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≪オススメ度【3:平凡】(NDS、PS2)≫ 


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NDS  エルミナージュ2 クロノ・トリガー 世界樹の迷宮
テイルズ オブ ハーツ ドラゴンクエスト9 ノスタルジオの風
PS2  ウィザードリィ エクス2 エルミナージュ ブシン 0
リリーのアトリエ    


エルミナージュ2 双生の女神と運命の大地 (NDS/スターフィッシュ・エスディ/2010年)
 前作(著者プレイはPS2版)プレイを前提としているとしか思えない部分が若干ありますが、未経験者でもほとんど問題なく遊べます。ゲームのパターンが前作と酷似しているため、私は快適さを向上させたリメイク版という印象を持ちましたが、この独特の流れがエルミナージュと言うシリーズの基本形であり、今後もこのパターンを続けていくのかもしれません。これは賛否両論となるでしょうが、私はゲームの本質には関わらないと考えており、この部分に関しては別にこれでもかまわないと思っています。
 ゲームの流れに限らず前作とほとんど同じ内容の作品であり、重複する部分は今回のレビューでは書いていないため、前作のレビューも参考にしてみることをお勧めします。またその逆に、今回のレビュー内容は前作にもほとんどそのまま当てはまります。

 RPGを序盤、中盤、終盤の3つに分けるならば、「序盤:ほとんど何もできない時期」「中盤:魔法等を徐々に習得し、できることが増えていく時期」「終盤:全ての魔法等を習得し、ほとんどなんでもできる時期」となります。そしてここで言う中盤と終盤の間くらいでエンディングを迎えるのが普通です。これは考えてみれば当然のことで、RPGにおいて最も楽しいのが中盤だからです。それゆえ序盤はほんの少し、中盤が大半を占め、ゲームによっては(特にリメイク作品は)終盤にも力が入っている・・・というのが従来のRPGにおける基本構成です。
 しかしこのエルミナージュと言うシリーズはそうではありません。レベルアップに必要な経験値や魔法の習得レベル(ウィザードリィとほぼ同じ)を考えると、レベル5〜15辺りがここで言う中盤に相当するのですが、その時期にちょうど良い敵と戦える場所がほとんど存在せず、またそこで入手できる装備が初期装備と大差ないため、戦闘を楽しめないほど難易度が高くなっており、それゆえ辛い中盤をどうやって終わらせるかが重要になっているのです。そしてゲーム本編が始まるのは(まともに戦闘や探索ができるようになるのは)、全ての魔法を習得した後・・・。これでは探索が簡単になりすぎて、単なる戦闘ゲーム、収集ゲームにしかなりません。
 つまりこのゲームは通常のRPGにおける「やり込み部分」がゲームの中心になっており、RPGにおいて最も楽しいはずの時期(中盤)が、このシリーズにおいて最もつまらない時期になっているというだけでも、このシリーズが基本すらまともにできていないことが分かります。

 基本すら出来ていないのはそれだけではありません。このシリーズで最強クラスの攻撃として設定されているのは、MPをすべて消費することで敵全てのHPを一定の割合で(今作の基本は20%)削るという魔法ですが、敵の中には何のコストもなしに主人公たち全員のHPを半減させる攻撃を使ってくるものが多数存在します。終盤になるとHPが4ケタになるゲームでありながら、HPを一ケタ残して全て奪い取るという特技も敵専用として存在します。これらはその「存在すらおかしい」と感じられなければプロとして恥ずかしいくらいの初歩的な欠陥です。そしてこのような欠陥が、いちいち書いていられないほど大量にあるのです。

 実力がないうえに仕事が雑。ただ発想が豊かなだけ。そんな人たちによって作られたと思われるこの作品ですが、ユーザーの評判は上々のようです。これは「アイデアが面白い」ことや「できることが色々ある」こと、「非常に高い目標が存在するため、そこそこの楽しさが非常に長く持続する」こと、そして「プレイヤーのほとんどが難易度の高いRPGでなければ物足りないと感じるような人(攻略することを楽しもうとしている人)」ということが主な要因ではないかと思われます。
 ですがここまで書いてきたように、この作品は欠陥だらけのお粗末な出来です。基本がウィザードリィであるためある程度の楽しさはありますし、メインシナリオは良くできていますが、ゲーム部分でまともなのはそれくらいという情けない代物です。質より量のやりこみゲームでしかありません。

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クロノ・トリガー (NDS/スクウェア・エニックス/2008年)
 ファイナルファンタジーシリーズ(アクティブタイムバトル採用)の姉妹作、といってもよさそうなほど共通点の多い作品です。ただしこちらの方が地味である反面、完成度で少し、快適さで大きく上回ります。

 戦闘はリアルタイムで行われるため緊張感があるのですが、その理由はFF同様に、時間を止めるべき部分でも時間が流れるため、コマンド入力を急がされるという反則仕様によるものです。リアルタイム制の戦闘はターン制の戦闘よりも高度だと思っている人が多いと思われますが、実際にはその逆であり、この作品(FFよりはマシ)のような反則をしなければ、楽しさを生み出すことは困難なのです。
 また敵の個性が激しいのですが、確実にHPを1にしてきたり、半減させてきたりと、「なぜそんなことをするの?(できるの?)とどめを刺す方が簡単なのに」と思える、極端にゲーム的(非現実的)な仕様が少し目立ちます。

 このようなシステムは、正体に気づいてしまうと興ざめしてしまうものであり、知れば知るほどつまらなくなります。クリアするとデータを引き継いで2周目を始めることもできますが、これでは「このゲームの戦闘はつまらないから飛ばしてください」という意味にしか思えません。良くできたRPGであれば、レベルが低い時には低い時にしか味わえない楽しさがあるものなのですが。

 結局この作品の面白さは、自由度が乏しいおかげでテンポ良くゲームが進行することや、反則仕様のため緊張感があることなど、表面的な部分にしかありません。細かいことを考えなければ楽しめるため、RPGに詳しくないライトユーザー向けとも言えますが、こんな理由で人に薦めたくはありません。

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世界樹の迷宮 (NDS/アトラス/2007年)
   アイデアが素晴らしく、ゲーム中に面白さを感じられる部分もありますが、基本的な部分はデタラメという、アトラスらしい作品です。

 最大の特徴は、タッチペンを使ったマッピング(地図作成)です。3DRPGをプレイするときに必要となるマッピングは、面白いものの面倒なため、よほど古い作品以外はコンピュータが自動でしてくれるものですが、この作品はタッチペンを活用することで、プレイヤーが手軽に描けるようになっています。また描いたマップを実際に活用する機会が豊富に用意されています。特にマップに位置が表示される強力な敵から逃げ回りながら迷宮を探索していくのは、緊張感があって面白いです。

 ただしこの作品、アイデアはゲーム序盤で全て出尽くしてしまい、中盤以降は普通のRPGと変わらないプレイ感覚になってしまいます。基本的な部分がデタラメな作品ですから、つまりは出来が悪いだけのRPGに変わってしまうということです。
 例えばプレイヤーの視点は完全に無視されています。小学校低学年レベルの算数を間違えている(計算をしてすらいない?)ところがあるなど、計算式関連はメチャクチャです。それゆえ自由度の高さは見せかけにすぎず、実際には限られた正解を探しだし、その通りにプレイすることが求められます。プレイヤーの嗜好は、全くというほど反映されません。

 結局この作品は、「開発者が手抜きした部分をプレイヤーが補う(研究して克服する)」ということを楽しむものであり、それをゲーム性と捉えるか、手抜きであると感じるかで、評価が大きく分かれてしまうと思われます。手抜きであると確信できれば、当然ながら楽しめませんし、非常に大きな怒りを感じることでしょう。実際には手抜きなのですから、本質を見抜けない人だけが楽しめるという、ユーザーをバカにした作品だともいえます。
 アイデア満載の序盤の面白さは本物であると思いますし、クリアすることだけを考えれば、決して理不尽な難易度でもありませんが、購入を考える場合には、RPGとしての、そして商品としての出来は非常に悪いということを、くれぐれも忘れないでほしいと思います。

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テイルズ オブ ハーツ
  (NDS/バンダイナムコゲームス/2008年)
 アクション性の高い戦闘が最大の特徴であり、同時に最大の欠点となっている作品です。
 戦闘の問題の1つは、攻撃を受けたら行動がキャンセルされたり、一定時間行動できなくなったりすることです。つまりは先にあてたもの勝ちであり、あるいは数の多いもの勝ちの戦闘になってしまっているということです。隙の少ない攻撃手段を連発するだけの戦闘では、ゲームとしての面白みはありません。
 もう1つの問題は、戦闘スピードが速すぎることです。これは1つ目の問題ともあいまって、単なるボタン連打の戦闘になってしまっています。
 この忙しいボタン連打のおかげで、出来の悪いコマンド入力型戦闘よりは退屈しにくく最低限の楽しさは維持できていますが、ユーザーがゲームに求めている楽しさは、そんな低レベルなものではないはずです。
 この作品はRPGであり、アクションRPGや格闘ゲームではないのですから、行動選択時には時間を停止させるくらいでも良いのではないかと思います。少なくとも、現状ではいけないことは確かです。

 シナリオにもかなりの問題があります。ストーリー自体は悪くないものの、サブイベントは女性の容姿ネタ中心の幼稚なものが多く、また主人公たちが青臭いセリフばかりを連発するため、プレイしていて恥ずかしくなります。
 またゲーム世界に現実味を持たせるのに必要なのは、その世界で何ができて何ができないかをきちんと設定し、それに忠実なシナリオを作ることです。しかしこの作品では「開発者にとっての都合」が唯一無二のルールになっているため、イベントはどれもご都合主義の茶番劇としか感じられません。

 私が以前にプレイしたファンタジア(テイルズ1)のリメイク版からまったく進歩しておらず、システムにせよシナリオにせよ、RPGとはなにか、娯楽とはなにかということを理解していない人によって作られた作品であるのは明らかです。進歩しているのはハードの性能に由来する部分だけです。
 やる気はあっても能力と常識に欠ける開発者が、優れたハードでゲームを開発したら暴走するのは当然です。本当に必要な仕事は何かを、きちんと考えてほしいと思います。

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ドラゴンクエスト9 星空の守り人 (NDS/スクウェア・エニックス/2009年)
   ワイヤレスプレイ対応の作品ですが、このレビューは1人でプレイした場合を対象にして書いています。

 サブイベント(クエスト)が重視された今回のドラクエですが、方向性としては間違いではないと思います。ドラクエは以前から世界を旅することが楽しい作品であり、クエストはそれを生かせるシステムだといえるからです。
 しかし今作ではクエストの出来が非常に悪く、イベントリストを完成させるための完全な作業プレイになるものがほとんどです。クエストの理想は楽しめることであり、さらに言えば普段使わないようなスキルや魔法の魅力に気付いてもらうことではないかと思うのですが、そういったものはまったくというほど見られませんでした。最低条件である「見返りがうれしい」ということさえほとんどなく、逆に損をすることも珍しくないのです。

 このようなプレイヤーを無視したおかしな作りは、作品の随所に見られます。
 例えばナビゲーター役を務めるのが、他人を見下した発言が目立つガングロギャル妖精。人をあまり選ばないことで人気になっているドラクエなのですから、これはおかしいとしか思えません。
 戦闘に関しても、無駄な演出やテキストが多く、ドラクエらしいテンポの良さはありません。また死亡原因のほぼすべてが痛恨の一撃による即死であり、本来最も多くなるはずのダメージの積み重ねによるものは、全くというほどありません。つまりバランスは甘いのに非常に悪いという、奇妙な現象を起こしているのです。この痛恨一撃死の原因は簡単で、HPに比べて攻撃力と防御力が高いため、ダメージ計算式の関係でそうなってしまうのです。つまり開発者が、この作品のダメージ計算式(非常に単純)を理解できていないという、数学力不足であることが明らかです。

 また転職システムは面白みがなく、スキルシステムはプレイスタイルによっては損をすることが珍しくなく、どちらも予備知識があった方が良いかもしれないという低レベルな作りです。前作から登場したテンションは、今作ではほとんど役に立ちません(平均ダメージが減ってしまう)。着せ替えシステムに至っては、性能重視で選んだ結果がネコ耳バンドにうさ耳バンド・・・あきれてものが言えません。
 その他にも目立つ欠点が山のようにあり、いちいち書いていられません。

 というわけで、今作は開発者の暴走と力不足が前面に押し出された、ユーザーを無視しているとしか思えない作りであり、ドラクエ3〜5のような安心して遊べるRPGを求めている人は、手を出すべきではありません。
 しかし従来のドラクエ(特に同じ会社が製作した前作)にも、今作の不出来を予感させる部分が大量にあったことは確かであり、ドラクエが決して完成されたRPGではないことを理解していたならば、今作の不出来部分に目をつぶって楽しむことも可能ではないかと思います。なぜならば、基本的なシステム部分に関しては、人をあまり選ばないというドラクエ最大の長所が残っているからです。またマルチプレイを目指した恩恵なのか、やりこみ的な要素は十分すぎるほどであり、単なる収集ゲームとしてプレイするならば、これまでのドラクエにはなかった楽しみ方をすることが可能だからです。

 結局この作品は、プレイヤーが意識して楽しみかたを考えなければ楽しめない作品であり、ただ普通にプレイしていれば楽しめた過去のドラクエとは、方向性が大きく異なっていると言えます。もっとも力のある開発者が作っていれば、以前と同様の楽しみ方もできる作品になっていたはずなのですが。
 つまりドラクエは完成されたRPGではないし、作っている人はRPGの基本すら理解していない凡人でしかありません。今作によってその事実に多くの人が気付いたはずで、この失敗作に関わった全ての人(ファンを含む)が糧にすべきであると思います。

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ノスタルジオの風 (NDS/テクモ/2008年)
   普通に作られていれば楽しく遊べたはずなのに、個性を出そうとして失敗してしまった作品ではないかと思います。そして表面的な部分はそれほど悪くないものの、細部の作りは非常に雑という、よくあるタイプの作品です。
 この作品の特徴は、飛空船(武装した飛行船)で世界中を飛び回る、冒険活劇RPGであることです。しかしこの飛空船での戦闘に問題があり、システム、バランス、テンポのすべてが悪いため、大空を飛びまわるという爽快感がまったくありません。むしろ飛空船での移動を苦痛に感じ、これさえなければと思ってしまうくらいです。

 それ以外の部分でも、全体的に構成が甘く、しかも作り込みが足りません。
 例えばメインストーリーとは別にクエストがあるのですが、1度制覇したダンジョンに何度も潜らなければならない構成になっているため、蛇足のように感じます。またメインシステムの1つである遺跡探しも、フィールド移動(飛空船移動)そのものにストレスを感じる作品であるため、やはり蛇足であると感じてしまいます。
 実際にはそれら自体は蛇足ではなく、構成やバランスのまずさが本当の原因であると思われるのですが。

 地上での戦闘に関しても問題があります。データ設定が雑なため、特技の利便性に大きなばらつきがあり、有利な特技を見極めての力押しが最良の戦略であり戦術というバランスになっているのですから、楽しさがほとんどありません。それなのに戦闘内容を評価してボーナスが得られるというシステムが存在するのは、矛盾であるとしか思えません。そもそも戦闘評価の査定自体、かなりおかしいです。

 さらに戦闘中は装備の変更ができないこと、隊列の概念がないこと、敵の即死攻撃は防げないこと、敵の防御力は実質1段階しかないこと、一部の装飾品は効果が発動しないこと、飛空船の武器が故障したらそのせいで武器が直せないというおかしな仕様になっていることなど、細かい点を挙げたらきりがなく、とにかく情けない作りです。
 その一方で良い部分はというと、システム、ストーリーがともに分かりやすいこと、そして音楽がまずまずということくらいです、これでは暇つぶしくらいにしかなりません。

 ちなみにこの作品、ちょっと面白い部分があります。それは紛れが少ない戦闘システム、個性に乏しい数値データ、豊富な回復手段という三重の方法でゲームオーバーを防ごうとしていることです。そのうえボス戦直前には必ず回復&セーブポイントが用意されています。難しいと評価されるのをここまで怖がっているのは、自分たちの開発能力に自信がないことの表れでしょうが、ここまでやると、ある意味天晴れです。

(バグ)
 1: ジャングルの謎解きで、ボスを倒した時に扉がなければゲーム続行不可能になるバグなので、やり直す必要がある。念のため滝の近くにある光を調べる前に、いったん外に出てセーブしておくこと。
 2:エンディングまでに挑戦可能なクエストをすべて終了させた状態で、なぜか「クエストをうける」を選択することができる。選択してしまえばゲーム続行不可能になるので、怪しい時はセーブしておくこと。エンディング後ならクエストが追加されるため、選択しても問題なくなる。
 3:飛空船移動中に、まれにフリーズする。移動前にはセーブしておくこと。


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ウィザードリィ エクス2 無限の学徒
 (PS2/マイケルソフト/2006年)
 難易度の高さゆえに、一般ユーザーお断りRPGの代表格となっている、ウィザードリィ(以下ウィズ)をベースにした作品です。別メーカーの作品である “ウィザードリィ エンパイアシリーズ” との共通点が非常に多いので、開発者が何らかの形で関係しているはずですが、完成度はこちらのほうが遥かに上です。

 私はRPG開発者に最も欠けているのが、ゲームシステムを論理的に構築する能力だと思っています。
 例えばこの作品では、両手武器が片手武器よりも少し強いくらいなので、二刀流の方が遥かに有利になっています。両手武器2つを同時に装備する強力な二刀流スキルも存在するのですが、そのスキルを修得できるのは超高レベルになってから。そのため普通にプレイしていると、両手武器はほとんど役に立ちません。つまりこの場合、インパクトを重視したスキルの存在が、無駄な武器を増やしたうえに遊び方の幅を狭める原因となっています。
 おかしな話ではありますが、ほとんどのRPGのほとんどのシステムは、これと同レベル、あるいはそれ以下の作りです。

 ただしこの作品の場合、悪い部分よりも良い部分が目立ちます。明らかに失敗だと思える物を含めたほぼ全てのシステムに、なんらかの意図や理由が感じられるのです。例えば先ほどの失敗スキルの場合、ウィズという地味なゲームを華やかにしようとし、やり込み領域でのバランスさえもきちんと計算しようとした結果、“うっかり” 根本的な部分を失念(あるいは軽視)してしまったのではないかと思えてしまうのです。
 このようなミスがいくつもあるのは残念ですが、開発者のシステムに対する理解とこだわりが両方ともプロレベルに達しているRPGは、これが初めてかもしれません。それくらい基本構成がしっかりできています。

 プロらしい仕事をしているのは、システム構成という気づきにくい部分だけではありません。
 設定にもよりますが、電源を入れてから最後まで、待ち時間がほとんどないという快適さです。
 解かなければ先に進めない謎解き(クイズ)がいくつもありますが、プレイヤーが解けなくても、「引き返して知人に解いてもらうこともできるが、思いっきり馬鹿にされる」というRPG的なペナルティを受けるだけで、攻略情報に頼ることなく先に進むことが可能です。
 ミスがあるとはいえ基本がきちんと出来ているため、初めから最後まで自由に、そして十分に楽しめます。面倒だと思ったシステムは、無視して遊ぶ事だって可能です。

 これほどプレイヤーに優しく、ゲーム的かつRPG的な作品ですが、残念ながら大きな欠点が2つあります。
 1つはイロモノ作品であること。一部とはいえあからさまに卑猥な表現がありますし(12才以上推奨)、ロリコン向けの世界観では、普通の人は間違いなく引きます。しかしそれ以上に大きな問題が、この作品がウィズであるということです。
 ウィズ最大の問題であるウィズらしさ。一見矛盾していそうなこの問題を解決することが、この作品と「売れないメジャータイトル(もはやマイナー?)」であるウィズの今後にとって、最大の課題であるといえます。

 例えばウィズには、敵が使用する特殊能力の中に、レベルドレインというものがあります。しかし一般向けRPGしかプレイしたことがない人は、「〜は1レベル下げられた」と画面に表示されても、それがそのままの意味であり、しかも回復手段がないなどと、すぐには信じられないのではないでしょうか。ウィズにとっての常識は、それくらい非常識であるのです。

 ではウィズファンがどうやって遊んでいるかというと、無理だと思えば即リセット即再開です。そのため敵の特殊能力が1レベルドレインであろうと、2レベルドレインであろうと、実際には何の違いもありません。それどころか、存在することすら無意味です。
 つまりウィズは厳しすぎるために、ファンにとっては甘いゲームとなっているのです。これでは楽しさが半減です。一撃で5レベル下げられようが、それを何度も受けようが、その苦しさを楽しめるシステムにしなければ、プレイヤーの印象は厳しすぎか甘すぎかの両極端になってしまいます。

 これの最も簡単な対策が、回復できるようにすることです。ウィズはもともと無意味に宿屋の種類が多いのですから、高額な宿屋の特徴に経験値の回復を追加すればいいだけです。「回復できるからリセットしようとは思わない。でもすぐには回復できないから、レベルドレインは恐ろしいし、高確率でいくつも下げる敵は非常に恐ろしい。」プレイヤーにそう思わせるのがベストだと思います。
 なおこの作品には、お金を経験値に変えられるシステムがありますが、上昇と回復はまったくの別物です。

 また簡単に死亡や全滅がありえるのに、蘇生を2連続で失敗すればキャラクター消滅というシステムも、プレイヤーには受け入れられ難いものです。ウィズはキャラクターを大量に作成できることから、元々は全滅や消滅に備えて、大勢のキャラクターを育てながらプレイするゲームだったと思われます。しかし最近のウィズはボリュームと凶悪さが増しているため、ノーリセットでのクリアは確率的に無理のある作品が多く、そのため必要最小限のキャラクターでリセットしながらプレイするのが基本になっているはずです。
 ならば無限に蘇生できるという、一般的なRPGと同じルールにすればいいのではないでしょうか。「ウィズは厳しいもの」という考え方に、固執しすぎているように思えてなりません。

 それから最大の問題である、3D画面であること。しかし3Dというのは始めは戸惑うものの、練習を兼ねた小さな迷宮からスタートし、さらにマップを何度も見られるようにすれば、決して難しいものではありません(自分でマップを書くのも面白いものです)。
 本当に厄介なのは、仕掛けの多さや凶悪さです。この作品のようにマップの大半に何らかの仕掛けを作ったり、一歩一歩マップを確認しなければならないようにしたり、そんな状況でマップの確認すらできなくしたり、パーティ構成によっては問答無用で全滅させたりする必要はないのです。こんな仕掛け、3Dに慣れている人でさえやる気をなくします。

 というわけでウィズ特有の問題を3つと、その改善案(あくまでも一例です)を書いてみましたが、これらはすべて、ファンでさえ嫌がっていることを改善するというものです。ファンが小細工して遊んでいるようなゲームを、新規ユーザーが楽しめるわけもないのですから、このような方向性で開発する必要があるはずです。しかし逆にいえば、「3歩進んで3歩下がるこんなゲームはクリアできない」という絶望感を持たせないようにさえすれば、ウィズにはもともと十分な楽しさがあるのですから、一般ユーザーだって楽しく遊べるはずなのです。
 そもそもRPGにおける厳しさとは雰囲気を味わうものであり、プレイヤーが実際に厳しさを乗り越えなければならないのは、少しおかしいのではないかと思うのです。

 このように、この作品からは十分なプロ意識が感じられはするものの、まだまだ視野が狭いような気がします。そのため「良くも悪くもウィズ。しかもイロモノ」という評価になってしまいます。部分的にはドラクエやFFを遥かに上回るような仕事をしていても、これでは売上には繋がりません。
 そんなこの作品をどんな人が作ったのかを想像してみると、他社の開発者よりも優れていたのではなく、単にRPGの理想像が違っていただけという気もします。
 それでもこんな理想や意識を持っている開発者がいるということは、「基礎を軽視していては、RPGは何十年たっても進歩しない」と悲観的な見方をしているRPGファンの1人として、とても喜ばしいものがあります。残念ながら一般ユーザーには勧めづらい作品になってしまったとはいえ、同業他社の開発者は全員プレイして、自分たちの仕事と何が違うのかを考えてほしいとさえ思います。

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エルミナージュ 〜闇の巫女と神々の指輪〜 (PS2/スターフィッシュ/2008年)
   名前からは分かりませんが、ほぼウィザードリィです。そして過去のスターフィッシュ製ウィズ同様に、アイデアは素晴らしいもののほとんど活かせておらず、またバランスや構成が稚拙なため、楽しさが物足りない作品になっています。

 例えばキャラクターの成長は遅いのに、序盤から強力なモンスターが登場するため、普通にプレイすれば頻繁に全滅するのは確実です。しかしそれを、強力かつ便利すぎる武器を1つ用意することでごまかしています。またウィズとは思えないほどダメージを受けやすいのですが、それをウィズとは思えないほど回復魔法を充実させることでごまかしています。このような泥縄式のシステムとバランスであるため、戦闘は大味になりがちですし、理不尽な現象に頻繁に出会います。
 そのうえこの作品の特徴と言えるシステムの多くは、基本システムで処理すべきことであっても、特殊能力などの追加要素によって処理しているため、パーティ構成によってどれだけ楽しめるかに差が出るという問題もあります。そのためウィズ本来の魅力である、「自分だけのパーティで自分だけの物語を楽しむこと」は、この作品に限っては、最も楽しい遊び方にはなりえません。

 この作品の特徴の1つに、装備品の強化システムがあります。ルールも分かりやすいため、実感しやすい形でどんどん強化していくことが可能です。このようなシステムは、ただそれだけで熱中しやすいため高く評価されがちですが、私はそれが良いとは思いません。というのも、冒険に関わるすべての要素を一度に楽しめるウィズの基本システムから、独立しすぎているように感じるからです。
 成長に関わるシステムは、ゲームの進行に合わせて行っていけるようにするべきです。例えば、経験値を稼いでレベルアップするというありきたりなシステムには、冒険を楽しくするための手段として戦闘が存在し、その結果として経験値を得てレベルが上がり、その結果としてより高度な冒険に挑戦することができるようになるという自然さがあります。この自然さは、成長システムに求められる重要な要素の1つであると考えています。
 しかしこの作品の装備強化は、ゲーム進行とは無関係に進められる作りになっています。そのうえそれを助長するようなボーナスモンスターまで存在しています。これでは冒険そっちのけで強化に励んでくれと言っているようなものです。それでいて装備強化には、特定の職業だけが持つ特殊能力が必要になるため、パーティ構成による損得が生じますし、強化することでゲーム性が大きく変化するため、ただでさえ大味なバランスがさらに大味になり、楽しさが損なわれてしまいます。つまり冒険を楽しむことと装備強化を楽しむことが、別々のゲームとして作られているような印象を受けるのです。
 結果としてこの作品は、RPGというよりも、質より量のやりこみゲームという印象を強く受けます。過去のスターフィッシュ製ウィズほどメチャクチャな作りではないので、ゲームとして楽しめないわけではないのですが、RPGだからこその楽しさがあまり感じられないのです。

 ウィズを作るのであれば、ウィズらしく作ってほしいと思います。もちろん従来のコピー的な作品を作れという意味ではなく、ウィズの本質を重視した作品を作ってほしいという意味です。
 別に難しいことばかりを求めているわけではありません。例えばこの作品では、マヒを治す薬が店で売られていません。そしてこれは、プレイスタイルに大きな影響を与えることであるにも関わらず、過去のウィズでもたびたび見られた欠点です(開発者自身が、ウィズをリセットゲームとしてプレイしているとしか思えない)。このような問題を改善するなどの、基本的なことこそが重要だと思うのです。ウィズはやり込むことに大きな魅力があるとはいえ、最も楽しく遊ぶ方法は冒険を楽しもうとすることなのですから、冒険環境を整えることがどれほど重要なのか理解していない人に、優れたウィズは作れません。

 悪い部分ばかりを書いてきましたが、この作品からは「面白いRPGを作ろう」という意識は伝わってきます。努力や工夫の跡も見られます。十分とは言い難いのですが、開発者の歪んだ自己主張ばかりが目立つ大半のRPGに比べればまともです。でもその前に、「どんなRPGが面白いのか」を考えてほしいと思うのです。良い作品を作りたければ、斬新なアイデアを生み出そうとするのではなく、愚直に努力するのでもなく、まずは何をどう努力すれば良いのかを考えてほしいと思うのです。そしてRPGという娯楽について、誰も考えないようなことまで語れるくらい勉強してほしいと思うのです。せっかく優れた発想力と着眼点の良さを持っているのに、それを活かせないのはもったいないと思いますので。

(エルミナージュ2のレビューにも今作のことを書いていますので、そちらも御覧ください)

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BUSIN(ブシン) 0 (PS2/アトラス/2003年)
 タイトルは、この後「ウィザードリィ オルタナティブ ネオ」と続きます。ベースになっているのが古典的名作ウィザードリィで、メーカーがアトラスとなると、「面白いが厳しくてマニアック、しかもプレイヤー無視の荒っぽい作り」というイメージを持ってしまうのですが、この作品は意外にも多くの人が楽しめる作りになっています。とはいえ暗い雰囲気の迷宮探険ゲームなので、そういった部分で人を選ぶことはあると思いますが。

 戦闘の難易度は開始直後はやや厳しいくらいで、そこからさらに難しくなっていきますが、じっくりとプレイするのには調度良いくらいでしょう。またその厳しさに対抗する手段であり、この作品の特徴でもあるアレイドアクション(連携行動)は、プレイヤーへの負担をほとんど増やすことなく、新たな楽しさを生み出しています。
 見やすい周辺マップが常時表示されるため、3D画面であることを意識することなくプレイできるなど、雰囲気の良さと快適さが両立できているのも魅力です。また迷宮だけでなく、もう1つの生活の場である町の存在も重視されており、よりRPGらしい楽しさが味わえます。

 この作品は地味ながらも、「RPG史上に残る名作ではないか?」と思えるほど良くできています。「ゲームはクリアするためのものではなく、楽しい時間を過ごすためのもの」と考えられる人ならば、きっと同じように感じられると思います。

 ただしここまでの話は、ゲーム序盤に限ってのこと。問題は中盤以降です。

 この作品は主人公たちが非常に弱く、敵は強く、アレイドアクションは非常に強いというバランスになっています。そして最強の存在であるアレイドにはパズル的な要素があるため、考えて工夫する楽しさがあるのですが、これにはパズル要素が強すぎるゆえの “正解” が存在します。アレイドの種類が増え、コツを覚えてくると、ほとんど全ての戦闘で敵の行動を “ほぼ完璧に” 封じ込め、一方的に攻撃することが可能になるのです。こうなると、後はゲームではなく単純作業です。解き方が分かっているパズルに、面白みを感じられるわけがありません。だからといってアレイドを軽視すると、簡単に全滅させられます。

 問題は戦闘だけではありません。
 中盤くらいからはっきりと感じられるようになるのですが、1つ1つのシステムやデータに対するこだわりが全くというほど見られないのです。所々こだわりを感じる部分はあっても、全体のバランスに与える影響が考慮されていないため、ことごとく裏目に出ています。
 終盤になり作品の全貌が見えてくると、やる気を無くすほど悲しく感じることすらあります。クリア後の追加マップもありますが、ゲーム中盤以降がオマケのようなものなので、続けようとは思えません。
 ストーリーに関しても、分かるような分からないような、すっきりとしないもの。また一部のイベントが初期メンバーでしか発生しないなど、あちこちで中途半端さを感じます。

 というわけで、全体をざっと見ればかなりの良作。序盤は驚きの面白さ。でも真相は不足と蛇足ばかりで、「ああ、やっぱりな」と思ってしまう作品です。

 最後に注意を1つ。
 この作品は12才以上推奨になっているのですが、これはイラストや表現の気持ち悪さが理由だと思われます。こういった事柄は何才になってもダメなものはダメであり、12才以上でも不快に感じる人が少なくないと思います。
 本来RPGやファンタジーというのは、残酷で醜悪な要素を非常に多く含むものです。しかし通常はそれらをプレイヤーに意識させないように作られるため、健全な娯楽として楽しむことができます。でもこの作品は、雰囲気を出すために強調しているとさえ感じます。
 世界観はファンタジー。でも内容はホラー気味。モンスターが妙にコミカルなのに、登場人物のイラストが不気味であるちぐはぐさも、「こだわる部分を間違っているのでは?」と思うことの1つです。

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リリーのアトリエ ザールブルグの錬金術士3 (PS2/ガスト/2001年)
 アトリエシリーズは1、2、3とも同じような内容で同じように楽しめる作品なのですが、当然ながら違いもあります。
 気軽に自由に快適に遊べることが特徴であり魅力だった1作目 “マリー”。
 より上を目指した結果、面倒な要素が追加され、気軽さが損なわれた続編 “エリー”。
 非常に目立つ欠陥があるため、シリーズ特有の魅力が大きく損なわれた3作目 “リリー”。
 これが私の印象です。

 この作品の目立つ欠陥とは、キャラクターの目的とプレイヤーの目的に大きなズレができることです。お金を貯めることがキャラクターの目的であり、それがエンディング条件にもなっているのですが、より良いエンディング、あるいは特殊なエンディングを迎えるためには、さらなる条件を満たす必要があります。しかしその追加条件はどれも厳しいため、普通にプレイするとかすりもしません。「基本以外のエンディング」を迎えるためには、追加条件を満たすまではお金がたまってもクリアを避けるという、おかしな遊び方をしなければならないのです。

 キャラクターは本来の目的を果たしたい。しかしプレイヤーは別のことがしたい。こうなってしまう原因であるシステムとシナリオの矛盾は、RPGを単なる数字ゲームに変えてしまうものであり、決してやってはならないことです。このようにシステムとシナリオは密接に繋がっているものであり、「世界観にそったシステム」や「システムに関係したイベント」を作れば十分というような単純なものではありません。
 とはいえ、これを高いレベルで実現するのは非常に難しく、現在のRPGに見られる「システムとシナリオが共有するのは世界観だけ。他は完全に分けてしまうことで目立つ矛盾だけは避ける」という形式にするのは、決して悪いことではないと思います。
 ただし理想を実現するのは無理でも、このことを常識として知っておくことは重要なはずです。この作品のような大失敗は、簡単かつ確実に避けることが可能なのですから。

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