2004.05.01-05.02

日豊本線漫遊(東中津−上臼杵)   路線図を表示

 この時期、まだまだ陽は高い。 今日は大分に宿泊予定なので、豊肥本線の残る駅の探索も充分に可能だったが、ちょっと浮気することにした。 日豊本線の大分付近に古い名駅舎が残っているからである。 今回撮影しないと、いつまた九州に来れるか分からない。 その間に取り壊されでもしたら、泣くに泣けないのである。 豊肥本線の残りの駅はまたいつでもいいさ。 (菅尾、犬飼駅は壊さんでくれー) ただ九州でもまだ未乗の路線が多く、順調にいっても10年後くらいかもしれない。 いや、せめて5年以内には再訪しよう。

 豊肥本線で大分駅に到着したのは15時21分。 すぐに15時25分発の日豊本線の上り亀川行き列車に乗換えた。 発車して次の駅は西大分駅、ここは明日の早朝に探索予定だった。 そして次の駅は東別府駅である。 今日は下車できないが、ここは2年前に途中下車していた。 当時の駅舎には明治44年7月16日(開業は同年の11月)の建物財産標が掛けられていて、九州でも屈指の古さを誇っている。(左:H14-12-24撮影) この時は取壊しの話が進んでいたらしいが、その後に修復保存が決定し、この日下車すれば修復した駅舎が撮影できたはずである。 駅舎や線路は山の中腹に設置されていて、駅正面からは撮影できなかったが、まずは満足の一枚である。 ホームは相対式で列車交換が可能。(右:H14-12-24撮影)


 列車は別府および別府大学駅に停車したあと、15時44分に終点の亀川駅に到着した。 ここの駅舎にも東別府駅と同日付けの建物財産標が掛かっていた。 ちと駅前に車が多いが、まずは満足。(左) ホームは2面3線で島式ホームはなだらにカーブしている。 大分までの区間列車の発着駅らしく、引込線も数多く、待機している車両や車庫も見える。(右)


 16時08分にこんどは幸崎発大神行きの区間列車に乗車した。 ところがここはひと駅、豊後豊岡駅で下車した。 こじんまりとした木造駅舎は改装されているのだろう。(左) ホームは相対式、どうやらこのあたりは複線化されているようだ。(右)


 綾小路さんは日豊本線をさらに上る。 こんどは臼杵発柳ヶ浦行きの列車だった。 この区間の列車は発駅、着駅がバラエティに富んでいる。 16時40分に豊後豊岡駅を発車した列車は、4駅目の杵築駅に停車した。 この駅でも2年前に途中下車していた。 日豊本線の柳ヶ浦−杵築間は日中に各駅停車の運行が少ない。 ちなみに本日の下り列車を見ると、柳ヶ浦10時10分発のあと、次に杵築まで運行する各駅停車は13時12分発である。 2年前も同じようなもので、そのために特急列車に乗換えた訳で、いいチャンスなので杵築駅で下車したのだった。 駅舎は『城下町杵築』を意識した和風の造り。 まだまだ新しく、風格が出るのは何年も掛かることだろう。(左:H14-12-24撮影) ホームは2面3線でごらんのように引込線も多い。(右:H14-12-24撮影)


 列車は途中、4駅に停車し、17時20分に5駅目の豊前長洲駅に停車した。 終点の柳ヶ浦まであとひと駅だが、綾小路さんはここで下車した。 ここの木造駅舎は明治44年4月21日の建築となっていた。(左) 東別府駅が11月(開業)、亀川駅が7月、そして豊前長洲駅は4月の建築である。 日豊本線の敷設の歴史を遡っているようである。 ホームはカーブした島式の1面2線。(右) これとは別に駅舎脇には片面のホームがあったが、線路は撤去され、使われなくなって久しいようだった。



 綾小路さんの北上は尚も続いた。 ここで17時38分発の上り列車に乗車したが、次に下車する駅は以外に早かったのである。 次の下車予定駅は本日最後となるはずの豊前善光寺駅だった。 その豊前善光寺駅までの途中駅はこの柳ヶ浦駅、ただひと駅だったのである。(H14-12-24撮影) これも2年前に特急の乗継時に撮影したもの。 ただし乗換時間の3分間で撮影したのと逆光で、ひどい写真となった。


 豊前長洲駅から列車に乗車した綾小路さんはシートにドッカと座り、今日立寄った駅のことを思い出していた。 そして疲れもどっとでてきて、つい、うとうと・・・。 はっ、ふと気が付くと、列車はとある駅のホームに到着し、木造・瓦屋根の美しいフォルムが目に入った。 あれ、ここはどこだ? たしか豊前善光寺までにこんな駅舎はなかったはず・・・。 ホームの電柱にかかる駅名標を見ると今津駅だった。 いそいで時刻表を取りだし、豊前善光寺駅との位置関係を確認する。 そして・・・しまった、過ぎていた。 ではこれからどうする? ええい、ここで下りて豊前善光寺駅の代わりにすればいいか。 そう思ったときにはすでに列車は走り出していた・・・。
 ここで綾小路さんは急いで時刻表に目を向けた。 どこかの駅で下車して、宿泊先の大分駅までの列車に乗車しなければならない。 さらに、その駅ではそれなりの撮影時間を確保できることが条件だった。 幸いにも豊前善光寺駅では1時間19分もの、稀に見る長時間を見込んでいた。 そうはいっても、次の駅で下車したとしても、天津、今津とすでに豊前善光寺駅からは3駅過ぎることとなり、折返すことを考えると時間のロスは大きい。 結局、選択肢は次の東中津駅か、その次の中津駅かのどちらかしかなかった。 正直、どちらの駅も駅舎の姿は思い浮かばなかった。 しかし、特急停車駅の中津駅はどうもコンクリートの駅舎の気がしてならなかった。 よし、次の東中津駅で降りよう。

 そしてその選択は大正解だった。 17時54分に東中津駅のホームに降りたが、美しいフォルムの駅舎がそこにあった。(左) 木造・瓦屋根、言うことありません。 やや残念なのは駅舎の側面や、袴の部分が新しくなっていることだった。 そういえばさきほどの今津駅もこういう感じだった。 冒頭に紹介した東別府駅も同様に改修されたのだろう。 今日一日の業務を終えようとしている駅員に聞くと、なんと改修されてまだ半年も経っていないとか。 まあ残念だが、止むを得ない。 取壊されなかっただけでもよしとしよう。 建物財産標はなかったものの、先ほどの駅員によると大正4年の建築だそうである。 ホームは2面3線で島式ホームの片面の線路は撤去されている。(右) 島式ホームのもう片面の外側には引込線があり、その外側には柵があったが、柵の外は広い空地。 以前は駅の敷地で線路が張り巡らされていたような気もした。 駅舎脇にもすでに使用されていない切欠きのホームがあり、かつては賑わっていた駅のようである。


 綾小路さんは18時25分発、宇佐行きの下り列車に乗車した。 後は宇佐駅で特急に乗換えて、大分まで乗車するのみであった。 そうすると19時30分過ぎに到着できる。 今日ぐらいは少しゆっくりしよう。 なにしろ列車でうとうとするぐらい疲れきっている。 ここまではそう考えていた・・・。 ところが一抹の心残りはどうしても消えない。 豊前善光寺駅である。 今しがた立寄った東中津駅、ちらっと見た今津駅など改装が進んでいる。 この古い駅舎はいつ取壊されるか分からない。 やはり寄っていこう! 幸い外はまだ少し明るい。 今日も遅くなる覚悟を決め、18時34分に豊前善光寺駅で下車した。

 夕闇迫る中、大急ぎで改札を出て駅正面に回った。 うーん、ビュウチホー! いかにも古そうな駅舎に大満足。(左) そして2面3線のホーム、内1線の線路は撤去済み、駅舎脇には切欠きのホームなど、東中津駅と共通点が多かった。(右) ここではかつて駅前から豊州鉄道が接続していたらしく、廃線本には小川を渡る橋台が残されていると掲載されていた。 それを探す予定でいたが夕闇も迫り、先ほどの乗過ごしでここでの滞在時間はそう多くはなかった。 まあ、古い駅舎で満足してこちらに未練はなかった。



 19時14分、すっかり暗くなったところで宇佐行きの列車に乗車した。 いや、まったく始発や終着となる駅の数が多い区間だ。 この時はこのまま大分まで行ってくれればどんなに楽だったか。 まあぼやいてもしかたない。 宇佐駅で下車でき、コレクションが増えると前向きに考えよう。
 そこから10分少々で、宇佐駅に到着した。 ここは宇佐神宮参拝への最寄り駅だという。 駅舎は朱色に塗られて、入口にはしめ縄も吊るされている。 木造ではないが個性的ではないか。 いやこれは明るいときにもう一度こなければ!


 20時06分発の特急に乗車して、20時47分にようやく大分駅に到着した。 それでも各駅停車だと21時35分の到着だった。 ここは特急も乗車できる切符でよかった。 ここで、ホテルに向かう前にどこかで夕食をとらねばならなかった。 しかし駅構内にあった、よさそうな和食レストランは営業はしていたものの、営業時間は20時30分までとなっていた。 これでは入っても断られるなと思い断念。 なにせアルコールもほしいので、ちょっとばかり時間がかかるだろう。 駅弁をホテルに持ち帰ってもいいなとも思っていたが、売場のシャッターはすでに降りていた。 この時の気分としてはラーメンが食べたかった。 大分ラーメンなるものがあるのかどうかは知らないが、まずラーメン屋を探すことにした。 そこで駅前を見渡し、しばらく散策するも何もない。 やむなく、札幌にもある『ザ・丼』というチェーン店に入った。 せっかく九州まで来たのに、全国展開のチェーン店には入りたくなかったが、選択肢はここしかなかった。 綾小路さんはちょっとばかり暗い気分になった。

しかし『神』は綾小路さんを見捨ててなかった。 メニューに『だんご汁』の文字を発見したのである。 以前『だんご汁』は大分名物だと聞いたことがあった。 ところが地元では『だご汁』と呼ばれているこの名物を、綾小路さんは口にしたことがなかった。 これはチェーン店といっても、札幌の店では出ないに違いない。 そこで『ネギトロビビンバ丼とだんご汁』のセット(左)をご注文! 実のところ『だんご』と聞いて、あまり気乗りはしなかった。 綾小路さんの頭の中には『だんご』=『甘いもの』の概念が出来ていた。 しかしこれが大当たり。 『だんご』=『小麦粉を練ったもの』で、材料は綾小路さん好物の『うどん』と同じではないか。 これを味噌仕立ての汁に入れたもの(右)で、味もグー! 駅弁も楽しめない一日だったが、満足してホテルに向かった。


 一夜明け、今日は久大本線で久留米まで行く予定であるが、まだまだ日豊本線の漫遊を続行! まず、今日の出発駅の大分は豊肥本線(熊本−大分)で紹介済みなので割愛しよう。 そこに掲載した駅舎の撮影を終え、改札に入る前にまず駅弁だった。 おお、2日ぶりの駅弁、卵とり地鶏弁当¥1050。


 今日は大分から南方面の予定であるが、その前にまだひと駅残っていた。 6時48分の上り列車で再び北上、隣の西大分駅で下車したのである。 大ターミナル:大分駅の隣に古い木造駅舎がよくぞ残っていました。(左) 駅舎には明治44年7月16日の建物財産標が掛けられていた。 これは隣駅の東別府駅と同日である。 日豊本線が別府まで開業した日であり、11月開業の東別府駅と西大分駅の駅舎はこの時点で完成していたのだろう。 ホームは島式の1面2線であるが、貨物駅でもあるのか、構内は広く引込線は多い。 引込線上には貨物列車が停車していて、その奥(駅舎の脇)には貨物コンテナが数多く積み上げられていた。(右)


 西大分駅では10分余りの短い滞在で、7時03分発の下り列車に乗車した。 これから大分以南の漫遊に進むことにする。 しばらくは魅力的な駅や普通の駅をやり過ごし、7時46分に下ノ江駅で下車した。 古い木造駅舎はほとんど手を加えられていないように見える。 わずかに待合室の一部がサッシに交換されていたが、大部分の窓は昔ながらの木枠であった。(左) おそらくは開業時からの駅舎だろう。 大きくカーブした島式ホームはかなり長く、往時の栄華がしのばれるものだった。(右) 引込線上には車庫があり、その奥にある片面のホームまで線路は延びていなかった。


 8時09分発の下り列車でさらに南下。 2駅目の上臼杵駅で下車した。 汽車を待つ君の横で僕は・・・♪♪。 ここは大林宣彦監督の映画『なごり雪』で『臼杵駅』として使用された木造駅舎らしい。(左) 建物財産標によると大正6年7月18日の建築。 ちなみに日豊本線は全線電化、現在は汽車でなく、電車が運行しているはず。 片面ホームから駅舎までにはスロープもあり、植込みがよく手入れされている。(右)


 日豊本線のこの区間はまず、明治30(1897)年9月に豊州鉄道が行橋−長洲(現柳ヶ浦)間を開業した。 豊州鉄道はこの後、小倉−行橋間を開業していた九州鉄道に吸収合併される。 そして九州鉄道は国有化され、小倉−柳ヶ浦間は豊州線となる。 その後、大分線として明治42(1909)年12月に柳ヶ浦−宇佐間が開業した。 以後、中山香、日出、別府までと順次延伸して、明治44(1911)年11月に大分までの開業となる。 大分から先は佐伯線として大正3(1914)年4月に幸崎までが、翌年8月には臼杵までが開業した。 現在では吉都線の都城−吉松間を含んだ、小倉−吉松間が全通した大正12(1923)年12月に日豊本線と改称。 その後、現在の日豊本線:小倉−鹿児島間となったのは昭和7(1932)年12月。

 映画『なごり雪』には他の駅も登場したらしく、その中のここからはかなり先になる重岡駅も木造駅で趣き深いようだ。 しかし、そこまではさすがに行けなかった。 久大本線の名駅舎が綾小路さんを待っていた。 ぼちぼち折返しだ。 9時00分発の上り列車に乗車し、次の熊崎駅で下車した。 渋い、日豊本線には古い木造駅舎が沢山残っている。(左) あれっ、ホームの写真を撮るのを忘れてしまった。 大分方面を望んだ写真には、ごらんの通りの島式ホームが写っていた。(右)



 熊崎駅9時22分発の上り列車に乗車して、大分駅へと向かった。 まだまだ魅力的な日豊本線の駅舎も多いが、今回はここまでだった。 ちなみに綾小路さんは、今回漫遊した区間はすべて乗車経験があった。 前回はほとんど通過しただけだったので、今回は古い駅舎の撮影を進めた訳である。 そして、都城−隼人間がいまだ未乗の区間として残っている。
 牧駅を過ぎ、大分駅まで間近になった時点で、左側から豊肥本線の列車が並走してきた。 この後すぐに久大本線の線路とも合流して、列車は大分駅に到着した。 綾小路さんはここからただちに九大本線漫遊(久留米−大分)へと向かった。


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