雨 |
3 部屋の天井を見ながら考えた。そういえば、僕は彩子以外の女と付合ったことってなかったんだなって…。付合ったことがないばかりか、他の女性に興味がわいたこともなかったような気がする。始めて僕が興味を持った女が彩子だった。 子供の時のことから思い出しても、女を好きになったことってほとんどなかったような気がする。確か始めて恋心のような気持ちになったのは小学校三年生の時で同じクラスの背の小さい可愛い男の子にだった。高校の時だって男子校で、周りの男子は女の子がいないことをよく嘆いていたけど、僕は全然苦にならなかった。それに、ちょっと可愛い感じの同級生に特殊な感情を持っていた。彼の裸になった姿を想像したりして、自分を慰めていた。 よく考えてみればオナニーするときだって、彩子と知り合う前は自分が誰かに辱めを受けている姿を思い浮べていたりした。僕に辱めを与える相手は男のことが多く、たまに女だった。それに彩子は確かにいい女だけど、性格的には男っぽい。僕は一体何に性的な興奮を感じるのだろう。ひょっとして自分はゲイという奴なのかもしれない。いや、自分が恥ずかしいことをされている姿を想像してペニスを固くしているのだから、ゲイだけじゃなくてマゾの気もあるのかもしれないとこの時初めて思った。僕はゲイでさらにマゾなのだろうか? 思い当たることは他にもあるアニメで放送されていた‘ハイカラさんが通る’でも僕は蘭丸が好きだった。そしてできれば蘭丸のようになりたいとさえ思った。男性的な逞しさよりも女性的な妖艶さの方に興味があった。興味をもった男性はみんな女性的な繊細さと可愛らしさがあった。だから、ただ女の代替品として想像の中で遊んでいただけなのかもしれない。僕の本質がどうなのかは自分でもわからない。だけど、男にも性的なものを感じてしまうことがあったのは確かだ。 自虐的な趣味があるのは確かだ。彩子とそのような行為を行なったことはないが、ちょっと興味はある。頻繁に精神的、肉体的に支配されている自分の姿を想像して、性的に興奮していた。実行を伴わない精神的マゾなのかもしれない。 高校生の時、クラスでよくパンツを下ろされ性器をみんなに晒され、いたずらされていた級友がいた。僕はその仲間には加わらなかったけど、独り密かに興奮していた。夜にそのことを思い起こし独り愉しんだり、その級友を自分に置き換えて性器を弄んだ。自分でも自分がわからない。 SMクラブにでも通って、試してみれば素質があるのかわかるかもしれない。しかし、そんなことにお金を使うのはもったいないし、行く勇気もない。そういえば、アウトドアで使うロウソクがあったのを思い出した。ロウをペニスに垂らしてみて自分がどのように感じるか試すというのはどうだろう。まだ、風呂もお湯は少ないし、実験してみようと思った。 早速、アウトドア用品を入れてあるダンボールから使いかけの赤いロウソクを取り出し火をつけた。僕は再びジャージとパンツを下ろし、下半身を剥き出しにした。実際にロウを性器に垂らすとなるとかなりの恐怖心が襲ってくる。それにペニスのどの部分に垂らせばいいのだろう。 まずはペニスの裏側の真中辺りに数滴垂らしてみた。垂らしてすぐはあまり何も感じなかったが、時間差をおいて熱さが伝わってきた。ペニスは熱さの刺激を受けたためか固くなったが、快感は全くない。今度は剥けている亀頭の尿道に近いところに垂らしてみた。それはもう熱いというより、激痛という感じで固くなっていたペニスも一気に萎んだ。 肉体的な快感はなかったが、精神的にはちょっと興奮した。SMって肉体的なものが主体ではなく、精神的なもののような気がする。肉体的な喜びは精神的なものに支えられて始めて成立するものだ。そして対人性が重要な要素になるはずだ。だから、こういったことはほとんど意味のないことなのかもしれない。暇だとロクなことを考えない。 僕は一体何をやっているのだろう。彩子が会う前に僕がこんなことをしていたと知ったら、どんな顔をするだろう。想像すると可笑しくなったが、また半分恥ずかしくもなった。気分転換に風呂に入ってさっぱりすることにしよう。まだ、湯船には湯が半分くらいしか入っていないけど、入っていればそのうちいっぱいになるだろう。 裸になり何気なく自分の体を見るとちょっとお腹が出てきたような気がした。そういえばベルトを締めるとき、ちょっときつく感じることが最近多い。散歩とか適度に運動をしているつもりだったけど、基本的にはだらけた生活をしているのだから贅肉が体についてきたのかもしれない。それに体力も落ちているような気がする。ちょっと腹筋運動でもやってみようかと思い、足にタオルをあてがい机の下に入れて固定して始めた。 一回、二回と上体を起こしながら声をかけた。時折右に左に体を捻ったりして変化を加えてみた。しかし、すぐに体が重くなり、上体が上がらなくなった。以前は五十回くらいできた記憶があったが、今は二十二回しかできなかった。やはり体力はかなり落ちている。次は腕立て伏せをやってみた。 一回、二回と声をかけながら腕を立てたり折ったりした。腕を折るたびにペニスが床につき、変な気分になってくる。それが何となく気持ちよくペニスは半立ちの状態になって余計床に強く接するようになった。そのおかげかもしれないが、回数は五十回を超えた。まあ、まあ納得の行く回数だった。僕は半立ちになったペニスについたロウを落して、風呂場にいき、湯船に体を沈めた。 |