民法あれこれ図解編 
人が法律とかかわるとき
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この表は「人が関わる用語集」の図解を簡略したものです。
細かい説明はそこの記載で確かめてください。        
表では言い足りなかったことを下で説明しています。     

1 人が法律とかかわるとき
2 誕生            
3 成人            
4 死亡            



1 人が法律とかかわるとき

 ひとが法律にかかわるのは、@買い物をする、A入学する、B就職する、C商売を始める、D資格をとるという家族生活の外にある世界とかかわるときです。物を買えば支払いがからみ、サービスを受けたり提供するにも契約がからみます。そこには他人と交わす約束の厳しさがあります。お金を借りれば利息が付き、高額商品購入や就職の場合は担保や保証を持ち出されます。返済を怠れば厳しい取立てもあります。また、不注意で他人に損害を与えれば賠償を請求されます。家族のぬるま湯にたっぷり浸かってきたものには居心地の悪い世界です。

家族生活では、結婚の約束や相続を除いて法律は特に必要なものではありません。結婚前に約束したことは夫婦生活を重ね、子どもが成長するとともに修正を強いられ、夫婦の力関係も逆転します。親子の金の貸し借りに利息や担保を持ち出せば高利貸かと反発を生みます。そして、亡くなった人に対する貢献や残された家族を無視して、法律を振りかざして分け前を主張するのも醜いことです。法律は使い方を誤れば言葉を武器にした争いのもとで始末におえません。

とはいえ、子どもも大人も、その共同体(社会)を維持していくためには何らかの社会規範や慣習に従わざるをえません。年齢、性別、体力が異なりものの考え方、趣味、嗜好も多様な人間どうしが共生していくには互いのハンディキャップを認めあい保護する暗黙の了解やオキテがあります。民法は人の自由と平等を尊重しあう法律関係です。そこで一人の人間が出生から死亡までどのような区分をされ、どんな法律関係をもつのか整理しました。図解とあわせて読んでください。


2 誕生

人は出生(しゅっしょう)とともに権利と義務を取得し、財産を処分できます。赤ん坊に財産と思われる方もおられましょうが、多額の財産を相続した赤ん坊や子どもはどこにもいます。

そればかりでなく、民法は、出生前の胎児(たいじ)にも損害賠償請求権や相続権を認めています。ただし、胎児や未成年は意思表示の能力が欠けるので親権者が保護します。そこに、財産についての親子の利益相反(利害対立)が生じ、特別代理人の選任もからみます。

民法は赤ん坊と子どもを含めて「未成年者」とします。未成年者に対しては、「親権」という監護や教育のための親の権利と義務のほかに、結婚の同意や営業の許可も加わります。未成年者は才能や知力にかかわらず年齢で区別されます。その代わりに、未成年者が結婚すると成人とみなされる「成人擬制」になります。選挙権はありませんが、家族生活を営むために家を借り、仕事を得るための契約を結ぶのに欠かせないからです。親の同意を得ることは甘えることでなく、独り立ちする権利を持ち義務を負うことです。

参考書に出てくる人の一生と権利の表には、14才が刑事責任を負う年齢、16才を女性の結婚可能年齢、18才を男性の結婚可能年齢としていますが民法とは別の法律のものです。

民法が定める年齢を持ち出すなら、普通養子の15才未満との縁組(796条)、特別養子の年齢である6才ないし8才未満(817条の5)、あるは遺言能力のある15才(961条)でしょうが、きわめて特殊な場合ですからそういう表をみかけません。 


3 成人

成人は年齢(満20歳)によって未成年者と区分されます。老若男女の区分はありません。民法は事理弁識能力という判断力を持つとされます。これは他人に相談することを含めて自分でものごとを判断し、意思表示をするだけのことで、とりたてて難しいことではありません。現実には知識や経験の程度に差があるわけですが民法はその区別はしません。

酒が飲めるとかタバコが吸え選挙に加われるのが成人と未成年の違いですが、それは民法と異なる公法の決まりです。民法は制限や禁止がなければ自由に活動できる世界です。憲法や刑法の禁止規定と罰則を忘れてはなりません。このほかにも暗黙の了解とオキテが明示されている法律が多数あります。

ただし、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く人(被後見人)、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な人(被保佐人)、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分の人(被補助人)は「制限行為能力者」として保護されています。事理弁識能力は精神上の障害であって、身体障害と異なることに注意してください。

また、未成年者と成年被後見人は受領能力がありません。営業の許可を受けた者や成人擬制となる未成年は除かれます。

ちなみに、未成年者と制限行為能力者は「責任無能力者」ですので、第三者に損害を与えた場合は取消権や同意権のある監督義務者が責任を負います。 

家族の基本は夫婦です。互いを「配偶者」と呼びます。互いの合意で「婚姻」(結婚)し、協議により「離婚」することもできます。子どもを産む、産まないは夫婦の選択です。産んだ以上は子どもを育てるのが親の権利であり、義務なのはすでに触れました。離婚しても子の養育義務が夫婦のいずれかに残ります。子の推定、認知、養子縁組と離縁のほかに、親族の扶け合い、夫婦の同居・協力・扶助、血族の扶養などもかかわります。

ここで民法の年齢を持ち出せば、普通養子の養親は成年に達したものです(792条)。未成年者は養子になれても養親になれません。そして普通養子の養親は結婚していなくてもなれますが、特別養子の養親は結婚していて25才以上であることが条件です(817条の4)。また、隠居制度がありませんから年齢で人生の定年も決まっていません。年金の受給年齢は民法にありませんし、任意の成年後見制度もいくつからとは決めていません。


4 死亡 

権利能力の終了は「死亡」です。でも、それを明示しないのが民法です。例外をあげて、そうでないものを推定させるだけです。権利能力(私権の享有)の開始は出生ですが、終了は明記されていません。死が出てくるのは相続の開始(882条)です。

例外的な死亡は、失踪宣告と同時死亡の推定です。失踪宣告は「死亡したとみなす」、同時死亡の推定は「死亡したと推定のちがいがあります。

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