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≪2年目 夏の月 1日 (水) 晴れ≫

 夏男のカイが挨拶に来た。日記に書くのを忘れていたのだが、彼は去年の秋に遠くの町へ旅立っていたのだ。で、また夏になったのでミネラルタウンに来たらしい。カイからは年賀状も届いたし、こうして挨拶にも来てくれた。親しい人から見ると、決して悪い奴じゃないんだがなぁ。
 しかしカイは、ここで暮らすことが辛くないのだろうか。半分の人とは親しく、恋人のポプリもいるとはいえ、残る半分の人からは、あからさまに嫌われているのだが。

 種まきを終えると、水やりはコロボックル達に任せて海岸へ行く。今日はフリスビー大会の日。そう、これまでの特訓の成果を披露する時がきたのだ。
 私たちの順番は最後のようだ。これまでの記録は・・・げげっ、65m20cmだと!? 去年は15mくらいで優勝だったはずなのに、1年でここまでレベルが上がったのか? まさか私とポチの名コンビに触発されて、みんなが仕事をサボってまで練習してきたのではないだろうな。
 しかし負けるわけには行かない。この日のために、2ヶ月もの特訓を重ねてきたのだ。私は自分に言い聞かせる。私達のコンビは最高だ、誰にも負けるはずがない、と。

 私の1投目。よし、まずまずの感覚だ。ポチ、後は任せたぞ!
 そしてポチは、見事にフリスビーをキャッチ。記録は・・・68m40cm! 1投目にして優勝が確定だ。
 結局2投目は65m90cmに終わったが、これも準優勝コンビの記録を上回っている。自己ベストの更新はならなかったとはいえ、私たちは十分に力を出せたといっていいだろう。
 しかし残念だ。みんなが10m代の記録に一喜一憂している中で70m以上の記録を出し、運動会に出場したオリンピック代表選手のような気分を味わってみたかったのだが。


≪2年目 夏の月 2日 (木) 晴れ≫

 フリスビー大会の翌日、私が何をしているかというと、来年のフリスビー大会に向けての特訓だったりする。ポチ、来年こそはみんなの度肝を抜く記録を出そうぜ!

 フリスビーの後でカイの店に入る。ここではかきごおり焼きとうもろこしなどを食べることができるので、おやつにピッタリの場所なのだ。
 おや? カイと話しているのはグレイじゃないか。喧嘩でも売りにきたのだろうか。
 ・・・と思いきや、どうやら正反対だったようだ。もちろん喧嘩を買いにきたという意味ではなく、2人は仲良しだったという意味だ。
 そうか、カイには私のほかにも男友達がいたんだ。そういえばこの2人、宿の同じ部屋に泊まっている。宿代を節約するためであっても、嫌いな人と同じ部屋で暮らすとは考え難い。
 自分を認めてくれる人が1人でもいるのといないのとでは大違いだ。それに実は、クリフも2人と同室だ。彼は苦労人の好青年だから、カイともうまくやっているかもしれない。少なくとも、いずれはやっていけるだろう。
 あまり良い言い方ではないが、カイは友人に恵まれている。グレイマリーと結婚すれば、みんなから一目置かれているバジルさんの息子になるわけだし、クリフは自身が多くの人から信頼されているのだから。それに顔だけは広い私だっている。これだけの男友達がいれば、カイは決して孤独ではない。そしていずれは他の男たちも、カイが自分達と何ら変わらないということに気付いてくれるだろう。私がカイのことを心配する必要はなかったのだ。

 帰宅途中でマナさんに捕まった。しばらくマナさんの話を聞いていたのだが、なんと娘のアージュさんから、毎日電話が掛かってくるようになったらしい。そういえば、以前サーシャさんアージュさんに電話をしてみるとか言っていたが、それがうまくいったのだろうか。真相は分からないが、マナさんが今、幸せであることは間違いない。
 しかしアージュさんという人も大変だよな。この村には電話が1つしかないため、電話を掛けてからマナさんが出るまでに、かなり待たされるだろうから。いくらマナさんが宿屋の隣に住んでいるからといっても、間には果樹園が広がっているんだしね。

 良い話を2つも聞いた反動なのか、夜にまた野犬がやってきた。しかし戦うのも飽きたので、ポチに任せて自分は川釣りを続ける。野犬ポチに追いかけられて、2回ほど私にぶつかってきたのだが、私はやっぱり無視して釣りを続ける。
 ところが、しばらくしての鳴き声が響いた。ま、まさか!
 私は釣竿を放り出してモーモーのもとに駆けつける。モーモーは、野犬に吠えられて不機嫌になっていた。
 ・・・悪いのは野犬だ。ノンキに釣りをしていた私を見て不機嫌になったのではないはずだ。
 対戦成績は14戦11勝1敗2無効試合。ああ、痛恨の初黒星。


≪2年目 夏の月 7日 (火) 晴れ≫

 今日は鶏祭りが行われる。去年はコケッコと参加して恥をかいてきたのだが、もうあの頃とは違う。今年は十分に優勝を狙えるはずだ。
 今回出場するのもコケッコだ。うちののリーダー格はコッコなのだが、副リーダー格であるコケッコを出場させるのには訳がある。それはコケッコが、キャンディ牧場で生まれた最初の命だからだ。そのせいで、どうしても他の達よりも思い入れが強くなってしまうのだ。コケッコが産まれたばかりのときに、悪漢に命を狙われながらも母の愛によって助けられるという、感動の物語があったということも一因になっているかもしれない(コケッコ誕生秘話を忘れた方は、「1年目、春の月、15日」の日記を読み返してみよう。その際にはハンカチを忘れずに)。

 一回戦の相手は、戦う前から涙目になっていた。コケッコのオーラを感じ取ったのかもしれない。
 しかし試合内容はというと、去年と変わらぬ危なっかしさ。追いまわしているかと思うと今度は追いまわされ、右へ行っては左に戻り、またそれを繰り返す。これはどう見ても、踊っているようにしか見えない。
 もっとも底力の違いなのか、40秒くらいで相手を土俵から追い出すことができた。

 二回戦は準決勝。相手は戦う前から冷や汗をかいている。去年と今年のコケッコの戦い振りを見ていれば、コケッコを恐れる気持ちは良く分かる。ある意味、最も戦いたくない相手だろう。誰だって笑いものにはなりたくない。
 しかし一回戦でコツをつかんでいた私たちは相手の隙をついて攻撃し、どとうの寄りで一方的な勝利を収めた。

 決勝戦の相手は、ヤクザにしか見えない面構え。しかし何度も野犬と対峙しているコケッコが、その程度でおびえるわけがない。準決勝よりは時間がかかったとはいえ、危なげない内容で勝利を収めた。つまり、コケッコの優勝だ!

 優勝した私たちをみんなが祝福してくれたのだが、その時にポプリが妙なことを言っていた。「これから金の卵が生まれるかもしれない」って、どういうこと? 殻が金色の卵が生まれるのか、それとも純金の卵が生まれるのか。
 できることなら前者であってもらいたいものだ。なにせミネラルタウンでは、の出荷額が50Gなのに、の出荷額はわずか25Gなのだ。


≪2年目 夏の月 8日 (水) 晴れ≫

 コケッコが輝くを生んでいた。これが金の卵なのか? しかし見た目は金というよりも銀だ。調べてみるとPの卵という、特殊な出荷物であることが分かった。
 P? ああ、プラチナのPか。銀じゃなくて白金だったのか。以前のテレビで家畜を放牧しているといいことがあると言っていたのは、これの事だったようだ。

 Pの卵冷蔵庫に入れようと思ったのだが、残念ながら私の冷蔵庫にはほとんど隙間がない。季節の作物と薬草、その他もろもろを全種類入れているためだ。仕方がないので、Pの卵マヨネーズにして出荷することにした。それでマヨネーズメーカーという特別な機械にを入れたのだが、出てきたのはマヨネーズPサイズ。ちなみに銀色。
 ・・・コケッコの前では言えないが、とてつもなく不味そうだ。購入者から苦情がこなければいいのだが。

 今日は今月初めての収穫日なのだが、いい加減なコロボックル管理をしている私のこと、彼らに収穫を頼んでいるはずがない。しかも水やり担当者も1人しかこない。
 ・・・仕方がない、久しぶりに自分で働くか。
 自分で働くことが日記のネタになるという現状はどうかと思うが、私は久しぶりに仕事らしい仕事で汗を流し、やっぱり久しぶりに温泉に入る。
 ・・・そういえば、以前この温泉で釣りをしたときに、2度もアタリがあったんだよな。私が浸かっているお湯の中に、今も何者かが潜んでいるのだろうか。日記を読み直すと、あの時は銅の釣り竿だったようだ。今はミスリルの釣り竿を持っているのだから、また温泉で釣りをしてみようか。
 まてよ、この辺りにはぬしと呼ばれる魚が何匹かいるって話だから、そっちを狙ったほうが確実かもしれない。ま、のんびり考えよう。どうせ明日からは、またヒマになるんだし。


≪2年目 夏の月 9日 (木) 晴れ≫

 マザーズヒルに登ると、サイバラさんグレイがいた。一人前の職人になるためには、心も大切だということのようだ。

 サイバラ「お前さんも、たまには心を休めるんだな。」

 ・・・これ以上は無理だと思います。

 フリスビーは砂浜で行うのだが、その途中でポチ空き缶を見つけて掘り出した。まったく、ふざけた人がいるものだ。
 人がゴミを捨て、犬がそれを拾う。これは絶対に間違っている。


≪2年目 夏の月 11日 (土) 晴れ≫

 朝食はケチャップだった。うっかり飲み込んでしまったので、ケチャップなしのオムレツを作って丸呑みし、胃の中で料理を完成させた。
 今度マヨネーズが出たときには、サラダを飲み込むことにしよう。


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