・33.3km)→16:26橋本横浜線・8.8km)→16:45八王子17:06(八高線・31.1km)→17:50高麗川18:08(八高線・65.3km)→19:34高崎19:45(八高線)→19:50倉賀野20:04(高崎線・74.7km)→21:15大宮【食事】22:29(新幹線・30.5km)→22:52東京23:08(東海道線・29.8km)→23:28横浜根岸線・5.0km)→23:50山手→24:00タクシーで帰宅