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  「葉月がいて彰吾がいれば、他は何もいらない。……だからいつまでも過去をこだわるな。

   確かにお前の身体に触れた男には、嫉妬がある。でも、心ごとお前が愛したのは、俺だけだ。

   それは確信している。違うかい?」


  「……違わない。京一だけ」

  「だったら誰にも見せたことのないお前を見せて。俺の愛撫に身を任せる葉月が見たい」

   葉月が口を開けたが、すぐに口を塞ぐ。舌を捕らえて優しく吸う。ピクンと肩を震わせながら、

   腕が伸ばされ首に絡まった。


  「……京一……きょう、いち〜。んんっ」

  「んっ。そんなに締め付けるな……我慢できなくなる」

   口付けは深く激しくなるにつれて、葉月が物欲しげに腰を小さく揺らした。そして俺のモノを確かめる

   ように中が収縮する。足を抱えあげて葉月の中からいったん抜いた。甘い悲鳴と縋るような襞の

   収縮に心地よい快感があった。


  「いやぁー……や、早くっ」

  「駄目。まだ終わらせない。まだ駄目だよ。ここもいいよね?」

   半ば勃起していた葉月のモノを、丁寧に舌で愛撫する。物欲しげにひくつく蕾の周りを指でなぞった。

   脚を大きく広げさせ、震える太股に甘噛みした。わざと感じる場所を弄り、感じさせながらも、俺は彼が

   望むモノを与えずにいた。


  「やっ……もう、やだ、京一……」

   どこを触っても葉月は面白いぐらい反応した。今まではどちらかというと、葉月が主導権を握っていた。そ

   れまでの葉月が嘘だったとは言わない。ただ、やはり壁があったのは事実だ。俺は今本当に葉月を

   抱いているような気がする。俺の意識が変わっただけかもしれないが。だからなのか、いつも以上に

   俺は葉月を攻めた。一番感じる乳首を弄り、物欲しげに揺れているモノを口に含んでしゃぶった。


  「ふ……あん、も、駄目、達っちゃうよ。んん、京…一……」

   顔を快感に歪ませ、耐えるように縋るように、俺の手を求めた。求められるままに手を繋ぎ、俺の口の

   中のモノを名残惜しげに放し、その後ろの蕾に口付けをした。面白いように身体が跳ねて、嫌がるように

   手を引っ張られた。葉月の顔を覗き込み、片足を持ち上げると、縋り付くように首に手を回された。


   「さて、葉月。どうしたい?」

   蕾に指を突きたてながら、聞く。葉月は物足りなげに腰を揺らし、目の端に涙を浮かべながら、


  「意地悪しないで」

  「意地悪じゃないよ? どうしたい?」

  「京一を入れて。僕の中に京一をいっぱいにして欲しい」

   催促するように脚を大きく広げて腰を揺らめかす。俺は満足気に蕾を舐めてから指を引き抜き、ゆっくりと

   自身を入れた。一瞬強張った葉月の身体を宥めるように、顔中にキスをした。


  慣れるまでの葉月は、観念したような期待するような微妙な表情をする。目尻に溜まった涙がポロリと

   流れるのを見る。それがとても綺麗で、目を奪われた。感情が促すままに口付けを繰り返す。


   どの表情も吐息も涙も、そして葉月の命もみんな俺のものだから。だからどうか、葉月も俺ごと愛して。

   ふいにそんな激情が駆け巡る。喪失感と焦燥感。それが一番強い。あの葉月の養い親である沙羅が

   現れてからずっと感じていた感情。なぜか、彼がいつもの日常を奪うような……壊すようなそんな

   感じがする。
そんな感情を払拭しようと、葉月に夢中になる。葉月も俺に煽られてか、縋るように

   いつも以上に大胆になっていた。


   「ふっ……あんっ……あっ」

   「葉月、腰に力を入れてごらん」

   言われるままに俺が出て行こうとすると、腰に力を入れて襞が追いすがってきた。ぎりぎりまで

   腰を引いて、そのまま貫くと葉月の嬌声が高くなる。そうやって幾度も互いに快感を育てあげる。


  「あふっ京一……あっ……んっ 」

   一際強く突き上げると、葉月は甘く悲鳴を上げて果てた。促されるままに俺も快感に震えて中に熱情を

   放った。呼吸が幾分か落ち着くと、葉月の額に張り付いた髪を梳いた。そのまま口付けをすると、

   満足そうに笑われた。訝しげに見やると、葉月はとても満足気に幸せそうに笑っていた。


   「何を笑っている?」

   「……ん? うん、だって久しぶりだったから」

   「ん? SEXが?」

   「違う。いや、違わないけど。あのね、ふたりきりで、僕だけを考えて抱いてくれたから」

   「?」

   「いつもは彰吾とか、家のこととか、ほら今度の企画の新作玩具の販売戦略とか色々」

   「それはお前もだろう? それに今度の企画は部長がえらく乗り気で大変だしな」

   「うん、そう僕も同じだけど。入社式とか、新人研修とか、みんな京一が傍にいた。部下から恋人に

    なって。いつの間にかそれが当たり前で、幸福なんだって思っていたけど。


   日常が当たり前になった時、新鮮じゃなくなっちゃうでしょう? でも今日は違った。日常だけど、

    とっても新鮮で。当たり前だけど、照れくさくて。でもとっても幸せな気分。またこんな感情が

   味わえるなんて、嬉しかった」


   ちょっと変な事言っちゃった。そう呟きながら穏やかな笑みを浮かべる。言われてみればその通りで、

   まるで十代の頃の恋愛みたいな感情だった。ほんわかと俺の胸に温かで優しい感情が広がる。

   葉月から伝わった嬉しい気持ち。思わず微笑んでしまった。そのまま悪戯っぽく、


   「なら、もう一度、新鮮な恋人同士のSEXをしようか?」

   「うんっ」

   家で待っている彰吾やお袋、それに沙羅のことを頭の中から追い出して、久しぶりに葉月だけを堪能

   しよう。
  戯れるように俺たちは口付けと愛撫を繰り返した。




                         
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